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空撮映像を納品するときの権利処理。プライバシー・肖像権・著作権

公開 2026-10-14 更新 2026-10-14 読了 約18分

許可・承認を取り、無事に飛ばし終えて、素材が手元にある。ここから先は航空法の話ではありません。映像に何が写っているか(プライバシー・肖像権・個人情報)と、その映像の権利が誰にあるか(著作権)という、まったく別の2本立てになります。 国の資料としてまとまっているのは、総務省の「『ドローン』による撮影映像等のインターネット上での取扱いに係るガイドライン」です。ただしこれは義務を課す文書ではなく、取組を例示して法的リスクの予見可能性を高めるための文書で、ガイドライン自身が「一定の法的リスクが残ることは避けられない」と書いています。 著作権のほうは条文が細かく、「発注者が費用を出したから発注者のもの」にはならない構造です。この記事は、ガイドラインの原文と、e-Gov の現行条文、個人情報保護委員会の公表資料、裁判所公式サイトの判決原文にあたって、どこまでが条文・ガイドラインに書かれていることで、どこからが個別判断なのかを切り分けます。個別の事案の可否は扱いません。

よく見る説明と、公式の記載
空撮映像の権利処理は「ガイドラインを守る」「著作権は発注者に渡す」という短い説明で流されがちな領域です。この記事で扱う範囲について、一次ソースの記載と突き合わせます。
よく見る説明総務省のガイドラインに沿って処理していれば、プライバシーや肖像権の問題は起きない。
公式にはこうガイドラインは3章の柱書で「以下のような事項に注意することが望ましい」とし、「最終的には事例ごとの判断となるため、…一定の法的リスクが残ることは避けられない」「以下の注意事項は、あくまでプライバシー侵害等とならないための取組の目安を示すものである」と書いています。
出典 総務省ガイドライン 3章 柱書(p.9)
よく見る説明肖像権は法律で定められた権利なので、条文を見れば要件がわかる。
公式にはこうガイドラインは肖像権について条文を挙げず、脚注で最高裁判決を引いて説明しています。その判決は「人は、みだりに自己の容ぼう等を撮影されないということについて法律上保護されるべき人格的利益を有する」とし、違法かどうかは6つの事情を総合考慮して受忍限度を超えるかで決すべきとしています。
出典 同2章3(p.6)/最高裁平成17年11月10日第一小法廷判決
よく見る説明発注を受けて撮った映像なのだから、著作権は発注者に生じる。
公式にはこう著作権法は「著作者」を著作物を創作する者と定め(第2条第1項第2号)、法人が著作者になるのは第15条の要件を満たす場合、映画製作者に著作権が帰属するのは第29条第1項の要件を満たす場合に限っています。費用を出したことは、条文上の要件になっていません。
出典 著作権法第2条第1項第2号・第15条・第16条・第29条第1項

この記事で扱う3つの軸と、根拠になる資料

飛ばす前の許可・承認と、撮った後の権利処理は、根拠になる資料がまったく違います。飛行の側は空撮・映像制作でドローンを使うのに必要な許可・承認と、撮影前の確認で扱いました。この記事は、その続きにあたる撮った映像の扱いだけを見ます。

軸問題になること根拠になる資料性質
プライバシー 住宅の内部・生活状況、住居の外観、洗濯物などが写り込む 総務省ガイドライン/民法第709条 ガイドラインは取組の例示。侵害の有無は比較衡量による個別判断
肖像権 通行人・見物人の容貌が写り込む、映像を公開する 総務省ガイドライン(最高裁判決を引用)/民法第709条 「肖像権」という名称の権利を定めた条文は見当たらない。判例の枠組みで整理されている
個人情報 撮影者が個人情報取扱事業者である場合の映像の取扱い 個人情報保護法/個人情報保護委員会のQ&A 条文上の義務。ただし義務の中身は「個人情報」か「個人データ」かで変わる
著作権 納品した映像の権利が撮影者と発注者のどちらにあるか、二次利用できるか 著作権法 条文上の帰属ルールと、契約で動かせる範囲が決まっている
撮影者が「個人情報取扱事業者」かどうかで、個人情報保護法の適用が変わります。 同法第16条第2項は「個人情報取扱事業者」を個人情報データベース等を事業の用に供している者と定義しています。総務省ガイドラインも「同法の対象となる個人情報取扱事業者とは、個人情報データベース等を事業活動に利用する事業者であり、一般私人が趣味で撮影するケース等は同法の対象とならない」と書いています。以下、個人情報の節は事業として撮影する場合を前提にしています。

総務省ガイドラインの位置づけ。義務なのか配慮なのか

この分野で最初に参照されるのが、総務省の「『ドローン』による撮影映像等のインターネット上での取扱いに係るガイドライン」(平成27年9月、平成29年5月最終改定、全11ページ)です。まず、この文書が何をする文書なのかを1章の原文で確認します。

「本ガイドラインは、ドローンを利用して撮影した者が被撮影者に対してプライバシー侵害等として損害賠償責任を負うことになる蓋然性を低くするための取組を例示することにより、法的リスクの予見可能性を高めるとともに、ドローンによる撮影行為と個人情報保護法の関係について整理するものである。」
「本ガイドラインは、現時点における考え方を示したものであり、ドローンの利用方法等の発展に伴い、利用者が注意すべき事項も変化していくことが考えられることから、それらの動向を注視していく必要がある。」

つまり、ガイドラインの3章に並ぶ項目は行政処分や罰則の根拠になる義務ではなく、民事の損害賠償責任を負う可能性を下げるための取組の例示です。3章の柱書はこの点をはっきり書いています。

