災害対応でドローンを飛ばす。捜索救助の特例と緊急用務空域
災害時のドローンには、正反対の向きに働く2つの制度があります。ひとつは捜索救助の特例(航空法第132条の92)で、飛行禁止空域も飛行の方法も、飛行計画の通報も飛行日誌も、丸ごと適用されなくなります。もうひとつは緊急用務空域で、こちらは許可を持っていても飛べません。 この2つは、同じ被災地で同時に成立します。捜索救助のヘリが飛ぶために空域が閉じられ、その閉じた空域を、特例の対象になる主体だけが飛べる——という構造です。 そして両者の境界にいるのが自治体から依頼を受けた民間事業者です。特例は「災害だから誰でも自由に飛ばせる」制度ではなく、主体・目的・緊急性の3つがそろって初めて成立する制度です。教則は「国や地方公共団体にかかわらない独自の活動にあっては、特例の対象とはならず」と明記しています。 この記事は、条文と省令と通達で特例の輪郭を確定させ、そのうえで「特例が使えないとき、災害時に何ができるか」まで整理します。人命に関わる領域なので、公式に書かれていないことは書かれていないと明示します。
法第132条の92/規則第236条の88・第236条の89/教則第5版 3.1.2(2)3)a教則第5版 3.1.2(2)1)b/緊急用務空域Q&A A.3法第132条の88第1項ただし書/規則第236条の83第4項・第5項捜索救助の特例を条文で読む。主体と目的
まず条文そのものを見ます。航空法第132条の92は、たった一文です。
読み取るべき要素は3つです。①誰が(主体)②何のために(目的)③何が適用されなくなるか(効果)。主体と目的は、どちらも国土交通省令=航空法施行規則に投げられています。
主体は4種類。条文と省令に分かれて書かれている
法文が直接書いているのは都道府県警察だけです。残りは施行規則第236条の88にあります。
「法第百三十二条の九十二の国土交通省令で定める者は、国若しくは地方公共団体又はこれらの者の依頼により捜索若しくは救助を行う者とする。」
つまり特例の主体は、次の4つです。
- 都道府県警察(法第132条の92が直接規定)
- 国(規則第236条の88)
- 地方公共団体(同)
- 国又は地方公共団体の依頼により捜索若しくは救助を行う者(同)
解釈通達(無人航空機に係る規制の運用における解釈について)の8.と、運用ガイドラインの2.は、国・地方公共団体・その依頼を受けた者の3つだけを列挙しています。都道府県警察が抜けているのは、それが法文に直書きされていて省令の対象ではないからです。列挙の粒度が違うだけで、内容の食い違いではありません。
目的は「捜索又は救助」。ただし中身は通達で大きく広がる
規則第236条の89も一文です。「法第百三十二条の九十二の国土交通省令で定める目的は、捜索又は救助とする。」
これだけ読むと「行方不明者を捜す」「遭難者を助ける」に限られそうに見えます。ところが解釈通達8.は、この「捜索又は救助」を次のように定義しています。
ここが実務上もっとも重要です。「調査・点検、捜査等の実施を含む」と明記されているため、人を直接捜していなくても、人命の危機や財産の損傷を回避するための調査であれば対象になり得ます。さらに解釈通達は、大規模災害時の具体例を挙げています。
| 通達・教則が挙げる飛行 | 位置づけ |
|---|---|
| 被災者の捜索又は救助 | 特例の中核。文言どおりの適用 |
| 被災地の孤立地域等への医薬品、衛生用品、食料品、飲料水等の生活必需品の輸送 | 「多数の道路の寸断や集落の孤立が発生する可能性がある」ことを理由に、特例に該当する飛行として取り扱うものとされています |
| 危険を伴う箇所での調査・点検 | 同上。人が立ち入れない箇所の状況確認がここに入ります |
| 住民避難後の住宅やその地域の防犯対策のための飛行 | 同上。「財産の損傷を回避するための措置」として明記されています |
