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独自の飛行マニュアルを作るべきときと作り方

公開 2026-09-13 更新 2026-09-13 読了 約16分

飛行許可・承認の申請書には、安全体制を示す飛行マニュアルの欄があり、選べるのは「航空局標準マニュアル」「リスク評価ガイドラインに基づき作成した飛行マニュアル」「上記以外の飛行マニュアル」の3つです。かつてあった「航空局ホームページに掲載されている団体等が定める飛行マニュアル」の枠は、2025年12月18日に廃止されました。 標準マニュアルは添付不要で、国土交通省の資料では当該部分の審査を省略する扱いです。一方、独自マニュアルは申請書の記載例に「審査に時間を要します」と明記されています。つまり独自マニュアルは、標準マニュアルの条件では現場が回らないときに、審査の手間と引き換えに選ぶものです。 この記事は、標準マニュアルの本文を条項単位で読み、どこで現場と噛み合わなくなるかを洗い出したうえで、審査要領4-3-2に沿った作り方と、DIPS2.0で求められる「標準マニュアルとの差異」の示し方までを整理します。標準マニュアル7種の対象飛行の違いは全国包括は取れるか。標準マニュアル02の使い方で扱っています。

よく見る説明と、公式の記載
この分野は制度改正が続いており、古い説明や条文上の裏付けがない説明が広く流通しています。この記事で扱う範囲について、実際の一次ソースの記載と突き合わせます。
よく見る説明所属団体の飛行マニュアルを使えば、標準マニュアルと同じように手続が軽く済む。
公式にはこう「航空局ホームページに掲載されている団体等が定める飛行マニュアル」の運用は2025年12月18日施行の審査要領改正で廃止されました。改正後に選べるのは標準マニュアル、リスク評価ガイドラインに基づくもの、その他作成したマニュアルの3つです。
出典 審査要領改正 説明会資料(令和7年11月)p.33
よく見る説明独自マニュアルは自社の運用を自由に書いて添付すればよい。
公式にはこう申請書の記載例は「航空局標準飛行マニュアル及び審査要領4-3-2を参考に作成」するよう求め、DIPS2.0の操作マニュアルは「航空局標準マニュアルとの差異」を記載するよう案内しています。
出典 飛行許可・承認申請書の記載例/DIPS2.0操作マニュアル(飛行許可・承認申請編)ver2026/6/22 P.01-52
よく見る説明標準マニュアルを選んでおけば、細かい条件は現場判断で調整してよい。
公式にはこう国土交通省は標準マニュアルを使う場合「必ず熟読いただき内容を理解した上ご使用願います」としています。たとえば航空局標準マニュアル02には「夜間の目視外飛行は行わない」と書かれています。
出典 無人航空機の飛行許可・承認手続ページ/航空局標準マニュアル02 3-1(17)

申請書の「飛行マニュアル」欄は3択

まず、飛行マニュアルが申請のどこに位置づくかを条文から確認します。航空法施行規則は、許可の申請書(第236条の74)と承認の申請書(第236条の81)のどちらにも、第7号として「無人航空機を飛行させる際の安全を確保するために必要な体制に関する事項」を記載するよう定めています。

ただし、施行規則にも航空法にも「飛行マニュアル」という語は出てきません。この第7号を具体化しているのは通達である審査要領で、2-2-1(7)が次のように定めています。

「4-3-2に基づき作成した飛行マニュアルを申請書に添付すること。なお、リスク評価ガイドラインに基づき作成した飛行マニュアルを使用する場合は、当該飛行マニュアルを申請書に添付すること。」
(無人航空機の飛行に関する許可・承認の審査要領(カテゴリーⅡ飛行)2-2-1(7)。承認申請の2-2-2(7)も同じ)

