permission

催し場所上空の飛行。イベント撮影で最も落ちやすい申請

公開 2026-09-13 更新 2026-09-13 読了 約15分

運動会、マラソン、花火大会、屋外コンサート、ドローンショー。こうしたイベントの上空でドローンを飛ばすには、国土交通大臣の承認が必要です(航空法第132条の86第2項第4号)。 この承認は、ほかの特定飛行とは性格が違います。国家資格と認証機体を揃えても申請を省けず、包括申請を持っていても個別の申請が必要です。さらに、飛行の日時の特定、催しの主催者等との事前調整、高度に応じた立入禁止区画の設定、風速の上限まで、審査要領が独自の要件を並べています。 この記事は、何が「多数の者の集合する催し」に当たるのかという判断要素から、審査要領5-6の追加要件、申請書に書くこと、スケジュールの組み方までを、条文・解釈通達・審査要領の原文に沿って整理します。

よく見る説明と、公式の記載
催し場所上空は、イベントの規模感や「承認」という言葉の響きから誤解が生まれやすい類型です。この記事で扱う範囲について、実際の一次ソースの記載と突き合わせます。
よく見る説明観客が◯◯人以下の小さなイベントなら「催し」には当たらない。
公式にはこう人数の数値基準はありません。解釈通達は人数や密度だけでなく、特定の場所や日時に開催されるものか、主催者の意図等も勘案して総合的に判断するとし、例示に当たらない場合でも「特定の時間、特定の場所に数十人が集合しているとき」は該当する可能性があるとしています。
出典 無人航空機に係る規制の運用における解釈について 3(8)
よく見る説明催し場所上空の承認を取れば、観客の頭上を飛ばして撮影できる。
公式にはこう審査要領5-6は「催し場所上空であっても、第三者の上空で無人航空機を飛行させないことを要件」としています。そのうえで、飛行範囲の外周に立入禁止区画を設けることを求めています。
出典 審査要領(カテゴリーⅡ飛行)5-6(1)
よく見る説明包括申請を持っていれば、イベント撮影もその範囲で飛ばせる。
公式にはこう国土交通省の手続ページは、催し場所上空の飛行は場所に加えて「日時」も特定する必要があるとし、「包括申請を含む各飛行方法の承認等を既に取得していた場合も、個別に申請手続きが必要です」と明記しています。
出典 国土交通省「無人航空機の飛行許可・承認手続」

条文の位置づけ。催し場所上空は「承認」の対象

航空法は、無人航空機を飛行させる方法として6つのルールを定めています。そのうち第4号が催し場所上空です。条文は次のとおりです。

航空法第132条の86第2項第4号
祭礼、縁日、展示会その他の多数の者の集合する催しが行われている場所の上空以外の空域において飛行させること。

つまり「催し場所の上空では飛ばさない」が原則で、この方法によらずに飛行させるには国土交通大臣の承認が必要になります(同条第3項・第5項第2号)。空港等周辺・150m以上・DID上空のような「空域」の規制ではなく、夜間・目視外・30m未満と同じ「飛行の方法」の規制に分類されるため、許可ではなく承認です。

申請先は、審査要領の表で「当該承認を必要とする行為を行おうとする場所を管轄区域とする地方航空局長」とされています(東京航空局長または大阪航空局長)。ただし同じ飛行で150m以上の空域などを飛ぶ場合は、その許可の申請先は空港事務所長になります。

審査要領(カテゴリーⅡ飛行)では、第5章の5-6「多数の者の集合する催し場所の上空における飛行」がこの類型の審査基準です。原本のPDFは節番号が全角で書かれているため、半角の「5-6」で検索してもヒットしません。

承認を受けずに催し場所の上空を飛行させた場合の罰則
航空法第157条の9は、第132条の86第2項第1号から第4号までの規定に違反して飛行させたとき(第14号)、同条第3項の規定に違反して飛行させたとき(第17号)について、50万円以下の罰金を定めています。さらに第159条第2号の両罰規定により、業務として行った場合は法人にも罰金刑が科され得ます。イベント撮影を業務として受ける事業者にとって、会社自体が対象になり得る点は見落とせません。