| 震災発生に伴う仮設住宅建設予定調査 | 教則第5版が、国土交通省ホームページの参考資料に示された具体的な適用事例として挙げています |
| 獣害を未然に防ぐための飛行 | 同上。適用事例の資料は熊の事例を示し「当該特例は熊に限らず、人命に危難のおそれのある獣害全般に適用される」としています |
「緊急性がある」の定義は、申請の手段又はいとまがないこと
主体と目的を満たしても、それだけでは足りません。解釈通達と運用ガイドラインは、どちらも「緊急性がある」ことを要件として挙げ、その意味を注で定義しています。
この線引きは、抽象論ではありません。国土交通省航空局が公開している適用事例の資料には、特例を使わずに飛んだ事例が含まれています。台風10号の大雨災害で被災箇所を調査した事例は、見出しが「特例を適用することも想定される事例」となっており、本文はこう書いています。
「例えば、土砂崩れ等が発生し、人命等に危難のおそれがある地域において、被災状況の全容把握や二次災害防止のための調査を行う場合で、かつ申請する暇がない場合にあっては、自治体からの依頼により、当該特例を適用の上、有志で結成された団体が無人航空機により調査を実施することが可能。」
同じ災害、同じ目的、同じ主体でも、申請する余裕があったかどうかで特例に乗るか乗らないかが変わるという実例です。そして国土交通省自身が、特例に乗らずに飛行計画の通報だけで飛んだケースを「そういうものだ」と紹介しています。災害時だから特例、という自動的な当てはめはできません。
「手段がない」ほうも要件のひとつ
注の文言は「申請を行う手段又はいとまがない」です。通信が途絶して申請の手段がない場合も、時間的余裕がない場合も、どちらも該当し得ます。ただし後述するとおり、審査要領は災害時に電話や電子メールでの申請を認めており、執務時間外でも管轄事務所に電話で連絡を入れるルートを用意しています。「手段がない」と言えるかどうかは、このルートが使えたかどうかで判断されることになると読めますが、この点を明示した公式の記述は確認できていません。
特例で消える義務と、消えない義務
効果の範囲は、条文の列挙で機械的に決まります。運用ガイドライン1.は、その範囲を条文単位で書き出しています。
| 項目 | 根拠条文 | 特例が適用されると |
|---|---|---|
| 飛行禁止空域 (空港等周辺・緊急用務空域・150m以上・DID上空)とその許可 |
法第132条の85 | 適用されない。許可が不要になり、緊急用務空域の飛行禁止も及びません |
| 立入管理措置・安全確保措置 | 法第132条の85 第1項・第3項 |
適用されない(条文ごと除外されるため) |
| 技能証明・機体認証を要件とする仕組み | 法第132条の85第1項 法第132条の86第2項 |
これらを要件とする条文自体が働かなくなります。ただしこの点を明示した公式の解説は確認できていません |
| 夜間・目視外・30m未満・催し場所上空・危険物輸送・物件投下とその承認 | 法第132条の86 第2項〜第5項 |
適用されない。承認は不要になります |
| アルコール又は薬物の影響下での飛行禁止 | 法第132条の86 第1項第1号 |
残ります |
| 飛行前の確認 | 法第132条の86 第1項第2号 |
残ります |
| 航空機・他の無人航空機との衝突予防(降下等) | 法第132条の86 第1項第3号 |
残ります。捜索救助のヘリが飛ぶ現場でこれが効きます |
| 他人に迷惑を及ぼす方法での飛行禁止 | 法第132条の86 第1項第4号 |
残ります |
| 飛行中に人の立入りを確認したときの措置 | 法第132条の87 | 適用されない |
| 飛行計画の通報 | 法第132条の88 | 適用されない |
| 飛行日誌 | 法第132条の89 | 適用されない |