「ドローンにより映像等を撮影し、インターネット上で公開を行う者は、撮影の際には被撮影者の同意を得ることを前提としつつ、同意を得ることが困難な場合には、以下のような事項に注意することが望ましい。」
「ただし、プライバシー侵害等に当たるかどうかは、映像等の内容や写り方に左右される面が大きく、最終的には事例ごとの判断となるため、ドローンにより映像等を撮影し、インターネットで公開を行う者に一定の法的リスクが残ることは避けられない。」
「したがって、以下の注意事項は、あくまでプライバシー侵害等とならないための取組の目安を示すものである。」

一方で、2章はもう少し踏み込んだ書き方をしています。ドローンの特性について、次のように書いています。

「住居の塀よりも高い上空を飛行するのが一般的で、通常は塀によって人の視界に入らない映像等を撮影可能であることからすると、撮影・インターネット上での公開は、プライバシー侵害の危険性は高いと考えられる。例えば、公道から撮影した道路周辺の画像を編集し、インターネット上で閲覧可能となるよう公開するサービスと比較すると、プライバシー侵害の危険性は一段大きいものと言わざるを得ない。」
「したがって、①住宅地にカメラを向けないようにするなど撮影態様に配慮する、②人の顔や車両のナンバープレート、住居内の生活状況を推測できるような私物にぼかし処理等を施すなど、プライバシー保護の措置をとらなければプライバシー侵害となるおそれがあると考えられる。」

「措置をとらなければ侵害となるおそれがある」という言い方は、3章の「望ましい」より強い書き方です。ただしこれも違法性を断定するものではなく、同じ段落の末尾には「なお、具体的なプライバシー侵害の有無と程度は、個々の写真の内容や写り方によって異なるため一概にはいえない」と書かれています。

さらに3章の柱書は、撮影の目的によってリスクの大きさが変わるという整理も示しています。「例えば、趣味で撮影を行うケースや興味本位で映像等を収集するケースなどドローンによる撮影自体に公益的な目的が認められない場合は、プライバシー侵害等となるリスクが大きくなるものと考えられる。また、個人のプライバシーに係る情報の収集を目的として撮影することは違法性が高いと考えられる」。2章1の「①撮影の必要性(目的)」という判断要素が、ここで具体化されています。

プライバシー:ガイドラインが挙げる具体的な注意事項

3章の項目を、原文の区分どおりに並べます。3つ目は撮影者向けではありませんという点が、実務では重要です。

3章の項目誰に向けた項目か原文の内容
1 住宅地にカメラを向けないようにするなど撮影態様に配慮すること 撮影・公開を行う者 ①住宅近辺では「カメラの角度を住宅に向けない、又はズーム機能を住宅に向けて使用しないなどの配慮をすることにより、写り込みが生じないような措置をとること」②「特に、高層マンション等の場合は、カメラの角度を水平にすることによって住居内の全貌が撮影できることとなることから、高層マンション等に水平にカメラを向けないようにすること」③「ライブストリーミングによるリアルタイム動画配信サービスを利用した場合、撮影映像等にぼかしを入れるなどの配慮が困難であるため、住宅地周辺を撮影するときには、同サービスを利用して、撮影映像等を配信しないこと」
2 プライバシー侵害の可能性がある撮影映像等にぼかしを入れるなどの配慮をすること 撮影・公開を行う者 「仮に、人の顔やナンバープレート、表札、住居の外観、住居内の住人の様子、洗濯物その他生活状況を推測できるような私物が撮影映像等に写り込んでしまった場合には、プライバシー侵害となる可能性があるため、これらについては削除、撮影映像等にぼかしを入れるなどの配慮をすること」
3 削除依頼への対応を適切に行うこと 撮影映像等をインターネット上で公開するサービスを提供する電気通信事業者 ①「送信防止措置の依頼に対し、迅速かつ容易に削除依頼ができる手続を整備すること」(インターネットを利用しない者でも利用可能なよう、担当者・担当窓口の明確化、必要に応じて電話対応も)②具体的な送信防止措置の依頼があった場合は、プロバイダ責任制限法の規定を踏まえて判断・対応し、民間の事業者団体等が作成した「プロバイダ責任制限法名誉毀損・プライバシー関係ガイドライン」を参考にすること
「削除依頼が来たらぼかしを入れて再公開する」という手順は、ガイドラインの3章3には書かれていません。 3章3は表題からして「撮影映像等をインターネット上で公開するサービスを提供する電気通信事業者においては、削除依頼への対応を適切に行うこと」であり、求められているのは削除依頼を受け付ける手続の整備と、プロバイダ責任制限法を踏まえた判断です。撮影者・納品者が削除依頼にどう応じるべきかは、この項目には書かれていません。撮影者側の取組として書かれているのは3章1(撮影態様の配慮)と3章2(写り込んだ場合の削除・ぼかし)です。

なお、ガイドラインが参考にすべきとして引いているプロバイダ側のガイドラインには、削除の判断について次の整理が紹介されています。①一般私人から、被撮影者が識別可能な撮影映像等の削除の申出があり、内容や掲載の状況から見て本人の同意を得て撮影されたものではないことが明白なものについては、原則として送信防止措置を行っても損害賠償責任は生じない。ただし、ア)行楽地等の雰囲気を表現するために群像として撮影された写真の一部に写っているにすぎず、特定の本人を大写しにしたものでないこと イ)犯罪報道における被疑者の写真など、公共の利害に関し公益を図る目的で掲載されていることの場合など、放置が直ちに侵害に該当しないと考えられる場合もあり得る。②明らかに未成年の子どもと認められる顔写真については、合理的に親権者が同意すると判断できる場合を除き、原則として削除することができる。

