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林業でドローンを使うのに必要な許可・承認と、森林の資源量調査・苗木運搬の実務

公開 2026-10-13 更新 2026-10-13 読了 約17分

林業の現場でまず知っておく価値があるのは、樹木が「30mの距離を保つべき物件」に当たらないということです。国土交通省の解釈通達は、距離を保つべき物件に該当しないものとして「自然物(樹木、雑草 等)」を明記しています(3.(7)※)。立木や樹冠に寄っただけでは、30m未満の承認が必要になるものではないと読めます。 一方で、逆向きに効く記載もあります。補助者を配置しない目視外飛行の「第三者が存在する可能性が低い場所」として、審査要領は「森林」を名指ししています(5-4(3)c)ア))。森林は、条文と通達の両側から特別な扱いを受けている場所です。 さらに林業では、苗木や資材を運ぶなら物件投下と総重量25kg、尾根と谷をまたぐなら150m以上、国有林なら入林届という別の論点が重なります。この記事は、林業の業務でどの許可・承認が要るのかを条文単位で整理し、あわせて森林法・鳥獣保護管理法との関係を条文で確かめます。国有林の入林届そのものの出し方は国有林でドローンを飛ばすときの入林届と、森林管理署への確認で扱っています。

よく見る説明と、公式の記載
林業向けの説明は、航空法側の資料と林業側の資料が別々に書かれているため、どちらかが欠けた形で流通しやすい領域です。この記事で扱う範囲について、一次ソースの記載と突き合わせます。
よく見る説明立木や樹冠に30m以内まで寄るなら、30m未満の飛行の承認が必要。
公式にはこう解釈通達は、距離を保つべき物件に該当しないものとして「a)土地…b)自然物(樹木、雑草 等)」を挙げています。樹木そのものとの距離を理由に承認が必要になるものではないと読めます。
出典 無人航空機に係る規制の運用における解釈について 3.(7)※
よく見る説明森林で飛ばすには森林法の許可・届出が必要。
公式にはこう森林法の現行条文には「無人航空機」「航空機」「飛行」の語が1件も現れません(e-Gov法令検索の現行条文を機械検索)。伐採の届出(第10条の8)や開発行為の許可(第10条の2)は、伐採や土地の形質変更という行為についての手続きです。
出典 e-Gov法令検索 森林法(現行)
よく見る説明苗木をドローンで運んで下ろすのは物件投下に当たる。
公式にはこう解釈通達は「対象物件を地表等に落下させることなく地上の人員に受け渡す行為や輸送した物件を地表に置く行為は物件投下には該当しない」としています。林野庁の運搬マニュアルも「荷下ろし時に物件を地面に接地させてから切り離す場合は『物件投下』にあたらないとされている」と書いています。
出典 同通達 3.(10) / ドローンを活用した苗木等運搬マニュアル p.39

樹木は「30mの距離を保つべき物件」に当たらない

点検や空撮の記事ではいつも「30m未満の承認が業務の中核だ」という話になります。林業はそこが違います。

航空法第132条の86第2項第3号は、無人航空機を飛行させる方法として「地上又は水上の人又は物件との間に国土交通省令で定める距離を保って飛行させること」を求め、その距離は航空法施行規則第236条の79で30mと定められています。この距離を保てない飛行は国土交通大臣の承認が必要です。

ここで効いてくるのが、この「物件」の中身です。国土交通省の解釈通達3.(7)は、「物件」を操縦者及びその関係者が所有又は管理する物件以外のもの(第三者の物件)のうち、a)中に人が存在することが想定される機器(車両等)、b)建築物その他の相当の大きさを有する工作物と定義したうえで、こう書いています。

「なお、以下の物件は、本規定の趣旨に鑑み、本規定の距離を保つべき物件には該当しない。
 a)土地(田畑用地及び舗装された土地(道路の路面等)、堤防、鉄道の線路等であって土地と一体となっているものを含む。)
 b)自然物(樹木、雑草 等) 等」(解釈通達 3.(7)※)

つまり、立木・樹冠・下草は、30mの距離を保つべき物件ではありません。林内の樹冠すれすれを飛ぶ、伐採予定木に寄って樹形を撮る、下層植生を接写する——これらは、樹木との距離だけを理由に30m未満の承認が必要になる飛行ではないと読めます。土地(地表)も同じく除かれていますから、林床に近づくこと自体も同様です。

ただし、これは「森林なら30mを気にしなくてよい」ではありません。 除かれているのは自然物と土地です。林業の現場には、自然物ではないものが数多く持ち込まれます。集材機・グラップル・フォワーダのような建設機械、作業道に停めた運材車、作業小屋、送電線の鉄塔と電線、電柱、鉄塔の保守路——通達3.(7)の例示には「建設機械」「倉庫」「鉄塔、電柱、電線」がそのまま並んでいます。これらが第三者の所有・管理であれば、30m未満の承認の対象になり得ます。自分の会社の機械なら「関係者が所有又は管理する物件」に当たり得ますが、他社が入っている現場、隣接する事業地、林内を通る電線は別の話です。

なお、解釈通達の全文(12ページ)に「森林」という語は出てきません。樹木は「自然物」として扱われているだけで、森林を名指しした記載はありません。林業向けに書かれた航空法側の公式文書は存在せず、一般の規定を森林に当てはめて読むしかないのが現状です。

それでも森林で30m未満・目視外に当たる場面

樹木が物件から外れても、林業の飛行が特定飛行から自由になるわけではありません。実際に当たりやすいのは次の2つです。

「人」は第三者。作業員が第三者かどうかは体制で決まる

30mの「人」は、同通達3.(7)で「操縦者及びその関係者(無人航空機の飛行に直接的又は間接的に関与している者)以外の者(第三者)」と定義されています。操縦者・補助者・オペレータは第三者ではありません。