| 事故の報告(人の死傷・物件の損壊・航空機との衝突接触)と事故時の措置 | 法第132条の90 | 残ります。第132条の92の列挙に入っていません |
| 重大インシデントの報告 | 法第132条の91 | 残ります。同じ理由です |
| 機体の登録・登録記号の表示・リモートID | 法第132条の2以下 | 残ります。同じ理由です |
特例適用者に残る、ガイドライン上の手続き
法律上の義務ではありませんが、運用ガイドライン3.(1)は、特例適用者が空港等周辺・緊急用務空域・150m以上の高さ(法第132条の85第1項第1号の空域)を飛ばす場合の手順を定めています。
hの「飛行の依頼元」の例として挙げられているのは「○○県△△消防局」です。依頼に基づく飛行では、依頼元を事案ごとに特定して伝える前提になっていることが読み取れます。
ガイドラインはこのほか、飛行空域を監視して航空機を確認したときは飛行を中止させ又は十分な距離を保つこと(3.(2))、審査要領を参考に目的に応じた飛行マニュアルを定めておくことが望ましいこと(4.)、大規模災害時は現地災害対策本部等を通じて飛行の日時・場所を調整することが望ましいこと(5.)を挙げています。4.と5.はいずれも「望ましい」「期待される」という書き方で、義務ではありません。
民間事業者は「依頼を受けた者」に当たるのか
ここが、この記事を読む方の多くにとって本題でしょう。結論から言えば、条文の文言上は入ります。規則第236条の88が「これらの者の依頼により捜索若しくは救助を行う者」と書いており、主体を公的機関に限定していません。教則第5版も「国や地方公共団体又はこれらから依頼を受けた者が」と書いています。
そして国土交通省航空局は、民間事業者が特例で飛んだ事例を公表しています。「航空法第132条の92の特例適用の対象となり得る事例」という資料に、次の事例が載っています。
| 事例 | 実施者と依頼元 | 資料の記載 |
|---|---|---|
| 仮設住宅建設予定地調査 (能登半島地震) |
イームズロボティクス株式会社 依頼元:地方自治体 |
「地方自治体からの依頼により、民間事業者が無人航空機の飛行を実施」。避難生活の長期化による災害関連死を防ぐため早急に仮設住宅を建設する必要があった、と理由が書かれています |
| 港湾施設の被災状況確認 (能登半島地震) |
いであ株式会社 依頼元:国 |
「国からの要請により、民間事業者が無人航空機の飛行を実施」。令和6年1月2・3・4日、金沢港・七尾港・輪島港 |
| 河川災害の被災箇所調査 (能登半島地震) |
株式会社国土開発センター 依頼元:国 |
立ち入ることが困難、若しくは立ち入ることにより作業員の人命に危険が及ぶ区域の調査。目視内飛行に限定し、補助者を配置 |
| 台風による大雨災害の 被災箇所調査 |
高校生ドローン防災航空隊 依頼元:自治体 |
「特例を適用することも想定される事例」。実際は特例を使わず、自治体からの要請に基づき飛行計画の通報を行ったうえで飛行 |
| 獣害を未然に防ぐ飛行 (市街地への熊の侵入) |
一般社団法人秋田県ドローン協会 依頼元:地方自治体 |
赤外線を使用した行動範囲調査。「目視外や夜間等における飛行では、原則として国土交通大臣の許可・承認を得たうえで飛行させる必要があるものの、本特例を適応し、飛行許可・承認なしでドローンを飛行させることができた」 |
公表されている5事例のうち4件が民間事業者・民間団体で、依頼元が国または自治体です。民間事業者が「依頼を受けた者」として特例の主体になり得ることは、公式資料で裏づけられていると言えます。
ここから安全側に設計するなら、協定は平時の枠組み、依頼は事案ごとの発動と分けて考え、出動のたびに誰からどの目的で依頼されたかを記録に残せる形にしておくのが無理のない運用です。協定の文面と発動手順が特例の要件を満たすかは、締結先の自治体と所管の航空局・空港事務所に事前に確認してください。
