インフラ点検専用の標準マニュアルがある。一般版との違い
国土交通省が公開している標準マニュアルは7種類あり、そのうち2種類がインフラ点検専用です(いずれも令和7年12月26日版)。汎用の航空局標準マニュアル01・02しか知らないまま申請している点検事業者は少なくありません。 両者の差は、表紙に並ぶ対象となる飛行と適用範囲に集約されています。インフラ点検版は一般版から「催し」「危険物」「物件投下」を落としている一方、インフラ点検01だけが「設備メンテナンス(プラント保守)」を適用範囲に明記しています。 本文(第1〜3章)は一般版とほぼ共通で、差は表紙の対象飛行と第3章の節構成です。つまり選び方の判断材料は、ほぼ表紙にすべて書かれているということになります。 この記事は、7種類の表紙をすべて並べた比較表から、点検事業者がどれを選ぶべきかを確定させます。点検業務でそもそもどの許可・承認が要るかはインフラ点検でドローンを使うのに必要な許可・承認をご覧ください。
航空局標準マニュアル①(インフラ点検等)・②(インフラ点検)令和7年12月26日版標準マニュアル7種の表紙標準マニュアルとは何をするものか
飛行の許可・承認申請では、安全を確保するための体制を書面で示す必要があります。この書面が飛行マニュアルです。ゼロから自作することもできますが、国土交通省が雛形として公開している標準マニュアルに従うと申告することで、この部分を省く運用が広く使われています。
そして標準マニュアルは、多くの解説が扱っている航空局標準マニュアル01・02だけではありません。国土交通省の飛行許可・承認手続ページからは7種類がリンクされています。インフラ点検専用が2種類あることは、点検事業者にとって直接効く情報です。
7種類すべての対象飛行を1枚に並べる
ここが本記事の核心です。7種類のPDFの表紙に書かれている副題(対象となる飛行)と適用範囲を、そのまま並べます。いずれも令和7年12月26日版です。
| マニュアル | 対象となる飛行(表紙の副題そのまま) | 適用範囲 | 頁 |
|---|---|---|---|
| 航空局 標準マニュアル01 |
空港等周辺・150m以上・DID・夜間・目視外・30m・催し・危険物・物件投下 | 場所を特定した申請 | 10 |
| 航空局 標準マニュアル02 |
DID・夜間・目視外・30m・危険物・物件投下 | 場所を特定しない申請 | 9 |
| インフラ点検01 | 空港等周辺・150m以上・DID・夜間・目視外・30m | インフラ点検及び設備メンテナンス(プラント保守)を目的とした(場所を特定した)申請 | 10 |
| インフラ点検02 | DID・夜間・目視外・30m | インフラ点検を目的とした(場所を特定しない)申請 | 9 |
| 空中散布 | DID・夜間・目視外・30m・危険物・物件投下 | 空中散布を目的とした申請 | 13 |
| 研究開発 | 150m以上・DID・夜間・目視外・30m・物件投下 | 研究開発を目的とした申請 ※場所を特定した飛行に限る | 11 |
| レベル3.5飛行 (機上カメラで 立入管理措置) |
DID・夜間・目視外・30m・危険物・物件投下 | 機上カメラ装置により立入管理措置をとる目視外飛行(「レベル3.5飛行」等) | 12 |
なお、空中散布版・研究開発版・レベル3.5版については、本記事は表紙の記載以上のことを扱っていません。これらの本文の詳細は本記事の執筆にあたって確認していないため、該当する業務を行う場合は必ず原本のPDFをご自身で読んでください。URLは記事末尾の一次ソース欄に掲載しています。
表記について:原本の表題は「国土交通省航空局標準マニュアル①(インフラ点検等)」「国土交通省航空局標準マニュアル②(インフラ点検)」、一般版は「国土交通省航空局標準マニュアル①」「同②」です(いずれも令和7年12月26日版)。本記事では読みやすさのため「インフラ点検01」「インフラ点検02」「航空局標準マニュアル01・02」と略記します。(2026年9月27日訂正)
インフラ点検01と02の違い
点検事業者が実際に選ぶのは、この2つのどちらかです。差を抜き出します。
| 航空局標準マニュアル① (インフラ点検等) | 航空局標準マニュアル② (インフラ点検) | |