問題になるのは、同じ現場で別の作業をしている作業員です。林野庁のドローンを活用した苗木等運搬マニュアルの実証事例には、運用上の留意点として「地拵え等を同時に作業しているため、ドローンが作業員の頭上を飛ばないように、十分留意」と書かれています。地拵え班・植付班・伐倒班が同時に動いている山で、その人たちが「飛行に関与している者」に当たるかは、通達6.(1)の要件(飛行目的についての共通認識、操縦者からの明確な指示と安全上の注意、関与を自ら決定できること)を満たすかどうか次第で、一律には決まりません。要件を満たすと言い切れないなら、第三者として扱い、30m未満の承認を用意するか、立入管理で距離を確保する設計が安全側です。

尾根と樹冠で、目視外になりやすい

航空法第132条の86第2項第2号は「当該無人航空機及びその周囲の状況を目視により常時監視して飛行させること」を求めます。解釈通達3.(6)は、この「目視」を操縦者本人が自分の目で見ることに限り、補助者による目視も、モニターや双眼鏡による監視も該当しないとしています。

これは山では非常に起こりやすい状況です。林野庁のUAV立木調査マニュアルも、許認可の項目の1行目でこう書いています。

「① 森林におけるUAV 飛行にあっては、UAV 本体が目視外になるケースが多く、先般の航空法改正により無人航空機の飛行の許可・承認が必要となっている。なお、許可・承認の手続きを行った場合は必ず許可書等を現地に携帯する。」(UAV立木調査マニュアル Ⅲ1(3))

※この資料は平成31年3月のもので、「先般の航空法改正」は平成27年改正を指します。現行の条番号は第132条の85(飛行禁止空域)・第132条の86(飛行の方法)です。

尾根の向こうに機体が回り込む、樹冠の陰に入る、谷底に降りる。自動航行で撮影する立木調査はもちろん、苗木運搬でも荷下ろし地点が発着地点から見えない事例が報告されています(同運搬マニュアルの実証事例に「発着地点のオペレータから荷下ろし地点が見えないため、互いに行きと帰りの声掛けを実施」とあります)。操縦者本人の肉眼で機体を追い続けられるかどうかが、承認の要否を分けます。

150m以上。尾根と谷で高度をどう数えるか

山林の飛行で最も見落とされやすいのが、ここです。飛行禁止空域の基準は施行規則第236条の71第1項第5号で、「地表又は水面から百五十メートル以上の高さの空域(地上又は水上の物件から三十メートル以内の空域を除く。)」と定められています。基準は離陸地点からの高度ではなく、真下の地表からの高さです。

尾根から谷へ出た瞬間に、高度は跳ね上がります。 尾根の上で対地高度100mを保っていても、そのまま水平に飛んで比高200mの谷の上に出れば、真下の地表からの高さは300mになります。機体の高度計が示すのは離陸地点基準の値であることが多く、表示上は変わらないまま規制空域に入るのがこの類型の怖さです。林野庁の運搬マニュアルも「対地高度が150m を超えた場合は『高度150m 以上の飛行許可』が必要となる」「特に運搬ルートに谷地形がある場合は、対地高度の確認を行いましょう」と書いています。

そして、この150m以上は承認ではなく許可で、申請先も地方航空局長ではなく空港事務所長です。審査要領5-1(2)d)は、150m以上(物件から30m以内を除く)の飛行について「空域を管轄する関係機関から当該飛行について了解を得ること」など追加の基準を置いており、さらに5-1(3)により航空情報の発行手続きが必要になります。包括申請の範囲では扱えない類型ですから、山間部の案件を包括で回すつもりなら、経路のどこかで150mを超えないかを先に確認してください(全国包括は取れるか。標準マニュアル02の使い方)。

括弧書きの除外は、林業では使いにくいことがあります。 第5号は150m以上の空域から「地上又は水上の物件から30m以内の空域」を除いています。鉄塔や煙突のように高い工作物の直近を飛ぶ場合はこの除外が効きますが、樹木は3.(7)※で「物件」から外されている自然物です。「樹冠から30m以内だから除外される」とは読めません。林内で高度を確保したい場合は、この除外を頼りにしない前提で経路を組むのが安全です(樹木が第5号括弧書きの「物件」に含まれるかについて、公式の明示は確認できていません)。

補助者を配置しない目視外で「森林」が名指しされている

ここが、林業にとって最も効く記載です。審査要領(カテゴリーⅡ飛行)5-4(3)c)ア)は、補助者を配置しない目視外飛行についてこう定めています。

「飛行経路には第三者が存在する可能性が低い場所※を設定すること。…
※第三者が存在する可能性が低い場所は、山、海水域、河川・湖沼、森林、農用地、ゴルフ場又はこれらに類するもの。」(審査要領 5-4(3)c)ア))

「山」と「森林」が並んで書かれています。教則(第5版)3.1.2(2)4)も、レベル3.5飛行の位置づけを「山、海水域、河川・湖沼、森林、農用地等の人口密度が低い地域といった第三者が存在する可能性が低い場所(※夜間含む)で行うもの」と説明しています。制度は、森林を「補助者なしの目視外に向いた場所」として想定しているわけです。

「森林だから補助者なしで自由に飛べる」ではありません。 5-4(3)c)ア)は飛行経路の条件にすぎず、補助者を配置しない目視外飛行には、これと並んで機体・操縦者・体制の基準が積み上がります。機体側は自動操縦システムと機外監視カメラ、地上での位置及び異常の把握、フェールセーフ機能(5-4(1)a)〜c))に加え、補助者を置かない場合の追加基準として灯火又は認識しやすい塗色、他の航空機の状況の随時把握、第三者に危害を加えないことを製造者等が証明した機能、針路・姿勢・高度・速度・気象状況の把握、計画経路と実位置の差の把握、初期故障期間を超えた十分な飛行実績(5-4(1)d))が要求されます。操縦者側は、遠隔からの異常状態の把握等について座学・実技による教育訓練を少なくとも10時間以上(5-4(2)b))。森林であることは、この長い要件リストの1行目を満たすだけです。