緊急用務空域。許可があっても飛べない空域
ここから、特例とは向きが逆の制度に移ります。緊急用務空域です。
根拠は施行規則第236条の71第1項第4号で、法第132条の85第1項第1号の「国土交通省令で定める空域」の一類型として置かれています。条文はこうです。
そして同条第2項が「国土交通大臣は、前項第四号の規定による指定をしたときは、インターネットの利用その他の適切な方法により、その旨及び当該指定に係る緊急用務空域を公示しなければならない」と定め、第3項で変更・解除にも準用しています。
確認方法。国土交通省のホームページとX
公示の方法は、教則第5版とQ&Aがそろって「国土交通省のホームページ・X(旧Twitter)」としています。Xのアカウントは@mlit_mujinkiです。掲載先は無人航空機(ドローン・ラジコン機等)の飛行ルールのページで、指定がある場合は市区町村名と「令和◯年度緊急用務空域公示第◯号」、指定空域の詳細資料が掲載される運用です。
2026年9月27日時点では、同ページに「現在、緊急用務空域は指定されていません。」と記載されています。指定は「災害等の規模に応じ、その都度」行われるため、平時に見て何もないことは、出動時に何もないことを意味しません。なお同日時点で、DIPS2.0のポータルトップにも「【お知らせ】緊急用務空域に関する情報について(現在:指定空域なし)」という掲示があり、詳細は航空局のページへ案内されています。
飛行開始前の確認義務と、飛行中に指定されたとき
規則第236条の71第4項は「無人航空機を飛行させる者は、その飛行を開始する前に、当該無人航空機を飛行させる空域が緊急用務空域に該当するか否かの別を確認しなければならない」と定めています。該当しないことを確認する行為そのものが義務である点に注意してください。
問題は、飛行中に指定された場合です。Q&A A.3は「無人航空機を飛行させる者(航空法第132条の92の適用を受けて無人航空機を飛行させる者を除く。)は、飛行エリアに新たに『緊急用務空域』が指定された場合、速やかに飛行を中止させる必要があります」としています。そして A.4 が運用の設計を示しています。
つまり公式が想定しているのは、操縦者ではない誰かが指定情報を監視し続ける体制です。災害直後に飛ばす運用では、ここを人員配置として先に決めておく価値があります。独自の飛行マニュアルの作り方は独自の飛行マニュアルを作るべきときと作り方で扱っています。
加えて、緊急用務空域が指定されていない段階でも、国土交通省は「災害等の発生している地域では、捜索、救難活動等の緊急用務を行う有人機(ヘリコプターなど)が飛行する可能性がありますので、まずは有人機の災害活動の妨げにならないよう、当該地域でのドローン・ラジコン機等の飛行は控えてください」と案内しています。
緊急用務空域をどうしても飛ぶ必要があるとき
特例の主体でない者が緊急用務空域を飛ぶには、あらためて許可を取るしかありません。Q&A A.3は「なお、飛行の目的が『災害等の報道取材やインフラ点検・保守など、「緊急用務空域」の指定の変更又は解除を待たずして飛行させることが真に必要と認められる飛行』に限り、新たに国土交通大臣の飛行許可を取得してください」としています。
この「真に必要」の中身は、審査要領(カテゴリーⅡ飛行)の5-1(2)c)にあります。追加基準は7項目です。
| # | 審査要領 5-1(2)c) の追加基準 |
|---|---|
| ① | 「災害時等の報道取材やインフラ点検・保守など、緊急用務空域の指定の変更又は解除を待たずして飛行させることが真に必要と認められる飛行であること。」 |
| ② | 飛行の際には、空港事務所及び緊急用務空域を飛行する航空機の運航者等の関係機関と常に連絡がとれる体制を確保すること |