|---|---|---|
| 対象となる飛行 | 空港等周辺・150m以上・DID・夜間・目視外・30m (6類型) |
DID・夜間・目視外・30m (4類型) |
| 適用範囲 | インフラ点検及び設備メンテナンス(プラント保守)を目的とした申請 | インフラ点検を目的とした申請 |
| 場所 | 場所を特定した申請 | 場所を特定しない申請 |
| 分量 | 10ページ | 9ページ |
| 版 | 令和7年12月26日版 | |
差は2つです。01のほうが対象飛行が2つ多く(空港等周辺・150m以上)、そのぶん場所を特定した申請に限られる。02は対象飛行が4つに絞られる代わりに、場所を特定しない申請に使える。この関係は、汎用の航空局標準マニュアル01・02と同じ構造です。点検業務を全国で反復して回している事業者にとっては、インフラ点検02が基本の選択肢になります。
場所を特定しない申請そのものの限界は全国包括は取れるか。標準マニュアル02の使い方で、包括申請の全体像は包括申請とは:個別申請との違いと使い分けで扱っています。
読み取れる事実①:催し・危険物・物件投下が入っていない
インフラ点検版の副題を一般版と見比べると、はっきり落ちているものがあります。
| 飛行の類型 | 標準01 | 標準02 | インフラ点検01 | インフラ点検02 |
|---|---|---|---|---|
| 空港等周辺 | あり | — | あり | — |
| 150m以上 | あり | — | あり | — |
| DID上空 | あり | あり | あり | あり |
| 夜間 | あり | あり | あり | あり |
| 目視外 | あり | あり | あり | あり |
| 30m未満 | あり | あり | あり | あり |
| 催し場所上空 | あり | — | — | — |
| 危険物の輸送 | あり | あり | — | — |
| 物件投下 | あり | あり | — | — |
通常の点検業務でこの3つに当たる場面は多くありませんが、ゼロでもありません。想定されるのは、たとえばイベント会場の仮設構造物の点検、点検の一環として何らかの物を投下・設置する作業、点検に用いる薬剤やガス等が危険物に当たる場合などです。「点検だから専用版でよい」と自動的に決めず、実際に行う飛行の類型を副題と突き合わせてください。その洗い出しの手順はインフラ点検でドローンを使うのに必要な許可・承認で扱っています。
読み取れる事実②:空港等周辺があるのは2種類だけ
7種類全体を見渡すと、もう1つ明確な傾向が出ます。「空港等周辺」が対象飛行に入っているのは、標準01とインフラ点検01の2つだけです。ほかの5種類には一切ありません。
共通しているのは、この2つがどちらも「場所を特定した申請」に適用されるものだという点です。逆に言えば、場所を特定しない申請(02系)には、空港等周辺が一切含まれていません。150m以上も同様で、02系には入っていません(研究開発版には150m以上がありますが、これは「場所を特定した飛行に限る」と明記されたマニュアルです)。
インフラ点検02の副題(DID・夜間・目視外・30m)は、カテゴリーⅡBの4類型とちょうど一致します。インフラ点検01は、そこに空港等周辺と150m以上というカテゴリーⅡA側の2類型を加えた構成です。
点検業務に引き直すと、判断は単純になります。空港の制限表面にかかる設備の点検、または構造物から離れて高度150m以上に出る飛行を含む案件は、インフラ点検01(場所を特定した申請)で組む。それ以外の反復業務は、インフラ点検02で場所を特定せずに取る。この2階建てが基本形です。
読み取れる事実③:プラント保守を明記しているのは01だけ
3つ目は、適用範囲の文言そのものの差です。表紙の記載を並べます。
| マニュアル | 適用範囲の記載 |
|---|---|
| インフラ点検01 | インフラ点検及び設備メンテナンス(プラント保守)を目的とした(場所を特定した)申請 |
| インフラ点検02 | インフラ点検を目的とした(場所を特定しない)申請 |
プラント保守を業務にしている事業者にとって、この差は実務判断に直結します。考えられる進め方は3つです。