「多数の者の集合する催し」の判断要素

条文が挙げているのは「祭礼、縁日、展示会」の3つだけです。それ以外の何が「多数の者の集合する催し」に当たるのかは、国土交通省の解釈通達(無人航空機に係る規制の運用における解釈について)3(8)が示しています。まず趣旨です。

多数の者の集合する催しが行われている場所の上空においては、無人航空機を飛行させた場合に故障等により落下すれば、人に危害を及ぼす蓋然性が高いことから、…一時的に多数の者が集まるような催し場所上空以外の空域での飛行に限定することとしている。

そのうえで、該当するかどうかは次のように判断するとしています。

…趣旨に照らし、集合する者の人数や密度だけでなく、特定の場所や日時に開催されるものかどうか、また、主催者の意図等も勘案して総合的に判断される。

ここから読み取れる判断要素は3つです。

判断要素通達の文言読み方
①人数・密度 集合する者の人数や密度 数値の基準は置かれていません。通達の末尾は、例示に当たらない場合でも「特定の時間、特定の場所に数十人が集合しているとき」は該当する可能性があるとしています
②場所と日時の特定性 特定の場所や日時に開催されるものかどうか あらかじめ決まった場所・日時に人が集まるものかどうか。信号待ちや混雑による人混みのような自然発生的なものは該当しない例とされています
③主催者の意図 主催者の意図等 人を集めることを目的に誰かが開催しているかどうか。どの程度重く見るかは、公式には示されていません

なお、国土交通省の教則(第5版)も同じ論点を扱っていますが、表現は「集合する者の人数や規模だけでなく、特定の場所や日時に開催されるかどうかによって総合的に判断される」となっており、通達にある「密度」「主催者の意図」の語はありません。申請の審査で直接の拠り所になるのは通達側と考えて読むのが安全です。

通達が挙げる「該当する例」「該当しない例」

通達は具体例を列挙しています。イベント撮影の依頼で出てくる場面に当てはめると、次のように整理できます。

撮影の場面通達上の扱い補足
祭礼・縁日・展示会 該当する例 条文に明示されている3つ
プロスポーツの試合、スポーツ大会、運動会 該当する例 学校の運動会も明示されています
屋外で開催されるコンサート等のイベント 該当する例 野外フェス等の撮影がここに入ります
花火大会、盆踊り大会 該当する例 夜間であれば、夜間飛行の承認も別途必要です
マラソン、街頭パレード 該当する例 コースが長く、飛行範囲と立入禁止区画の設計が難しくなる類型です
選挙等における屋外演説会、デモ(示威行為) 該当する例 報道・記録目的でも扱いは同じです
ドローンショー 該当する例(ただし除外あり) 「自社敷地内、無人の競技場内等、第三者の立入管理措置が行われていることが明白である場所での事前練習や企業向けの配信用撮影等を除く」とされています
関与者のみが参加する催し 該当しない例 「関与者」には定義上の要件があります(次章)
混雑による人混み、信号待ち 該当しない例 自然発生的なもの。ただしDID上空や30m未満など、他の特定飛行には当たり得ます
例示にない催し 総合判断 上の3要素で個別に判断されます。例示にないことは「該当しない」の根拠になりません
想定外の催しに出くわしたら、承認の有無にかかわらず直ちに止める。 通達は「飛行許可・承認の取得の有無によらず、飛行予定経路下において想定していない『多数の者の集合する催し』が開催されることが明らかになり、飛行場所に第三者の立ち入り又はそのおそれのあることを確認したときは、直ちに当該無人航空機の飛行を停止し、飛行経路の変更、…安全を損なうおそれがない場所への着陸その他の必要な措置を講じなければならない」としています。イベントとは無関係の空撮でも、当日の現地で地域の祭りや催事に出くわすことはあり得ます。飛行前の現地確認の段階で、周辺の催事の予定まで確認しておく価値があります。

