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小型無人機等飛行禁止法。おおむね300mから1,000mへ拡大された2026年7月改正

公開 2026-09-04 更新 2026-09-04 読了 約9分

小型無人機等飛行禁止法の飛行禁止範囲は、2026年7月14日から「対象施設の敷地・区域およびその周囲おおむね1,000m」に拡大されました。長らく「おおむね300m」と説明されてきた範囲は、この日をもって旧内容になっています。 同じ改正で、周辺地域(いわゆるイエローゾーン)での飛行そのものに対する罰則(第14条)が新設され、警察官の命令を経なくても処罰の対象になりました。 そして航空法と決定的に違うのは、この法律に重量要件がないことです。100g未満で航空法の無人航空機に当たらない機体も、この法律の規制は受けます。

よく見る説明と、公式の記載
この分野は制度改正が続いており、古い説明や条文上の裏付けがない説明が広く流通しています。この記事で扱う範囲について、実際の一次ソースの記載と突き合わせます。
よく見る説明重要施設の周囲おおむね300mが飛行禁止。
公式にはこう2026年7月14日施行の改正で「おおむね1,000m」に拡大されました。現行条文に「三百メートル」は0件、「千メートル」が7件です。
出典 令和8年法律第47号 / 警察庁
よく見る説明100g未満の機体なら関係ない。
公式にはこうこの法律には重量要件がありません。航空法の対象外である100g未満の機体も規制されます。
出典 重要施設の周辺地域の上空における小型無人機等の飛行の禁止に関する法律 第2条

2026年7月14日改正:何がどう変わったか

改正法は令和8年法律第47号です。2026年6月24日に公布され、2026年7月14日に施行されました。本記事の確認時点で、施行からまだ2か月弱しか経っていません。ウェブ上の解説の多くは改正前の内容のまま更新されていない可能性があるため、数字を見るときは必ず出典の日付を確認してください。

論点改正前(〜2026年7月13日)改正後(2026年7月14日〜)
対象施設周辺地域の範囲 対象施設の敷地又は区域及びその周囲おおむね300mの地域 対象施設の敷地又は区域及びその周囲おおむね1,000mの地域
周辺地域(イエローゾーン)で飛行した場合 直罰規定はなく、警察官による退去等の命令に従わなかった場合に処罰 第14条を新設。飛行そのものが6月以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金
敷地・区域の上空(レッドゾーン)で飛行した場合 1年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金 同左(第13条第1項。変更なし)

距離を定めているのは条文本体です。現行条文では第3条第2項、第3条の2第2項、第4条第2項、第5条第2項、第6条第2項、第7条第2項、第8条第2項が、いずれも施設ごとに「当該対象施設の敷地又は区域及びその周囲おおむね千メートルの地域」を対象施設周辺地域として指定する、と規定しています。e-Gov法令検索で現行条文の全文を確認すると、「三百メートル」という記載は1か所も残っていません。

注意:「重要施設の周囲300mが飛行禁止」という説明は、2026年7月14日以降は現行制度と一致しません。半径が3倍以上に広がったということは、これまで問題にならなかった場所が新たに規制の範囲に入っている可能性がある、ということです。過去に確認したことのある飛行場所であっても、改めて確認し直してください。

この法律の正式名称と、航空法との違い

正式名称は「重要施設の周辺地域の上空における小型無人機等の飛行の禁止に関する法律」(平成28年法律第9号)です。総務省のガイドラインなど一部の資料には「国の重要な施設等、外国公館等及び原子力事業所の周辺地域の……」という長い題名が残っていますが、これは防衛関係施設と空港が対象に加わる前の旧題名です。所管は警察庁(警備局)で、航空法(国土交通省)とは別系統の規制です。

重量要件がない — ここが航空法との最大の違い

航空法の「無人航空機」は、機体本体とバッテリーの合計が100g以上のものを指します。100g未満は航空法上の無人航空機から除外されます。 これに対して小型無人機等飛行禁止法には重量による線引きがありません。いわゆるトイドローンでも対象になります。さらに規制対象は「小型無人機」だけでなく、人が乗れるパラグライダーや気球などの「特定航空用機器」も含まれます。