本文はほぼ共通。差は表紙と第3章の節構成
ここまで表紙の話ばかりしてきたのには理由があります。本文(第1〜3章)は一般版とインフラ点検版でほぼ共通であり、差は表紙の対象飛行と、第3章の節構成(対象飛行の数に対応)だからです。
第3章は「安全を確保するために必要な体制」で、対象飛行の類型ごとに節が置かれています。対象飛行が6つあるインフラ点検01は節が多く、4つのインフラ点検02は節が少ない。それだけの関係です。汎用版01・02の第3章の節構成は全国包括は取れるか。標準マニュアル02の使い方で一覧にしています。
なお、汎用版01・02に共通する要求事項——10時間以上の操縦練習、十分な経験を有する者の監督、日常点検の項目が「無人航空機の飛行日誌の取扱要領」に基づくこと、技能証明保有者による練習の一部省略の規定——については、汎用版の原本で確認済みの内容として全国包括は取れるか。標準マニュアル02の使い方にまとめています。
どれを選ぶか。判定の順序
ここまでの整理を、選択の手順に落とします。
実務上の落ち着きどころは、汎用版と同じく2階建てです。日常の反復点検はインフラ点検02で場所を特定せずに取り、空港の制限表面にかかる案件や150m以上に出る案件が入ったら、その都度インフラ点検01で場所を特定した申請を別に立てる。申請は飛行開始予定日の10開庁日前までとされ、国土交通省は3〜4週間程度の余裕を推奨しているため、受注段階での逆算が要ります。
独自マニュアルを作るべきなのはどんなときか
標準マニュアルは便利ですが、万能ではありません。次のいずれかに当たるなら、独自の飛行マニュアルを作るほうが結果的に早く、現場も回ります。
| 状況 | 理由 |
|---|---|
| 行う飛行の類型が、どの標準マニュアルの副題にも収まらない | 点検に加えて催し場所上空や物件投下が入る場合など。マニュアル側で扱えない以上、選択肢がありません |
| 標準マニュアルの条件どおりに現場を回せない | マニュアルは申請書の一部です。書いた条件と実際の運用が食い違うのは、許可の条件違反という別の問題を生みます。回せないなら、回せる内容で自作するほうが健全です |
| 複数の業務分野をまたいでいる | 点検と空撮、点検と測量など。分野別マニュアルは適用範囲が目的で限定されているため、業務全体を1本で覆えないことがあります |
| これまで団体の飛行マニュアルを使っていた | 2025年12月18日にその運用は廃止されました。標準マニュアルに移るか、独自マニュアルを作るかの二択です |
| カテゴリーⅢ飛行を行う | 飛行の形態に応じたリスク評価結果に基づく飛行マニュアルの作成が求められ、標準マニュアルの範囲を超えます |
逆に、独自マニュアルにすると審査は重くなります。標準マニュアルは「この雛形に従う」と示すだけで安全体制の記載を済ませられますが、独自マニュアルは内容そのものが審査対象になります。標準マニュアルで足りるなら標準を使い、足りないときだけ自作する——判断の順序としては、これが原則です。
よくある質問
- 国土交通省航空局標準マニュアル①(インフラ点検等)(令和7年12月26日版・PDF)(2026年9月27日訂正)
- 国土交通省航空局標準マニュアル②(インフラ点検)(令和7年12月26日版・PDF)(2026年9月27日訂正)
- 国土交通省航空局標準マニュアル①(令和7年12月26日版・PDF)
- 国土交通省航空局標準マニュアル②(令和7年12月26日版・PDF)
- 国土交通省|標準マニュアル(空中散布)(PDF)
- 国土交通省|標準マニュアル(研究開発)(PDF)
- 国土交通省|標準マニュアル(レベル3.5飛行・機上カメラで立入管理措置)(PDF)
- 国土交通省|無人航空機の飛行許可・承認手続
- 国土交通省|無人航空機の飛行に関する許可・承認の審査要領(カテゴリーⅡ飛行)令和8年9月29日最終改正(PDF)
- 国土交通省|審査要領(カテゴリーⅡ飛行)改正に関する説明会資料 令和7年11月(PDF)
- 国土交通省|審査要領の改正に伴う、今後の申請に係る注意事項(PDF)
- 国土交通省|無人航空機の飛行の安全に関する教則 第5版(PDF)
- e-Gov法令検索|航空法(昭和二十七年法律第二百三十一号)