関与者だけの催しは該当しない。ただし要件がある

通達が「該当しない例」の筆頭に挙げているのが、「6.第三者に関すること に示す関与者のみが参加する催し場所上空の飛行」です。ここで効いてくるのが、通達6(1)の「第三者」の定義です。

通達は、無人航空機の飛行に直接的又は間接的に関与していない者を「第三者」とし、次の者は第三者に当たらないとしています。

区分通達の定義
直接関与者 操縦者、現に操縦はしていないが操縦する可能性のある者、補助者等無人航空機の飛行の安全確保に必要な要員
間接関与者 飛行目的について操縦者と共通の認識を持ち、次のいずれにも該当する者
a)操縦者が、その者について飛行の目的の全部又は一部に関与していると判断している
b)その者が、操縦者から、無人航空機が計画外の挙動を示した場合に従うべき明確な指示と安全上の注意を受けている(操縦者は、指示と注意が適切に理解されていることを確認する必要がある)
c)その者が、飛行目的の全部又は一部に関与するかどうかを自ら決定することができる
通達の例 映画の空撮における俳優やスタッフ、学校等での人文字の空撮における生徒 等
「身内のイベントだから関与者」とはならない点に注意してください。 間接関与者に当たるには、a)b)c)のすべてを満たす必要があります。とくにb)は、操縦者が参加者に計画外の挙動時の指示と安全上の注意を与え、それが理解されていることを確認するところまで求めています。社内イベントや関係者限定の催しであっても、参加者一人ひとりについてこの状態を作れているかが問われます。会場に入れる人を関係者に限定できない催し、観覧自由の催しでは、この整理に乗せるのは難しいと考えるのが安全側です。どこまで満たせば足りるかの具体的な基準は、公式には示されていません。

国家資格と認証機体があっても申請は省けない

カテゴリーⅡ飛行の一部は、技能証明を受けた者が機体認証を受けた無人航空機を飛行させる場合、許可・承認を不要にできます。しかし催し場所上空はその対象外です。根拠は条文そのものにあります。

航空法第132条の86第3項は、承認が必要な場合について、括弧書きで「立入管理措置を講じた上で無人航空機(国土交通省令で定める総重量を超えるものを除く。)を飛行させる場合にあつては、同項第四号から第六号までに掲げる方法のいずれか」と定めています。つまり、技能証明+機体認証+立入管理措置+総重量の上限以下という条件が揃っても、第4号(催し)・第5号(危険物輸送)・第6号(物件投下)によらない飛行は承認が必要です。第1号〜第3号(夜間・目視外・30m未満)だけが、第4項の措置で足りる側に置かれています。

用語について:カテゴリーⅡ飛行は、国土交通省の「無人航空機の飛行の安全に関する教則」(第5版)において、リスクの高いカテゴリーⅡA飛行(空港周辺/高度150m以上/催し場所上空/危険物輸送/物件投下/最大離陸重量25kg以上)と、それ以外のカテゴリーⅡB飛行に区分されています。この区分は教則(第5版)3.1.1(2)3)b で定義された教則上の区分であり、航空法の条文や審査要領には現れません。教則は、カテゴリーⅡA飛行について「技能証明を受けた者が機体認証を受けた無人航空機を飛行させる場合であっても、あらかじめ運航管理の方法について国土交通大臣の審査を受け、飛行の許可・承認を受けることにより可能となる」としています。

国土交通省の手続ページも同じ整理で、空港等周辺・150m以上・催し場所上空・危険物輸送・物件投下と総重量25kg以上の飛行は「立入管理措置を講じた上で、無人航空機操縦士の技能証明や機体認証の有無を問わず、個別に許可・承認を受ける必要があります」としています。国家資格の取得をイベント撮影の申請負担を減らす手段として考えている場合、この点は先に押さえておく必要があります。

