機体登録の更新。満了日の1か月前から、が損しない
無人航空機の登録の有効期間は3年です(航空法第132条の6、航空法施行規則第236条の8第1項)。 更新の手続きは、満了日の1か月前から満了日までの間に行うのが正解です。 施行規則第236条の9は、有効期間の起算日を登録の通知日としたうえで、この1か月の窓の中で新たな通知がなされる場合は満了日の翌日を起算日とすると定めています。 裏返すと、1か月前より早く手続きをすると、残っていた有効期間がそのまま切り捨てられます。「余裕をもって早めに」が、そのまま損になる数少ない手続きです。 この記事では、その仕組みと、複数機を持つ事業者が満了日をどう管理するかを整理します。
航空法施行規則 第236条の9ただし書航空法 第132条の6第1項有効期間3年と、起算日の条文
まず期間そのものです。航空法第132条の6第1項は次のように定めています。
「…三年以上五年以内において国土交通省令で定める期間ごとにその更新を受けなければ、その期間の経過によつて、その効力を失う。」
法律は3年から5年の幅を示すにとどめ、具体的な期間は省令に委ねています。これを受けた航空法施行規則第236条の8第1項が「三年とする」と定めており、実務上の有効期間は3年です。
次が本題の起算日です。施行規則第236条の9は、有効期間を登録の通知日から起算するのを原則としつつ、ただし書きで例外を置いています。満了日の1か月前から満了日までの間に新たな通知がなされる場合は、満了日の翌日が起算日になります。
1か月前より早いと何が起きるか
満了日の1か月前より前に手続きをすると、その手続きは更新ではなく登録事項の変更の届出として扱われ、新たな登録通知日から3年が起算されます。有効期間が「延長される」のではなく「引き直される」わけです。
| 手続きのタイミング | 扱い | 新しい有効期間の起算日 | 結果 |
|---|---|---|---|
| 満了日の1か月前 〜 満了日 | 更新 | 満了日の翌日 | 3年がまるごと積み上がる。損失なし |
| それより前 | 変更の届出として扱われる | 新たな登録通知日 | 残っていた期間が切り捨てられる |
| 満了日を過ぎた後 | 更新できない(効力を失っている) | ― | 抹消され、新規登録のやり直し。登録記号も変わる |
具体例で数える
満了日が2027年3月31日の機体で考えます。
満了日を過ぎたら──抹消と登録記号の変更
逆方向の失敗はもっと重くなります。航空法第132条の6第1項が「その期間の経過によつて、その効力を失う」と定めているとおり、更新しなければ登録は失効します。この場合、登録は抹消され、新規登録をやり直すことになり、登録記号も新しいものに変わります。
登録記号が変わることの実務的な影響は、単に貼り替えが発生するというだけでは終わりません。
- 機体表示の作り直し:25kg未満は文字高3mm以上、25kg以上は25mm以上という基準(施行規則第236条の6第1項)を満たす表示を、改めて用意する必要があります
- リモートIDへの書き込み直し:登録記号は機体の識別情報の一部です
- 飛行計画の通報との整合:飛行計画の通報事項には登録記号が含まれます(施行規則第236条の83第1項)。旧記号のまま通報する運用が残っていると、記録と実態がずれます
- 飛行日誌との整合:飛行日誌は機体ごとに備えるものです。社内台帳のキーを登録記号にしている場合、記号の変更は台帳の再編を意味します(ドローンの飛行日誌の書き方)
- 手数料の再負担:新規登録として手数料が発生します
加えて、失効している機体を飛ばしてしまえば、登録を受けていない無人航空機を航空の用に供したことに該当し得ます。航空法第157条の7第1項第1号により1年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金の対象となり、両罰規定(第159条第2号)により法人にも罰金刑が科され得ます。
更新の手数料は新規と同額
更新だから安くなる、ということはありません。手数料は航空法関係手数料令第8条に基づき、新規登録と同額です。金額は申請方法と本人確認の方法で決まります。
| 申請方法 | 本人確認の方法 | 1機目 | 同時申請の2機目以降 |
|---|---|---|---|
| オンライン | マイナンバーカードの利用者証明用電子証明書の送信 等(gBizIDを含む) | 900円 | 890円 |
| オンライン | 上記以外(運転免許証とeKYC、書類の郵送 等) | 1,450円 | 1,050円 |
| 書面 | 書類 | 2,400円 | 2,000円 |
