認証機体を買うか、許可・承認で回すか
機体認証を取るかどうかは、機体の良し悪しの話ではありません。これから何年、何回、飛行許可・承認の申請を出し続けるかという話です。 カテゴリーⅡ飛行のうち一定の条件をすべて満たす場合、技能証明を受けた者が機体認証を受けた無人航空機を飛行させることで、許可・承認そのものを不要にできます。条件を1つでも欠けば、申請は今までどおり残ります。 この記事は「許可・承認を取り続けるルートA」と「技能証明+機体認証で申請を不要にするルートB」を、国に納める手数料と申請の手間という2つの軸だけで比べます。機体の価格や性能の比較はしません。 先に結論だけ言うと、ルートBに移っても飛行計画の通報・飛行日誌・事故の報告は消えません。なくなるのは申請だけです。
あなたの飛行に、許可・承認は必要か
航空法の条文と国土交通省の資料に沿って、その場で判定します。入力は保存されず、どこにも送信されません。
判定はあくまで航空法の許可・承認についてのものです。電波法・小型無人機等飛行禁止法・自治体の条例・施設管理者のルールは別に確認が必要です。
国土交通省 飛行許可・承認手続ページ / 教則 第5版 3.1.1(2)5)a.国土交通省 飛行許可・承認手続ページ 注記 / 航空法第132条の43e-Gov 航空法 第132条の88〜90この判断は「機体」ではなく「申請」の話
「機体認証は必要か」という問いは、実際には次の二択です。どちらも合法に飛ばすための道であり、優劣ではなくコスト構造の違いです。
| ルートA:許可・承認を取り続ける | ルートB:技能証明+機体認証 | |
|---|---|---|
| 飛ぶために必要なもの | 飛行の内容に応じた国土交通大臣の許可・承認(包括申請または個別申請) | 技能証明を受けた者が、機体認証を受けた無人航空機を飛行させること+立入管理措置+飛行マニュアル等 |
| 事前の申請 | 毎回必要。包括申請でも期間満了ごとに更新 | 条件を満たす飛行については不要 |
| リードタイム | 新規は飛行開始予定日の10開庁日前まで(実務上は3〜4週間の余裕が推奨) | 認証・証明を取得済みなら飛行計画の通報のみ |
| 期限の管理対象 | 許可・承認の満了日(原則3か月、継続は1年を限度) | 機体認証の満了日(第一種1年/第二種3年)+技能証明の満了日(3年) |
| 差戻しのリスク | ある。不備があれば追加確認で飛行予定日に間に合わないことがある | 申請自体がないため、飛行ごとの差戻しは発生しない |
| 対象外の飛行 | —(許可・承認を受ければ広く対応できる) | 空港等周辺/150m以上/催し場所上空/危険物輸送/物件投下/25kg以上は対象外 |
表の最後の行が、この判断のいちばん重い制約です。ルートBは「すべての飛行が申請不要になる制度」ではありません。カテゴリーⅡ飛行のうち、リスクが相対的に低いとされる範囲だけが対象です。この範囲の外に出る案件を1本でも受けるなら、ルートAの体制は結局残ります。
許可・承認を不要にできる5条件
ここがこの記事の核です。国土交通省は、カテゴリーⅡ飛行のうち次のすべてを満たす場合に、許可・承認を不要とすることができるとしています。いずれか1つではなく、すべてです。
| # | 条件 | ここで落ちやすい点 |
|---|---|---|
| 1 | 飛行が DID(人口集中地区)上空/夜間/目視外/人又は物件から30m未満 のいずれかであること | 空港等周辺・高度150m以上・催し場所上空・危険物輸送・物件投下は除かれる。これらが1つでも混じる飛行は対象外 |
| 2 | 総重量25kg未満であること(施行規則第236条の73) | 25kg以上の機体は、技能証明と機体認証があっても個別の許可・承認が必要 |
| 3 | 立入管理措置を講じること | 補助者の配置、立入りを制限する区画の設定その他の適切な措置(施行規則第236条の70)。落下分散範囲も考慮し、看板・コーン等の表示が必要とされている |
| 4 | 技能証明を受けた者が、機体認証を受けた無人航空機を飛行させること | 人と機体の両方が要る。操縦者が技能証明を持っていても機体が未認証なら不可、逆も同じ |