また、係留による特例も催し場所上空には及びません。解釈通達4(1)は、紐等(長さ30m以内)で係留した飛行で個別の許可・承認が不要になるものとして、DID上空・夜間・目視外・第三者から30m以内・物件投下の5つを挙げていますが、催し場所上空(第132条の86第2項第4号)は含まれていません。係留装置は、後述する審査要領5-6の一部基準を緩和する要素として登場するにとどまります。

包括申請では原則扱えない理由

包括申請は、審査要領2-1(3)で「同一の申請者が一定期間内に反復して飛行を行う場合又は異なる複数の場所で飛行を行う場合」の申請とされています。期間と範囲を広く取ることに価値がある仕組みです。催し場所上空は、この性格と正面から噛み合いません。理由は公式資料の中に4つあります。

理由一次ソースの記載
①日時の特定が必要 審査要領の様式1の注記※3は、日時を特定して記載すべき飛行として「催し場所の上空における飛行」を挙げています。2-2-2(3)も「飛行の日時及び飛行の範囲を可能な限り限定し記載するとともに、地図上に当該範囲を示した資料を添付すること」としています
②経路の特定が必要 同じく注記※4は、経路を特定して記載すべき飛行に「催し場所の上空の飛行」を挙げています。「日本全国」「◯◯県内」のような範囲指定とは両立しません
③場所を特定しない標準マニュアルに入っていない 航空局標準マニュアル02(場所を特定しない申請)の対象は DID・夜間・目視外・30m・危険物・物件投下で、催しが含まれていません。催しが入っているのは標準マニュアル01(場所を特定した申請)だけです
④手続ページが個別申請を明記 「場所に加えて『日時』も特定する必要があります」「包括申請を含む各飛行方法の承認等を既に取得していた場合も、個別に申請手続きが必要です」。「包括申請のご案内」PDFにも【飛行の経路及び日時を特定する必要がある飛行】として掲載されています

加えて、後述する催しの主催者等との調整と立入禁止区画の設定は、催しごとにしか行えません。実務上は、催し1件ごとに、日程と会場が決まってから立てる申請と考えるのが実態に合います。

複数の催しを1件の申請にまとめられるか。 日時と経路をそれぞれ特定したうえで、複数の催しを1件の申請に並べて記載できるかどうかは、公式には明示されていません。審査要領が認める「一括申請」は「一個の飛行について、複数の事項の許可等が必要な場合」の申請であり、別々の催しをまとめる仕組みとして書かれたものではありません。まとめる前提で日程を組まないほうが安全です。包括申請の仕組みそのものは包括申請とは。個別申請との違いと、使い分けの判断基準で整理しています。

審査要領5-6の追加要件

審査要領は、第4章で全申請に共通する基準(機体の機能・性能、操縦者の飛行経歴・知識・能力、安全確保体制)を定め、第5章で飛行の類型ごとの追加基準を定めています。催し場所上空の追加基準である5-6は、機体・操縦者・体制の3方向から要件を積み増しています。

大前提として、5-6(1)は「無人航空機の落下による第三者に対する危害を防止するため、催し場所上空であっても、第三者の上空で無人航空機を飛行させないことを要件」としています。承認は「観客の頭上を飛べる許可証」ではなく、催しの会場の中に、第三者のいない飛行範囲と緩衝帯を作って飛ぶための承認です。

