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空撮・映像制作でドローンを使うのに必要な許可・承認と、撮影前の確認

公開 2026-09-30 更新 2026-09-30 読了 約16分

街なかの俯瞰、夕景や夜景、FPVで被写体を追うカット、人物や建物に寄るショット、イベントの記録。空撮の案件は、撮りたい画の中身そのものが航空法の許可・承認の類型に直結します。街なかはDID上空、日の入り後は夜間、モニターやゴーグルだけで追えば目視外、寄れば人又は物件から30m未満、観客のいるイベントなら催し場所上空です(航空法第132条の85・第132条の86)。 一方で、ロケ現場にいる出演者やスタッフは、要件を満たせば「第三者」に当たらないと解釈通達は書いています。30mの距離を誰との間で数えるかは、この線引きで変わります。 この記事は、空撮・映像制作の案件を受けたときにどの順番で何を確認すれば、必要な許可・承認と手続が漏れなく洗い出せるかを、条文・解釈通達・審査要領・航空局標準マニュアルの原文で整理します。

よく見る説明と、公式の記載
空撮の現場では、機体を「誰が」「何で」見ているか、現場の人を「誰」として数えるかで、必要な承認が変わります。この記事で扱う範囲について、一次ソースの記載と突き合わせます。
よく見る説明操縦者がゴーグルで映像を見ていても、補助者が機体を目で追っていれば目視内飛行になる。
公式にはこう解釈通達は、目視は操縦者本人が自分の目で見ることとし、「補助者による目視は該当せず」、専らモニターやカメラ等を用いて見ることも目視に当たらないとしています。
出典 無人航空機に係る規制の運用における解釈について 3.(6)
よく見る説明ロケ現場では、出演者やスタッフを含めて、誰からも30m離して飛ばさなければならない。
公式にはこう30mの「人」は第三者です。通達は間接的に飛行に関与する者の例に「映画の空撮における俳優やスタッフ」を挙げています。ただし共通の認識・安全上の指示・自らの意思での参加という要件をすべて満たすことが前提です。
出典 同通達 3.(7)・6.(1)
よく見る説明日が沈んでも、空が明るいうちは夜間飛行に当たらない。
公式にはこう「日出から日没までの間」は、国立天文台が発表する日の出の時刻から日の入りの時刻までの間とされています。空の明るさではなく時刻で決まり、地域によって時刻が異なります。
出典 同通達 3.(5)

撮影シーン別:当たり得る許可・承認の早見

航空法の「特定飛行」は、空域(空港等周辺・緊急用務空域・150m以上・DID上空)と飛行の方法(夜間・目視外・30m未満・催し場所上空・危険物輸送・物件投下)に分かれ、空域は許可、方法は承認の対象です。空撮の案件は、撮りたい画の条件がそのまま次の類型に当てはまります。

撮影シーン当たり得る類型根拠最初に確認すること
街なか・住宅地・駅前の俯瞰 DID上空(許可) 法第132条の85第1項第2号
規則第236条の72
地点がDIDか。私有地内でもDIDならDID。2026年7月1日から工業専用地域は対象外
人物・建物・車に寄るショット、追走 人又は物件から30m未満(承認) 法第132条の86第2項第3号
規則第236条の79
寄る相手が第三者か、第三者の物件か。電柱・電線・街灯・信号機も物件
夕景・マジックアワー・夜景 夜間(承認) 法第132条の86第2項第1号 撮影地の日の入り時刻(国立天文台)。日没後に飛んでいるか
FPV・ゴーグル・モニターだけで追う、建物の裏へ回り込む 目視外(承認) 法第132条の86第2項第2号 操縦者本人が肉眼で常時見ているか。補助者の目は数えない
祭り・スポーツ大会・コンサート・花火大会・マラソン 催し場所上空(承認) 法第132条の86第2項第4号 「多数の者の集合する催し」か。主催者等との事前調整と個別申請が要る
高高度からの広域俯瞰 150m以上(許可) 法第132条の85第1項第1号
規則第236条の71第1項第5号
地表又は水面からの高さ。物件から30m以内の空域は除かれる
空港に近い湾岸・河口部のロケ 空港等周辺(許可) 法第132条の85第1項第1号
規則第236条の71第1項第1〜3号
進入表面・転移表面・水平表面等にかかるか。場所を特定した申請になる
観客・通行人・走行中の車の真上を通る 第三者の上空(カテゴリーⅢ) 法第132条の86第2項柱書の括弧書き
解釈通達6.(2)
立入管理措置で経路下に第三者を入れない設計にできるか
スタジオ・体育館・倉庫・店舗の中 屋内(航空法の各規制は適用されない) 解釈通達9. 屋外に出る経路がないか。開口部付近の飛び出し防止

ひとつのカットで複数の類型が同時に当たるのが空撮の特徴です。たとえば「日の入り後の駅前で、ゴーグルを着けて歩行者の近くを抜けるFPVカット」は、DID上空・夜間・目視外・30m未満の4つに同時に当たり得ます。以下、空撮で判断が分かれやすい論点から順に見ていきます。許可と承認の切り分けそのものはドローンの飛行許可・承認申請 完全ガイドで扱っています。