そして審査要領の様式1(申請書)では、この欄が次の選択式になっています。

様式1の選択肢(原文)添付審査上の扱い(公式資料の記載)
☐航空局標準マニュアルを使用する。 不要(「航空局標準マニュアルを使用する場合には、マニュアルの添付は不要です。」) 航空局が公開したマニュアルを使うことで「当該部分の審査を省略し迅速化」(説明会資料p.32)
☐リスク評価ガイドラインに基づき作成した飛行マニュアル(別添)を使用する。 別添 内容を添付して審査を受ける。ガイドラインは福島ロボットテストフィールドのサイトで最新版を確認するよう案内されている
☐上記以外の飛行マニュアル(別添)を使用する。 別添 「独自の飛行マニュアルを使用する場合には、審査に時間を要します。」(申請書の記載例)
☐変更申請であって、かつ、左記事項に変更がない。 — 変更申請で体制に変更がない場合

この記事で「独自の飛行マニュアル」と呼ぶのは、主に3つ目の「上記以外の飛行マニュアル」です。国土交通省の申請書記載例も「独自の飛行マニュアル」という言い方をしています。

どれくらい審査が長くなるのか:公式に書かれているのは「審査に時間を要します」だけで、何日延びるかは公式には明示されていません。申請は飛行開始予定日の10開庁日前までが基本で、国土交通省は3〜4週間程度の余裕を推奨しています。独自マニュアルで出す場合は、これよりさらに前倒しで逆算しておくのが無難です(本サイトの推奨であり、公式の基準ではありません)。

2025年12月18日、団体マニュアルの枠がなくなった

独自マニュアルを検討する事業者が増えている直接の理由がこれです。国土交通省の説明会資料(令和7年11月)は、安全体制を示すマニュアルの選択肢を次のように整理しています。

安全体制を示すマニュアル(説明会資料p.33の原文)
改正前 「標準マニュアル」又は「航空局ホームページに掲載されている団体等が定める飛行マニュアル」、「リスク評価ガイドラインに基づき作成した飛行マニュアル」、「その他作成したマニュアル」の使用
改正後
(2025年12月18日〜)
「標準マニュアル」又は「リスク評価ガイドラインに基づき作成した飛行マニュアル」、「その他作成したマニュアル」の使用

廃止の理由について、資料は「『航空局標準マニュアル』の公開により『航空局ホームページに掲載されている団体等が定める飛行マニュアル』の活用例が減少していることから、関係する運用を廃止いたします」と説明しています。

ここで押さえるべきは、審査の省略が認められていたのが「標準マニュアル」と「団体マニュアル」の2つだったという点です。説明会資料p.32は、この2つを「航空局が公開または確認済みの飛行マニュアル」と位置づけ、使用することで当該部分の審査を省略していたと書いています。団体マニュアルがなくなった今、審査が省略される選択肢は標準マニュアルだけになりました。

団体マニュアルから移る先は、標準マニュアルか、独自マニュアル(リスク評価ガイドラインに基づくものを含む)のいずれかです。 なお、同じ改正で「ホームページ掲載無人航空機」「ホームページ掲載講習団体等が行う技能認証(民間技能認証)」の運用も廃止され、これらを含んでいた2025年12月18日以前の申請は「複製」「変更申請」「更新申請」ができず、新規申請が必要とされています。団体マニュアルを使っていた申請について、同じ扱いになるかを明示した公式の記載は、本記事で確認した資料の範囲では見当たりません。更新や変更を控えている場合は、申請先の地方航空局・空港事務所に扱いを確認してください。

独自マニュアルが必要になる場面①:対象飛行・適用範囲が合わない

1つ目は、標準マニュアルの表紙に書かれた対象飛行と適用範囲が、申請する飛行と合わない場面です。国土交通省の飛行許可・承認手続ページに掲載されている標準マニュアルは7種類(いずれも令和7年12月26日版)で、表紙の記載は次のとおりです。

