小型無人機等飛行禁止法。おおむね300mから1,000mへ拡大された2026年7月改正
小型無人機等飛行禁止法の飛行禁止範囲は、2026年7月14日から「対象施設の敷地・区域およびその周囲おおむね1,000m」に拡大されました。長らく「おおむね300m」と説明されてきた範囲は、この日をもって旧内容になっています。 同じ改正で、周辺地域(いわゆるイエローゾーン)での飛行そのものに対する罰則(第14条)が新設され、警察官の命令を経なくても処罰の対象になりました。 そして航空法と決定的に違うのは、この法律に重量要件がないことです。100g未満で航空法の無人航空機に当たらない機体も、この法律の規制は受けます。
令和8年法律第47号 / 警察庁重要施設の周辺地域の上空における小型無人機等の飛行の禁止に関する法律 第2条2026年7月14日改正:何がどう変わったか
改正法は令和8年法律第47号です。2026年6月24日に公布され、2026年7月14日に施行されました。本記事の確認時点で、施行からまだ2か月弱しか経っていません。ウェブ上の解説の多くは改正前の内容のまま更新されていない可能性があるため、数字を見るときは必ず出典の日付を確認してください。
| 論点 | 改正前(〜2026年7月13日) | 改正後(2026年7月14日〜) |
|---|---|---|
| 対象施設周辺地域の範囲 | 対象施設の敷地又は区域及びその周囲おおむね300mの地域 | 対象施設の敷地又は区域及びその周囲おおむね1,000mの地域 |
| 周辺地域(イエローゾーン)で飛行した場合 | 直罰規定はなく、警察官による退去等の命令に従わなかった場合に処罰 | 第14条を新設。飛行そのものが6月以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金 |
| 敷地・区域の上空(レッドゾーン)で飛行した場合 | 1年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金 | 同左(第13条第1項。変更なし) |
距離を定めているのは条文本体です。現行条文では第3条第2項、第3条の2第2項、第4条第2項、第5条第2項、第6条第2項、第7条第2項、第8条第2項が、いずれも施設ごとに「当該対象施設の敷地又は区域及びその周囲おおむね千メートルの地域」を対象施設周辺地域として指定する、と規定しています。e-Gov法令検索で現行条文の全文を確認すると、「三百メートル」という記載は1か所も残っていません。
この法律の正式名称と、航空法との違い
正式名称は「重要施設の周辺地域の上空における小型無人機等の飛行の禁止に関する法律」(平成28年法律第9号)です。総務省のガイドラインなど一部の資料には「国の重要な施設等、外国公館等及び原子力事業所の周辺地域の……」という長い題名が残っていますが、これは防衛関係施設と空港が対象に加わる前の旧題名です。所管は警察庁(警備局)で、航空法(国土交通省)とは別系統の規制です。
重量要件がない — ここが航空法との最大の違い
航空法の「無人航空機」は、機体本体とバッテリーの合計が100g以上のものを指します。100g未満は航空法上の無人航空機から除外されます。 これに対して小型無人機等飛行禁止法には重量による線引きがありません。いわゆるトイドローンでも対象になります。さらに規制対象は「小型無人機」だけでなく、人が乗れるパラグライダーや気球などの「特定航空用機器」も含まれます。
| 論点 | 航空法 | 小型無人機等飛行禁止法 |
|---|---|---|
| 所管 | 国土交通省 | 警察庁 |
| 重量要件 | 100g以上が対象 | なし(100g未満も対象) |
| 対象機器 | 無人航空機 | 小型無人機+特定航空用機器(パラグライダー等) |
| 手続きの性質 | 許可・承認(申請して認めてもらう) | 事前通報(届出)。飛べるのは適用除外に当たる場合 |
| 窓口 | DIPS2.0(地方航空局・空港事務所) | 都道府県公安委員会(警察署経由)ほか |
対象施設は5類型
第2条第1項が対象施設を定めています。大きく5つに分かれます。
| 類型 | 具体的な内容 | 指定の根拠 |
|---|---|---|