ガイドラインが挙げる法的リスクの整理も、原文どおり並べておきます。民事は民法第709条(不法行為に基づく損害賠償)。刑事は「浴場、更衣場、便所など人が通常衣服をつけないでいるような場所」を撮影した場合の軽犯罪法第1条第23号や各都道府県の迷惑防止条例。行政は個人情報取扱事業者による無断撮影が「偽りその他不正の手段」による取得として個人情報保護法違反となるおそれ、という3本立てです。

刑事の列挙は平成29年時点のものです。 その後、「性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律」(令和5年法律第67号)が制定されています。同法第2条(性的姿態等撮影)は3年以下の拘禁刑又は300万円以下の罰金、第3条第2項(不特定又は多数の者への提供・公然陳列)は5年以下の拘禁刑若しくは500万円以下の罰金又は併科を定めています。ドローンでの撮影にこの条文が適用された事例は確認していませんが、ガイドラインの列挙に載っていない条文がある点は押さえておく価値があります。

肖像権:条文はなく、最高裁判決で説明されている

ガイドラインの2章3は肖像権を次のように説明します。「肖像権については、人は、その承諾なしに、みだりに自己の容貌や姿態を撮影・公開されない人格的な権利を有するとされている。撮影・公開の目的・必要性、その態様等を考慮して、受忍限度を超えるような撮影・公開は、肖像権を侵害するものとして違法となる」。

ここで注目したいのは、根拠として挙げられているのが脚注の最高裁判決だけで、条文がひとつも示されていないことです。実際、e-Gov の現行条文で民法や著作権法を見ても、「肖像権」という名称の権利を定めた条文は見当たりません。民事の受け皿になるのは、民法第709条の「他人の権利又は法律上保護される利益」という文言です。

ガイドラインが引いている判決は、最高裁平成17年11月10日第一小法廷判決(平成15年(受)第281号)です。裁判所公式サイトの判決PDFで原文を確認すると、判示は次のとおりです。

「人は、みだりに自己の容ぼう等を撮影されないということについて法律上保護されるべき人格的利益を有する。もっとも、人の容ぼう等の撮影が正当な取材行為等として許されるべき場合もあるのであって、ある者の容ぼう等をその承諾なく撮影することが不法行為法上違法となるかどうかは、被撮影者の社会的地位、撮影された被撮影者の活動内容、撮影の場所、撮影の目的、撮影の態様、撮影の必要性等を総合考慮して、被撮影者の上記人格的利益の侵害が社会生活上受忍の限度を超えるものといえるかどうかを判断して決すべきである。」
「また、人は、自己の容ぼう等を撮影された写真をみだりに公表されない人格的利益も有すると解するのが相当であり、人の容ぼう等の撮影が違法と評価される場合には、その容ぼう等が撮影された写真を公表する行為は、被撮影者の上記人格的利益を侵害するものとして、違法性を有するものというべきである。」

この2段落から読めるのは、次の構造です。

  • 撮影の段階と公表の段階が分かれている。撮影が違法と評価される場合は、その写真を公表する行為も違法性を有する、という順序で組まれています
  • 判断は6つの事情の総合考慮(社会的地位・活動内容・場所・目的・態様・必要性)で、閾値は「社会生活上受忍の限度を超えるか」です。数値や類型で切れる基準は示されていません
  • 撮影が正当な取材行為等として許される場合もあることが、判示のなかに明示されています

ガイドラインは、この枠組みを空撮に当てはめた場合の「複数の裁判例」の傾向を、次のように紹介しています。

ガイドラインの記載原文
公共の場での撮影 「公共の場において普通の服装・態度でいる人間の姿を撮影・公開することは受忍限度内として肖像権侵害が否定されることが多い」「肖像権侵害を肯定した事例においては、特定の個人に焦点を当ててその容貌を大写ししていること等の事情が重視されており、公共の場の情景を流して撮影したにすぎないような場合には肖像権侵害は否定されるという方向性が示唆されている」
機械的に写り込んだ場合 「ごく普通の服装で公共の場にいる人の姿を撮影したものであって、かつ、容貌が判別できないようにぼかしを入れたり解像度を落として公開したりしている限り、社会的な受忍限度内として肖像権の侵害は否定されると考えられる」
公共の場でない場所 「しかしながら、公共の場でない場所における撮影はこの限りではない。」(住居の塀の外側から背伸びをした姿勢で居宅の一室内の姿態を写した事例が、受忍限度を超えていると解されている旨を紹介)
撮影は許され、公開は侵害になり得る例 「ドローンで産業廃棄物の違法投棄を行う者を追跡し、顔写真やナンバープレートの撮影に成功した場合など、撮影そのものは公益目的で許されるが、映像等の公開は肖像権侵害に当たるとされる可能性があるケースもあると考えられる」
どこまでぼかせば足りるかの基準は、公式には示されていません。 ガイドラインの表現は「容貌が判別できないようにぼかしを入れたり解像度を落として公開したりしている限り」までで、解像度やモザイクの粗さについての数値はありません。また、風俗店等に出入りする姿や他人の住居内の生活状況を推測できる画像については、ガイドライン自身が「プライバシーと同様に最終的には事例ごとの個別判断とならざるを得ない」と書いています。本記事では、条文とガイドライン・判決の記載を示すにとどめます。

なお、この判決は「肖像権」という語を判示の枠組みの語としては使わず、「法律上保護されるべき人格的利益」と書いています。「肖像権」は、その人格的利益を指す通称として使われている語だと理解しておくと、条文が見つからない理由も説明がつきます。