マニュアル対象となる飛行(表紙)適用範囲(表紙)
航空局標準マニュアル01空港等周辺・150m以上・DID・夜間・目視外・30m・催し・危険物・物件投下場所を特定した申請
航空局標準マニュアル02DID・夜間・目視外・30m・危険物・物件投下場所を特定しない申請
インフラ点検01空港等周辺・150m以上・DID・夜間・目視外・30mインフラ点検及び設備メンテナンス(プラント保守)目的・場所を特定した申請
インフラ点検02DID・夜間・目視外・30mインフラ点検目的・場所を特定しない申請
空中散布DID・夜間・目視外・30m・危険物・物件投下空中散布目的
研究開発150m以上・DID・夜間・目視外・30m・物件投下研究開発目的・場所を特定した飛行に限る
レベル3.5飛行DID・夜間・目視外・30m・危険物・物件投下機上カメラ装置により立入管理措置をとる目視外飛行

汎用の航空局標準マニュアル01は特定飛行の類型をすべて含んでいるため、「場所を特定する」ことを受け入れれば、類型の面では01でカバーできます。したがって場面①で独自マニュアルが本当に必要になるのは、次のような組み合わせです。

  • 分野別マニュアルの適用範囲に業務が収まらないとき。インフラ点検版は催し・危険物・物件投下を含まず、研究開発版は場所を特定した飛行に限られます。分野別版の条件を使いたいが、対象飛行が足りない場合です(詳しくはインフラ点検専用の標準マニュアルがある。一般版との違い)
  • 場所を特定しない申請にしたいが、02の対象飛行・条件に収まらないとき。ただし空港等周辺・150m以上・催し場所上空などは、マニュアルに関係なく、審査要領の様式1の注記や手続ページで「場所を特定した」申請が必要とされている飛行です。独自マニュアルにしても場所の特定は外せません(全国包括は取れるか)
  • 標準マニュアル01と02を1件の申請で併用したいとき。手続ページは「申請の際、標準マニュアル02と併用した申請は行えません」と明記しています。併用はできないため、申請を分けるか、1本の独自マニュアルにまとめるかの選択になります

独自マニュアルが必要になる場面②:標準マニュアルの条件で現場が回らない

実務で多いのはこちらです。標準マニュアルの本文には、表紙からは見えない運用上の禁止・制限が条項として書き込まれています。標準マニュアルを使うと申請した以上、飛行はその条件に従うことになります。航空局標準マニュアル01・02の本文から、現場とぶつかりやすい条項を抜き出します。

論点標準マニュアル01標準マニュアル02
夜間×目視外 3-7(1)「夜間飛行においては、目視外飛行は実施せず…」 3-1(17)「夜間の目視外飛行は行わない。」/3-3(1)も同旨
DID上空の夜間・目視外 (該当する禁止条項なし。場所を特定した申請) 3-1(15)「人又は家屋が密集している地域の上空では夜間飛行は行わない。」(16)「…では目視外飛行は行わない。」(業務上やむを得ない場合の条件付き例外あり)
道路・鉄道 3-1(10)一般道上空は車両及び歩行者の通行がないことを確認できた場合のみ/(11)鉄道上は管理者等と調整し、その指示に従い安全が確認できた場合のみ 3-1(10)「高速道路、交通量が多い一般道、鉄道の上空やその付近では飛行させない。」
高圧線・変電所等 — 3-1(11)施設上空及び付近では飛行させない(施設点検等の業務として必要な場合は、範囲の限定等を条件に可)
学校・病院・観光施設等 3-1(9)上空やその付近は飛行させない(施設上空の飛行が必要な場合は、経路を施設内に限定し施設管理者等と体制を調整) 3-1(9)同じく原則飛行させない(施設から依頼があった場合は、休校日・休診日・早朝など第三者が往来する可能性が低い時間帯とする 等)
風・雨 3-1(2)風速5m/s以上の状態では飛行させない/(3)雨の場合や雨になりそうな場合は飛行させない。いずれも、製造者等が定める取扱説明書等で飛行可能と確認している場合はその条件による
目視外の体制 01は3-8(1)、02は3-4(1)「飛行ルート下に第三者がいないことを確認し、双眼鏡等を有する補助者のもと、目視外飛行を実施する」(3-1(5)の立入管理区画の明示で補助者の配置に代えることは可)
点検の周期 1-1(3)「20時間の飛行毎に」点検を実施
催し場所上空(01のみ) 3-6 プロペラガード装備、風速5m/s以上で飛行しない、飛行速度と風速の和が7m/s以上で飛行させない、高度に応じた立入禁止区画(20m未満=外周から30m 〜 100m以上150m未満=70m) (対象外)
「夜間の目視外飛行」は、汎用の標準マニュアル01・02のどちらでも行えません。 01・02の夜間飛行の節には「夜間飛行においては、目視外飛行は実施せず」と書かれており、同じ文言はインフラ点検02・空中散布の各版にもあります。夜間の目視外飛行を業務に含めるなら、この文言を含まない分野別版の条件を満たすか、独自マニュアルを作るかを検討することになります。なお、夜間の目視外飛行は審査要領上、場所(および、DID上空の場合は日時)を特定して申請する飛行でもあります。