| ① 国の重要な施設等 | イ 国会議事堂・議員会館等(千代田区永田町1・2丁目所在)/ロ 内閣総理大臣官邸、内閣総理大臣・内閣官房長官公邸/ハ 対象危機管理行政機関の庁舎(政令指定)/ニ 最高裁判所庁舎(千代田区隼町)/ホ 皇居及び御所(港区元赤坂2丁目)/ヘ 対象特別要人所在施設/ト 対象政党事務所 | 第3条、第3条の2、第4条 |
| ② 対象外国公館等 | 大使館・公使館等のうち指定されたもの | 第5条 |
| ③ 対象防衛関係施設 | 自衛隊施設・在日米軍施設のうち指定されたもの | 第6条 |
| ④ 対象空港 | 指定された空港 | 第7条 |
| ⑤ 対象原子力事業所 | 指定された原子力事業所 | 第8条 |
いずれも「指定」によって具体的な施設が決まる仕組みです。指定権者は施設の種別ごとに国家公安委員会・防衛大臣・国土交通大臣・外務大臣・総務大臣・警察庁長官と分かれています。どの施設が指定されているかは告示で公示されますので、飛行地点が周辺地域に入るかどうかは、警察庁のページと所轄の都道府県警察のページで確認してください。
飛ばせる場合:適用除外の3類型
禁止の本体は第10条第1項です。原文は次のとおりです。
そのうえで第10条第2項が、次の3類型を適用除外としています。
②は、自分の土地の上空、あるいは土地の所有者・占有者の同意を得た土地の上空であれば、周辺地域内でも飛ばせるという規定です。周辺地域が1,000mに広がったことで、この②に頼る場面は実務上むしろ増えるはずです。土地所有権とドローン飛行の関係はドローンと私有地上空:所有権はどこまで及ぶかで詳しく整理しています。
事前通報の手続き(48時間前まで)
第10条第3項が、適用除外に当たる飛行を行う者に対して事前の通報を義務づけています。許可申請ではなく通報(届出)である点が航空法と異なります。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 通報先(基本) | 飛行させる区域を管轄する都道府県公安委員会(実務上は警察署を経由) |
| 通報先(区分に応じて加わるもの) | 皇居・御所 → 皇宮警察本部長/海域を含む地域 → 管区海上保安本部長/対象防衛関係施設 → 当該施設の管理者/対象空港 → 対象空港管理者 |
| 方法 | 警察署の窓口、又はe-Gov電子申請サービス |
| 期限 | 飛行開始の48時間前まで(緊急でやむを得ない場合は直前までの口頭通報で足りるとされている) |
| 添付書類 | 飛行させる区域を示す地図、施設管理者や土地所有者等の同意書の写し、機器の写真(航空法の登録記号の表示があれば写真は不要) |
| 様式 | 別記様式第1号(施設管理者等が行う場合)/別記様式第2号(公務のために行う場合) |
48時間前という期限は、航空法の飛行許可・承認(標準的には飛行開始予定日の10開庁日前まで)とはまったく別のカウントです。両方が必要になる飛行では、それぞれの期限を別々に管理する必要があります。
罰則は2段構え
区域が2層に分かれており、罰則もそれに対応して2段構えになっています。ここが2026年7月改正でもっとも実務的な影響が大きい部分です。
| 区域・行為 | 罰条 | 法定刑 |
|---|---|---|
| 対象施設及びその指定敷地等の上空(レッドゾーン)での飛行 | 第13条第1項 | 1年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金 |
| 警察官による退去等の命令に従わなかった場合 | 第13条第2項 | 1年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金 |
| 対象施設周辺地域の上空(イエローゾーン)での飛行 | 第14条(2026年7月改正で新設) | 6月以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金 |
改正前は、周辺地域で飛行してしまった場合、まず警察官が退去等の命令を出し、その命令に従わなかったときにはじめて処罰の対象になる、という構造でした。第14条の新設によって、命令を経ることなく、周辺地域での飛行それ自体が処罰の対象になりました。範囲が1,000mに広がったこととあわせて考えると、「知らないうちに入っていた」という事態が持つリスクは、改正前より確実に大きくなっています。