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ドローンの飛行許可、2026年からは誰に頼めば適法なのか

公開 2026-09-04 更新 2026-09-04 読了 約9分

結論から書きます。報酬を得て、業として、ドローンの飛行許可・承認申請の書類を作成できるのは、行政書士と行政書士法人だけです。根拠は行政書士法第19条第1項で、2026年1月1日施行の改正により「いかなる名目によるかを問わず報酬を得て」という文言が条文に加わりました。名目が受講料でも機体代金でもサポート料でも扱いは同じです。 ただし、これは「代行と名の付くものがすべて禁じられた」という意味ではありません。禁じられているのは書類の作成であり、真に無償の行為はそもそも第19条第1項の要件を満たしません。この記事では、依頼先を3類型に分けて、どこまでが条文で説明できる線なのかを整理します。

よく見る説明と、公式の記載
この分野は制度改正が続いており、古い説明や条文上の裏付けがない説明が広く流通しています。この記事で扱う範囲について、実際の一次ソースの記載と突き合わせます。
よく見る説明無償なら誰が代行しても問題ない、あるいは無償でも一律に違反になる。
公式にはこう第19条第1項は「報酬を得て」が構成要件です。真に無償なら要件を欠きます。争点は無償か有償かではなく、実質的に対価を受領しているかです。
出典 行政書士法 第19条第1項
よく見る説明2026年1月の改正で「補助金申請の代行が独占業務」と条文に明記された。
公式にはこう行政書士法の条文に「補助金」の語は一度も出てきません。明記されたのは報酬の名目を問わないことです。
出典 行政書士法 全文検索 / 総務省 総行行第281号
よく見る説明無資格で報酬を得て書類を作成した場合の罰則は第21条。
公式にはこう第21条は虚偽登録の罰則です。第19条第1項違反の罰則は第21条の2(2026年1月新設)。
出典 行政書士法 第21条・第21条の2

結論:書類を作成できるのは行政書士・行政書士法人のみ

行政書士法第19条第1項は、現行条文で次のように定めています。原文のとおり引用します。

「第十九条 行政書士又は行政書士法人でない者は、他人の依頼を受けいかなる名目によるかを問わず報酬を得て、業として第一条の三に規定する業務を行うことができない。ただし、他の法律に別段の定めがある場合及び定型的かつ容易に行えるものとして総務省令で定める手続について、当該手続に関し相当の経験又は能力を有する者として総務省令で定める者が電磁的記録を作成する場合は、この限りでない。」

ここで引かれている第1条の3が定める業務は、「官公署に提出する書類(その作成に代えて電磁的記録を作成する場合における当該電磁的記録を含む)その他権利義務又は事実証明に関する書類を作成すること」です。

ドローンの飛行許可・承認申請は、この「官公署に提出する書類」に当たります。飛行許可は航空法第132条の85第2項が国土交通大臣の許可を、飛行承認は第132条の86第3項が国土交通大臣の承認を、機体登録は第132条の4第1項が所有者の申請を前提としており、いずれも国の行政機関に対して提出する書類だからです。

DIPS2.0の入力も「書類の作成」に含まれます。第1条の3の括弧書きが「その作成に代えて電磁的記録(略)を作成する場合における当該電磁的記録を含む」と明記しているためです。紙の申請書だけを想定した条文ではありません。国土交通省の申請ポータルも、飛行許可・承認申請はDIPS2.0で手続きが可能だとしており、実務上ほぼ全件が電磁的記録の作成に当たります。

第19条第1項にはただし書があり、総務省令で定める手続・者は適用が除外されます。ただし行政書士法施行規則第20条が挙げているのは、自動車の新規登録・新規検査、軽自動車の新規検査、継続検査という3類型の手続と、自動車関係の3団体だけです。ドローンに関する手続も団体も、一切含まれていません。

2026年1月1日に何が変わり、何が変わっていないのか

よく見かける「2026年から無資格の代行が違法になった」という説明は、正確ではありません。日本行政書士会連合会の会長談話(2025年11月1日)は、名目を問わず対価を受領して業として書類を作成することについて、次のように述べています。

「…法第19条第1項に違反することが明確化されたもので、これらは現行法においても変わりはなく、改正法の施行日前であってもこうした行為があれば同条に違反することになります。」

つまり改正の実質は、新しい規制を作ったことではなく、従来からの解釈を条文に書き込み、罰則の射程を法人にまで広げたことにあります。改正前後の差分は次のとおりです。

項目改正前改正後(2026年1月1日〜)
第1条目的規定使命規定に変更
第1条の2業務(独占業務)職責(新設)。業務は第1条の3へ移動
第19条第1項「…でない者は、業として第一条の二に規定する業務を行うことができない」「者は」の後に「他人の依頼を受けいかなる名目によるかを問わず報酬を得て」を追加
違反の罰則旧第21条第1号第21条の2として独立(法定刑は同じ)
両罰規定(第23条の3)対象は第23条の2第1号のみ第21条の2などに拡大=法人にも罰金
発注する側にとって最も重い変化は、両罰規定の拡大です。第23条の3により、法人の従業者がその法人の業務に関して第21条の2の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人にも100万円以下の罰金が科されます。従業員個人の問題では済まなくなった、という点が改正の核心です。なお附則第2条により、施行前にした行為への罰則の適用は従前の例によります。