ここで大事なのは、標準マニュアル自身が冒頭で「本マニュアルに記載される手順等は、無人航空機の安全な飛行を確保するために少なくとも必要と考えられるもの」と書き、運航者に「追加的な安全上の措置を講じる」ことを求めている点です。つまり、標準マニュアルより厳しく運用する分には標準マニュアルの趣旨の範囲内です。独自マニュアルが問題になるのは、標準マニュアルの条件を緩めたい・別の方法に置き換えたいときだ、と読むのが自然です(公式に「厳しくする場合は独自扱いにならない」と明示した資料は確認できていません)。

そのほか、次の点も場面②に当たるかを確認する価値があります。

  • 訓練項目の書きぶり:01・02の2-1(1)の操縦練習の表は「離着陸/ホバリング/左右方向の移動/前後方向の移動/水平面内での飛行」です。一方、審査要領4-2(3)b)では、ホバリングは「回転翼航空機に限る」とされています。飛行機(固定翼)でこの表をそのまま使えるかは、公式には明示されていません
  • 補助者の配置が現実的でない運用:01・02は3-1(5)で補助者の配置か立入管理区画の明示を求めています

独自マニュアルが必要になる場面③:申請の外で求められるマニュアル

「独自の飛行マニュアル」は、許可・承認申請に添付するものだけではありません。次の2つは、標準マニュアルの選択とは別の文脈で飛行マニュアルが求められます。

場面根拠・公式の記載ポイント
カテゴリーⅡの
許可・承認不要ルート
航空法第132条の85第3項・第132条の86第4項が「国土交通省令で定める措置」を義務づけ、施行規則第236条の75が「無人航空機を安全に飛行させるために必要な事項を記載した規程の作成及び当該規程の遵守」と定める。手続ページは「この飛行マニュアルは、…その内容や形式は、飛行の実態に即して作成し、これを遵守する必要があります」 技能証明を受けた者が機体認証機で、DID上空・夜間・目視外・30m未満(総重量25kg未満、立入管理措置あり)を飛ばす場合。申請はしないが、規程(マニュアル)は作って守る。標準マニュアルをそのまま規程として使えるかは、確認した公式資料に明示なし
カテゴリーⅢ飛行 手続ページ「飛行の形態に応じたリスク評価結果に基づく飛行マニュアルの作成を含め、運航の管理が適切に行われていることを確認して許可・承認を受けた場合に限ります」 標準マニュアルの選択で済む領域ではない

許可・承認不要ルートの規程に書く事項は、施行規則第236条の75第2項が6号で定めています。①使用する無人航空機の定期的な点検及び整備 ②飛行させる者の技能の維持 ③飛行に支障がないことその他飛行に必要な準備が整っていることの確認 ④飛行させる者及び補助者の役割分担その他の安全管理体制 ⑤事故等が発生した場合における連絡体制の整備その他必要な措置 ⑥その他飛行の特性に応じた措置、です。申請用の審査要領4-3-2と項目の骨格がほぼ重なるため、後述の作り方はこちらにも応用できます。どのルートを選ぶかはドローンの飛行許可・承認申請 完全ガイドで整理しています。