金額の水準そのものは、3年に一度の支出としては小さいものです。更新で本当にコストがかかるのは、手数料ではなく期日管理のほうだと考えたほうが実態に合います。1機900円の手続きを失念したせいで、記号の変更と台帳の再編が発生する構造だからです。手続き全体の費用感はドローン申請の費用相場は、何に対する対価かにまとめています。
事前登録の機体は、更新を落とすとリモートIDが必要になる
更新を落とすことの影響が、もう1段深くなる機体があります。事前登録期間(2021年12月20日〜2022年6月19日)に登録手続きを行った機体です。
これらの機体は、リモートID機能を備える義務(施行規則第236条の6第1項第2号)の免除対象とされています。国土交通省は、この免除について次の2点を示しています。
- 登録更新後もリモートIDの搭載は不要のまま
- ただし、登録を更新しなかった場合はリモートID搭載義務の対象となる
リモートIDの免除には、このほかに施行規則第236条の6第2項が定める3類型(届出区域での飛行、長さ30メートル以下の紐等による係留飛行、警察庁・都道府県警察・海上保安庁等の警備等の業務)があります。制度全体の整理は無人航空機の登録制度 完全ガイドを参照してください。
複数機の満了日をどう管理するか
ここからが事業者にとっての本題です。登録は機体ごとの手続きであり、有効期間の起算日はその機体の登録通知日です。機体を買い足していけば、満了日は自然にバラバラになります。5機あれば5つの満了日が、それぞれ別の月に立ちます。
しかも、期間を損なわずに手続きできる窓は満了日前の1か月間だけです。「気づいたときにまとめてやる」という運用が、この制度とは構造的に噛み合いません。
1. 機体台帳に「更新の窓」を列として持つ
満了日だけを記録しても足りません。動くべき日、すなわち満了日の1か月前を独立した列として持ちます。管理する担当者が見るのはこちらの日付です。
| 列 | 入れるもの | なぜ必要か |
|---|---|---|
| 登録記号 | 通知された登録記号 | 台帳の一意キー。通称は別列に逃がす |
| 登録通知日 | 登録記号の通知を受けた日 | 有効期間の起算日そのもの |
| 満了日 | 起算日から3年 | 失効の期限 |
| 更新着手日 | 満了日の1か月前 | この日より前に手続きすると期間を損する |
| リモートID免除 | 事前登録による免除の有無 | 更新を落としたときの損失の大きさが変わる |
| 使用者・保管場所 | 現に使っている部署・拠点 | 更新時に現物と情報の突合が要る |
2. 通知は2段階に分ける
期日管理の失敗は、たいてい「早すぎる通知」か「遅すぎる通知」のどちらかで起きます。この制度では早すぎる通知が実害を生むため、通知の役割を分けます。
3. 満了日を揃えるなら、新規導入のときだけ
満了日がバラバラなことに耐えられず、まとめて更新して揃えたくなる場面があります。しかし、揃えるために早い機体を前倒しで更新すれば、その分の期間が消えます。既存機の満了日を後ろにずらす方法はなく、前に詰める方法しかないのが、この制度の非対称なところです。
満了日をコントロールできるのは、機体を新規に登録するときだけです。複数機をまとめて調達するなら、登録も同時に行えば満了日が揃い、同時申請による2機目以降の減額も効きます。逆に、すでに走っている機体を無理に揃える動きは、費用の節約以上に期間の損失を生みます。
4. 機体を手放したら、更新ではなく抹消を検討する
使わなくなった機体の登録を惰性で更新し続けると、手数料と管理対象が積み上がります。譲渡・廃棄をしたのであれば、登録の抹消の申請を怠った場合に30万円以下の過料の対象となる規定(航空法第161条第5号)もありますので、台帳の棚卸しは更新のタイミングでまとめて行うのが合理的です。
登録・許可承認・飛行日誌はサイクルが別
更新管理を設計するときに混同しやすいのが、期限のある他の手続きです。それぞれ周期も起点も違います。
| 手続き | 期間 | 起点 | 単位 |
|---|---|---|---|
| 機体登録 | 3年 | 登録の通知日 | 機体ごと |
| 飛行の許可・承認(包括申請) | 原則3か月、最長1年 | 許可・承認の日 | 申請の内容ごと |
| 飛行日誌 | 期限という概念がない | ― | 機体ごと(登録されている間、記載と保管を継続) |
包括申請は最長でも1年で切れるため、体感としては毎年の更新が来ます。一方の機体登録は3年に一度しか来ないので、社内の記憶に残りにくく、担当者の交代を挟むと落ちやすい。頻度が低い手続きほど、個人の記憶ではなく台帳とリマインダで持つ必要があります。包括申請そのものの期間の考え方は包括申請とは。個別申請との違いと、使い分けの判断基準で、どの飛行にどの手続きが要るかはドローンの飛行許可・承認申請 完全ガイドで整理しています。