もうひとつ、条番号の取り違えが広く流通しています。無資格業務の罰則は第21条ではなく第21条の2で、現行の第21条は虚偽登録の罰則です。条文で確かめる手順は行政書士法19条とドローン申請代行を条文で読むで1条ずつ追っています。

依頼先3類型の比較:行政書士/スクール・販売店/民間の代行サービス

実際に検討の対象になるのは、おおむね次の3類型です。第19条第1項の要件に当てはめると、位置づけがはっきり分かれます。

依頼先報酬を得て申請書類を作成できるか根拠費用の目安
行政書士・行政書士法人 できる 行政書士法第1条の3(業務)。第19条第1項の名宛人から除かれている 各事務所が公開している料金表では、包括申請でおおむね1.8万〜3万円台(2026年9月4日調査)
ドローンスクール・機体販売店・代理店 行政書士でない限りできない 受講料・機体代金・サポート料への内包も「いかなる名目によるかを問わず報酬を得て」に含まれる 「受講特典」「購入特典」として金額が表に出ないことが多い
行政書士資格のない代行サービス 同じくできない コンサルタント料・会費・手数料といった名目でも同様 —
申請者本人(自社で申請) 制限なし 「他人の依頼を受け」に当たらない。本人申請は第19条第1項の対象外 機体登録の国への手数料は電子申請1機900円(マイナンバーカード利用時)

大手の販売代理店や資格団体が「提携する行政書士法人が申請を担当する」という形をとっているのは、この整理の帰結です。窓口が販売店や協会であっても、実際に書類を作成する主体が行政書士法人であれば、第19条第1項の問題は生じません。逆にいえば、依頼先を見るときに確認すべきは看板ではなく「誰が書類を作るか」です。

注意:ここで個別の事業者を名指しして違法かどうかを論じることはしません。違法性の最終的な判断は捜査機関と裁判所に属します。この記事が示せるのは、「行政書士でない者が、報酬を得て、業として、申請書類を作成する」という構造は第19条第1項に抵触するおそれがあるという、条文の当てはめまでです。

「代行」のどこからが規制対象か:作成と提出は別の条文

「代行」という語は多義的で、ここを混ぜて論じると必ず不正確になります。第19条第1項が引いているのは第1条の3(書類の作成)だけです。官公署への提出手続の代理や、意見陳述手続の代理は第1条の4に規定されており、第19条第1項の引用対象に入っていません。

今回の改正で第19条第1項の引用先が「第一条の二」から「第一条の三」に改められたのは、旧第1条の2(業務=書類作成)が新第1条の3へ移動したことに伴う条ズレの対応であって、射程を第1条の4にまで広げたものではありません。

行為第19条第1項の構成要件コメント
申請書・DIPS2.0の入力内容を作成する該当する電磁的記録も第1条の3の括弧書きで明示的に含まれる
申請者が作成した内容を窓口へ届ける・送信するだけ直ちには満たさない使者としての行為。提出の代理は第1条の4の領域
DIPS2.0の操作方法を一般的に説明する直ちには満たさない申請内容の作成に踏み込まない範囲に限る
制度・規制の一般的な情報提供、セミナー・講義直ちには満たさない書類の作成ではない
顧客からヒアリングして申請内容を一緒に作る実質的に作成に当たり得る画面を見ながら入力内容を指示する段階を含む

境界は薄いと考えたほうが安全です。「操作説明」と「一緒に作る」の間に明確な線を引く公式の基準は、公式には明示されていません。実務では、飛行の条件をヒアリングして飛行経路や安全対策の記載内容を決めていく作業に入った時点で、作成に近づいていると見るのが無難です。

無償なら問題ないのか:争点は有償か無償かではない

ここは解説記事のあいだで最も食い違っている論点です。「無償でも業として行えば違法」と書かれていることがありますが、条文上、そこまでは支持されません。

第19条第1項の文言は「他人の依頼を受けいかなる名目によるかを問わず報酬を得て」です。「報酬を得て」は構成要件そのものであり、報酬を得ていなければこの条文の適用対象になりません。「いかなる名目によるかを問わず」は報酬の呼び名を問わないという趣旨であって、報酬の不存在まで取り込む文言ではありません。総務省の通知も日本行政書士会連合会の会長談話も、いずれも「対価を受領して」と、有償を前提に説明しています。無償の行為に言及した公的資料は確認できませんでした。