個人情報保護法:映像が「個人情報」か「個人データ」か

ここだけは条文上の義務です。ただし、義務の中身は映像が「個人情報」にとどまるのか「個人データ」に当たるのかで変わります。まず定義を条文で確認します。

用語条文定義
個人情報 第2条第1項 生存する個人に関する情報であって、含まれる記述等により特定の個人を識別することができるもの(他の情報と容易に照合でき、それにより識別できることとなるものを含む)、又は個人識別符号が含まれるもの
個人情報データベース等 第16条第1項 個人情報を含む情報の集合物であって、特定の個人情報を電子計算機を用いて検索することができるように体系的に構成したもの等
個人情報取扱事業者 第16条第2項 個人情報データベース等を事業の用に供している者(国の機関・地方公共団体・独立行政法人等・地方独立行政法人を除く)
個人データ 第16条第3項 個人情報データベース等を構成する個人情報

総務省ガイドラインの「(参考)個人情報保護法との関係について」は、ドローンの撮影映像について次のように整理しています。①表札の氏名が判読可能な状態で写っていたり、個人の容貌につき個人識別性のある情報が含まれる場合、②これらの映像にぼかしを入れるなどの加工をしても、加工前の映像も保存している場合には、当該情報は「個人情報」に該当し、それがデータベース化されている場合には「個人情報データベース等」に該当する、と。

では、撮り下ろしの空撮素材はデータベース化されているのか。この点について、個人情報保護委員会が「カメラに関するQ&A」で示している整理が参考になります。

A1−41「特定の個人を識別することができる映像情報であれば、個人情報に該当しますが、特定の個人情報を検索することができるように『体系的に構成』されたものでない限り、個人情報データベース等には該当しないと解されます。すなわち、記録した日時について検索することは可能であっても、特定の個人に係る映像情報について検索することができない場合には、個人情報データベース等には該当しないと解されます。」

この区別が効くのは、条文が「個人情報」を対象にしているか「個人データ」を対象にしているかが分かれているからです。

条文内容対象
第17条第1項利用目的をできる限り特定しなければならない個人情報
第18条第1項あらかじめ本人の同意を得ないで、特定された利用目的の達成に必要な範囲を超えて取り扱ってはならない個人情報
第20条第1項偽りその他不正の手段により個人情報を取得してはならない個人情報
第21条第1項取得した場合は、あらかじめ利用目的を公表している場合を除き、速やかに利用目的を本人に通知し、又は公表しなければならない個人情報
第21条第4項第4号「取得の状況からみて利用目的が明らかであると認められる場合」は第1項〜第3項を適用しない—
第23条漏えい・滅失・毀損の防止その他の安全管理のために必要かつ適切な措置を講じなければならない個人データ
第27条第1項あらかじめ本人の同意を得ないで第三者に提供してはならない個人データ

つまり、映像が個人情報に当たるなら利用目的の特定(第17条)・目的外利用の禁止(第18条)・適正な取得(第20条)・利用目的の通知等(第21条)は問題になります。一方、安全管理措置(第23条)と第三者提供の制限(第27条)は「個人データ」を対象にした条文なので、映像が個人データに当たらないのであれば同条の適用場面ではない、と読めます。納品という行為が第三者提供に当たるかを考えるときは、まずこの前段が来ます。個々の案件でどちらに当たるかは個別判断で、公式に当てはめた例は確認できていません。

個人情報保護委員会のQ&Aが示している実務上の要点も、あわせて挙げます。

  • 利用目的の通知・公表:A1−13は、カメラの設置状況等から利用目的が防犯目的であることが明らかな場合は第21条第4項第4号に当たり通知・公表は不要と考えられる、としています。ドローンの撮影がこれに当たるかは書かれていません
  • 取得されていることを認識可能にする措置:同A1−13は、カメラにより自らの個人情報が取得されていることを本人において容易に認識可能といえない場合には、容易に認識可能とするための措置を講じなければならない(第20条第1項)とし、掲示等を例に挙げています
  • 保存期間:A5−4は、法第22条に基づき利用の必要性を考慮して保存期間を設定し、利用する必要がなくなったときは遅滞なく消去するよう努めなければならないとしています
  • 安全管理措置の中身:A10−8は、①組織的(取り扱う従業者の限定・責任者・規程の整備)②人的(研修)③物理的(電子媒体等の盗難・紛失防止)④技術的(アクセス制御・漏えい防止策・アクセスログの取得分析)⑤外的環境の把握(外国で個人データを取り扱う場合は当該外国の制度の把握)を例示しています
  • 要配慮個人情報:A1−31は、単に防犯カメラの映像等で犯罪行為が疑われる映像が映ったのみでは要配慮個人情報に該当しないとしています
個人情報保護委員会のカメラ関係の公表資料には、「ドローン」「無人航空機」の語が出てきません。 「カメラに関するQ&A」(全7ページ)と「カメラと個人情報保護法(民間事業者向け)」(全16ページ)を全文で確認しましたが、いずれもドローンや無人航空機に言及していません。対象は防犯カメラと顔識別機能付きカメラシステムです。ドローンの撮影に当てはめる場合、これらは「カメラ画像一般についての考え方」として読むことになり、ドローン固有の論点(上空からの撮影、広い範囲が一度に写る、飛行中に対象が固定されない等)についての公式の当てはめは確認できていません。ドローンに即した整理をしているのは、いまのところ総務省ガイドラインだけです。

著作権:空撮映像の著作者は誰になるのか

ここから軸が変わります。著作権は写っているものではなく撮ったもの自体の権利です。順に条文で確認します。

そもそも著作物に当たるか

第2条第1項第1号は「著作物」を「思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」と定義します。第10条第1項は著作物の例示として第7号に映画の著作物、第8号に写真の著作物を挙げています。

動画については、第2条第3項が「この法律にいう『映画の著作物』には、映画の効果に類似する視覚的又は視聴覚的効果を生じさせる方法で表現され、かつ、物に固定されている著作物を含む」としています。この文言からは、記録メディアに固定された空撮動画も「映画の著作物」に当たり得ると読めます。どの素材がそれに当たるかを示した公式の判断は確認していないため、ここでは「当たり得る」までにとどめます。