あわせて、同c)イ)には山で使える記載があります。「…又は地表若しくは水面から150m以上の高さの空域における飛行を行う際には、一時的に150m を超える山間部の谷間における飛行など航空機との衝突のおそれができる限り低い空域や日時を選定し、飛行の特性(飛行高度、飛行頻度、飛行時間等)に応じた安全対策を行うこと」。谷をまたいで一時的に150mを超える飛行は、審査要領が想定している飛び方です。やむを得ず発生することを前提に、空域と日時の選定という形で安全対策が求められています。

DIDと空港等周辺。山でも確認は必要

森林がDID(人口集中地区)の中にあることは、一般には多くありません。ただし「森林だからDIDではない」という規定はない点に注意が必要です。施行規則第236条の72は、DIDを「国土交通大臣が告示で定める年の国勢調査の結果による人口集中地区」と定めています。土地の地目や植生ではなく、国勢調査の結果で決まる区域です。里山、市街地に接した社寺林、住宅地に囲まれた斜面林は、地図上で確認する価値があります。なお、2026年7月1日から用途地域が「工業専用地域」の区域はDIDの許可の対象外になりました(工業専用地域は、DIDの中でもDIDの飛行許可が要らなくなった)。

空港等周辺も、山だから関係ないとは言えません。空港の進入表面・転移表面・水平表面は空港から相当の距離まで広がり、山地にかかることがあります。この類型は許可・承認を不要にする制度の対象外で、場所を特定した個別申請になります。

緊急用務空域の確認は、林業では特に落としやすい義務です。 施行規則第236条の71第4項は「無人航空機を飛行させる者は、その飛行を開始する前に、当該無人航空機を飛行させる空域が緊急用務空域に該当するか否かの別を確認しなければならない」と定めています。緊急用務空域は、許可を持っていても飛行できません。山火事・土砂災害・林内での人身事故の直後に、その山域が緊急用務空域に指定されることがあります。被害調査のために飛ばそうとする場面ほど、この確認が必要になります。

苗木・資材を運ぶ。物件投下と総重量25kg

「投下」と「置く」は別物

航空法第132条の86第2項第6号は物件投下を規制していますが、解釈通達3.(10)がその線引きを書いています。

「ここで、水や農薬等の液体を散布する行為は物件投下に該当し、対象物件を地表等に落下させることなく地上の人員に受け渡す行為や輸送した物件を地表に置く行為は物件投下には該当しない。」(解釈通達 3.(10))

林野庁の運搬マニュアルも同じ理解に立っており、飛行申請の表の備考に「荷下ろし時に物件を地面に接地させてから切り離す場合は『物件投下』にあたらないとされていますが、今後の法改正等にも注意する」と書いています。実証事例の荷下ろし方法も「荷下ろし地点で苗木が地面に接地すると、自動で苗木(袋)がフックから外れる」という接地式です。

逆に言えば、空中から放す運用にすれば物件投下です。斜面上部から袋を落とす、ホバリングしたまま切り離す、といった運用は承認の対象になります。物件投下の承認には、機体が「不用意に物件を投下する機構でないこと」、飛行させる者が5回以上の物件投下の実績を有すること、投下場所に監視できる補助者を配置すること(配置しない場合は原則として投下高度1m以下と立入管理区画の設定)といった基準があります(審査要領5-8)。運用を「接地させてから切り離す」に寄せるだけで、要件が1つ減るという判断ができます。

総重量25kgの壁。運搬機はここに当たりやすい

ここが、林野庁の運搬マニュアルだけを読んでいると落ちる論点です。施行規則第236条の73が定める「国土交通省令で定める総重量」は25キログラムで、この線の内外で制度の当たり方が変わります。

同マニュアルに掲載されている運搬機の例を見ると、機体重量が約20kgでペイロードが最大25kgという機種があり、スギコンテナ苗を1フライトで約15〜23kg運んだ実証が報告されています。機体+積載物の総重量が25kgを超える運用は、林業の苗木運搬ではむしろ普通に起こります。

総重量が25kg以上になると根拠実務上の意味
技能証明+機体認証で許可・承認を不要にするルートの対象外 法第132条の86第4項
規則第236条の73
資格と認証機体をそろえても、個別に承認を受ける必要が残ります
教則上の区分ではカテゴリーⅡA飛行 教則(第5版)
3.1.1(2)3)b
カテゴリーⅡBのように手続なしで飛べる範囲には入りません
第三者賠償責任保険への加入が要件 審査要領
4-3-1(19)
「総重量25kg 以上の無人航空機を飛行させる場合には、…十分な補償が可能となる第三者賠償責任保険に加入していること」。教則第5版2.3.3もこれを本文に書き入れています
機体側の基準が上乗せされる 審査要領
4-1-2
運用条件下での安定した離着陸・飛行、通信が他の機器に悪影響を与えないこと、破損部品が飛散するおそれが少ない構造、事故発生時に原因調査をするための飛行諸元を記録できる機能、不具合モードに対するフェールセーフ機能。申請時はこれらへの適合を自ら確認した資料の添付が必要です
農薬等の空中散布の例外でも、方法によっては25kg未満が条件 規則第236条の82
第2号ロ
夜間・目視外・30m未満を伴う散布では総重量25kg未満が要件です(後述)
林野庁の運搬マニュアルには、総重量25kg以上についての記載がありません。 同マニュアル(2023年3月改訂・全109ページ)に「総重量」の語は出てきません。また、航空法の条番号は「航空法第132条」「航空法第132条の2」という旧法のままの表記で、現行の第132条の85・第132条の86には更新されていません。運搬の技術資料としては有用ですが、航空法の手続きの根拠として使うには古いという前提で読んでください。同マニュアルには国有林の入林届についての記載もありません。

危険物輸送は「何を積むか」で決まる

苗木・コンテナ苗・支柱・獣害防止資材そのものは、通常、危険物輸送(法第132条の86第2項第5号)の問題にはなりません。輸送が禁止される危険物は施行規則第236条の80と「無人航空機による輸送を禁止する物件等を定める告示」(平成27年国土交通省告示第1142号)で定まり、火薬類・高圧ガス・引火性液体・可燃性物質類などの類型です。また規則第236条の80第2項は「無人航空機の飛行のため当該無人航空機で輸送する物件」を除いており、解釈通達3.(9)は機体の燃料や電池、業務用機器の電池、パラシュート開傘用の火薬類等がこれに当たるとしています。薬剤を積むなら話は別で、次章の論点になります。

