DIPS2.0で差戻しになる原因と、その直し方
差戻しの本当のコストは、手直しの手間ではありません。時間です。 審査要領は新規申請の提出期限を飛行開始予定日の10開庁日前までとし、国土交通省はさらに「申請内容に不備があった場合には追加確認に時間を要し、飛行予定日までに許可・承認が得られないことも想定されるため、飛行開始予定日から3〜4週間程度、十分な余裕をもって申請」するよう案内しています。差戻しは、この余裕をそのまま食います。 そして差戻しの多くは、審査官の判断のブレではなく制度の構造上そもそも通らない組み合わせを出していることに起因します。構造上通らないものは、何度出し直しても通りません。 この記事は、審査要領・標準マニュアル・改正の告知から論理的に導ける「通らない/つまずく」組み合わせを体系化し、提出前チェックに落とします。
審査要領(令和8年9月29日最終改正)国土交通省「今後の申請に係る注意事項」まず、差戻しが何を奪うのかを数字で見る
先に時間の構造を確認します。ここを共有しておかないと、後半のチェック項目が「細かい話」に見えてしまいます。
| 基準 | 内容 | 根拠 |
|---|---|---|
| 新規申請の期限 | 飛行開始予定日の10開庁日前まで | 審査要領2-1(1)b |
| 国土交通省の推奨 | 飛行開始予定日から3〜4週間程度、十分な余裕をもって申請 | 飛行許可・承認手続ページ |
| 「10開庁日」の数え方 | 土日・祝日を除く平日で10日。祝日が入ればその分だけ暦の上でさらに前へずれる | 同上(「土日・祝日を除く」と明記) |
| 更新申請の窓 | 期間の満了の日の40開庁日前から10開庁日前まで。前後の両側に締切がある | 審査要領2-1(5) |
国土交通省の案内文は、差戻しの影響を明示しています。「申請内容に不備があった場合には追加確認に時間を要し、飛行予定日までに許可・承認が得られないことも想定されるため、飛行開始予定日から3〜4週間程度、十分な余裕をもって申請を頂きますようお願いします。」
ここから逆算すると、実務上の意味は次のようになります。
- 推奨どおり4週間前に出していれば、10開庁日前の期限まで2週間程度の緩衝がある。1回の差戻しは吸収できる可能性がある
- 10開庁日前ちょうどに出した場合、緩衝はゼロ。差戻しが1回でも入れば、飛行予定日までに許可・承認が得られない可能性が出る
- 更新の場合はさらに厳しい。窓が閉じるのが10開庁日前なので、そこで差し戻されると更新の窓自体が閉じる。窓を逃せば更新ではなく新規申請としてやり直しになる
原因を4つの層に分けて整理する
不整合は、性質の違う4つの層に分けられます。層ごとに直し方が違うので、まず自分の申請がどの層に引っかかっているのかを見極めてください。
| 層 | 内容 | 直し方の性質 |
|---|---|---|
| 層1 範囲・日時 |
範囲を限定すべき飛行なのに範囲が特定されていない/催し場所上空で日時が特定されていない | 申請内容の書き直し。地図資料の追加が必要になる |
| 層2 期間 |
1年で出しているが、制度上1年が認められない組み合わせを含んでいる | 期間の設計変更。年間の申請回数が変わる |
| 層3 マニュアル |
飛行マニュアルの選択が、申請する飛行の種類と適用範囲に合っていない | マニュアルの差し替え、または申請の分割 |
| 層4 改正の影響 |
2025年12月18日改正により、過去の申請から複製・変更・更新ができない | 新規申請へ切り替え。補正では処理できない |
このうち層4は「直せば通る」ものではありません。手続の種類そのものを変える必要があります。順に見ていきます。
層1:飛行の範囲・日時が特定されていない
審査要領は、飛行の経路が特定されない場合の記載について次のように定めています。
ここに挙がった3つは、「日本全国」のままでは出せない飛行です。節番号を見出しに戻すと、次のようになります。
| 節 | 見出し(原文) | 要求 |
|---|---|---|
| 5-1 | 1号告示空域、その他空港等における進入表面等の上空の空域、緊急用務空域、地表若しくは水面から150m以上の高さの空域 | 範囲を可能な限り限定して記載し、地図上に範囲を示した資料を添付 |
| 5-2+5-3 (同時) |
人又は家屋の密集している地域の上空における飛行(DID)+夜間飛行 | |