著作者は誰か

第2条第1項第2号は「著作者」を「著作物を創作する者」と定めます。費用を出した者、機体を所有する者、発注した者という要素は、この定義に入っていません。そして第17条第1項により、著作者は著作者人格権(公表権・氏名表示権・同一性保持権)と著作権(第21条〜第28条)を享有し、第2項によりその享有にいかなる方式の履行も要しません。登録も表示も要らず、創作した時点で発生します。

ここに3つの例外的な仕組みが重なります。

条文要件(原文)効果
第15条第1項
職務著作
①法人その他使用者の発意に基づき ②その法人等の業務に従事する者が ③職務上作成する著作物で ④その法人等が自己の著作の名義の下に公表するもの。ただし作成の時における契約・勤務規則その他に別段の定めがない限り 著作者がその法人等になる(=著作者人格権も法人に生じる)
第16条
映画の著作物の著作者
映画の著作物において翻案・複製された小説・脚本・音楽等の著作者を除き、制作、監督、演出、撮影、美術等を担当してその映画の著作物の全体的形成に創作的に寄与した者。ただし第15条の適用がある場合はこの限りでない 関与者のうち全体的形成に創作的に寄与した者が著作者になる
第29条第1項
映画の著作物の著作権の帰属
映画の著作物(第15条第1項等の適用を受けるものを除く)について、その著作者が映画製作者に対し当該映画の著作物の製作に参加することを約束しているとき。「映画製作者」は映画の著作物の製作に発意と責任を有する者(第2条第1項第10号) 著作権が映画製作者に帰属する(著作者人格権は移らない)
第15条は「業務に従事する者」と書いています。 社内のスタッフが職務として撮った素材と、業務委託で入った個人のパイロット・カメラオペレーターが撮った素材は、この要件の当てはめが同じとは限りません。条文は「法人その他使用者」「その法人等の業務に従事する者」と書くだけで、請負・業務委託の場合の当てはめを条文自体は定めていません。本記事では要件を示すにとどめます。第29条第1項も同じで、「製作に参加することを約束している」といえるかは、条文の文言をそれぞれの体制に当てはめる作業になります。

整理すると、条文が自動的に発注者へ著作権を移す仕組みは、第15条(職務著作)と第29条第1項(映画製作者への帰属)の2つだけです。それ以外の場合は、著作者に著作権が生じたうえで、契約で移すか利用を許諾するかという話になります。

契約で著作権を移すときに条文が要求していること

第61条第2項:第27条と第28条は「特掲」が要る

第61条第1項は「著作権は、その全部又は一部を譲渡することができる」と定めます。問題は第2項です。

「著作権を譲渡する契約において、第二十七条又は第二十八条に規定する権利が譲渡の目的として特掲されていないときは、これらの権利は、譲渡した者に留保されたものと推定する。」

第27条は翻訳権・翻案権等(「その著作物を翻訳し、編曲し、若しくは変形し、又は脚色し、映画化し、その他翻案する権利」)、第28条は二次的著作物の利用に関する原著作者の権利です。空撮素材の実務に引き直すと、再編集して別の尺にする、色を作り替える、他の映像と組み合わせて新しい作品にするといった行為が第27条の圏内に入り得ます。

条文の形は「ただし書」ではなく推定規定です。「著作権のすべてを譲渡する」と書いただけでは、第27条・第28条の権利は譲渡した者に留保されたものと推定されることになります。この2条を名指しで挙げているかどうかが、条文が見ている分かれ目です。

第59条:著作者人格権は譲渡できない

第59条は「著作者人格権は、著作者の一身に専属し、譲渡することができない」と定めます。したがって、著作権を全部譲渡しても、次の3つは著作者に残ります。

権利条文内容と、条文に置かれた例外
公表権 第18条第1項 まだ公表されていない著作物を公衆に提供・提示する権利。第2項第1号により、未公表の著作物の著作権を譲渡した場合は、その著作権の行使により公衆に提供・提示することに同意したものと推定される。第2項第3号により、第29条で映画の著作物の著作権が映画製作者に帰属した場合も同様に推定される
氏名表示権 第19条第1項 著作者名を表示する/表示しないこととする権利。第3項により、「著作物の利用の目的及び態様に照らし著作者が創作者であることを主張する利益を害するおそれがないと認められるときは、公正な慣行に反しない限り、省略することができる」
同一性保持権 第20条第1項 「著作物及びその題号の同一性を保持する権利を有し、その意に反してこれらの変更、切除その他の改変を受けないものとする」。第2項第4号により、「著作物の性質並びにその利用の目的及び態様に照らしやむを得ないと認められる改変」には適用されない

納品後に発注者側で編集する、クレジットを入れる/入れないを決める、といった工程は、この3つと接する場面です。条文は「やむを得ないと認められる改変」「公正な慣行に反しない限り」という評価的な文言で例外を置いているだけで、どこまでの編集がこれに当たるかを条文自体は示していません。

譲渡ではなく許諾にする場合

第63条第1項は「著作権者は、他人に対し、その著作物の利用を許諾することができる」とし、第2項は「前項の許諾を得た者は、その許諾に係る利用方法及び条件の範囲内において、その許諾に係る著作物を利用することができる」と定めます。第3項により、この利用権は著作権者の承諾を得ない限り譲渡することができません。「使用範囲を決めて許諾する」形にする場合、範囲の書き方がそのまま条文上の効力の範囲になります。

共同で撮った場合

第2条第1項第12号は「共同著作物」を「二人以上の者が共同して創作した著作物であつて、その各人の寄与を分離して個別的に利用することができないもの」と定義します。共有著作権については第65条第2項が「その共有者全員の合意によらなければ、行使することができない」としています(第3項により、各共有者は正当な理由がない限り合意の成立を妨げることができません)。操縦者とカメラオペレーターを分けた体制で撮る場合に、この条文が視野に入ります。