薬剤の空中散布。条文に「林業の用に供されている森林」が出てくる

松くい虫防除や施肥のようにドローンから薬剤を撒く場合、林業は条文に森林が明記されている唯一の場面に入ります。施行規則第236条の82第2号ニは、こう書いています。

「無人航空機を飛行させる者その他の関係者が所有又は管理する土地であつて、現に農業の用に供されている農地又は現に林業の用に供されている森林(これらに隣接し、かつ、これらと一体となつて農林業の用に供されている農業用道路その他の土地を含む。)の区域内において、地表若しくは水面又は農作物(樹木及び農林産物を含む。)の上端から四メートル以下の高さの空域において飛行させること。」(施行規則第236条の82第2号ニ。国土交通省の通達では「第1項第2号」と表記)

「農作物」に樹木が含まれると括弧書きされており、高さの基準が樹木の上端から4m以下であることが読み取れます。この号の要件をすべて満たせば、夜間・目視外・30m未満・危険物輸送・物件投下の承認が不要になります。

これは「資格も認証機体もなしで撒ける」ルートではありません。 第2号は、イ「飛行の方法に応じ必要な機能及び性能を有するものとして国土交通大臣が定める基準に適合する無人航空機」、ハ「安全に飛行させるために必要な知識及び能力として飛行の方法に応じ国土交通大臣が定めるものを有していること」を要件とし、これを具体化した通達(令和8年3月23日制定・施行)は第一種又は第二種機体認証と一等又は二等の技能証明を求めています。さらにロ(夜間・目視外・30m未満を伴う場合は総重量25kg未満)、ホ(夜間・目視外を伴う場合は自動操縦)、ト(飛行範囲制限機能とフェールセーフ機能の使用)、ヌ(飛行経路下に地上又は水上の物件が存しないこと)、ル(補助者の配置その他の立入管理措置)が並びます。また、外れるのは飛行の方法の承認だけで、DID上空の許可(法第132条の85)は外れません。詳しくは農薬散布ドローンの特例。承認が不要になる条件と農薬散布ドローンを使い始めるまでの実務で整理しています。

なお、許可・承認を申請するルートを使う場合、申請書の「飛行の目的」には該当する区分を選びます。審査要領の一覧では「農林水産業」の例示に「農薬散布、松くい虫防除、種まき、肥料散布、生育調査 等」が挙げられており、林業の薬剤散布はここに入ると読めます。散布用の航空局標準マニュアルは空中散布版で、危険物輸送と物件投下が含まれている点が一般版との違いです。

林業側の手続き。入林届・所有者の承諾・森林法

航空法の許可・承認は、国に対する手続きです。実際に山に入って飛ばせるかどうかは、別の層で決まります。

国有林なら入林届

7つの森林管理局はいずれも、国有林野内で無人航空機を飛行させる場合は管轄の森林管理署等に「入林届」を提出するよう案内しています。操縦者が国有林の外にいて機体だけを国有林内で飛ばす場合も、国有林野の借受者が飛ばす場合も対象です。提出期限は局ごとに違い、関東・四国が5業務日前、中部が7開庁日前、近畿中国が10業務日前、北海道・東北・九州が1週間程度から1週間以上という書き方です。関東局は航空法・電波法等に係る飛行許可書等の添付を求めており、入林届は航空法の許可・承認を前提に出す書類として扱われています。詳細は国有林でドローンを飛ばすときの入林届と、森林管理署への確認をご覧ください。

森林管理局・署が発注した事業や調査の受託者は、入林届が不要と明記されています(関東・東北・中部・近畿中国・九州局)。国有林の収穫調査を受託して飛ばす場合はここに当たり得ます。ただし航空法の許可・承認と飛行計画の通報は、これとは別に必要です。

民有林なら所有者・管理者

入林届は国有林だけの手続きです。北海道森林管理局は、道有林や市町村・個人が管理する森林については「それぞれの土地所有者への手続き・ルールに従ってください」と書いています。民有林で全国共通の飛行手続きは、確認できた公的案内には示されていません。実務上は、森林所有者、森林組合、素材生産業者、施業を受託している事業体、分収林契約の相手方といった関係者の整理から始めることになります。

林野庁の運搬マニュアルも、飛行ルートの検討の項で「必要に応じて土地所有者からの同意を得る必要があります」と書いています。UAV立木調査マニュアルはさらに具体的で、「国有林外からのUAV 離発着は極力避けることが必要であるが、民地の多い区域において公道等を利用する場合は、道路管理者等からの承諾等が必要になる」「公道路側帯利用の場合、道路横断飛行は絶対に行わない」「安全監視員を必ず同行させる」と定めています。

上空を飛ぶことと、土地に立ち入ることは別の論点です。 第三者の土地の上空を飛ばすことについて、政府の整理では「常に土地所有者の同意を得る必要がある訳ではない」とされ、同意が必要な高度の一律の基準も「存在しない」とされています(私有地の上空、所有権はどこまで及ぶのか)。一方、山林では離着陸地点の確保、機材の搬入、バッテリー交換の拠点づくりのために土地そのものに立ち入ることがほとんどです。国有林と民有林が入り組む地域では、経路と発着地点の区間ごとに誰の土地かを確かめる必要があります。林道の通行や路肩への駐車についてはドローンに道路使用許可は必要かもあわせて確認してください。

森林法は、飛行そのものを対象にしていない

「森林で飛ばすなら森林法の手続きが要るのではないか」という疑問は自然に出てきます。e-Gov法令検索の森林法の現行条文を機械検索したところ、「無人航空機」「航空機」「飛行」「空中」「ドローン」の語は附則を含めて1件も現れませんでした。森林法の許可・届出は、次のように行為を対象にしたものです。