区分5-6(1)の基準実務での意味
a)機体 ア)第三者及び物件に接触した際の危害を軽減する機能を有すること(例:プロペラガード/衝撃を緩和する素材の使用又はカバーの装着/衝突防止センサー(正常に機能し、有効範囲や性能上の限界等の範囲内である場合に限る) 等)
イ)想定される運用により、10回以上の離陸及び着陸を含む3時間以上の飛行実績を有すること
「想定される運用により」とあるため、イベントで行う飛行に近い形での実績が求められると読めます。実績を機体の個体ごとに数えるのか同型機で数えるのかは、公式には明示されていません
b)操縦者 意図した飛行経路を維持しながら無人航空機を飛行させることができること 飛行範囲を外周から区画で囲む設計のため、範囲からはみ出さない操縦が前提になります
c)体制 ア)経路及びその周辺を事前に確認し、適切な飛行経路を特定
イ)飛行経路全体を見渡せる位置に、飛行状況と気象状況の変化等を常に監視できる補助者を配置
ウ)飛行経路の直下及びその周辺に第三者が立ち入らないように注意喚起を行う補助者の配置等
エ)催しの主催者等とあらかじめ調整を行い、立入禁止区画を設定
オ)風速5m/s以上の場合には飛行を行わない
カ)飛行速度と風速の和が7m/s以上となる場合には飛行を行わない
補助者と区画の両方が要ります(次の注記)。風速条件は当日の中止判断の基準になるため、主催者側にも事前に共有しておく必要があります
補助者は省略できない前提で組む。 審査要領の他の節(たとえば5-7危険物の輸送)には「立入管理区画を設定する場合…補助者の配置を省略することができる」という文言がありますが、5-6(1)c)イ)ウ)にはこの省略の文言が置かれていません。国土交通省の申請書記載例も「催し場所上空の飛行の場合は、『補助者の配置』及び『立入禁止区画の設定』の両方の体制が必要となります」と明記しています。航空局標準マニュアル01の3-6も「補助者を必ず配置し」としています。

なお、5-6の柱書には「ただし、無人航空機の機能及び性能、無人航空機を飛行させる者の飛行経歴等、安全を確保するために必要な体制等とあわせて総合的に判断し、…安全が損なわれるおそれがないと認められる場合は、この限りでない」というただし書きがあります。基準どおりでない代替策が認められる余地を残した規定ですが、どのような場合に適用されるかの具体例は公式には示されていません。申請の設計は、基準どおりに満たす前提で行うのが現実的です。

航空局標準マニュアル01を使う場合の上乗せ

飛行マニュアルとして航空局標準マニュアル01を使う場合、その3-6「催し場所の上空における飛行を行う際の体制」に従うことになります。内容は審査要領とほぼ重なりますが、機体については「プロペラガードを装備して飛行させる」と書かれています。審査要領が危害軽減機能の例としてプロペラガード・衝撃緩和素材・衝突防止センサー等を並べているのに対し、標準マニュアル01ではプロペラガードの装備そのものが体制の一部になっています。プロペラガードを付けられない機体を使うなら、標準マニュアル01の記載との整合を確認する必要があります。

また、標準マニュアル01の2-3(4)は「多数の者が集合する場所の上空を飛行することが判明した場合には即時に飛行を中止する(承認を受けて催し場所の上空を飛行する場合を除く)」としていますが、標準マニュアル02の同じ項目にはこの括弧書きがなく、「即時に飛行を中止する」で終わっています。

立入禁止区画。高度と距離の関係

5-6(1)c)エ)の立入禁止区画は、飛行の高度が上がるほど広く取るよう定められています。起点は機体の位置ではなく「飛行範囲の外周」です。

飛行の高度立入禁止区画(審査要領5-6)標準マニュアル01 3-6
20m未満 飛行範囲の外周から30m以内の範囲 同じ
20m以上50m未満 飛行範囲の外周から40m以内の範囲 同じ
50m以上100m未満 飛行範囲の外周から60m以内の範囲 同じ
100m以上150m未満 飛行範囲の外周から70m以内の範囲 同じ
150m以上 飛行範囲の外周から落下距離(当該距離が70m未満の場合は70m)以内の範囲 記載なし(表は150m未満までの4行)

たとえば高度45mで撮影するなら、飛行範囲の外周からさらに40mの帯を立入禁止にする必要があります。飛行範囲が会場の一角に取れても、その外側40mの帯に観客席・通路・売店が掛かれば、そこから人を外すことを主催者側と調整しなければなりません。高度を上げて広い画を撮りたいという撮影側の要望と、区画を狭く抑えたいという主催者側の都合は、この表の上でぶつかります。撮影プランを固める前に、会場図の上で区画を引いてみるのが近道です。