作るかどうかの判定手順

今後の案件で行う飛行の類型をすべて洗い出す(空港等周辺/150m以上/DID/夜間/目視外/30m未満/催し/危険物/物件投下)。あわせて時間帯・場所の種類(道路、鉄道、高圧線、学校・病院等)・気象条件・補助者の人数も書き出す
業務目的に合う分野別の標準マニュアル(インフラ点検・空中散布・研究開発・レベル3.5)があるか。あれば表紙の対象飛行と適用範囲を突き合わせる
場所を特定しない申請にするなら02系、特定するなら01系。01と02は併用できない
選んだ標準マニュアルの本文を条項単位で読み、手順1で書き出した運用と矛盾する条項がないか確認する(前章の表が出発点)
矛盾がない → 標準マニュアルを使う。添付不要で、当該部分の審査は省略される
矛盾がある → その飛行を申請から外す/申請を分ける、で解消できるかを先に検討する
それでも解消できない → 独自の飛行マニュアルを作成し、「上記以外の飛行マニュアル(別添)」で申請する(審査に時間を要する)

手順6を挟むのは、独自マニュアルの審査負担が軽くないためです。たとえば「夜間の目視外」が年に1件しかないなら、日常業務は標準マニュアル02で包括し、その1件だけ場所を特定した別申請にするほうが全体として早い、というケースがあり得ます(本サイトの考え方であり、公式の基準ではありません)。包括と個別の組み合わせ方は包括申請とは。個別申請との違いと、使い分けの判断基準をご覧ください。

作り方①:骨格は審査要領4-3-2の3本柱

作り方について、国土交通省の申請書記載例は「独自の飛行マニュアルを使用する場合には航空局標準飛行マニュアル及び審査要領4-3-2を参考に作成の上、提出してください」としています。したがって骨格は審査要領4-3-2、叩き台は標準マニュアルです。

審査要領4-3-2は「次に掲げる事項等を記載した飛行マニュアルを作成すること」として3つの柱を示し、それぞれに「記載内容の例」を添えています。標準マニュアルの章立てと対応させると次のとおりです。

審査要領4-3-2記載内容の例(審査要領の原文から)標準マニュアル01・02の対応箇所
(1)a)機体の点検・整備の方法 定期的又は日常的な点検・整備の項目/点検・整備の時期 等 1-1(飛行前・飛行後の点検、20時間の飛行毎の点検)
(1)b)点検・整備の記録の作成方法 点検・整備記録の作成手順/点検・整備記録の様式 等 1-2(「無人航空機の飛行日誌の取扱要領」に従い作成)
(2)a)知識及び能力を習得するための訓練方法 4-2の飛行経歴・知識・能力と第5章の飛行形態に応じた能力を習得するための訓練方法/業務のために適切な能力を有しているかを確認する方法 等 2-1(1)(2)(4)〜(7)(基本操縦10時間以上、夜間・目視外・物件投下の練習 等)
(2)b)能力を維持させるための方法 日常的な訓練の内容 等 2-1(3)操縦技量の維持
(2)c)飛行記録(訓練も含む。)の作成方法 飛行記録の作成手順/様式/記録の管理方法 等 2-2
(2)d)飛行させる者が遵守しなければならない事項 (例示なし) 2-3(1)〜(19)
(3)a)飛行前の安全確認の方法 気象状況の確認項目及び手順/機体の状態の確認項目及び手順 等 2-3(2)、3-1
(3)b)安全管理体制 安全飛行管理者の選定/飛行形態に応じた補助者の役割分担及び配置数/補助者の選定方法/立入管理区画の設定方法(塀やフェンス等の設置、看板・コーン等の設置)/緊急時の連絡体制 等 3-1、3-2以降(飛行形態別)
(3)c)事故及び重大インシデントの対応及び連絡体制 非常時の連絡体制/最寄りの警察及び消防機関の連絡先/報告先(無人航空機安全課、地方航空局保安部運航課又は空港事務所)の連絡先 等 最終節「非常時の連絡体制」(01は3-10、02は3-6)

