無資格のドローン申請代行はなぜ違反になるのか、条文で確かめる
ドローンの申請代行をめぐる説明の多くは、根拠条文の引用が省かれているか、改正前の古い条番号のままです。この記事では、行政書士法の現行条文を1条ずつ原文で引き、ドローンの飛行許可・承認申請に当てはめていきます。 要点を先に書きます。禁止規範は第19条第1項、その罰則は第21条ではなく第21条の2、法人にも罰金が及ぶ両罰規定は第23条の3です。そして第19条第1項が引いているのは第1条の3(書類の作成)だけで、「報酬を得て」は削れない構成要件です。この2点を押さえると、どこまでが条文で言えてどこからが言えないのかがはっきりします。
行政書士法 第21条の2日行連 会長談話 2025-11-01まず条番号を直す:2026年1月1日の条ズレ
2026年1月1日に施行された改正(令和7年法律第65号)で、行政書士法には条ズレが生じています。世に出回る解説の多くが旧条番号のままなので、最初にここを直しておきます。
| よく見かける記載 | 現行法での実際 |
|---|---|
| 第1条の2=業務(独占業務) | 第1条の2は「職責」(新設)。業務の規定は第1条の3へ移動 |
| 第21条=無資格業務の罰則 | 第21条は虚偽登録の罰則。無資格業務の罰則は第21条の2(新設) |
| 第1条の3=代理・提出等 | 条ズレにより第1条の4へ移動 |
改正法の本文にも、この移動がそのまま書かれています。
第19条第1項の原文と、4つの構成要件
禁止規範の本体は第19条第1項です。原文を引用します。
この1文を分解すると、次の4つの要件になります。すべてを満たしたときに初めて第19条第1項に該当します。
| # | 構成要件 | ドローンの現場での当てはめ |
|---|---|---|
| ① | 行政書士または行政書士法人でない者 | ドローンスクール、機体メーカー、販売代理店、個人で代行を行う者など |
| ② | 他人の依頼を受け | 顧客からの依頼。自社の飛行のための本人申請はここで外れる |
| ③ | いかなる名目によるかを問わず報酬を得て | 受講料・機体代金・サポート料・会費・コンサルタント料への内包を含む |
| ④ | 業として、第1条の3に規定する業務(=書類の作成)を行う | 飛行許可・承認申請書、機体登録申請、DIPS2.0上の入力データの作成 |
要件①〜③:他人の依頼/名目を問わない報酬/業として
③の「いかなる名目によるかを問わず」が今回の追加部分
2026年1月1日施行の改正で第19条第1項に加えられたのは、「者は」の後に置かれた「他人の依頼を受けいかなる名目によるかを問わず報酬を得て」という文言です。日本行政書士会連合会の会長談話は、この趣旨を次のように説明しています。
押さえておきたいのは、改正が新たな規制を作ったのではなく、従来の解釈を条文に書き込んだ確認的な規定だと日行連自身が明示している点です。「2026年から違法になった」ではなく「従来から違反だったものが条文上明確化され、罰則の対象が法人にまで拡大された」が正しい説明になります。なお改正法の附則第2条は「この法律の施行前にした行為に対する罰則の適用については、なお従前の例による」と定めています。
「業として」は反復継続の意思
④に含まれる「業として」は、反復継続してその行為を行う意思を指します。単発・一回限りの手伝いがこれに当たるかは評価が分かれ得るところで、明確な線引きは公式には明示されていません。この記事でもそこは断定しません。
要件④:ドローンの申請は「官公署に提出する書類」か
第19条第1項が引く第1条の3は、業務を次のように定めています。
ドローンの各手続が「官公署に提出する書類」に当たるかは、航空法の条文で確認できます。
| 手続 | 航空法の根拠 | 提出先 |
|---|---|---|
| 飛行許可 | 第132条の85第2項「…国土交通大臣がその運航の管理が適切に行われるものと認めて許可した場合でなければ、無人航空機を飛行させてはならない。」 | 国土交通大臣 |
| 飛行承認 | 第132条の86第3項「…あらかじめ、その運航の管理が適切に行われることについて国土交通大臣の承認を受けて…」 | 国土交通大臣 |
| 機体登録 | 第132条の4第1項「登録を受けていない無人航空機の登録は、所有者の申請により…」 | 国土交通大臣 |
いずれも国の行政機関に対する申請であり、「官公署に提出する書類」に当たります。
ただし書の適用除外に、ドローンは入っていない
第19条第1項にはただし書があり、「定型的かつ容易に行えるものとして総務省令で定める手続」について「総務省令で定める者」が電磁的記録を作成する場合は適用されません。この総務省令は行政書士法施行規則第20条です。全文を確認すると、除外されているのは次の範囲だけです。
| 区分 | 内容 |
|---|---|
| 除外される手続 | ①自動車の新規登録及び新規検査の申請(保管場所証明・OSSを含む)/②検査対象軽自動車の新規検査の申請/③登録自動車・検査対象軽自動車の継続検査の申請 |
| 除外される者 | 一般社団法人日本自動車販売協会連合会/一般社団法人日本自動車整備振興会連合会/一般社団法人全国軽自動車協会連合会 |
ドローン関係の手続も、ドローン関係の団体も、一切含まれていません。「ドローンは定型的で容易だから除外される」という主張は、施行規則第20条の文言からは出てきません。
ここまでを合わせると、条文上は次のように読めます。
行政書士・行政書士法人でない者が、他人の依頼を受け、報酬を得て、業として、無人航空機の飛行許可・承認申請書や機体登録申請(DIPS2.0上の入力データを含む)を作成する行為は、行政書士法第19条第1項に違反します。報酬の名目が「受講料」「機体代金」「サポート料」「会費」「コンサルタント料」であっても同じです。
