ドローンの飛行許可、自分で申請するか依頼するか
結論から書きます。ドローンの飛行許可・承認申請を、飛ばす本人が自分で行うことは完全に適法です。 行政書士の独占業務を定める行政書士法第1条の3と、その制限を定める第19条第1項は、いずれも「他人の依頼を受け報酬を得て」を要件としており、自分の飛行のための申請を自分で作る行為はそもそも対象外だからです。 したがって判断は「適法か違法か」ではなく、申請の複雑さ・頻度・時間コスト・差戻しリスクを金額に換算して割に合うかという一点に集約されます。 本記事では、その4つの軸を国土交通省の審査要領と航空法の条文に沿って分解し、最後に判定フローとしてまとめます。
あなたの飛行に、許可・承認は必要か
航空法の条文と国土交通省の資料に沿って、その場で判定します。入力は保存されず、どこにも送信されません。
判定はあくまで航空法の許可・承認についてのものです。電波法・小型無人機等飛行禁止法・自治体の条例・施設管理者のルールは別に確認が必要です。
行政書士法 第19条第1項・第1条の3航空法 第132条の88〜90本人申請は適法である──条文で確認する
「自分で申請してよいのか」という不安の多くは、2026年1月1日に施行された改正行政書士法の話と混線して生まれています。まず、条文を直接読んで切り分けます。
行政書士法第1条の3第1項は、行政書士の業務を「他人の依頼を受け報酬を得て、官公署に提出する書類(その作成に代えて電磁的記録を作成する場合における当該電磁的記録を含む)その他権利義務又は事実証明に関する書類を作成することを業とする」と定めています。そして第19条第1項が、行政書士・行政書士法人でない者に対し「他人の依頼を受けいかなる名目によるかを問わず報酬を得て、業として第一条の三に規定する業務を行うことができない」と制限をかけています。
この2つの条文に共通する要件は、①他人の依頼を受けること、②報酬を得ること、③業として行うこと、の3つです。自分が飛ばすドローンについて、自分で申請書やDIPS2.0の入力データを作る行為は、①の「他人の依頼」がそもそも存在しません。本人申請は、独占業務の枠外にあります。
言い換えると、悩むべきなのは「自分でやってよいか」ではなく「自分でやるほうが得か」です。以下、4つの軸で分解します。なお、依頼する場合に誰であれば適法に受任できるのかは、ドローンの飛行許可、誰に頼めば適法なのかで条文ベースに整理しています。
軸1:申請の複雑さ(全国包括で足りるか)
飛行許可・承認申請の難易度は、飛行の中身で階段状に変わります。最も易しいのが、飛行経路を特定せずに出す「全国包括」です。国土交通省は「無人航空機の許可承認申請では飛行経路を特定せずに申請いただくことも可能です。(日本全国、○○県など)」と明示しています。
問題は、全国包括では出せない飛行があることです。次の飛行は経路の特定が必要になり、申請の中身が一気に重くなります。
| 難易度 | 飛行の内容 | 申請上の扱い |
|---|---|---|
| 易 | 人口集中地区(DID)上空、夜間、目視外、人・物件から30m未満のうち単独のもの | 飛行経路を特定しない全国包括が可能 |
| 中 | 空港等周辺、地表・水面から150m以上、DID上空の夜間飛行、夜間の目視外飛行、補助者を配置しない目視外飛行、趣味目的、研究開発目的 | 飛行経路の特定が必要(全国包括の対象外) |
| 難 | DID上空での夜間の目視外飛行、催し場所上空 | 飛行経路および日時の特定が必要 |
また、全国包括を出す場合は航空局標準マニュアル02に沿った安全体制の設定が必要で、標準マニュアル01との併用はできません。標準マニュアルの運用条件が自分の飛ばし方に合わない場合、独自の飛行マニュアルを作って添付することになります。ここが、本人申請でつまずきやすい最初の壁です。
なお、そもそも自分の飛行が許可・承認の要る「特定飛行」に当たるのかが曖昧なままだと、この判断自体ができません。空域は航空法第132条の85第1項、飛行方法は同第132条の86第2項に列挙されています。
軸2:頻度(3か月ごとか、1年ごとか)
包括申請は「同一の申請者が一定期間内に反復して飛行を行う場合又は異なる複数の場所で飛行を行う場合」にまとめて出せる運用です(許可・承認の審査要領2-1(3))。ここで見落とされやすいのが有効期間です。