注目したいのは、審査要領が標準マニュアルにない項目も例示している点です。たとえば「安全飛行管理者の選定」「補助者の選定方法」「業務のために適切な能力を有しているかを確認する方法」は、標準マニュアル01・02の本文には独立した項目として置かれていません。独自マニュアルを作るなら、組織の実態に合わせてこうした項目を書き込む余地があります。

また、審査要領4-3-1は体制として遵守すべき事項を(1)〜(19)で列挙しています(第三者の上空の原則禁止、飛行前の確認、不測の事態での即時中止、飲酒・薬物、飛行日誌、事故等の報告、飛行計画の通報、許可書の携行、総重量25kg以上での第三者賠償責任保険 等)。標準マニュアルの2-3はこれを運航者の遵守事項として書き直したものに当たるため、独自マニュアルでも2-3相当の遵守事項は落とさないことが前提になります。

技能証明保有者の訓練の省略:審査要領4-3-2(2)ただし書は、飛行させる無人航空機に対応した現に有効な技能証明(飛行にあたって必要な限定解除を受けたものに限る)を保有し、飛行経歴・知識・能力をすでに確保していると認められるときは、「飛行マニュアルに記載したa)に掲げる事項の訓練を省略することができる」としています。省略できるのは(2)a)の習得訓練で、b)の能力の維持やc)の記録までは含まれていません。

作り方②:飛行形態ごとの体制を第5章に対応させる

審査要領4-3-2は、(1)点検・整備を「4-1及び5.に掲げる…基準に適合した状態を維持するため」、(2)訓練を「4-2及び5.に掲げる…飛行経歴、知識及び能力を確保・維持するため」と書いています。第5章は飛行形態に応じた追加基準です。つまり独自マニュアルは、申請する飛行形態ごとに第5章の追加基準を満たす体制を書き分ける必要があります。

審査要領 第5章飛行形態標準マニュアル01の体制の節
5-1空港等周辺・緊急用務空域・150m以上3-2/3-3/3-4
5-2DID上空3-5
5-3夜間飛行3-7
5-4目視外飛行3-8
5-530mの距離を保てない飛行3-5
5-6催し場所上空3-6
5-7危険物の輸送3-9
5-8物件投下3-9

審査要領の節番号は原本では全角(「5-4」)で書かれています。原本をPDF検索するときは全角で検索してください。

標準マニュアルの条件を置き換える場合の拠り所になるのが、審査要領「4.許可等に係る基本的な基準」本文のただし書です。

「ただし、無人航空機の機能及び性能、無人航空機を飛行させる者の飛行経歴等、安全を確保するために必要な体制等とあわせて総合的に判断し、航空機の航行の安全並びに地上及び水上の人及び物件の安全が損なわれるおそれがないと認められる場合は、この限りでない。」

第5章の節にも同じ趣旨のただし書があります(例:5-1)。独自マニュアルで標準マニュアルの条件を緩める・別の方法に置き換えるなら、その代わりに何によって安全を確保するのか(代替措置)を書くことが、この「総合的に判断」の材料になります。代替措置を伴わない緩和は、審査で説明を求められる可能性が高いと考えるべきです(本サイトの見立てであり、審査の基準として公式に示されたものではありません)。

作り方③:標準マニュアルとの差分の示し方

DIPS2.0での申請では、独自マニュアルの本体を添付するだけでは足りません。DIPS2.0の操作マニュアル(飛行許可・承認申請編 ver2026/6/22)は、飛行マニュアルの選択画面について次のように案内しています。

箇所操作マニュアルの原文
01.新規申請方法
P.01-52
「※航空局標準マニュアルを使用して申請する場合は、飛行時に使用するマニュアルを選択してください(複数選択可)/飛行経路の特定有無によって選択できるマニュアルが異なります。…その他マニュアルを選択した場合は、航空局標準マニュアルとの差異を記載してください。」
11.レベル3.5飛行等の新規申請方法
P.11-19
「※「上記以外の飛行マニュアル(別添)を使用する」を選択した場合は、作成したマニュアルを添付のうえ、航空局が作成した飛行マニュアルからの変更箇所を記載してください。」
添付ファイル ファイル形式:xls,xlsx,doc,docx,pdf,jpg,jpeg,png,gif/容量:10MB