150m以上の行にある「落下距離」について、審査要領は「飛行の高度及び使用する機体に基づき、当該使用する機体が飛行する地点から当該機体が落下する地点までの距離として算定されるもの」と定義しています。なお、150m以上の空域はそれ自体が許可の対象空域です(地上又は水上の物件から30m以内の空域を除く)。

区画の基準が緩和される場合

5-6(1)のただし書きは、a)機体の基準、c)エ)立入禁止区画、オ)風速5m/s、カ)速度と風速の和7m/sについて、次の場合等は「この限りでない」としています。

緩和の条件(審査要領の文言)読み方
機体に飛行範囲を制限するための係留装置を装着している場合 物理的に飛行範囲が制限されるため。係留しても承認そのものは不要になりません(前述の通達4(1))
第三者に対する危害を防止するためのネットを設置している場合 ネットで第三者側を保護する設計。会場の構造に依存します
製造者等が落下距離を保証し、飛行範囲の外周から当該落下距離以内の範囲を立入禁止区画として設定している場合 表の固定距離に代えて、機体ごとの保証された落下距離で区画を引く考え方です

ただし書きの末尾は「等」で結ばれており、列挙以外の方法が認められる余地はありますが、その具体例は公式には示されていません。緩和されるのはa)とc)エ)オ)カ)であり、補助者の配置(c)イ)ウ))や主催者等との調整そのものは緩和の対象に挙がっていない点にも注意してください。立入管理の考え方全般は立入管理措置とは。現場で実際に何をするのかで扱っています。

申請書に書くこと・添付するもの

審査要領2-2-2と様式1、国土交通省の申請書記載例から、催し場所上空の申請で通常の承認申請に上乗せされる記載・添付を順に並べます。

催しの主催者等と事前に調整する。記載例は「催し場所上空における飛行では、申請前に主催者等との調整が必須です」としています。区画の範囲、人の動線、当日の中止基準(風速)をこの段階で詰めます
飛行の日時と範囲を限定して記載し、地図を添付する。2-2-2(3)「飛行の日時及び飛行の範囲を可能な限り限定し記載するとともに、地図上に当該範囲を示した資料を添付すること」
立入禁止区画を示した資料を添付する。2-2-2(3)「5-6(1)c)エ)に従って立入禁止区画を設定した場合には、当該立入禁止区画を示した資料を添付すること」
飛行の理由を具体的に書く。記載例は「イベント名等を含め何を行うものであるのか、具体的に記載願います。例:○○大会競技の空撮を行うため」としています
主催者等との調整結果を記載する。様式1の「催しの主催者等との調整結果(催し場所上空の飛行に限る。)」欄に催し名称/主催者等名/調整結果。標準マニュアル01を使う場合は、主催者等から付された条件も調整結果として記載します
追加基準への適合性を確認する。記載例の別添資料「無人航空機の追加基準への適合性」に「催し場所上空」の項があり、適/否で記載し、「否」の場合は代替的安全対策を記載します
飛行開始予定日の10開庁日前までに、不備等がない状態で提出する
調整結果に何をどこまで書くかの書式は、公式には細かく示されていません。 様式1にあるのは「催し名称/主催者等名/調整結果」の欄だけで、主催者の同意書などの書面の添付が必要かどうかは明示されていません。一方で、立入禁止区画は主催者側が会場運営として実行しなければ成立しないものです。口頭の了解ではなく、区画図と当日の運用(誰が区画の出入りを止めるか、風速超過時に誰が中止を判断するか)を主催者側と文書で共有しておくほうが、申請書の記載も当日の運用もぶれません。なお、記載例は書面申請の様式に基づくもので、DIPS2.0の入力画面との対応はこの記事では確認していません。差戻しになりやすい記載の一般的な傾向はDIPS2.0で差戻しになる原因と、その直し方で扱っています。