罰則:第21条の2と、第23条の3の両罰規定
罰則の原文は次のとおりです。第21条と第21条の2が別物であることが、原文で確認できます。
第二十一条の二 第十九条第一項の規定に違反したときは、その違反行為をした者は、一年以下の拘禁刑又は百万円以下の罰金に処する。」 出典:行政書士法 第21条・第21条の2(e-Gov法令検索)
| 条文 | 対象行為 | 法定刑 |
|---|---|---|
| 第21条 | 資格のない者が日行連に虚偽申請をして名簿に登録させたとき | 1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金 |
| 第21条の2 | 第19条第1項違反(無資格で報酬を得て書類を作成) | 1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金 |
| 第22条の4 | 第19条の2違反(名称の使用制限) | 100万円以下の罰金 |
両罰規定(第23条の3)が今回の改正で拡大した
改正前、この両罰規定の対象は「前条第一号」(=第23条の2第1号)だけでした。改正で第21条の2が対象に加えられたことが、事業者にとって最も重い変化です。ドローンスクールや販売代理店の従業員が無資格で顧客の申請書類を作成した場合、行為者本人が処罰されるのに加えて、雇用主である法人にも100万円以下の罰金が科されます。個人の逸脱では済まず、組織のリスクとして立ち上がる形に変わりました。依頼先の選び方はドローンの飛行許可、2026年からは誰に頼めば適法なのかで整理しています。
条文で言えないこと:無償・提出代理・ドローン名指しの見解
ここからは、条文からは言えないことを確認します。解説記事が踏み外しやすい3点です。
(1) 「無償でも違反になる」とは条文から出てこない
第19条第1項の文言は「他人の依頼を受けいかなる名目によるかを問わず報酬を得て」です。「報酬を得て」は構成要件そのものであり、報酬を得ていなければこの条文の適用対象になりません。「いかなる名目によるかを問わず」は報酬の呼び名を問わないという趣旨で、報酬の不存在まで取り込む文言ではありません。総務省の通知も「対価を受領して」、日行連の会長談話も「対価を受領し」と、いずれも有償を前提に説明しており、無償の行為について述べた公的資料は確認できませんでした。
(2) 第19条第1項が禁じるのは「作成」だけ
第19条第1項は「業として第一条の三に規定する業務を行うことができない」と書いています。第1条の3が定めるのは「書類を作成することを業とする」ことだけです。一方、官公署への提出手続の代理や意見陳述手続の代理は第1条の4に置かれており、第19条第1項の引用対象に入っていません。
改正で第19条第1項の引用先が「第一条の二」から「第一条の三」へ改められたのは、旧第1条の2(業務=書類作成)が新第1条の3へ移動したことに伴う条ズレの対応です。射程を第1条の4にまで広げた改正ではありません。したがって条文上、次の行為は第19条第1項の構成要件を直ちには満たしません。
- 申請者本人が作成した申請を、単に窓口へ届ける・送信するだけの使者としての行為
- DIPS2.0の操作方法を一般的に説明する行為(申請内容の作成に踏み込まない範囲)
- 制度・規制の一般的な情報提供、セミナー・講義
(3) ドローンを名指しした公的見解は確認できない
国土交通省の「無人航空機 飛行許可・承認申請ポータルサイト」には、代行・代理人・行政書士に関する記述は確認できませんでした。日行連や総務省のサイトにも、ドローンを名指しした注意喚起は確認できていません。「国土交通省がドローンの無資格代行を違反行為として名指しした」とは書けません。書けるのは、次の項で見る総務省通知の範囲までです。
行政側はどう動いているか:総行行第281号
2025年6月13日、総務省自治行政局長から各府省官房長等に宛てて「行政書士法の一部を改正する法律の公布について(通知)」(総行行第281号)が発出されています。国土交通省もこの名宛人に含まれます。
同通知は改正の趣旨についても、次のように述べています。
同日付で都道府県知事宛の総行行第282号も出ており、こちらは「地方自治法第245条の4第1項に基づく技術的な助言である」と明記されています。別添資料には、申請様式への代理人行政書士の記載例の付記(滋賀県)、電子申請フォームへの代理人欄の整備(東京都)、ホームページでの注意喚起の掲載(大阪市)といった窓口対応例が並びます。
整理すると、「ドローンの窓口で今すぐ何かが起きる」とまでは言えないが、申請窓口全般に無資格者の関与を防ぐ取組が求められているという段階です。現時点の公表資料から言えるのはここまでです。
よくある質問
- e-Gov法令検索|行政書士法(昭和二十六年法律第四号)
- e-Gov法令検索|行政書士法施行規則(第20条)
- e-Gov法令検索|航空法(第132条の4・第132条の85・第132条の86)
- 衆議院|行政書士法の一部を改正する法律(令和7年6月13日法律第65号)制定法律本文
- 総務省自治行政局長|行政書士法の一部を改正する法律の公布について(通知)総行行第281号
- 総務省|総行行第282号(各都道府県知事宛・技術的助言)
- 総務省|別添 行政手続窓口等における行政書士法違反の防止に向けた取組について
- 日本行政書士会連合会|【会長談話】行政書士法第19条第1項及び第23条の3の改正の趣旨等について
- 国土交通省|無人航空機 飛行許可・承認申請ポータルサイト