| 趣味目的 | — | |
| 5-6 | 多数の者の集合する催し場所の上空における飛行 | 飛行の日時および飛行の範囲を可能な限り限定して記載 |
不整合として現れるのは、次の形です。
- 150m以上の飛行を含む申請なのに、飛行の範囲を「日本全国」としている。5-1に該当するため、範囲の限定と地図資料が要る
- 緊急用務空域を申請対象に含めているのに、範囲が特定されていない。5-1に含まれる
- DID上空と夜間を同時に行う内容なのに、範囲が特定されていない。5-2と5-3の同時実施に当たる
- 趣味目的の飛行なのに、範囲が特定されていない。趣味目的は明示的に列挙されている
- 催し場所上空を含む申請で、飛行の日時が特定されていない。5-6は範囲だけでなく日時の限定も求められる
直し方
層1は申請内容の書き直しで対応します。範囲を絞り、地図上に範囲を示した資料を添付します。ここで重要なのは、絞り方の設計を先に決めることです。都道府県単位なのか、市町村単位なのか、具体的な現場の周辺なのか。絞りすぎれば案件のたびに申請が必要になり、緩すぎれば再び限定を求められます。年間の受注エリアを見て、1年間の案件がおおむね収まる最小の範囲を選ぶのが現実的です。
催し場所上空については、そもそも事実上の個別申請と割り切ってください。日時の限定が求められる以上、案件の日程が決まってからでないと申請できません。受注の段階で、開催日から10開庁日前を逆算し、推奨の3〜4週間を足した日を社内の締切として設定します。
層2:期間の設計が制度と噛み合っていない
包括申請の期間について、審査要領は次のように定めています。
末尾の括弧書きが要点です。5-2はDID上空、5-3は夜間飛行、5-4は目視外飛行。この3つを同時に行う飛行を含む申請は、1年上限の対象から除かれます。つまり原則どおり3か月以内での申請になります。
直し方:レーンを分ける
期間の設計は、1年で回るものと3か月で回るものを別の申請に分けるのが素直です。同時実施を含む飛行を1件の申請に混ぜてしまうと、その申請全体が3か月サイクルに引きずられます。
| レーン | 内容 | 期間 | 年間の申請回数 |
|---|---|---|---|
| 年1回レーン | DID単独、夜間単独、目視外単独、またはそのうち2つまでの組み合わせなど | 1年を限度 | 1回 |
| 四半期レーン | DID上空・夜間・目視外を同時に行う飛行を含むもの | 原則3か月以内 | 4回 |
| 都度レーン | 催し場所上空など、範囲と日時の特定が必要なもの | 案件ごと | 案件数による |
層3:飛行マニュアルの選び方が合っていない
飛行マニュアルは、申請する飛行の種類と、場所を特定するかどうかの2軸で決まります。ここが噛み合っていない申請は、内容をいくら丁寧に書いても整合しません。
国土交通省が公開している航空局の標準マニュアルは7種類です。うち汎用の2つは、表紙の副題が次のように異なります。
| 航空局標準マニュアル01 | 航空局標準マニュアル02 | |
|---|---|---|
| 副題(対象の飛行) | 空港等周辺・150m以上・DID・夜間・目視外・30m・催し・危険物・物件投下 | DID・夜間・目視外・30m・危険物・物件投下 |
| 適用 | 場所を特定した申請 | 場所を特定しない申請 |
| 併用 | 01と02の併用はできない | |
この表から、噛み合わない組み合わせが3つ導けます。
| # | 不整合の形 | なぜ噛み合わないか | 直し方 |
|---|---|---|---|
| A | 場所を特定しない申請(全国包括)なのに、標準マニュアル01を選んでいる | 01は場所を特定した申請について適用されるもの | 02に差し替える。ただし02の副題にない飛行は落ちる |
| B | 01と02を併用しようとしている(両方添付する、1件の申請に混ぜる) | 01と02は併用できないとされている | 申請を2件に分ける。全国包括(02)と場所特定(01)は別立てにする |
| C | 空港等周辺・150m以上・催し場所上空を、標準マニュアル02の範囲で申請しようとしている | この3つは02の副題に含まれていない | 場所を特定した申請として、01(または該当する分野別マニュアル、独自マニュアル)で別に申請する |