森林法の手続き対象となる行為ドローンとの関係
伐採及び伐採後の造林の届出
(第10条の8第1項)
森林所有者等が、地域森林計画の対象となっている民有林(保安林等を除く)の立木を伐採するとき。あらかじめ市町村の長に届出書を提出 飛行の手続きではありません。森林経営計画に定められた伐採、除伐、非常災害時等の例外が11号並んでいます
開発行為の許可
(第10条の2第1項)
地域森林計画の対象となっている民有林での開発行為=「土石又は樹根の採掘、開墾その他の土地の形質を変更する行為で…政令で定める規模を超えるもの」。都道府県知事の許可 飛行の手続きではありません。ただし離着陸場所を造成するような行為は、規模次第でこちらの対象になり得ます
保安林における制限
(第34条第1項・第2項)
保安林での立木の伐採、立竹の伐採、立木の損傷、下草・落葉・落枝の採取、土石又は樹根の採掘・開墾その他の土地の形質を変更する行為。都道府県知事の許可(軽易な行為等は除外) 飛行の手続きではありません。発着地点を確保するために枝を払う・地面を削る場合は、こちらの検討が必要になり得ます

つまり、「森林の上を飛ぶこと」に森林法の許可が要るという規定は現行条文にはありません。森林法が出てくるのは、ドローンを飛ばすための準備として木を切る・地面をいじる場合です。森林管理局が入林届に添える別紙「入林に際しての遵守事項」も、「立木の伐採、損傷及び土地の形質変更を行う場合は許可が必要です」と書いています。飛行計画と造成計画は、別の手続きとして分けて考えてください。

鳥獣との関係。追い払いは「捕獲等」に当たるのか

林業では、シカやクマの被害調査、獣害防止柵の点検、野生動物の生息状況の把握といった目的でドローンを飛ばす場面があります。ここで気になるのが鳥獣保護管理法との関係です。

条文を確かめると、鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律の現行条文にも、「無人航空機」「航空機」「飛行」「空中」「ドローン」の語は附則を含めて1件も現れません。同法の枠組みはこうです。

  • 第2条第8項:「捕獲等(捕獲又は殺傷をいう。以下同じ。)」
  • 第2条第7項:「法定猟法」=「銃器(装薬銃及び空気銃…)、網又はわなであって環境省令で定めるものを使用する猟法その他環境省令で定める猟法」
  • 第8条:「鳥獣及び鳥類の卵は、捕獲等又は採取等(採取又は損傷をいう。…)をしてはならない」(第9条第1項の許可、狩猟、第13条第1項の場合を除く)
  • 第9条第1項:学術研究の目的、鳥獣の保護又は管理の目的その他環境省令で定める目的で捕獲等をしようとする者は、環境大臣又は都道府県知事の許可を受けなければならない
ドローンでの追い払いや個体数調査が「捕獲又は殺傷」に当たるかについて、環境省の一次ソースで説明している記載は見つけられませんでした。 環境省の「捕獲許可制度の概要」も、捕獲許可制度の説明にドローンには触れていません。条文の定義を素直に読めば、鳥獣を捕らえも傷つけもしない飛行は第8条が禁じる「捕獲等」には当たらないと読む余地がありますが、公式にはこの点が明示されていません。追い払いや個体数調整を目的とする業務であれば、飛ばす前に都道府県の鳥獣行政の担当課に確かめるのが確実です。国指定鳥獣保護区・指定猟法禁止区域・特別保護地区のように区域の指定がある場所では、その区域側のルールも別に確認が必要です。

獣害は、捜索・救助等の特例の適用事例に入っている

航空法第132条の92(捜索、救助等のための特例)は、「都道府県警察その他の国土交通省令で定める者」が事故等に際し「捜索、救助その他の緊急性があるものとして国土交通省令で定める目的」のために行う飛行について、飛行禁止空域・飛行の方法・飛行計画の通報・飛行日誌の規定を適用しないとしています。

国土交通省が公表している「捜索・救助等のための特例(航空法第132条の92)適用事例」には、「獣害を未然に防ぐための飛行」が掲載されています。市街地への熊の侵入を受け、熊の探索・行動範囲の確認・地域住民の避難を目的に、地方自治体からの依頼により民間事業者が赤外線を使った調査飛行を行った事例で、資料には「※当該特例は熊に限らず、人命に危難のおそれのある獣害全般に適用される。」と注記されています。

この特例を林業の獣害対策に広げて読むことはできません。 資料の原文は「人命に危難のおそれのある獣害全般」であり、苗木の食害や剥皮被害のような財産被害だけの獣害調査にこの特例が使えるとは書かれていません。また実施は「地方自治体からの依頼により」行われたものです。教則(第5版)も「国や地方公共団体にかかわらない独自の活動にあっては、特例の対象とはならず、国の飛行の許可・承認などの手続き等が必要となる」としています。自社の判断で飛ばす獣害調査は、通常どおり許可・承認と飛行計画の通報が必要になる前提で組んでください。