審査期間とスケジュールの組み方

審査期間について、催し場所上空に固有の期間は公式には示されていません。適用されるのは一般のルールです。

ルール内容出典
提出期限 飛行開始予定日の10開庁日前まで 審査要領2-1(1)b)
不備のない状態 10開庁日前までに「不備等がない状態の申請書」の提出が必要 申請書記載例
推奨する余裕 不備があった場合は追加確認に時間を要し、飛行予定日までに許可・承認が得られないことも想定されるため、飛行開始予定日から3〜4週間程度の余裕をもって申請 国土交通省 手続ページ
許可等の期間 原則3か月以内、継続的な飛行が明らかな場合は1年を限度。ただし催し場所上空は日時の特定が求められます 審査要領3-3、様式1注記※3

催し場所上空の申請でスケジュールが詰まりやすいのは、審査期間そのものよりその手前です。日時と範囲を特定しなければならないため、開催日程と会場レイアウトが決まるまで申請書が書けません。さらに申請前に主催者等との調整が必須で、区画図は会場図がなければ引けません。逆算すると次の順になります。

受注時:その催しが「多数の者の集合する催し」に当たるか、ほかにDID上空・夜間・目視外・30m未満・150m以上が重なるかを切り分ける
会場図の入手:飛行範囲と高度を仮置きし、高度に応じた立入禁止区画を図上に引く
主催者等との調整:区画の確保、補助者の配置場所、風速による中止基準、当日の連絡体制を合意する
機体の確認:危害軽減機能(標準マニュアル01ならプロペラガード)、10回以上の離着陸を含む3時間以上の飛行実績
申請:飛行開始予定日から3〜4週間程度前を目安に、遅くとも10開庁日前までに不備のない状態で提出
承認後:特定飛行としての飛行計画の通報(立入管理措置の内容も通報事項)、飛行日誌の記載
当日:風速5m/s以上、または速度と風速の和が7m/s以上なら飛ばさない。区画内に人が入ったら直ちに停止
当日、区画に人が入ったら「直ちに」止める義務があります。 航空法第132条の87は、立入管理措置を講じて特定飛行を行う場合に「当該特定飛行中の無人航空機の下に人の立入り又はそのおそれのあることを確認したときは、直ちに当該無人航空機の飛行を停止し、飛行経路の変更、…安全を損なうおそれがない場所への着陸その他の必要な措置を講じなければならない」と定めています。イベント会場は人の動きが読みにくい現場です。補助者から操縦者への停止合図を事前に決め、主催者側のスタッフにも共有しておいてください。飛行計画の通報のタイミングはドローンの飛行計画の通報はいつ必要かで整理しています。

また、マラソンや街頭パレードのように公道で行われる催しでは、航空法とは別に道路に関する手続が論点になり得ます。道路使用許可の要否は航空法の承認とは別の法令の問題で、この記事では扱いません。ドローンに道路使用許可は必要か。警察庁通達は「原則として要しない」と書いているをご覧ください。