ロケ現場の出演者・スタッフは「第三者」か

30m未満の承認で距離を保つべき相手について、解釈通達3.(7)は次のように書いています。

「人」とは、操縦者及びその関係者(無人航空機の飛行に直接的又は間接的に関与している者)以外の者(第三者)をいう。
「物件」とは、①中に人が存在することが想定される機器(車両等)②建築物その他の相当の大きさを有する工作物のうち、操縦者及びその関係者が所有又は管理する物件以外のもの(第三者の物件)をいう。

では「関係者」とは誰か。通達6.(1)は、飛行に関与している者を2つに分けています。

区分通達の定義ロケ現場での当てはめ
直接関与者 操縦者、現に操縦はしていないが操縦する可能性のある者、補助者等、飛行の安全確保に必要な要員 操縦者、交代で操縦する可能性のある者、補助者
間接関与者 飛行目的について操縦者と共通の認識を持ち、次のいずれにも該当する者
a)操縦者が、その者について飛行の目的の全部又は一部に関与していると判断している
b)その者が、操縦者から、機体が計画外の挙動を示した場合に従うべき明確な指示と安全上の注意を受けている(操縦者は理解されていることを確認する必要がある)
c)その者が、飛行目的の全部又は一部に関与するかどうかを自ら決定できる
通達の例示は「映画の空撮における俳優やスタッフ、学校等での人文字の空撮における生徒 等」。出演者・撮影スタッフは、a)b)c)を満たせば該当し得ます
第三者 飛行に直接的又は間接的に関与していない者 通行人、見物人、近隣の住民、ロケ地の施設利用者。説明を受けていない立会人も、ここに入る前提で考えるのが安全です
「撮影チームの一員だから関係者」ではありません。 間接関与者に当たるには、a)b)c)をすべて満たす必要があります。とくにb)は、機体が計画外の挙動をしたときにどう動くかの指示と安全上の注意を与え、理解されていることを操縦者が確認するところまで求めています。撮影前のブリーフィングで、出演者・スタッフ一人ひとりにこれを伝え、確認したことを記録に残す運用が、この整理の前提になります。現場に後から来たクライアントの立会人や、事情を知らないエキストラをそのまま数に入れることはできません。どこまで満たせば足りるかの具体的な基準は、公式には示されていません。

物件の側も同じ構造です。通達の文言からは、関係者が所有又は管理する車両やセットは「第三者の物件」に当たらないと読めます。一方で、ロケ地の建物、路上に停まっている車、電柱・電線・街灯・信号機は、それぞれの所有者・管理者が関係者でない限り第三者の物件です。なお通達は、土地(道路の路面や堤防、鉄道の線路等を含む)と自然物(樹木、雑草等)は、距離を保つべき物件に当たらないとしています。

この整理は、飛ばす前の規制についてのものです。 事故の報告では、「人の死傷」の「人」は第三者に限らず操縦者及びその関係者を含むとされています(事故等報告要領)。出演者やスタッフが機体に接触して怪我をした場合、関係者だからという理由で報告が不要になるわけではありません。立入管理措置と「第三者」の関係は立入管理措置とは。現場で実際に何をするのかで詳しく扱っています。

目視外:FPV・モニター撮影と、補助者の目

航空法第132条の86第2項第2号は「当該無人航空機及びその周囲の状況を目視により常時監視して飛行させること」を求めています。解釈通達3.(6)の原文は次のとおりです。

「目視」とは、操縦者本人が自分の目で見ることをいうものとする。このため、補助者による目視は該当せず、また、飛行状況を専らモニターを用いて見ることまた双眼鏡やカメラ等を用いて見ることは、視野が限定されるため「目視」にはあたらない。
なお、安全な飛行を行うためにバッテリー残量を確認する目的等で無人航空機から一時的に目を離し、モニターを確認する等は目視飛行の範囲内とする。

空撮に当てはめると、次のように読めます。

  • FPVゴーグルを着けて操縦する:通達に「ゴーグル」という語はありませんが、機体のカメラ映像を見る装置である以上、「専らモニターを用いて見る」「カメラ等を用いて見る」に当たり、目視外飛行になると読めます
  • 画角を確認するため操縦者がモニターを見続ける:一時的な確認を超えて専らモニターで飛ばしているなら、同じく目視外です
  • 操縦者はゴーグル、補助者(スポッター)が肉眼で機体を追う:「補助者による目視は該当せず」とされているため、補助者がいても目視外飛行のままです
  • 建物の裏・橋の下・木立の向こうへ回り込む:操縦者本人の視界から機体が外れれば目視外です
  • 操縦者とカメラオペレーターの2人体制:カメラオペレーターがモニターを見ていても、操縦者本人が肉眼で機体を常時見ていれば、目視の要件はそちらで判断されると読めます