| 5 | 飛行マニュアルの作成等、安全確保に必要な措置を講じること(施行規則第236条の75) | 申請が不要になっても、安全体制を定めた規程の作成と遵守という義務は残る |
技能証明には航空法第132条の43に基づく限定が付されており、飛行の方法についての限定は「昼間飛行・目視内飛行」「昼間飛行」「目視内飛行」の3種類です。つまり限定変更(限定解除)の対象は、夜間飛行・目視外飛行・最大離陸重量25kg以上の3つです。夜間案件や目視外案件で申請を不要にしたいなら、基本の技能証明だけでは足りず、該当する限定変更まで取得している必要があります。
条件4の「技能証明を受けた者が機体認証を受けた無人航空機を飛行させる」という言い回しは、条文由来です。航空法第132条の85第1項は、飛行禁止空域について「技能証明を受けた者が機体認証を受けた無人航空機を飛行させる場合(立入管理措置…を講ずることなく無人航空機を飛行させるときは、一等無人航空機操縦士の技能証明を受けた者が第一種機体認証を受けた無人航空機を飛行させる場合に限る。)でなければ、無人航空機を飛行させてはならない」と定めています。立入管理措置を講じる前提であれば、二等技能証明+第二種機体認証の組み合わせで足ります。第一種・一等が必要になるのは、立入管理措置を講じない飛行(カテゴリーⅢ)です。
ルートA:許可・承認を取り続ける
まず現状維持側のコストを、事務の量として並べます。
期間の設計
反復して飛行する事業者は通常、包括申請を使います。審査要領は包括申請を「同一の申請者が一定期間内に反復して飛行を行う場合又は異なる複数の場所で飛行を行う場合」の申請と定義しており、期間は原則3か月以内、申請内容に変更を生ずることなく継続的に飛行させる場合は1年を限度としています。
ただしこの「1年」には括弧書きの例外があります。審査要領の原文は「(5-2、5-3及び5-4に掲げる飛行を同時に行う場合を除く。)」としており、5-2はDID上空、5-3は夜間飛行、5-4は目視外飛行に対応する節です。つまりDID上空・夜間・目視外を同時に行う飛行を含む申請は1年上限の対象外で、原則3か月になります。年1回の更新で回る事業と、年4回の更新が発生する事業では、事務の量が単純に4倍違います。
締切とリードタイム
| 手続 | 締切 | 根拠 |
|---|---|---|
| 新規申請 | 飛行開始予定日の10開庁日前まで(土日・祝日を除く)。実務上は3〜4週間の余裕が推奨されている | 審査要領2-1(1)b/国土交通省 手続ページ |
| 更新申請 | 期間の満了の日の40開庁日前から10開庁日前まで。早すぎても受け付けられない | 審査要領2-1(5) |
| 補助者なし目視外等で 航空情報の発行を要する場合 | 飛行を行う日の1開庁日前までに飛行内容を通知 | 審査要領5-4(4) |
この「10開庁日前」が、受注のリードタイムをそのまま縛ります。急な依頼が入っても、包括申請の範囲外の飛行であれば最短で2週間、実務上の推奨に従えば3〜4週間先までしか着地できません。更新の窓は両側に締切がある特殊な形なので、詳細は包括申請の更新:40開庁日前から10開庁日前までの窓で扱っています。包括申請そのものの設計は包括申請とは:個別申請との違いと使い分けをご覧ください。
全国包括でも取れない飛行がある
経路を特定しない「全国包括」は便利ですが、航空局標準マニュアル02の安全体制で運用する必要があり、標準マニュアル02には空港等周辺・150m以上・催し場所上空が含まれていません。標準マニュアル01(場所を特定した申請に適用)にはこの3つが入っています。したがって全国包括を持っていても、空港周辺の案件や催し場所上空の案件は、別立ての申請になります。
現在、申請書類の一部省略が認められるのは、機体側が型式認証機・機体認証機の場合、操縦者側が無人航空機操縦者技能証明を保有している場合に限られます。また、12月18日以前に取得した許可・承認のうち上記を含むものは「複製」「変更申請」「更新申請」等が行えず、新規申請が必要になります。
ルートB:技能証明+機体認証で申請をなくす