Cの3つが02から落ちている理由は構造的です。空港等周辺・150m以上・催し場所上空は、いずれも場所そのものが危険の源になる類型で、場所を特定しない申請と相性が悪い。層1で見た審査要領の記述(5-1は範囲の限定、5-6は日時の限定)とも、同じ結論を指しています。2つの資料が別方向から同じ線を引いている以上、この線は交渉の余地がある種類のものではありません。
とくに農業でドローンを使う場合、農薬は危険物の輸送、散布は物件投下に当たるため、この2つが必ず絡みます。空中散布版の副題にはDID・夜間・目視外・30mに加えて危険物・物件投下が入っています。一方、インフラ点検版は催し・危険物・物件投下を含みません。インフラ点検の現場で危険物輸送や物件投下を行うなら、専用版では足りず、標準01/02または独自マニュアルになります。また研究開発版は「場所を特定した飛行に限る」と明記されています。7種類の使い分けは全国包括は取れるか。標準マニュアル02の使い方で整理しています。
層4:2025年12月18日改正の影響を受けている
この層だけは性質が違います。内容を直せば通るものではなく、手続の種類そのものが変わるからです。
2025年12月18日施行の審査要領改正により、申請手続の一部省略を可能としていた「ホームページ掲載無人航空機」および「ホームページ掲載講習団体等が行う技能認証(民間技能認証)」に係る運用が廃止されました。あわせて、安全体制を示す飛行マニュアルとして認められていた「航空局ホームページに掲載されている団体等が定める飛行マニュアル」も廃止されています。
国土交通省は、今後の申請に係る注意事項として次のように案内しています。
「12月18日以前に許可・承認を取得していた申請のうち、ホームページ掲載無人航空機及び技能認証が含まれていた申請については、制度が適用できないため、「複製」「変更申請」「更新申請」等ができなくなります。」
「なお、ホームページ掲載無人航空機及び技能認証を含まない申請は、12月18日以降もそのまま補正申請が可能です。」
「※紙申請は、新たな様式でのご提出をお願いしたく、改正後、一律新規申請をお願いいたします。」
ここから3分岐が導けます。手元の許可・承認がどれに当たるかを、満了日を待たずに確認してください。
| 申請の状態 | 12月18日以降の扱い | 取るべき手続 |
|---|---|---|
| 電子申請で、HP掲載無人航空機・民間技能認証を含む | 複製/変更申請/更新申請ができない | 新規申請 |
| 電子申請で、上記を含まない | そのまま補正・変更・更新が可能 | 通常どおり(補正申請も可) |
| 紙(書面)申請 | 過去の内容にかかわらず一律 | 新たな様式で新規申請 |
実務上の落とし穴は2つあります。
1つ目。複製ができないということは、過去の申請を土台にできないということです。前回の申請を複製して日付だけ変える運用をしてきた場合、その手順自体が使えません。作業量の見積もりが根本から変わるため、「更新だから半日で終わる」という前提でスケジュールを組んでいると破綻します。
2つ目。紙申請は内容に関係なく新規です。「うちは民間資格を使っていないから改正の影響はない」という判断で確認を飛ばすと、申請方法のほうで引っかかります。しかも新たな様式での提出が求められるため、手元にある旧様式のひな形をそのまま使うと、様式の時点で噛み合いません。
申請そのものが要らない/足りないケース
層1〜4とは別に、そもそも申請の要否の判断がずれている場合があります。方向が2つあるので分けて書きます。
A. 申請不要ルートに乗ろうとして、条件が足りていない
カテゴリーⅡの一部は許可・承認が不要になりますが、条件は5つすべてを満たすことです。①飛行がDID上空・夜間・目視外・30m未満のいずれか(空港等周辺・150m以上・催し場所上空・危険物輸送・物件投下は除く)②総重量25kg未満③立入管理措置を講じる④技能証明を受けた者(二等以上)が機体認証を受けた無人航空機(第二種以上)を飛行させる⑤飛行マニュアルの作成等の措置。
③の立入管理措置についても、「区画を決めたつもり」で足りるかは別問題です。解釈通達は落下分散範囲も考慮した区画設定と、看板、コーン等による表示を求めています。現場で何をするかは立入管理措置とは。現場で実際に何をするのかで整理しています。
B. 許可を取れば飛べると思っている空域がある