論点航空法小型無人機等飛行禁止法
所管国土交通省警察庁
重量要件100g以上が対象なし(100g未満も対象)
対象機器無人航空機小型無人機+特定航空用機器(パラグライダー等)
手続きの性質許可・承認(申請して認めてもらう)事前通報(届出)。飛べるのは適用除外に当たる場合
窓口DIPS2.0(地方航空局・空港事務所)都道府県公安委員会(警察署経由)ほか
補足:2つの法律は独立して働きます。航空法の飛行許可・承認を受けていても、それによって小型無人機等飛行禁止法の規制が外れることはありません。逆も同じです。

対象施設は5類型

第2条第1項が対象施設を定めています。大きく5つに分かれます。

類型具体的な内容指定の根拠
① 国の重要な施設等 イ 国会議事堂・議員会館等(千代田区永田町1・2丁目所在)/ロ 内閣総理大臣官邸、内閣総理大臣・内閣官房長官公邸/ハ 対象危機管理行政機関の庁舎(政令指定)/ニ 最高裁判所庁舎(千代田区隼町)/ホ 皇居及び御所(港区元赤坂2丁目)/ヘ 対象特別要人所在施設/ト 対象政党事務所 第3条、第3条の2、第4条
② 対象外国公館等大使館・公使館等のうち指定されたもの第5条
③ 対象防衛関係施設自衛隊施設・在日米軍施設のうち指定されたもの第6条
④ 対象空港指定された空港第7条
⑤ 対象原子力事業所指定された原子力事業所第8条

いずれも「指定」によって具体的な施設が決まる仕組みです。指定権者は施設の種別ごとに国家公安委員会・防衛大臣・国土交通大臣・外務大臣・総務大臣・警察庁長官と分かれています。どの施設が指定されているかは告示で公示されますので、飛行地点が周辺地域に入るかどうかは、警察庁のページと所轄の都道府県警察のページで確認してください。

飛ばせる場合:適用除外の3類型

禁止の本体は第10条第1項です。原文は次のとおりです。

「何人も、対象施設周辺地域の上空において、小型無人機等の飛行を行ってはならない。」(第10条第1項)

そのうえで第10条第2項が、次の3類型を適用除外としています。

対象施設の管理者、又はその同意を得た者が行う飛行
土地の所有者・占有者(正当な権原を有する者に限る)、又はその同意を得た者が、当該土地の上空で行う飛行
国又は地方公共団体の業務を実施するために行う飛行
ただし対象防衛関係施設・対象空港の敷地又は区域の上空では①のみ。②と③は使えない

②は、自分の土地の上空、あるいは土地の所有者・占有者の同意を得た土地の上空であれば、周辺地域内でも飛ばせるという規定です。周辺地域が1,000mに広がったことで、この②に頼る場面は実務上むしろ増えるはずです。土地所有権とドローン飛行の関係はドローンと私有地上空:所有権はどこまで及ぶかで詳しく整理しています。

注意:適用除外に当たる場合でも、次に述べる事前通報は別に必要です。「除外だから何も要らない」ではありません。

事前通報の手続き(48時間前まで)

第10条第3項が、適用除外に当たる飛行を行う者に対して事前の通報を義務づけています。許可申請ではなく通報(届出)である点が航空法と異なります。

項目内容
通報先(基本)飛行させる区域を管轄する都道府県公安委員会(実務上は警察署を経由)
通報先(区分に応じて加わるもの)皇居・御所 → 皇宮警察本部長/海域を含む地域 → 管区海上保安本部長/対象防衛関係施設 → 当該施設の管理者/対象空港 → 対象空港管理者
方法警察署の窓口、又はe-Gov電子申請サービス
期限飛行開始の48時間前まで(緊急でやむを得ない場合は直前までの口頭通報で足りるとされている)
添付書類飛行させる区域を示す地図、施設管理者や土地所有者等の同意書の写し、機器の写真(航空法の登録記号の表示があれば写真は不要)
様式別記様式第1号(施設管理者等が行う場合)/別記様式第2号(公務のために行う場合)