| ③ | 飛行経路全体を見渡せる位置に、航空機及び無人航空機の飛行状況・気象状況の変化等を常に監視できる補助者を配置し、助言を行わせること |
| ④ | 飛行経路上及びその周辺の空域で、飛行中の航空機及び法第132条の92の適用を受けた無人航空機の接近を確認した場合には直ちに地上に降下させるなどし、衝突のおそれがないことを確認できるまでは飛行させないこと |
| ⑤ | 空港事務所又は関係機関から飛行の中止又は飛行計画(飛行日時・経路・高度等)の変更等の指示がある場合には、それに従うこと |
| ⑥ | 関係機関から飛行に係る情報の提供(飛行の開始・終了の連絡等)を求められた場合には報告すること |
| ⑦ | 第三者に対する危害を防止するため、原則として第三者の上空で飛行させないこと。飛行経路の直下及びその周辺に第三者が立ち入った場合には、飛行の中止又は飛行計画の変更等を行うこと |
④は読み飛ばしやすいのですが、制度の設計思想がここに出ています。許可を得て緊急用務空域を飛ぶ者と、特例で飛ぶ者が同じ空域に併存することが前提になっていて、その場合に譲るのは許可側だと書かれているわけです。
さらに5-1(3)により、緊急用務空域を含む法第132条の85第1項第1号の空域の申請では航空情報の発行手続きが必要で、飛行を行う日の前日までに管轄事務所長等へ飛行日時・経路(緯度経度と所在地)・高度(下限と上限の海抜高度)・機体数・機体諸元を通知する体制の構築が求められます。申請先も、DID上空や飛行の方法の承認とは異なり、飛行を行おうとする場所を管轄する空港事務所長です。
災害時の緊急申請。電話と電子メール
通常、許可・承認の申請は飛行開始予定日の10開庁日前までに書面又はDIPS2.0で提出します。災害対応でこの日数が確保できるはずもなく、審査要領2-1(1)c)はその例外を置いています。
「また、緊急を要する場合の夜間等の執務時間外における申請については、管轄事務所に電話で連絡を入れさせること。当該申請については、その後、国土交通省航空局安全部無人航空機安全課、地方航空局保安部運航課又は空港事務所の担当者が申請者宛てに電話等で連絡を行うことにより、必要な内容を聞き取った上で、許可等の可否を判断するものとする。」
| ルート | 使える場合(審査要領2-1(1)c)) |
|---|---|
| (ア) 電話による申請 |
「事故及び災害」が災害対策基本法第2条第1号の「災害」にあたる場合又はこれに類する場合で、かつ緊急に支援活動をする必要がある場合 |
| (イ) 電子メール等による申請 |
・事故及び災害に際して緊急に支援活動をする必要がある場合 ・事故及び災害の報道取材のため緊急を要する場合 ・その他特に緊急を要する場合 |
電話のほうが要件が絞られていて、災害対策基本法第2条第1号の「災害」という具体的な参照が入っています。その定義は「暴風、竜巻、豪雨、豪雪、洪水、崖崩れ、土石流、高潮、地震、津波、地盤の液状化、噴火、地滑りその他の異常な自然現象又は大規模な火事若しくは爆発その他その及ぼす被害の程度においてこれらに類する政令で定める原因により生ずる被害」です。
なお、申請書の「飛行の目的」には「事故・災害対応等」という区分があり、例示は「土砂崩れ等の被害調査、山岳救助、水難者捜索、被災者捜索、火災の原因等の調査、交通事故現場検証 等」です。報道取材と物資輸送は別の区分になります。許可・承認の全体像はドローンの飛行許可・承認申請 完全ガイドを、差戻しの回避はDIPS2.0で差戻しになる原因と、その直し方をご覧ください。
航空法の外に残るもの
小型無人機等飛行禁止法は、航空法の特例では外れない
第132条の92は航空法の条文だけを適用除外にします。他の法律には届きません。災害対応でとくに当たりやすいのが小型無人機等飛行禁止法です。この法律にも独自の適用除外があり、第10条第2項の第3号が「国又は地方公共団体の業務を実施するために行う小型無人機等の飛行」を挙げています。