林野庁の資料では、ドローンはどう位置づけられているか

航空法側に林業向けの文書がない一方で、林野庁は用途ごとに資料を出しています。どの業務にドローンが想定されているかは、林野庁の資料を見るのが早いです。

用途林野庁の一次資料資料に書かれていること
森林資源量の調査
路網の把握
森林境界の明確化
高精度な森林情報の整備・活用のためのリモートセンシング技術やその利用方法等に関する手引き(平成30年3月) 第2章が「森林資源量の調査」「既設路網の把握・新たな路網開設計画の作成」「森林境界の明確化」の3目的で構成され、技術は計測範囲が広い順に光学衛星画像・空中写真・航空レーザ・UAV写真(第6章)・UAVレーザ(第7章)・地上レーザを解説
収穫調査
(立木調査)
UAV立木調査マニュアル(平成31年3月/平成30年度林野庁委託事業) UAV撮影画像から樹高・樹冠形状を把握し、そこから胸高直径を推定して「調査対象林分内に入り込むことなく立木調査を行う」方法。「現時点における適用範囲は林相が均一な森林に限定されるなどの課題も存在している」とも書かれています。許認可の項は前述のとおり
苗木・資材の運搬
(造林)
ドローンを活用した苗木等運搬マニュアル(2023年3月改訂)/造林のためのドローン活用事例集 「ドローンを活用した低コスト・省力的な苗木運搬等に関する造林技術」として整理。発着地点・荷下ろし地点・飛行ルート・立入り禁止エリアの検討、荷造り、気象情報の確認、非常時の連絡体制、当日の確認事項までの手順と、機種別の実証事例
補助事業の
申請・検査
森林整備事業の申請・検査におけるデジタル技術の活用について/森林整備事業における補助金のデジタル申請・検査ガイドライン 2020(R2)年度の事業から適用。実施要領の運用で「オルソ画像・ドローン単写真・点群データ等の提出があれば、作業前・作業後の写真を省略できる」ようにし、竣工検査内規例で「オルソ画像等で施業の実施状況が確認できる場合には、現地での確認を省略できる」「この場合、申請書類(ドローン画像等のファイルを含む)のみで検査が完結できる」こととされています

最後の1行は、林業事業体にとって意味が大きいところです。ドローンで撮った画像が、補助事業の検査書類として制度的に位置づけられているということです。飛行の手続きを整えることが、そのまま事務負担の削減につながる構造になっています。

林業側の資料を読むときは、作成時期を必ず確かめてください。 無人航空機の制度は2022年12月に大きく変わりました。前述のリモートセンシングの手引き(平成30年3月)は、無人航空機の定義を「機体総重量が200g 以上のもの」(現行は100g以上)とし、道路交通法について「公道上を飛行する場合は管轄する警察署長の許可が必要になる」、民法について「第三者の所有する土地上で無人航空機を飛行する場合は、基本的には所有者の許諾を得る必要がある」、さらに「日本では2018 年3 月現在、国家資格としての免許制ではないため飛行に関するライセンスは不要」と書いています。いずれも執筆時点の記述で、現行の取扱いとは異なります。道路上空については警察庁の通達が「原則として要しない」としており(道路使用許可の考え方)、土地所有権については政府が一律の基準は存在しないと整理しています(私有地の上空と所有権)。技術資料としての価値は変わりませんが、手続きの根拠は国土交通省の現行の条文・通達・審査要領で確かめるのが安全です。

林業で当たる特定飛行の一覧と段取り

ここまでを1枚に整理します。特定飛行は「空域」の類型が許可、「方法」の類型が承認の対象です。

類型根拠条文林業での当たり方頻度
目視外飛行
(承認)
法第132条の86
第2項第2号
林業の中核。尾根の向こう、樹冠の陰、谷底、自動航行の立木調査、発着地点から見えない荷下ろし地点。林野庁も「森林におけるUAV 飛行にあっては、UAV 本体が目視外になるケースが多く」としています 高い
150m以上
(許可)
法第132条の85
第1項第1号
規則第236条の71
第1項第5号
谷をまたぐと跳ね上がる。基準は真下の地表からの高さ。申請先は空港事務所長で、関係機関の了解と航空情報の発行手続きが絡みます 中〜高
人又は物件から
30m未満
(承認)
法第132条の86
第2項第3号
規則第236条の79
樹木・地表は「物件」から除かれています。当たるのは第三者の建設機械・作業車両・作業小屋・鉄塔・電線と、第三者に当たる作業員 現場の体制次第
物件投下
(承認)
法第132条の86
第2項第6号
苗木・資材を接地させてから切り離す運用なら該当しないと解されます。空中から放すなら承認。5回以上の投下実績等が要求されます 運用の設計次第
危険物の輸送
(承認)
法第132条の86
第2項第5号
規則第236条の80
苗木や資材では通常問題になりません。松くい虫防除等で薬剤を積むなら要検討です 散布時
夜間飛行
(承認)
法第132条の86
第2項第1号
日出から日没までの間以外。山は日没が早く、冬季は作業終盤が日没後になりやすい点に注意 中
DID上空
(許可)
法第132条の85
第1項第2号
規則第236条の72
DIDは国勢調査の結果で決まる区域。里山・社寺林・住宅地に接する斜面林は地図で確認する価値があります 低(該当時は必須)
空港等周辺
(許可)
法第132条の85
第1項第1号
規則第236条の71
第1項第1〜3号
制限表面は山地にかかることがあります。許可・承認を不要にする制度の対象外で、場所を特定した申請になります 低(該当時は必須)
緊急用務空域
(飛行不可)
規則第236条の71
第1項第4号・第4項
許可があっても飛行できません。山火事・土砂災害・林内事故の直後こそ、飛行開始前の該当性確認が必要です 災害時
催し場所上空
(承認)
法第132条の86
第2項第4号
通常の林業では想定されにくい類型。森林イベント・植樹祭・林業体験会の撮影では該当し得ます 低

段取り

飛行地点と経路が国有林か民有林かを確認する。国有林なら管轄の森林管理署と、その局の提出期限(5業務日前〜10業務日前)を逆算する。民有林なら森林所有者・森林組合・施業受託者の整理から
経路の縦断図で150mを判定する。離陸地点基準ではなく真下の地表からの高さ。尾根から谷に出る区間、斜面を下る区間を必ず見る
目視外になる区間を洗い出す。操縦者本人の肉眼で追えるか。補助者の目とモニターは「目視」に当たらない。補助者を置かないなら5-4の機体・操縦者・体制の基準まで確認する
30mの相手を数える。樹木と地表は除く。第三者の建設機械・車両・作業小屋・鉄塔・電線と、第三者に当たる作業員を数える
運ぶなら総重量と荷下ろし方法を決める。機体+積載物が25kgを超えるかを計算する。荷下ろしは接地させてから切り離す設計にできるか
DID・空港等周辺・小型無人機等飛行禁止法の対象施設を地図で確認する。あわせて電波の帯域と無線局免許の要否も確認する
航空法の許可・承認を申請する。新規は飛行開始予定日の10開庁日前までとされ、国土交通省は3〜4週間程度の余裕を推奨。関東局は入林届に飛行許可書等の添付を求めているため、航空法を先に進めると滞りません
入林届を提出し、控えを受け取る。飛行場所又は経路の図面、日時・目的・高度、入林者、注意点のチェック。局によって様式の求めが違う
飛行計画を通報し、飛行日誌を用意する。特定飛行なら、あらかじめの通報(法第132条の88第1項)と飛行日誌(法第132条の89第1項)が必要。入林届とは別の手続き
当日:緊急用務空域の該当性を確認し、入林前に森林管理署等へ連絡。立入り禁止エリアの看板・監視員を配置し、不時着場所を共有しておく。事故・紛失時は森林管理署等へ連絡し、機体は自分で回収する