つまり審査側は、標準マニュアルを基準線に置き、そこから何を変えたかを見る前提で案内しています。差分の書式について公式の様式は示されていないため、以下は本サイトが提案する整理の仕方です。

基準にした標準マニュアルと条項標準マニュアルの記載独自マニュアルの記載変更の理由代わりに講じる安全措置
(記入例)航空局標準マニュアル02 3-1(10) 高速道路、交通量が多い一般道、鉄道の上空やその付近では飛行させない。 独自マニュアル◯-◯に定める条件を満たす場合に限り、道路の付近を飛行させる。 業務上、道路に面した構造物の飛行が不可避のため 補助者の配置数、車線への接近時の飛行中止基準、立入管理区画の設定方法 等(独自マニュアル◯-◯)

この形にしておくと、DIPS2.0の「差異」「変更箇所」の記載欄にもそのまま要約を転記でき、補正指示が来たときにどの条項の話かを即座に特定できます。作成時のポイントは次のとおりです(いずれも本サイトの推奨)。

  • 基準にした標準マニュアルの種類と版(例:航空局標準マニュアル02・令和7年12月26日版)を明記する。記載例も「最新の航空局標準マニュアルを確認の上、最新版に更新済みかを確認してください」としています
  • 変えていない条項は「標準マニュアルと同じ」とまとめ、変えた条項だけを対照表に出す。差分が本文のどこにあるかを審査側が探さずに済むようにする
  • 緩める変更には、必ず代替措置を対にする(前章の「総合的に判断」の材料)
  • 独自マニュアル本体の条項番号は、できる限り標準マニュアルの章立て(1.点検・整備/2.訓練及び遵守事項/3.体制)に揃える。対照が容易になる

DIPS2.0での入力不備や補正の起きやすい箇所はDIPS2.0で差戻しになる原因と、その直し方で扱っています。

許可を取った後:変更申請と版の管理

独自マニュアルは作って出したら終わりではありません。運用段階で押さえるべき公式の定めは3つです。

場面公式の定め実務上の意味
マニュアルを改訂したい 審査要領2-1(6):許可等の取得後に「無人航空機を飛行させる際の安全を確保するために必要な体制に関する事項」の内容の一部を変更する場合は変更申請。DIPS2.0でも変更申請事由「飛行マニュアル」が用意されている 社内で改訂しただけでは許可の内容は変わらない。改訂版で飛ばすなら変更申請を通す
審査側からの確認 審査要領3-2(2):許可等を行った飛行について、飛行実績の報告、申請書記載事項及び第5章の基準への適合状況の確認に係る資料の提出又は説明を求めることができる マニュアルどおりに運用した記録(飛行日誌・点検整備記録・訓練記録)を説明できる状態で残す
標準マニュアルが改訂された 手続ページ:標準マニュアルは「航空法等の改正に伴い随時内容が更新されます」「マニュアル内で下線が引かれた箇所が前回版からの改正箇所です」。記載例:独自マニュアルは最新版に更新済みかを確認 基準にした標準マニュアルの改訂(下線部)を追い、独自マニュアルの差分表を更新する

更新申請の時期(満了日の40開庁日前から10開庁日前まで)は包括申請の更新。40開庁日前から10開庁日前までの窓で、訓練記録と並んで求められる飛行日誌の3つの記録は飛行日誌の書き方で扱っています。