正確な言い方はこうなります。真に無償であれば第19条第1項の「報酬を得て」の要件を欠きます。ただし、受講料・機体代金・会費・サポート料に申請書類作成の対価が実質的に含まれていれば、「無償」と称していても報酬を得たものと評価されます。争点は「無償か有償か」ではなく、実質的に対価を受領しているかです。

したがって、「申請サポートは無料です」という説明を額面どおり受け取ることはできません。見るべきは、その分の対価が別の名目に載っていないかどうかです。

依頼先が第19条第1項の対象かを見る判定フロー

これまでの整理を、依頼を検討する側の手順に落とすと次のようになります。

書類を作成する主体は、行政書士または行政書士法人か
はい → 第19条第1項の問題は生じない。窓口が販売店や協会でも、作成主体が行政書士法人なら同じ
いいえ → 次へ。何らかの対価を支払うか(受講料・機体代金・サポート料・会費・コンサルタント料への内包を含む)
対価が一切ない(真に無償)→ 「報酬を得て」の要件を欠く。ただし別名目に載っていないかを確認する
対価がある → 相手が申請書類やDIPS2.0の入力内容を作成するか。届けるだけ・操作説明だけなら直ちには該当しない
作成する → それを反復継続して行っているか(業として)
すべて当てはまる → 行政書士法第19条第1項に該当する構造。第21条の2と第23条の3の適用が問題になる

発注する側が依頼前に確認したい5項目

  1. 申請書類を作成するのは誰か。担当する行政書士の氏名または行政書士法人の名称を確認する。窓口の会社名と作成主体が一致しないケースは珍しくない。
  2. 見積書の内訳に申請作成分が明示されているか。「受講特典」「購入特典」として金額が表に出ていない場合、何に対する対価なのかを確認する。
  3. DIPS2.0のアカウントを誰が操作するか。自社アカウントに他社が入力する形なのか、内容は自社で作り操作だけ教わるのかで、位置づけが変わる。
  4. 許可の範囲が実際の飛行と合っているか。包括申請でも、催し場所上空など経路や日時の特定が必要な飛行は個別の手続きになる。
  5. 更新時の扱い。有効期間満了後に誰がどう手続きするのかを、最初の契約時に確認しておく。

1と2は、改正後は発注側にとっても実益のある確認です。両罰規定が及ぶのは違反行為者が属する法人であって、発注者そのものではありませんが、依頼した許可が後から使えなくなる事態は避けたいところです。

よくある質問

自社の従業員が、自社の飛行のために申請書類を作るのは問題ありませんか
第19条第1項は「他人の依頼を受け」を要件としています。自社の飛行のために自社で申請する本人申請は、この要件に当たりません。国土交通省のDIPS2.0は本人申請を前提に設計されており、手続きも公開されています。
スクールの受講特典に「申請サポート」と書かれていました。頼んでよいですか
サポートの中身によります。制度の説明やDIPS2.0の操作案内にとどまるなら、書類の作成には当たりません。一方、受講料に申請書類の作成の対価が実質的に含まれていて、スクール側が内容を作成するのであれば、その料金構造は第19条第1項に抵触するおそれがあります。「誰が作るのか」を確認してください。
国土交通省は、ドローンの無資格代行について注意喚起していますか
国土交通省の無人航空機 飛行許可・承認申請ポータルサイトには、代行や行政書士に関する記述は確認できませんでした。ドローンを名指しした公的な注意喚起は、公式には明示されていません。確認できるのは、総務省が2025年6月13日付の通知(総行行第281号)で各府省とその申請窓口に対し、行政書士・行政書士法人でない者による関与を防止する取組を求めており、国土交通省もその名宛人に含まれている、という事実までです。
罰則はどのくらいの重さですか
第19条第1項に違反した場合、第21条の2により1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金です。「又は」なので選択刑で、併科ではありません。加えて第23条の3の両罰規定により、行為者が属する法人にも100万円以下の罰金が科されます。なお現行条文は「懲役」ではなく「拘禁刑」です。
改正で「補助金申請の代行が独占業務と明記された」と読みましたが、ドローンも同じですか
その表現自体が不正確です。行政書士法の条文に「補助金」という語は出てきません。明記されたのは「報酬の名目を問わない」という点です。ドローンの申請についても、条文に固有の規定が置かれたわけではなく、第19条第1項の一般的な要件を当てはめて判断することになります。
本記事は2026年9月4日時点の情報です。 無人航空機に関する制度も行政書士法も改正が続いている分野です。実際の申請や依頼の前に、必ず上記の一次ソースで最新の内容をご確認ください。料金の目安は同日時点で各事務所が公開していた料金表に基づく参考値であり、個別の見積りとは異なります。

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