よくある質問

林業でドローンを飛ばすのに、森林法の許可は必要ですか。
森林法の現行条文には「無人航空機」「航空機」「飛行」の語が1件もなく、上空を飛ばすこと自体を対象にした規定はありません。森林法が出てくるのは、伐採の届出(第10条の8第1項。森林所有者等が民有林の立木を伐採するとき、あらかじめ市町村の長へ)、開発行為の許可(第10条の2第1項。土石又は樹根の採掘、開墾その他の土地の形質を変更する行為で政令で定める規模を超えるもの。都道府県知事)、保安林における制限(第34条。立木の伐採・損傷や土地の形質変更。都道府県知事)といった行為についてです。離着陸場所を確保するために枝を払う・地面を削るなら、こちらの検討が必要になり得ます。
樹冠から10mのところを飛ばします。30m未満の承認は必要ですか。
解釈通達3.(7)は、距離を保つべき物件に該当しないものとして「a)土地…b)自然物(樹木、雑草 等)」を挙げています。樹木との距離だけを理由に承認が必要になるものではないと読めます。ただし、その周囲に第三者の建設機械・作業車両・作業小屋・鉄塔・電線があれば、そちらで該当し得ます。また同じ現場で別作業をしている作業員が第三者に当たるかは、通達6.(1)の要件次第で一律には決まりません。
尾根で対地高度100mを保って飛ばしていれば、150m以上の許可は不要ですか。
経路によります。施行規則第236条の71第1項第5号の基準は「地表又は水面から百五十メートル以上の高さの空域」で、離陸地点からの高度ではなく真下の地表からの高さです。尾根から比高の大きい谷の上に出れば、機体の高度表示が変わらないまま150mを超えることがあります。林野庁の運搬マニュアルも「特に運搬ルートに谷地形がある場合は、対地高度の確認を行いましょう」としています。なお第5号の括弧書きは「地上又は水上の物件から30m以内の空域」を除いていますが、樹木は3.(7)※で物件から外されている自然物であり、樹冠から30m以内だから除外されるとは読めません(この点についての公式の明示は確認できていません)。
森林は「第三者が存在する可能性が低い場所」に挙げられているので、補助者なしで目視外飛行ができますか。
審査要領5-4(3)c)ア)は、補助者を配置しない目視外飛行の飛行経路について「第三者が存在する可能性が低い場所」を設定することを求め、その例として「山、海水域、河川・湖沼、森林、農用地、ゴルフ場又はこれらに類するもの」を挙げています。ただしこれは要件の1つにすぎません。機体側は自動操縦システムと機外監視カメラ、地上での位置及び異常の把握、フェールセーフ機能に加え、補助者を置かない場合の追加基準(灯火又は認識しやすい塗色、他の航空機の状況の随時把握、第三者に危害を加えないことの製造者等による証明、針路・姿勢・高度・速度・気象状況の把握、計画経路と実位置の差の把握、初期故障期間を超えた十分な飛行実績)が求められ、操縦者側は座学・実技による教育訓練を少なくとも10時間以上受けている必要があります。
苗木をドローンで運んで下ろすのは、物件投下の承認が必要ですか。
解釈通達3.(10)は「対象物件を地表等に落下させることなく地上の人員に受け渡す行為や輸送した物件を地表に置く行為は物件投下には該当しない」としています。林野庁の運搬マニュアルも「荷下ろし時に物件を地面に接地させてから切り離す場合は『物件投下』にあたらないとされていますが、今後の法改正等にも注意する」と書き、実証事例も接地式です。逆に、空中から放す運用は物件投下に当たります。その場合は、機体が不用意に物件を投下する機構でないこと、5回以上の物件投下の実績、投下場所への補助者配置(配置しない場合は原則として投下高度1m以下と立入管理区画の設定)といった基準の対象になります。
苗木運搬機は総重量25kgを超えます。何が変わりますか。
施行規則第236条の73が定める総重量の基準は25kgで、これ以上になると①技能証明と機体認証で許可・承認を不要にするルートの対象外になり、②教則上の区分ではカテゴリーⅡA飛行として個別の許可・承認が必要になり、③審査要領4-3-1(19)により十分な補償が可能となる第三者賠償責任保険への加入が要件になり、④審査要領4-1-2の機体基準(事故発生時に原因調査をするための飛行諸元を記録できる機能等)が上乗せされます。林野庁の運搬マニュアルにはこの論点の記載がないため、機体重量と積載物の合計を自分で計算する必要があります。
松くい虫防除で薬剤を撒く場合、承認は不要になりますか。
施行規則第236条の82第2号の要件をすべて満たせば、夜間・目視外・30m未満・危険物輸送・物件投下の承認が不要になります。同号ニは「現に林業の用に供されている森林」の区域内で、樹木の上端から4m以下の高さの空域で飛行させることを条件にしています。ただしこれは資格も認証機体もなしで撒けるルートではありません。通達(令和8年3月23日制定・施行)により第一種又は第二種機体認証と一等又は二等の技能証明が要件とされ、飛行経路下に地上又は水上の物件が存しないこと、立入管理措置を講じることなども求められます。DID上空の許可は外れません。
ドローンでシカを追い払うと、鳥獣保護管理法の許可が必要ですか。
同法第8条が禁じているのは「捕獲等」で、第2条第8項はこれを「捕獲又は殺傷」と定義しています。同法の現行条文に「無人航空機」「飛行」の語はなく、ドローンでの追い払いや調査が「捕獲又は殺傷」に当たるかについて、環境省の一次ソースで説明している記載は見つけられませんでした。条文の定義からは、捕らえも傷つけもしない飛行は該当しないと読む余地がありますが、公式には明示されていません。追い払いや個体数調整を目的とする業務では、飛ばす前に都道府県の鳥獣行政の担当課に確認してください。鳥獣保護区や指定猟法禁止区域のような区域指定がある場所では、区域側のルールも別に確認が必要です。