建築物・美術品が写り込む場合(第46条)

空撮では、建築物や屋外の彫刻・モニュメントが必ず入ります。これらが著作物であっても、第46条が広い利用を認めています。条文を正確に読みます。

第46条(公開の美術の著作物等の利用)
「美術の著作物でその原作品が前条第二項に規定する屋外の場所に恒常的に設置されているもの又は建築の著作物は、次に掲げる場合を除き、いずれの方法によるかを問わず、利用することができる。
一 彫刻を増製し、又はその増製物の譲渡により公衆に提供する場合
二 建築の著作物を建築により複製し、又はその複製物の譲渡により公衆に提供する場合
三 前条第二項に規定する屋外の場所に恒常的に設置するために複製する場合
四 専ら美術の著作物の複製物の販売を目的として複製し、又はその複製物を販売する場合」

「前条第二項に規定する屋外の場所」は第45条第2項の文言で、「街路、公園その他一般公衆に開放されている屋外の場所又は建造物の外壁その他一般公衆の見やすい屋外の場所」です。条文から読めるのは次の構造です。

  • 建築の著作物は、屋外に恒常的に設置されているかを問わず対象に入っています(条文が「又は建築の著作物」と並列で書いている)
  • 美術の著作物は、原作品が第45条第2項の屋外の場所に恒常的に設置されているものに限られます。屋内の展示物や、期間限定で置かれているものは、この条文の対象の書き方から外れます
  • 除外される4つの場合のうち、映像制作に関係しやすいのは第4号です。条文は「専ら美術の著作物の複製物の販売を目的として複製し、又はその複製物を販売する場合」と書いています
  • 第48条第1項第3号により、第46条で利用する場合は、出所を明示する慣行があるときは「その複製又は利用の態様に応じ合理的と認められる方法及び程度により」出所を明示しなければなりません
第46条は著作権法の話に限られます。 施設の管理者が、敷地の利用や撮影について別に条件を付けていることは珍しくありません。離着陸地点や機材を置く場所の承諾、公園・河川等の管理者の取扱いは航空法・著作権法とは別の論点で、私有地の上空、所有権はどこまで及ぶのかと1本目の記事で扱っています。

ガイドラインの条番号は現行法と一致しない

総務省ガイドラインは平成29年5月が最終改定で、2026年9月27日時点でもより新しい版は確認できません。引用されている条番号は、その後の改正で動いています。ガイドラインを読むときは、条番号を現行条文で置き換えてください。e-Gov の現行条文と突合した結果です。

ガイドラインの記載現行(2026年9月27日時点)
個人情報保護法 第15条(利用目的の特定)第17条
同 第16条(利用目的による制限)第18条
同 第17条第1項(不正の手段による取得の禁止)第20条第1項(適正な取得)
同 第18条(取得に際しての利用目的の通知等)第21条
同 第20条(安全管理措置)第23条
同 第23条(第三者提供の制限)第27条
航空法 第132条、第132条の2(脚注14)第132条の85(飛行禁止空域)・第132条の86(飛行の方法)
小型無人機等飛行禁止法「第8条第1項」(脚注15)第10条第1項。題名も現行は「重要施設の周辺地域の上空における小型無人機等の飛行の禁止に関する法律」(詳しくはこちら)
所管(個人情報保護法)現在は個人情報保護委員会

なお、ガイドライン脚注17の道路交通法についての記載は、現在も内容が生きています。「道路に人が集まり一般交通に著しい影響を及ぼすようなロケーション等を行おうとする場合は、ドローンを利用するか否かにかかわらず、道路交通法第77条第1項の規定に基づき…警察署長の許可を受けなければならないが、これに当たらない形態で、単にドローンを利用して道路上空から撮影を行おうとする場合には、当該許可を要しない」。警察庁通達との関係はドローンに道路使用許可は必要かで扱っています。

納品物に許可書の写しや飛行記録を添えるか

発注者から「許可書の写しと飛行記録をください」と言われることがあります。この点について、公式の資料が何を求めているかを確認しておきます。

書類公式に求められていること発注者への提出
許可書・承認書 審査要領4−3−1(18)は「許可書又は承認書の原本又は写しを携行」することを求めています。これは飛行を行う者に対する携行の求めです 発注者への提出を求める規定は見当たりません
飛行日誌(飛行記録・日常点検記録・点検整備記録) 航空法第132条の89第1項は特定飛行を行う者に備付けを、第2項は遅滞ない記載を義務付けています(ドローンの飛行日誌の書き方) 発注者・第三者への提出を求める規定は見当たりません
飛行計画の通報 特定飛行を行う場合はあらかじめDIPSで通報(法第132条の88第1項。飛行計画の通報はいつ必要か) 通報先は国です。発注者への報告義務の規定は見当たりません
保険の加入状況 飛行計画の通報事項に保険契約の有無及び内容が含まれます。教則は総重量25kg以上の機体やレベル3.5飛行では第三者賠償責任保険への加入が求められるとしています 発注者への提示義務の規定は見当たりません
つまり、これらは公式の義務ではなく、契約の内容として決まるものです。 発注者が求める理由は、自社が現場を使わせた・企画したことについての確認であることが多く、条文上の義務があるからではありません。航空法・施行規則・審査要領・飛行日誌の取扱要領を確認した範囲では、発注者に許可書の写しや飛行記録を提出することを求める規定は見当たりませんでした。網羅的に確認したとは言えないため、「存在しない」とまでは書きませんが、少なくとも「法律で決まっているから出さなければならない」という性質のものではありません。