なお、民間事業者が自治体の依頼で飛ぶ場合に、それが「国又は地方公共団体の業務を実施するために行う」飛行に当たるかを明示した公式資料は確認できませんでした。原子力事業所や自衛隊施設の周辺が絡む災害では、この点を警察(都道府県公安委員会)と施設管理者に事前に確認してください。違反には拘禁刑又は罰金の定めがあります(同法第13条第1項)。
屋内は航空法の外。避難所などの整理に使える
解釈通達9.は「建物内等の屋内での飛行については、航空法上の各規制は適用されない」としています。体育館などの屋内で飛ばす場合は、そもそも特例を持ち出す必要がありません。ただし施設管理者の承諾や労働安全衛生上の措置は別に残ります。
被災した事業者側の救済措置。令和8年熊本地震の例
災害は、飛ばす側の資格や登録にも影響します。国土交通省航空局は2026年9月4日、令和8年熊本地震による災害を受けて、次の弾力的措置を公表しました。
| 対象 | 根拠 | 措置 |
|---|---|---|
| 無人航空機操縦者技能証明及び機体認証 | 特定非常災害の被害者の権利利益の保全等を図るための特別措置に関する法律(平成8年法律第85号)第3条第2項に基づく告示(令和8年9月4日公布) | 特定被災地域内に住所を有する者について、有効期間を令和9年1月27日まで延長 |
| 無人航空機の登録 | 航空法施行規則第236条の8第2項(天災その他やむを得ない事由により更新を受けることができないと認める場合) | 同じく、登録の有効期間を令和9年1月27日まで伸長 |
対象は特定被災地域内に住所を有する者で、対象市町村として熊本市、八代市、水俣市、山鹿市、菊池市、宇土市、上天草市、宇城市、天草市、合志市、美里町、大津町、菊陽町、西原村、御船町、嘉島町、益城町、甲佐町、氷川町、芦北町、津奈木町が挙げられています。「住所を有する者」という基準であり、被災地で活動する者ではありません。平時の更新期限の考え方は技能証明の更新。有効期間3年と更新講習、申請は満了日の1か月前までと機体登録の更新。満了日の1か月前から、が損しないで扱っています。
判定フロー:この飛行は特例に当たるか
よくある質問
- e-Gov法令検索|航空法(昭和二十七年法律第二百三十一号)(第132条の85〜第132条の92)
- e-Gov法令検索|航空法施行規則(昭和二十七年運輸省令第五十六号)(第236条の71、第236条の83、第236条の88、第236条の89)
- 国土交通省|航空法第132条の92の適用を受け無人航空機を飛行させる場合の運用ガイドライン(令和6年11月29日最終改正・PDF)
- 国土交通省航空局|航空法第132条の92の特例適用の対象となり得る事例(PDF)
- 国土交通省|無人航空機に係る規制の運用における解釈について(解釈通達・令和8年4月1日最終改正・PDF)
- 国土交通省|無人航空機の飛行に関する許可・承認の審査要領(カテゴリーⅡ飛行)令和8年9月29日最終改正(PDF)
- 国土交通省航空局|緊急用務空域の設定に関するQ&A(令和5年11月30日時点版・PDF)
- 国土交通省|無人航空機(ドローン・ラジコン機等)の飛行ルール(緊急用務空域の公示・航空局からのお知らせ)
- 国土交通省|無人航空機の飛行の安全に関する教則 第5版(PDF)
- 国土交通省|無人航空機の飛行禁止空域と飛行の方法
- e-Gov法令検索|重要施設の周辺地域の上空における小型無人機等の飛行の禁止に関する法律(平成二十八年法律第九号)
- e-Gov法令検索|災害対策基本法(昭和三十六年法律第二百二十三号)(第2条第1号)
- 国土交通省告示第1113号(令和8年9月4日・技能証明及び機体認証の有効期間の延長・PDF)