獣害対策の飛行なら、許可・承認なしで飛ばせる特例があると聞きました。
航空法第132条の92の特例について、国土交通省の適用事例に「獣害を未然に防ぐための飛行」が掲載されています。ただし原文は「人命に危難のおそれのある獣害全般に適用される」と書かれており、掲載事例も地方自治体からの依頼により市街地に侵入した熊の探索を行ったものです。教則(第5版)も「国や地方公共団体にかかわらない独自の活動にあっては、特例の対象とはならず、国の飛行の許可・承認などの手続き等が必要となる」としています。苗木の食害のような財産被害だけの獣害調査にこの特例が使えるとは書かれていません。
国有林の収穫調査を森林管理署から受託しました。入林届は必要ですか。
関東・東北・中部・近畿中国・九州局は、森林管理局・署等が発注する事業や調査等の受託者が国有林野内で無人航空機を飛行させる場合は入林届の提出は必要ない、と明記しています。ただし航空法の許可・承認と飛行計画の通報、飛行日誌は、これとは別に必要です。入林届そのものの要否・期限・様式は局ごとに違うため、国有林でドローンを飛ばすときの入林届と管轄の局のページで確認してください。
民有林で飛ばすとき、所有者の同意は必ず必要ですか。
上空の飛行そのものについては、政府の整理では第三者の土地の上空を飛ばすのに「常に土地所有者の同意を得る必要がある訳ではない」とされ、同意が必要な高度の一律の基準も「存在しない」とされています。一方、山林では離着陸や機材の搬入で土地そのものに立ち入るのが通常です。林野庁の運搬マニュアルも飛行ルートの検討について「必要に応じて土地所有者からの同意を得る必要があります」と書き、UAV立木調査マニュアルは「民地の多い区域において公道等を利用する場合は、道路管理者等からの承諾等が必要になる」としています。上空の議論と、立ち入る土地の権原は分けて整理してください。
ドローンで撮った画像は、補助事業の検査に使えますか。
林野庁は、森林整備事業の申請・検査でデジタル技術を使えるよう通知類を見直しており、2020(R2)年度の事業から適用されています。森林環境保全整備事業実施要領の運用で「オルソ画像・ドローン単写真・点群データ等の提出があれば、作業前・作業後の写真を省略できる」ようにし、造林補助事業竣工検査内規例で「オルソ画像等で施業の実施状況が確認できる場合には、現地での確認を省略できる」「この場合、申請書類(ドローン画像等のファイルを含む)のみで検査が完結できる」こととされています。具体的な運用は「森林整備事業における補助金のデジタル申請・検査ガイドライン」と、事業を所管する都道府県・市町村の窓口で確認してください。
この記事の一次ソース
  1. e-Gov法令検索|航空法(昭和二十七年法律第二百三十一号)
  2. e-Gov法令検索|航空法施行規則(昭和二十七年運輸省令第五十六号)
  3. e-Gov法令検索|森林法(昭和二十六年法律第二百四十九号)
  4. e-Gov法令検索|鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律(平成十四年法律第八十八号)
  5. 国土交通省|無人航空機に係る規制の運用における解釈について(解釈通達・令和8年4月1日最終改正・PDF)
  6. 国土交通省|無人航空機の飛行に関する許可・承認の審査要領(カテゴリーⅡ飛行)令和8年9月29日最終改正(PDF)
  7. 国土交通省|無人航空機の飛行の安全に関する教則 第5版(PDF)
  8. 国土交通省|捜索・救助等のための特例(航空法第132条の92)適用事例(PDF)
  9. 国土交通省|航空法第132条の92の適用を受け無人航空機を飛行させる場合の運用ガイドライン(PDF)
  10. 国土交通省|航空法施行規則第236条の82第1項第2号の規定により飛行の方法に係る承認が不要な飛行の取扱い(令和8年3月23日・PDF)
  11. 国土交通省|無人航空機による輸送を禁止する物件等を定める告示(平成27年国土交通省告示第1142号・PDF)
  12. 国土交通省|無人航空機の飛行許可・承認手続
  13. 国土交通省|無人航空機の飛行ルール(飛行禁止空域・飛行の方法)
  14. 林野庁|森林づくりの新たな技術ー造林関係(ドローン等)ー
  15. 林野庁|ドローンを活用した苗木等運搬マニュアル(2023年3月改訂・PDF)
  16. 林野庁|UAV立木調査マニュアル(平成31年3月・PDF)
  17. 林野庁|高精度な森林情報の整備・活用のためのリモートセンシング技術やその利用方法等に関する手引き(平成30年3月・PDF)
  18. 林野庁|森林整備事業の申請・検査におけるデジタル技術の活用について(デジタル申請・検査ガイドライン)
  19. 林野庁 関東森林管理局|国有林野内で無人航空機(ドローン、ラジコン機等)を飛行させる場合の手続
  20. 林野庁 北海道森林管理局|国有林への入林
  21. 環境省|捕獲許可制度の概要
  22. 内閣官房|無人航空機の飛行と土地所有権の関係について
本記事は2026年9月27日時点の情報です。 無人航空機の制度は改正が続いており、解釈通達・審査要領も通達として短い手続で改正され得ます。また林野庁・環境省の資料は作成時期が古いものがあり、航空法の記述が現行と異なる場合があります。とくに「作業員が第三者に当たるか」「林内の工作物が第三者の物件に当たるか」は現場ごとの個別判断です。実際の申請・飛行の前に、必ず上記の一次ソースで最新の内容をご確認ください。

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