納品前に確認する順番

ここまでの論点を、素材が上がってから納品までの工程に並べ替えます。

素材を見て、写り込みを洗い出す。ガイドライン3章2が挙げる人の顔・ナンバープレート・表札・住居の外観・住居内の住人の様子・洗濯物その他生活状況を推測できるような私物が入っていないか。入っていれば削除・ぼかしの配慮が例示されています
公開の範囲を確認する。ガイドラインが対象にしているのはインターネット上での公開です。社内利用のみか、限定公開か、一般公開かで、判断要素の「撮影方法・手段の相当性」「撮影対象」の当てはめは変わります
ライブ配信を使うか。ガイドライン3章1は「住宅地周辺を撮影するときには、ライブストリーミングによるリアルタイム動画配信サービスを利用して撮影映像等を配信しないこと」としています。ぼかしを入れる余地がないためです
個人情報保護法の適用があるか。撮影者が個人情報取扱事業者か(第16条第2項)。映像が個人情報に当たるか(第2条第1項)。個人データに当たるか(第16条第3項、A1−41の整理)。利用目的の特定・通知等の対応状況
著作権の所在を確認する。第15条(職務著作)・第29条第1項(映画製作者への帰属)の要件に当たるのか、当たらず著作者に生じているのか。共同で撮った素材は第65条第2項
渡し方を決める。著作権を譲渡するのか、第63条の許諾にするのか。譲渡するなら第27条・第28条を特掲するか(第61条第2項)
人格権に触れる工程を確認する。公表のタイミング(第18条)、クレジット表記(第19条)、納品後の編集(第20条)。第59条により、これらは譲渡できません
写り込んだ建築物・美術品を確認する。第46条の対象に入るか、除外される4つの場合(とくに第4号)に当たらないか。第48条第1項第3号の出所明示
添付書類を決める。許可書・承認書の写し、飛行記録、保険。公式の義務ではなく契約事項として整理する
個別の事案の可否は、条文とガイドラインの文言をその事案に当てはめる作業になります。本記事は条文・ガイドライン・判決に書かれていることの範囲を示すにとどめます