よくある質問

独自の飛行マニュアルは必ず作らなければなりませんか。
いいえ。許可・承認申請では、様式1で「航空局標準マニュアルを使用する」を選べばマニュアルの添付は不要です。独自マニュアルが必要になるのは、標準マニュアルの対象飛行・適用範囲が合わないとき、または標準マニュアル本文の条件(夜間の目視外飛行を行わない、風速5m/s以上で飛行させない 等)で現場が回らないときです。
独自マニュアルにすると、審査はどのくらい長くなりますか。
国土交通省の申請書記載例には「独自の飛行マニュアルを使用する場合には、審査に時間を要します」とありますが、具体的な日数は公式には明示されていません。標準マニュアルは「当該部分の審査を省略」する扱いであるのに対し、独自マニュアルは内容が審査されるためです。申請は飛行開始予定日の10開庁日前までが基本で、3〜4週間程度の余裕が推奨されています。
所属団体の飛行マニュアルは、今も使えますか。
「航空局ホームページに掲載されている団体等が定める飛行マニュアル」としての運用は、2025年12月18日施行の審査要領改正で廃止されました。改正後の選択肢は、標準マニュアル、リスク評価ガイドラインに基づき作成した飛行マニュアル、その他作成したマニュアルの3つです。団体マニュアルを使って取得していた許可の変更・更新時の扱いは、本記事で確認した公式資料には明示がないため、申請先の官署に確認してください。
標準マニュアルを一部だけ書き換えて使うことはできますか。
DIPS2.0の操作マニュアルは、その他のマニュアルを選択した場合に「航空局標準マニュアルとの差異を記載してください」、「上記以外の飛行マニュアル(別添)」を選択した場合に「作成したマニュアルを添付のうえ、航空局が作成した飛行マニュアルからの変更箇所を記載してください」と案内しています。標準マニュアルを基にして変更した場合は、独自マニュアルとして別添し、変更箇所を示す流れになります。標準マニュアルを選んだまま条件だけ変える扱いは、公式には示されていません。
標準マニュアルより厳しいルールを社内で追加するのも「独自」になりますか。
標準マニュアルは冒頭で、記載の手順等は「少なくとも必要と考えられるもの」であり、運航者は「追加的な安全上の措置を講じるなど、無人航空機の飛行の安全に万全を期さなければならない」としています。したがって、上乗せの安全措置は標準マニュアル自身が求めている方向です。ただし、上乗せの社内ルールを定めた場合に様式1の選択をどうすべきかを明示した公式資料は確認できていません。
独自マニュアルには何を書けばよいですか。
審査要領4-3-2の3本柱です。(1)無人航空機の点検・整備(方法と記録)、(2)飛行させる者の訓練(習得訓練、能力の維持、飛行記録、遵守事項)、(3)安全を確保するために必要な体制(飛行前の安全確認、安全管理体制、事故・重大インシデントの対応と連絡体制)。申請書の記載例も「航空局標準飛行マニュアル及び審査要領4-3-2を参考に作成」するよう求めています。申請する飛行形態ごとに、第5章の追加基準に対応した体制も書き分けます。
技能証明と機体認証があって許可・承認が不要な飛行でも、マニュアルは要りますか。
要ります。航空法第132条の85第3項・第132条の86第4項と施行規則第236条の75により、安全に飛行させるために必要な事項を記載した規程の作成と遵守が求められます。国土交通省の手続ページは、この飛行マニュアルについて「その内容や形式は、飛行の実態に即して作成し、これを遵守する必要があります」としています。申請は伴いませんが、作成と遵守の義務は残ります。
標準マニュアルは何種類ありますか。
許可・承認申請に使う標準マニュアルは、手続ページに7種類(航空局標準マニュアル01・02、インフラ点検01・02、空中散布、研究開発、レベル3.5飛行)が掲載されています(令和7年12月26日版)。これとは別に、2026年6月1日には施行規則第236条の82第1項第2号により飛行の方法に係る承認が不要となる農薬等の空中散布に適用される「航空局飛行マニュアル」が掲載されています。こちらは承認不要となる飛行に関するもので、申請に添付する標準マニュアルとは位置づけが異なります。
本記事は2026年9月13日時点の情報です。 審査要領は通達として短い手続で改正され、航空局標準マニュアルやDIPS2.0の操作マニュアルも随時更新されます。本記事が引用した標準マニュアルの条項は令和7年12月26日版、DIPS2.0操作マニュアルはver2026/6/22のものです。差分表の書式・審査期間の見込み・運用上の見立ては本サイトの提案であり、公式の基準ではありません。実際の申請前に、必ず上記の一次ソースで最新の内容をご確認ください。

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