審査要領は、期間を記載する場合「その期間は原則3ヶ月以内とし、申請内容に変更を生ずることなく、継続的に無人航空機を飛行させる場合には、1年を限度として記載することができる」としています。ただし原文には括弧書きがあり、DID上空・夜間・目視外を同時に行う場合は、この1年上限の適用から除かれます。
年1回で済むのか、四半期ごとに回ってくるのか。ここは自分の時給を掛け算する前提条件になるので、最初に確定させてください。包括申請そのものの詳しい仕組みは包括申請とは:個別申請との違いと使い分けで扱っています。
軸3:時間コスト(10開庁日前ルールと余裕)
審査要領2-1(1)bは、新規申請を飛行開始予定日の10開庁日前までに提出することとしています。国土交通省の手続ページは、これに加えて次のように書いています。
「審査には一定の期間を要するため、飛行開始予定日の少なくとも10開庁日以上前(土日・祝日を除く)には申請書類を提出してください。申請内容に不備があった場合には追加確認に時間を要し、飛行予定日までに許可・承認が得られないことも想定されるため、飛行開始予定日から3〜4週間程度、十分な余裕をもって申請を頂きますようお願いします。」
更新の場合は別枠で、審査要領2-1(5)により満了日の40開庁日前から10開庁日前までという窓が定められています。早すぎても遅すぎても受け付けられない設計です。
| 区分 | 提出のタイミング | 根拠 |
|---|---|---|
| 新規 | 飛行開始予定日の10開庁日前まで(実務上は3〜4週間の余裕を推奨) | 審査要領2-1(1)b/国交省手続ページ |
| 更新 | 満了日の40開庁日前から10開庁日前まで | 審査要領2-1(5) |
| 緊急時 | 災害等で緊急に支援活動が必要な場合は電話、事故・災害の緊急支援や報道取材等は電子メール等(後日、申請書を提出) | 審査要領2-1(1)c |
この「3〜4週間」を自分の案件スケジュールに乗せられるかどうかが、時間コストの実体です。撮影日が先に決まっていて逆算の余地がない仕事ほど、外に出す価値が高くなります。
軸4:差戻しリスクと、申請後も残る義務
本人申請の負担は、近年の運用改正でむしろ軽くなっています。2025年2月25日公布・同年3月24日施行の改正により、機体・操縦者の基準適合性は申請者自身が確認して原則「適・否」で示す方式となり、写真や取扱説明書等の添付が不要になりました(資料自体は手元に具備しておく必要があります)。改正の説明資料には「規制改革推進に関する答申(令和6年5月31日)のとおり…許可・承認手続き期間の1日化を目指すべく」と記されています。
一方で、差戻しが起きたときのコストは変わりません。追加確認のやり取りが発生すると、上の「10開庁日前」の余裕が一気に食われます。初回だけ依頼して型を作り、2回目以降の更新を自分で回すという分け方は、この非対称性に対する現実的な答えの1つです。
そして最も見落とされるのが、許可・承認を取ったあとの義務は、申請を誰が作ったかに関係なく飛行させる者に残るという点です。
| 飛行後・飛行時の義務 | 内容 | 根拠条文 |
|---|---|---|
| 飛行計画の通報 | 特定飛行を行う場合、あらかじめ電磁的方法で通報する(実務上はDIPSの飛行計画通報機能) | 航空法第132条の88第1項、規則第236条の83 |
| 飛行日誌 | 特定飛行を行う場合、飛行記録・日常点検記録・点検整備記録を機体ごとに備える | 航空法第132条の89第1項、規則第236条の84 |
| 事故の報告 | 人の死傷・物件の損壊・航空機との衝突等が生じたときは、直ちに飛行を中止し危険防止措置を講じ、国土交通大臣に報告 | 航空法第132条の90 |
| 緊急用務空域の確認 | 飛行開始前に、飛行させる空域が緊急用務空域に該当するか否かを確認しなければならない | 規則第236条の71第4項 |
特に緊急用務空域は、空港周辺・150m以上・DID上空の許可を持っていても飛行できません。申請を外に出しても、この日々の確認は自分の手元に残ります。
判定フロー:あなたはどちらか
ここまでの4軸を、上から順に答えていくフローにまとめます。
依頼側に振れた場合、次に確認するのは金額です。相場が何に対する対価なのかはドローン申請の費用相場は何に対する対価かで内訳を分解しています。