48時間前という期限は、航空法の飛行許可・承認(標準的には飛行開始予定日の10開庁日前まで)とはまったく別のカウントです。両方が必要になる飛行では、それぞれの期限を別々に管理する必要があります。

罰則は2段構え

区域が2層に分かれており、罰則もそれに対応して2段構えになっています。ここが2026年7月改正でもっとも実務的な影響が大きい部分です。

区域・行為罰条法定刑
対象施設及びその指定敷地等の上空(レッドゾーン)での飛行第13条第1項1年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金
警察官による退去等の命令に従わなかった場合第13条第2項1年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金
対象施設周辺地域の上空(イエローゾーン)での飛行第14条(2026年7月改正で新設)6月以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金

改正前は、周辺地域で飛行してしまった場合、まず警察官が退去等の命令を出し、その命令に従わなかったときにはじめて処罰の対象になる、という構造でした。第14条の新設によって、命令を経ることなく、周辺地域での飛行それ自体が処罰の対象になりました。範囲が1,000mに広がったこととあわせて考えると、「知らないうちに入っていた」という事態が持つリスクは、改正前より確実に大きくなっています。

表記について:刑法改正を受け、法定刑は「懲役」ではなく「拘禁刑」と表記されます。旧表記のまま「1年以下の懲役」と書いてある資料は、その時点で更新が止まっていると考えてよいでしょう。
必ずあわせて確認:この法律の規制に当たらない、あるいは適用除外に当たるという結論は、土地・施設の管理者による民事上の禁止や、条例の一般条項に基づく運用上の禁止を免除するものではありません。たとえば東京都の都立公園では、東京都立公園条例第16条第10号の「都市公園の管理に支障がある行為」という一般条項を根拠にドローンの飛行を禁止する運用が行われており、違反には同条例第25条により5万円以下の過料が定められています。「法令上は不要」と「飛ばしてよい」はまったく別の話です。

よくある質問

100g未満のトイドローンなら関係ありませんか。
関係あります。この法律に重量要件はないため、航空法上の無人航空機に当たらない100g未満の機体も規制対象です。航空法の感覚で「登録が要らないから自由」と考えると誤ります。
航空法の飛行許可を受けていれば、この法律の手続きは省けますか。
省けません。所管も手続きの性質も別です。航空法は国土交通省への許可・承認、この法律は都道府県公安委員会等への事前通報で、それぞれ独立して必要になります。
自分の土地が対象施設の周辺地域に入ってしまいました。飛ばせませんか。
第10条第2項第2号により、土地の所有者・占有者(正当な権原を有する者に限る)又はその同意を得た者が当該土地の上空で飛行させる場合は適用除外です。ただし48時間前までの事前通報は必要で、対象防衛関係施設と対象空港の敷地・区域の上空ではこの除外は使えません。
周辺地域かどうかは、どこで調べればよいですか。
対象施設は告示で指定・公示されます。警察庁のページのほか、都道府県警察がドローン関係のページで管内の対象施設を案内している例があります。範囲が1,000mに拡大した後に更新された情報かどうかを、必ずページの日付で確認してください。
緊急の取材などで48時間前に間に合わない場合はどうなりますか。
緊急でやむを得ない場合には、直前までの口頭による通報で足りるとされています。ただし例外的な取扱いですので、実際の運用は事前に所轄の警察署へ確認してください。
本記事は2026年9月4日時点の情報です。 小型無人機等飛行禁止法は2026年7月14日に改正法が施行されたばかりで、対象施設の指定も告示により随時追加されます。飛行前に必ず上記の一次ソースで最新の内容をご確認ください。

飛行前チェックリスト(無料)

航空法の特定飛行に当たるか、他法令の手続きが要るかを1枚で確認できるPDFです。小型無人機等飛行禁止法の1,000m基準にも対応しています。

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