ルートBは、初期に手続を集中させて、その後の申請をゼロに近づける設計です。ただし「取れば終わり」ではなく、有効期間があります。
| 制度 | 有効期間 | 更新の条件 | 根拠 |
|---|---|---|---|
| 機体認証(第一種) | 1年 | 更新のたびに検査と手数料が発生する | 教則 3.1.1(2)4)/航空法第132条の13第10項 |
| 機体認証(第二種) | 3年 | 同上 | 同上 |
| 技能証明(一等・二等) | 3年 | 身体適性基準を満たすことと、無人航空機更新講習の修了の両方が必要。更新講習は更新申請日以前3月以内に修了、更新申請は満了日の6月前から1月前まで(2026年9月13日訂正) | 航空法第132条の51、施行規則第236条の56・第236条の57 |
| 機体登録 | 3年 | 機体認証とは別制度。満了日の1か月前から満了日までの手続が最適 | 航空法第132条の6、施行規則第236条の8・第236条の9 |
第一種機体認証の有効期間が1年である点は、事業設計に直接効きます。第一種はカテゴリーⅢ(立入管理措置を講じない飛行)に対応するための区分で、そこまで踏み込む事業者は毎年、機体ごとに更新の検査と手数料を見込む必要があります。一方、立入管理措置を講じる前提のカテゴリーⅡで足りるなら第二種で、こちらは3年です。
どちらが向くか:4つの軸で分岐させる
飛行頻度・飛ぶ場所・機体の台数・組織の人数の4つで順に絞ると、判断がぶれません。
| 事業者像 | 寄せる先 | 理由 |
|---|---|---|
| 年に数回、DID上空の空撮のみ。機体1台・操縦者1名 | ルートA | 年1回の包括更新で回る。認証と証明の期限管理を増やす利得が小さい |
| 夜間・目視外・DIDが混在し、包括が原則3か月で回っている。機体2台・操縦者2〜3名 | ルートB寄り | 更新事務が年4回発生している。ただし夜間・目視外は限定変更まで必要 |
| 催し場所上空の撮影や、空港周辺の点検を受注している | ルートA必須(+必要に応じ併用) | これらは申請を不要にできる範囲の外。標準マニュアル02でも扱えず、場所を特定した申請になる |
| 総重量25kg以上の機体で散布・輸送を行う | ルートA | 25kg以上は対象外。危険物輸送・物件投下も対象外で、二重に外れる。ただし農地・森林内の空中散布は、別の特例(施行規則第236条の82第2号)の要件を満たせば、昼間・目視内・人又は物件から30m以上を保つ飛行に限り、25kg以上の機体でも危険物輸送・物件投下の承認が不要になり得る(この特例も技能証明と機体認証が前提)(2026年9月15日追記) |
| 立入管理措置を講じない第三者上空の飛行を目指す | いずれでもない(カテゴリーⅢ) | 一等+第一種機体認証に加えて、大臣の許可・承認が別途必要。申請は不要にならない |
台数×人数の掛け算で効き方が変わる
ルートBのコストは、機体の台数と操縦者の人数の掛け算ではなく、足し算で積み上がります。機体認証は機体ごと、技能証明は人ごとに必要だからです。ただし現場で申請を不要にできるのは「技能証明を持つ人」が「機体認証を受けた機体」を飛ばす組み合わせのときだけなので、運用上は掛け算で考えることになります。
| 単位 | 必要なもの | 更新サイクル | 運用上の含み |
|---|---|---|---|
| 機体1台につき | 機体認証(第一種または第二種) | 第一種1年/第二種3年 | 未認証の機体を現場に持ち出した瞬間、その飛行は申請が必要な扱いに戻る |
| 操縦者1名につき | 技能証明(+夜間・目視外は限定変更) | 3年(更新講習の修了が必要) | 証明を持たない者が飛ばす日は、その飛行だけ許可・承認が必要になる |
| 組織全体で | 飛行マニュアル等の規程、立入管理措置の運用 | — | 申請が不要でも、規程の作成と遵守という義務は残る |
実務上いちばん壊れやすいのが「認証機体が現場に出ていない日」と「証明を持たない人が飛ばす日」です。認証機体が整備に入っている、あるいは別現場に出ているという理由で予備機を使えば、その飛行はルートBの条件4を満たしません。ルートBに寄せた組織ほど、予備機と代替要員の扱いを先に決めておく必要があります。