緊急用務空域です。国土交通省は、緊急用務空域については空港等周辺・150m以上・DID上空の許可があっても飛行できないと明示しています。さらに施行規則第236条の71第4項は「無人航空機を飛行させる者は、その飛行を開始する前に、当該無人航空機を飛行させる空域が緊急用務空域に該当するか否かの別を確認しなければならない」と定めています。
これは申請書の不備ではなく飛行前の手順の欠落です。申請が通っているかどうかとは無関係に、飛行のたびに発生する義務です。
C. 申請先の官署がずれている
申請先は飛行の種類で分かれます。空港等周辺・150m以上・緊急用務空域は空港事務所長(東京空港事務所/関西空港事務所)、DID上空および飛行方法の承認は地方航空局長(東京航空局/大阪航空局)です。飛行場所が日本全国の場合は申請者の住所を管轄する官署になります。
差戻しを減らす提出前チェック
ここまでを提出前の手順に並べます。上から順に潰すと、後戻りが最小になる順序にしてあります。
ステップ1の「念のため入れない」は、地味ですが効果が大きい項目です。飛行の種類を1つ足すたびに、範囲の限定・期間の上限・使えるマニュアルの制約が連鎖します。たとえば「いつか150m以上を飛ぶかもしれない」と考えて5-1を入れると、その瞬間に範囲の限定と地図資料が必要になり、標準マニュアル02も使えなくなります。入れるかどうかは、1年間の受注計画に実在する案件で判断してください。
補正申請と新規申請の切り分け
最後に、差し戻された後の判断です。補正で処理できるものと、新規に切り替えるべきものは、はっきり分かれます。
| 状況 | 取るべき手続 | 根拠・理由 |
|---|---|---|
| 電子申請で、HP掲載無人航空機・民間技能認証を含まない申請の内容不備 | 補正申請 | 国土交通省は「ホームページ掲載無人航空機及び技能認証を含まない申請は、12月18日以降もそのまま補正申請が可能」と案内している |
| 2025年12月18日以降に新規申請したもの | 補正・変更・更新いずれも可能 | 「12月18日以降、新規申請頂いた申請書については、変更申請や更新申請等は可能です」 |
| 2025年12月18日以前の電子申請で、HP掲載無人航空機・民間技能認証を含むもの | 新規申請 | 複製・変更申請・更新申請ができない |
| 紙(書面)申請 | 新たな様式で新規申請 | 「改正後、一律新規申請をお願いいたします」 |
スケジュール上の意味を具体化します。補正で済むなら、審査の時計は止まりますが、手続の種類は変わりません。一方、新規に切り替わるなら、「飛行開始予定日の10開庁日前まで」という期限が、新規申請の提出日を起点に測り直されることになります。更新のつもりで満了日の2か月前に着手し、そこで初めて更新不可と判明した場合、残っているのは「新規申請を10開庁日前までに出す」ルートだけです。2か月あるように見えて、資料作成に使える時間は6週間ほどしかありません。
したがって、差戻しへの最善の備えは提出のタイミングを前に倒すことです。新規なら推奨の3〜4週間前、更新なら窓が開いた直後。この2つを守るだけで、1回分の差戻しを吸収できる緩衝が生まれます。許可と承認の切り分けそのものはドローンの飛行許可・承認申請 完全ガイド、包括申請の全体像は包括申請とは:個別申請との違いと使い分けで扱っています。
よくある質問
- 国土交通省|無人航空機の飛行に関する許可・承認の審査要領(カテゴリーⅡ飛行)令和8年9月29日最終改正(PDF)
- 国土交通省|審査要領の改正に伴う、今後の申請に係る注意事項(PDF)
- 国土交通省|審査要領(カテゴリーⅡ飛行)改正に関する説明会資料 令和7年11月(PDF)
- 国土交通省|無人航空機の飛行許可・承認手続
- 国土交通省|航空局標準マニュアル01(PDF)
- 国土交通省|航空局標準マニュアル02(PDF)
- 国土交通省|標準マニュアル(空中散布)(PDF)
- 国土交通省|標準マニュアル(研究開発)(PDF)
- 国土交通省|標準マニュアル(レベル3.5飛行・機上カメラで立入管理措置)(PDF)
- e-Gov法令検索|航空法(昭和二十七年法律第二百三十一号)
- e-Gov法令検索|航空法施行規則(昭和二十七年運輸省令第五十六号)
- 国土交通省|無人航空機に係る規制の運用における解釈について(解釈通達・PDF)
- 国土交通省|無人航空機の飛行の安全に関する教則 第5版(PDF)
- 国土交通省|ドローン情報基盤システム2.0(DIPS2.0)