ドローンの飛行計画の通報はいつ必要か
飛行計画の通報が必要になるのは、特定飛行を行う場合です。そしてタイミングは「あらかじめ」、つまり飛行を開始する前に済ませておく必要があります(航空法第132条の88第1項)。 通報の方法は航空法施行規則第236条の83第2項により電磁的方法と定められており、実務上はDIPS2.0の飛行計画通報機能を使います。 通報せずに特定飛行を行った場合の罰則は30万円以下の罰金です(航空法第157条の10第1項第10号)。飛行日誌の10万円以下の罰金より重く設定されています。 本記事は、通報事項13項目の中身と、毎回の飛行でこれをどう回すかを、通報要領の運用ルールまで含めて整理します。
航空法 第157条の6〜第157条の11 逐条確認航空法 第132条の88第1項条文で確認する──「あらかじめ」の意味
航空法第132条の88第1項は次のとおりです。
「無人航空機を飛行させる者は、特定飛行を行う場合には、あらかじめ、当該特定飛行の日時、経路その他国土交通省令で定める事項を記載した飛行計画を国土交通大臣に通報しなければならない。」
要件は2つです。1つは「特定飛行を行う場合」という限定。特定飛行に当たらない飛行であれば、法律上の通報義務は生じません。もう1つが「あらかじめ」という時点の指定で、飛行後の事後報告では要件を満たしません。
通報の方法は施行規則第236条の83第2項が「通報は、電磁的方法により行うものとする」と定めています。この電磁的方法の実体が、国土交通省のドローン情報基盤システム(DIPS2.0)の飛行計画通報機能です。
通報事項13項目のすべて
航空法施行規則第236条の83第1項が定める通報事項は、次の13項目です。DIPS2.0の入力画面は、この条文の項目立てに対応しています。
| # | 通報事項 | 実務上の注意 |
|---|---|---|
| 一 | 無人航空機の登録記号及び種類 | 機体登録済みであることが前提。予備機に差し替えるなら記号も変わる |
| 二 | 無人航空機の型式(型式認証を受けた型式の無人航空機に限る) | 型式認証機でない場合は対象外の項目。許可承認時の記載と揃える |
| 三 | 無人航空機を飛行させる者の氏名 | 当日の交代を織り込むなら、交代者も通報対象になる |
| 四 | 無人航空機操縦者技能証明書番号(交付を受けている場合に限る) | 技能証明を受けている場合に記載する項目 |
| 五 | 許可又は承認の番号(受けている場合に限る) | 包括許可の番号をそのまま使う。更新で番号が変わることに注意 |
| 六 | 飛行の目的、高度及び速度 | 目的は業務内容と整合させる(点検、測量、空撮 など)。高度・速度は許可・承認の条件を超える値を入れない |
| 七 | 飛行させる飛行禁止空域及び飛行の方法 | その日に実際に行う特定飛行の種類。DIDのみか、夜間も伴うか |
| 八 | 出発地 | 離陸地点。飛行日誌の離陸場所と食い違わせない |
| 九 | 目的地 | 同一地点に戻る運用でも記載が必要 |
| 十 | 目的地に到着するまでの所要時間 | 最大24時間。超える分は別の飛行計画にする |
| 十一 | 立入管理措置の有無及びその内容 | 補助者の配置、区画設定、看板・コーン等の具体的内容まで書く |
| 十二 | 損害賠償のための保険契約の有無及びその内容 | 保険の加入は通報事項。未加入なら「無」と通報することになる |
| 十三 | その他参考となる事項 | 上記に収まらない事項を記載する受け皿の号 |
番号は施行規則第236条の83第1項の号番号に合わせています。「2 種類及び型式」「6 飛行の目的/7 飛行の高度及び速度」のように分けている解説を見かけますが、現行条文の区切りは第一号が「登録記号及び種類」、第二号が「型式」、第六号が「飛行の目的、高度及び速度」です。(2026年9月29日訂正)なお飛行の日時と経路は省令の各号ではなく、航空法第132条の88第1項が直接定めている事項です。
13の号のうち、事業者が毎回引っかかりやすいのは第十一号の立入管理措置です。「有」で通報する以上、当日その措置を実際に講じていなければ通報内容と現場が食い違います。立入管理措置は航空法第132条の85第1項の括弧書きで定義され、施行規則第236条の70が「補助者の配置、立入りを制限する区画の設定その他の適切な措置」としています。通報の入力欄は、現場の段取りをそのまま宣言する場所だと考えてください。
もう1つは第十二号の保険です。保険契約の有無は通報事項であり、加入自体を航空法が義務づけているわけではありません。ただし通報画面で毎回問われる項目である以上、事業として飛ばすなら加入状況を即答できる状態にしておくのが実務です。
毎回の通報をどう回すか
通報は飛行のたびに発生します。案件が増えるほど、ここが日常業務のボトルネックになります。段取りを固定してしまうのが最も効きます。
運用上のコツは、許可・承認の内容から通報の定型テンプレートを1本作っておくことです。登録記号、種類・型式、許可承認番号、立入管理措置の内容、保険契約の内容は、案件が変わっても変わりません。毎回変わるのは日時、出発地・目的地、経路、所要時間、操縦者です。前者を固定し後者だけを差し替える運用にすると、入力の所要時間と入力ミスの両方が大きく減ります。