ルートBでも残る義務
この記事でいちばん誤解が多い部分です。許可・承認の申請が不要になっても、特定飛行であることは変わりません。特定飛行に伴う義務は、申請の有無とは無関係に発生します。
| 残る義務 | 内容 | 根拠 | 違反時 |
|---|---|---|---|
| 飛行計画の通報 | 特定飛行を行う場合はあらかじめ、日時・経路その他省令で定める事項を通報する。通報は電磁的方法により行う(実務上はDIPSの飛行計画通報機能)。他の無人航空機の飛行計画を確認したうえで通報し、日時・経路・高度のすべてが重複する場合は飛行中止又は当事者間の調整。所要時間は最大24時間 | 航空法第132条の88第1項、施行規則第236条の83 | 30万円以下の罰金(第157条の10第1項第10号) |
| 飛行日誌 | 特定飛行を行う場合は飛行日誌を備える。飛行記録・日常点検記録・点検整備記録の3種で、機体ごとに備えて記載する。飛行時は紙媒体または電磁的記録により常時携行 | 航空法第132条の89第1項、施行規則第236条の84第1項 | 10万円以下の罰金(第157条の11第2号・第3号) |
| 事故の報告 | 人の死傷、物件の損壊、航空機との衝突・接触等が起きたときは、直ちに飛行を中止して救護等の措置を講じ、国土交通大臣に報告する | 航空法第132条の90 | 危険防止措置を講じなかった場合は2年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金(第157条の6)/報告をせず又は虚偽の報告は30万円以下の罰金(第157条の10第2項) |
| 重大インシデントの報告 | 航空機との衝突・接触のおそれがあったと認めたとき、軽傷の負傷、制御不能、飛行中の発火 | 航空法第132条の91、施行規則第236条の86 | 報告義務違反の罰条が明文で引用しているのは第132条の90第2項(事故の報告)であり、第132条の91を引用する罰条は現行の航空法には置かれていません。ただし国土交通省の案内は両者をまとめて説明しており、実務上は必ず報告すべきです |
| 緊急用務空域の確認 | 飛行を開始する前に、飛行させる空域が緊急用務空域に該当するか否かの別を確認しなければならない。緊急用務空域は許可の有無にかかわらず飛行できない | 施行規則第236条の71第4項 | — |
| 機体登録・リモートID | 機体認証とは別制度。登録の有効期間は3年で、登録記号の表示とリモートID機能の備付けが必要(免除類型あり) | 航空法第132条の5、施行規則第236条の6 | 登録記号の表示等の措置を講じずに航空の用に供した場合は50万円以下の罰金(第157条の9第1号) |
つまりルートBに移って消えるのは、事前の許可・承認申請だけです。飛行のたびの通報と記録はそのまま残り、むしろ申請という「関所」がなくなる分、社内で運用を自律的に回す設計が必要になります。飛行日誌の具体的な書き方は飛行日誌の書き方:3つの記録と保管の考え方で扱っています。
よくある質問
- 国土交通省|無人航空機の飛行許可・承認手続(カテゴリーⅡ〔申請が必要な飛行/不要な飛行〕の区分と注記)
- 国土交通省|無人航空機の飛行の安全に関する教則 第5版(令和8年7月7日)(PDF)
- e-Gov法令検索|航空法(昭和二十七年法律第二百三十一号)
- e-Gov法令検索|航空法施行規則(昭和二十七年運輸省令第五十六号)
- 国土交通省|無人航空機の飛行に関する許可・承認の審査要領(カテゴリーⅡ飛行)令和8年9月29日最終改正(PDF)
- 国土交通省|無人航空機の機体認証・型式認証等
- 国土交通省|機体認証等に係る手数料額(PDF)
- 国土交通省|無人航空機に係る規制の運用における解釈について(解釈通達)(PDF)
- 国土交通省|無人航空機の飛行日誌の取扱要領(PDF)
- 国土交通省|無人航空機の飛行計画の通報要領(PDF)
- 国土交通省|審査要領(カテゴリーⅡ飛行)改正に関する説明会資料 令和7年11月(PDF)
- 国土交通省|技能証明の更新制度及び登録更新講習機関制度について(PDF)