よくある質問

何人集まったら「多数の者の集合する催し」になりますか。
人数の数値基準はありません。解釈通達は、集合する者の人数や密度だけでなく、特定の場所や日時に開催されるものかどうか、主催者の意図等も勘案して総合的に判断するとしています。そのうえで、例示に当たらない場合でも「特定の時間、特定の場所に数十人が集合しているとき」は該当する可能性があるとしています。「小規模だから当たらない」と自分で線を引くのは避けたほうが安全です。
学校の運動会を撮影する場合も承認が必要ですか。
解釈通達は「該当する例」として運動会を明示しています。保護者などが観覧する運動会の上空で飛行させるなら、催し場所上空の承認が必要になると考えるべきです。一方、通達は「学校等での人文字の空撮における生徒」を間接関与者の例として挙げています。関与者だけが参加する催しは該当しない例とされていますが、間接関与者に当たるには、飛行目的の共有、計画外の挙動時の指示と安全上の注意、関与するかどうかを自ら決定できることのすべてが必要です(解釈通達 6(1))。
二等の国家資格と第二種認証機体があれば、催し場所上空の申請は不要になりますか。
なりません。航空法第132条の86第3項の括弧書きにより、技能証明+機体認証+立入管理措置の条件が揃っても、第4号(催し)から第6号(危険物輸送・物件投下)によらない飛行は承認が必要です。国土交通省の手続ページも、催し場所上空は「技能証明や機体認証の有無を問わず、個別に許可・承認を受ける必要があります」としています。教則(第5版)上の区分では、催し場所上空はカテゴリーⅡA飛行に当たります。
1年間の包括申請を持っています。イベント撮影はその範囲で飛ばせますか。
飛ばせません。催し場所上空の飛行は場所に加えて日時も特定する必要があり、国土交通省の手続ページは「包括申請を含む各飛行方法の承認等を既に取得していた場合も、個別に申請手続きが必要です」と明記しています。場所を特定しない申請用の標準マニュアル02にも、催しは含まれていません。
承認を取れば、観客席の上を飛ばして撮影できますか。
できません。審査要領5-6(1)は「催し場所上空であっても、第三者の上空で無人航空機を飛行させないことを要件」としています。さらに、飛行の高度に応じて飛行範囲の外周から30m〜70m(150m以上は落下距離、最低70m)の立入禁止区画を、主催者等と調整して設定する必要があります。観客の頭上を飛ぶ飛行は、第三者上空の飛行としてカテゴリーⅢの領域の話になります。
高度30mで撮影する場合、立入禁止区画はどのくらい必要ですか。
審査要領5-6(1)c)エ)の表では、高度20m以上50m未満は飛行範囲の外周から40m以内の範囲です。起点は機体の位置ではなく飛行範囲の外周なので、飛行範囲そのものに加えて、その外側40mの帯から第三者を外す必要があります。係留装置の装着、ネットの設置、製造者等が保証した落下距離による区画設定などの場合は、この表によらないことができるとされています。
係留すれば催し場所上空の承認は不要になりますか。
なりません。解釈通達4(1)が係留により個別の許可・承認が不要になるとしているのは、DID上空・夜間・目視外・第三者から30m以内・物件投下の5つで、催し場所上空は含まれていません。係留装置は、審査要領5-6(1)のただし書きで、機体の基準・立入禁止区画・風速の基準を緩和する要素として登場します。
申請はイベントのどれくらい前に出せばよいですか。
審査要領上の期限は飛行開始予定日の10開庁日前までで、国土交通省は不備による追加確認を見込んで3〜4週間程度の余裕を推奨しています。催し場所上空に固有の審査期間は公式には示されていません。ただし日時・範囲の特定、主催者等との事前調整、立入禁止区画の資料作成が申請の前提になるため、開催日程と会場図が確定した時点から逆算して準備を始める必要があります。
撮影中に、予定していなかったお祭りの行列が近づいてきました。
解釈通達は、許可・承認の有無によらず、飛行予定経路下で想定していない「多数の者の集合する催し」が開催されることが明らかになり、第三者の立入り又はそのおそれを確認したときは、直ちに飛行を停止し、経路の変更や安全な場所への着陸その他の必要な措置を講じなければならないとしています。承認を受けていない催しの上空に入る前に止めてください。
本記事は2026年9月13日時点の情報です。 無人航空機の制度は改正が続いており、解釈通達・審査要領・標準マニュアルは通達として短い手続で改正され得ます。とくに「多数の者の集合する催し」への該当性は総合判断であり、個別の催しについて公式の結論が示されているわけではありません。実際の申請・飛行の前に、必ず上記の一次ソースで最新の内容をご確認ください。

飛行前チェックリスト(無料)

そのイベント撮影がどの特定飛行に当たり、包括で足りるか個別申請が要るかを1枚で判定できるPDFです。

チェックリストを受け取る