他機の飛行計画を確認する義務
国土交通省の「飛行計画の通報要領」は、通報にあたって他の無人航空機の飛行計画情報を確認したうえで通報することを求めています。単に自分の予定を登録すれば終わり、という設計にはなっていません。
そして、確認の結果日時・経路・高度のすべてが重複する飛行計画が既にある場合は、飛行を中止するか、当事者間で調整するという扱いになります。
所要時間は最大24時間という制約
通報要領は、飛行計画に記載する所要時間を最大24時間とし、これを超える部分については別途の飛行計画とすることを求めています。
ここが、複数日にまたがる案件で必ず効いてきます。3日間連続の点検業務であれば、1本の飛行計画では収まらず、日ごとに分けて通報することになります。長期の測量案件、災害対応、農薬散布のシーズン運用など、期間が長い業務ほど通報の本数が増えるという構造です。年間の作業量を見積もるときは、飛行日数を単位に数えてください。
通報が不要な場合・推奨にとどまる場合
| 場面 | 通報の扱い | 根拠 |
|---|---|---|
| 特定飛行を行う | 義務(あらかじめ通報) | 航空法第132条の88第1項 |
| 特定飛行に当たらない飛行 | 推奨(義務ではない) | 飛行計画の通報要領 |
| 捜索・救助を目的とする飛行 | 通報不要 | 飛行計画の通報要領 |
特定飛行でない飛行についても通報が「推奨」されているのは、上で述べた他機との重複確認が、通報された情報を突き合わせる仕組みだからです。通報しない機体が増えるほど、確認の精度が落ちます。自分が安全に飛ばすための仕組みでもある、という位置づけで理解しておくと運用が続きます。
なお、国・地方公共団体またはその依頼を受けて捜索・救助を行う者による飛行には、航空法第132条の85から第132条の89までの規定が適用されません(同法第132条の92)。この特例の対象になるかどうかは主体と目的で決まりますので、民間事業者が独自判断で当てはめる性質のものではありません。
システム障害時と、大臣の変更指示
システム障害による例外
通報は電磁的方法によることとされているため、システムが利用できなければ通報のしようがありません。システム障害により飛行開始までに通報する手段がない場合に限り、飛行開始後に速やかに通報するという取扱いが認められています。あくまで例外であり、入力を忘れていた、時間が足りなかったといった事情はこれに当たりません。
国土交通大臣の変更指示
航空法第132条の88第2項により、国土交通大臣は、通報された飛行計画のとおりに飛行させると航空機や他の無人航空機の飛行の安全を損なうおそれがあると認めるときは、日時や経路の変更等を指示することができます。この指示に従わなかった場合の罰則も別に置かれています(次章)。通報して終わりではなく、指示が来ていないかを飛行前に確認する、という手順まで含めて運用に組み込んでください。
罰則──30万円以下の罰金
| 違反の内容 | 罰条 | 法定刑 |
|---|---|---|
| 飛行計画を通報せずに特定飛行を行った | 航空法第157条の10第1項第10号 | 30万円以下の罰金 |
| 国土交通大臣の変更等の指示に従わなかった | 航空法第157条の10第1項第11号 | 30万円以下の罰金 |
飛行日誌の備付け・記載の違反が10万円以下の罰金(航空法第157条の11第2号・第3号)であるのに対し、通報義務の違反は30万円以下です。飛ぶ前の手続きのほうが重く見られているという構造を押さえておくと、優先順位を間違えません。飛行日誌側の運用はドローンの飛行日誌の書き方。3種類の記録と、毎回の運用で扱っています。
飛行後:事故と重大インシデントの報告
飛行計画の通報が「飛ぶ前」なら、事故等の報告は「飛んだ後」です。両者は別の義務ですが、DIPS2.0上では同じ入口から扱えます。
事故については、航空法第132条の90が定めています。無人航空機による人の死傷または物件の損壊、航空機との衝突または接触などが起きた場合、①直ちに飛行を中止し負傷者の救護等の危険を防止するための措置を講じ、②国土交通大臣に報告する必要があります。危険防止措置を講じなかった場合は2年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金(同法第157条の6)、報告をせず、または虚偽の報告をした場合は30万円以下の罰金(同法第157条の10第2項)です。
重大インシデントについては、航空法第132条の91が報告を義務づけています。対象は、航空機との衝突・接触のおそれがあったと認めたとき、無人航空機による人の負傷(重傷以上の死傷を除く軽傷)、無人航空機の制御が不能となった事態、飛行中の発火です(施行規則第236条の86)。
なお報告要領では、「制御不能」は機体の不具合によるものが対象とされ、通信可能範囲からの逸脱や残量確認不足によるバッテリー切れといった操縦ミスに起因するものは対象外とされています。一方で機体を紛失した場合は含まれます。「発火」は推進装置が稼働状態にある場合に限られ、保管中のバッテリー発火は対象外です。この線引きは自己判断で狭めるとリスクが残るため、迷ったら報告する側に倒すのが安全です。