よくある質問

総務省のガイドラインに従っていれば、プライバシー侵害にならないと言えますか。
ガイドライン自身がそうは書いていません。3章の柱書は「以下のような事項に注意することが望ましい」とし、「プライバシー侵害等に当たるかどうかは、映像等の内容や写り方に左右される面が大きく、最終的には事例ごとの判断となるため、…一定の法的リスクが残ることは避けられない」「以下の注意事項は、あくまでプライバシー侵害等とならないための取組の目安を示すものである」と明記しています。1章も、ガイドラインの役割を「損害賠償責任を負うことになる蓋然性を低くするための取組を例示することにより、法的リスクの予見可能性を高める」ものと説明しています。
肖像権は何条に書かれているのですか。
「肖像権」という名称の権利を定めた条文は見当たりません。総務省ガイドラインも、肖像権について条文を挙げず、脚注で最高裁平成17年11月10日第一小法廷判決を引いて説明しています。その判決は「人は、みだりに自己の容ぼう等を撮影されないということについて法律上保護されるべき人格的利益を有する」とし、違法かどうかは被撮影者の社会的地位、撮影された被撮影者の活動内容、撮影の場所、撮影の目的、撮影の態様、撮影の必要性等を総合考慮して、その侵害が社会生活上受忍の限度を超えるといえるかで決すべきとしています。民事の受け皿になるのは、民法第709条の「他人の権利又は法律上保護される利益」という文言です。
通行人の顔がぼかされていれば、公開して問題ありませんか。
ガイドラインは「ごく普通の服装で公共の場にいる人の姿を撮影したものであって、かつ、容貌が判別できないようにぼかしを入れたり解像度を落として公開したりしている限り、社会的な受忍限度内として肖像権の侵害は否定されると考えられる」と書いています。ただし、同じ箇所に「しかしながら、公共の場でない場所における撮影はこの限りではない」と続き、住居内の生活状況を推測できる画像などについては「最終的には事例ごとの個別判断とならざるを得ない」としています。どの程度ぼかせば足りるかの数値基準は、公式には示されていません。
削除依頼が来たら、撮影者が対応しなければならないのですか。
ガイドライン3章3は、表題からして「撮影映像等をインターネット上で公開するサービスを提供する電気通信事業者においては、削除依頼への対応を適切に行うこと」であり、求められているのは削除依頼を受け付ける手続の整備と、プロバイダ責任制限法を踏まえた判断です。撮影者・納品者が削除依頼にどう応じるべきかは、この項目には書かれていません。撮影者側の取組として書かれているのは、3章1(撮影態様の配慮)と3章2(写り込んだ場合の削除・ぼかし)です。
撮った空撮映像は、個人情報保護法の「個人データ」に当たりますか。
個人情報保護委員会の「カメラに関するQ&A」A1−41は「特定の個人を識別することができる映像情報であれば、個人情報に該当しますが、特定の個人情報を検索することができるように『体系的に構成』されたものでない限り、個人情報データベース等には該当しないと解されます」「記録した日時について検索することは可能であっても、特定の個人に係る映像情報について検索することができない場合には、個人情報データベース等には該当しないと解されます」としています。安全管理措置(第23条)と第三者提供の制限(第27条)は「個人データ」を対象にした条文なので、この区別が効きます。個々の案件がどちらに当たるかは個別判断です。
発注を受けて撮った映像の著作権は、発注者に生じますか。
著作権法は「著作者」を「著作物を創作する者」と定め(第2条第1項第2号)、その著作者が著作者人格権と著作権を享有します(第17条第1項)。費用を出したことは条文上の要件になっていません。条文が発注者側に権利を寄せる仕組みは2つで、①第15条第1項の職務著作(法人等の発意・業務に従事する者・職務上作成・法人等の名義での公表という4要件と、作成の時における契約等に別段の定めがないこと)②第29条第1項(映画の著作物について、著作者が映画製作者に対し製作に参加することを約束しているとき)です。いずれにも当たらない場合は、契約で譲渡するか、第63条で利用を許諾するかになります。どの体制がこれらの要件に当たるかは、条文の文言を個別に当てはめる作業になります。
契約書に「著作権はすべて発注者に譲渡する」と書けば足りますか。
第61条第2項は「著作権を譲渡する契約において、第二十七条又は第二十八条に規定する権利が譲渡の目的として特掲されていないときは、これらの権利は、譲渡した者に留保されたものと推定する」と定めています。第27条は翻訳権・翻案権等、第28条は二次的著作物の利用に関する原著作者の権利です。この2条が名指しで挙げられていなければ、これらの権利は譲渡した者に留保されたものと推定されるのが条文の建て方です。あわせて第59条により著作者人格権は譲渡することができませんので、公表権(第18条)・氏名表示権(第19条)・同一性保持権(第20条)は著作者に残ります。
建物やモニュメントが写り込んでいますが、許諾は要りますか。
著作権法第46条は、建築の著作物と、原作品が第45条第2項の屋外の場所(街路、公園その他一般公衆に開放されている屋外の場所、建造物の外壁その他一般公衆の見やすい屋外の場所)に恒常的に設置されている美術の著作物について、4つの場合を除き「いずれの方法によるかを問わず、利用することができる」としています。除外されるのは①彫刻の増製・その増製物の譲渡による公衆への提供 ②建築の著作物を建築により複製・その複製物の譲渡による公衆への提供 ③屋外の場所に恒常的に設置するための複製 ④専ら美術の著作物の複製物の販売を目的として複製し、又はその複製物を販売する場合です。第48条第1項第3号により、出所を明示する慣行があるときは出所の明示が必要です。なお、施設の管理者が撮影について別に条件を付けていることは、著作権法とは別の論点です。
発注者から許可書の写しと飛行記録を求められました。出す義務がありますか。
審査要領4−3−1(18)が求めているのは「許可書又は承認書の原本又は写しを携行」することで、飛行日誌については航空法第132条の89が備付けと遅滞ない記載を義務付けています。航空法・施行規則・審査要領・飛行日誌の取扱要領を確認した範囲では、発注者や第三者に提出することを求める規定は見当たりませんでした。したがって公式の義務ではなく、契約の内容として決まるものと整理されます。
個人情報保護委員会のカメラ関係の資料は、ドローンにも使えますか。
「カメラに関するQ&A」と「カメラと個人情報保護法(民間事業者向け)」を全文で確認しましたが、いずれにも「ドローン」「無人航空機」の語は出てきません。対象は防犯カメラと顔識別機能付きカメラシステムです。個人情報・個人データの考え方や利用目的の特定・安全管理措置といったカメラ画像一般についての整理としては参考になりますが、上空から広い範囲を一度に撮るドローン固有の論点についての公式の当てはめは確認できていません。ドローンに即した整理をしているのは、いまのところ総務省ガイドラインだけです。
総務省のガイドラインより新しい版はありますか。
2026年9月27日時点で確認できるPDFの表紙は「平成27年9月(平成29年5月最終改定)」のままで、より新しい版は確認できません。一方、引用されている個人情報保護法・航空法・小型無人機等飛行禁止法の条番号は、その後の改正で動いています。ガイドラインは考え方の部分を読み、条番号は現行条文で置き換えるという読み方が必要です。
この記事の一次ソース
  1. 総務省|「ドローン」による撮影映像等のインターネット上での取扱いに係るガイドライン(平成27年9月、平成29年5月最終改定・PDF)
  2. 総務省|同ガイドラインの公表ページ
  3. e-Gov法令検索|個人情報の保護に関する法律(平成十五年法律第五十七号)
  4. e-Gov法令検索|著作権法(昭和四十五年法律第四十八号)
  5. e-Gov法令検索|民法(明治二十九年法律第八十九号)
  6. e-Gov法令検索|航空法(昭和二十七年法律第二百三十一号)
  7. e-Gov法令検索|性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律(令和五年法律第六十七号)
  8. 個人情報保護委員会|カメラに関するQ&A(PDF)
  9. 個人情報保護委員会|カメラと個人情報保護法(民間事業者向け・PDF)
  10. 個人情報保護委員会|犯罪予防や安全確保のためのカメラ画像利用に関する有識者検討会
  11. 裁判所|最高裁判所第一小法廷 平成17年11月10日判決(平成15年(受)第281号)判決文PDF
  12. 国土交通省|無人航空機の飛行に関する許可・承認の審査要領(カテゴリーⅡ飛行)令和8年9月29日最終改正(PDF)
  13. 国土交通省|無人航空機の飛行日誌の取扱要領(PDF)
  14. 国土交通省|無人航空機の飛行の安全に関する教則 第5版(令和8年7月7日公布/7月14日適用・PDF)
  15. 国土交通省|無人航空機の飛行ルール(飛行禁止空域・飛行の方法)
本記事は2026年9月27日時点の情報です。 総務省ガイドラインは平成29年5月が最終改定で、引用されている条番号は現行法と一致しません。本記事の条番号は、その時点のe-Gov法令検索の現行条文(個人情報保護法は2026年7月17日施行版、著作権法・民法は2026年6月24日施行版)で突合したものです。プライバシー・肖像権の侵害の有無、映像が個人データに当たるか、著作権が誰に生じるかは、いずれも条文とガイドラインの文言を個別の事実に当てはめる作業になります。本記事は条文・ガイドライン・判決に書かれている内容を示すにとどめ、個別の事案の可否は扱いません。実際の契約・公開の前に、必ず上記の一次ソースで最新の内容をご確認ください。

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