目視外飛行の承認を受けるための基準は、審査要領の5-4に置かれています。機体については、原文で次の3つが挙げられています。

審査要領5-4(1)原文の要旨
a)自動操縦システムを装備し、機体に設置されたカメラ等により機体の外の様子を監視できること
b)地上において、無人航空機の位置及び異常の有無を把握できること(不具合発生時に不時着した場合を含む)
c)不具合発生時にフェールセーフ機能が正常に作動すること(例:電波断絶時の自動帰還又は位置維持、GPS等の異常時の位置保持や自動着陸、電池異常時の発煙・発火防止と自動帰還又は自動着陸)
FPV撮影に使う機体が、この基準を満たしているかを申請前に確認してください。 操縦者側にも「モニターを見ながら、遠隔操作により、意図した飛行経路を維持しながら飛行させることができること」が求められます(5-4(2)a))。5-4の柱書には、機体の機能・操縦者の経歴・体制等とあわせて総合的に判断し、安全が損なわれるおそれがないと認められる場合は基準によらないとするただし書がありますが、どのような機体・体制ならこのただし書で認められるかの具体例は、公式には示されていません。また、FPVで5.7GHz帯の映像伝送を使う場合は、航空法とは別に無線局免許と無線従事者資格が必要です(5.7GHz帯のドローンを使うには。無線局免許と第三級陸上特殊無線技士)。

夜間:夕景・夜景はどこから夜間飛行か

航空法第132条の86第2項第1号は「日出から日没までの間において飛行させること」を求め、それ以外の時間帯の飛行は夜間飛行として承認の対象になります。解釈通達3.(5)は、この「日出から日没までの間」を国立天文台が発表する日の出の時刻から日の入りの時刻までの間としており、日出・日没は地域に応じて異なる時刻を表すとしています。

つまり、日の入り後の残照やマジックアワーを狙うカットは、空がまだ明るくても日の入り時刻を過ぎた時点で夜間飛行です。夕景の撮影は、撮影地の日の入り時刻を調べ、その時刻をまたいで飛ばす予定があるなら夜間の承認を前提にするのが確実です。

夜間飛行の基準は審査要領の5-3です。機体は「無人航空機の姿勢及び方向が正確に視認できるよう灯火を有していること」(飛行範囲が照明等で十分照らされている場合を除く)、体制は「日中、飛行させようとする経路及びその周辺の障害物件等を事前に確認」し、「離着陸を予定している場所が照明の設置等により明確になっていること」とされています。航空局標準マニュアル01も、夜間の離発着場所について「車のヘッドライトや撮影用照明機材等で機体離発着場所に十分な照明を確保する」と書いています。

夜景をFPVで撮る計画は、標準マニュアルでは組めません。 航空局標準マニュアル01・02はいずれも、夜間飛行の体制として「夜間飛行においては、目視外飛行は実施せず、機体の向きを視認できる灯火が装備された機体を使用し、機体の灯火が容易に認識できる範囲内での飛行に限定する」としています。標準マニュアルで許可・承認を受けている場合、夜間に目視外を組み合わせることはできません。必要なら独自の飛行マニュアルを作ることになります(独自の飛行マニュアルを作るべきときと作り方)。

DID上空・30m未満:街なかロケで重なる2つ

DID上空

人又は家屋の密集している地域の上空は、航空法第132条の85第1項第2号の飛行禁止空域です。施行規則第236条の72は「国土交通大臣が告示で定める年の国勢調査の結果による人口集中地区」としており、国土交通省は令和2年の国勢調査の結果に基づく人口集中地区を使用すると案内しています。該当するかは、国土交通省の飛行ルールのページが案内する地理院地図やjSTAT MAPで確認できます。

ロケ現場で誤解されやすいのは、クライアントの敷地内や貸切のロケ地でもDIDの許可は要る点です。解釈通達は「人口集中地区内の私有地内における飛行であっても…人口集中地区内である限り、飛行の禁止空域に該当する」としています。例外は、2026年7月1日から対象外になった用途地域「工業専用地域」の区域です(国土交通省告示第435号)。工場や臨海部のプラントを撮る案件では確認する価値がありますが、工業地域・準工業地域は含まれません。詳しくは工業専用地域は、DIDの中でもDIDの飛行許可が要らなくなったで整理しています。

人又は物件から30m未満

前章のとおり、距離を保つべきなのは第三者と第三者の物件です。ただし通達が物件の例に挙げているのは、自動車・鉄道車両・船舶、ビル・住居・橋梁・高架、電柱・電線・信号機・街灯などです。街なかでは、出演者を関係者として整理できても、周囲の建物・電線・路上の車から30mを保つのが難しい場面が多いと考えておくのが現実的です。

DID上空と30m未満の承認基準(審査要領5-2・5-5)は構造が共通で、機体に第三者及び物件に接触した際の危害を軽減する機能(例:プロペラガード、衝撃を緩和する素材やカバー、衝突防止センサー)を求め、体制として経路全体を見渡せる補助者と、経路直下に第三者が立ち入らないよう注意喚起する補助者の配置等(立入管理区画を設定する場合は代替可)を求めています。標準マニュアル01も、DID上空・30m未満ではプロペラガードを装備し、装備できない場合は監視と注意喚起をする補助者を必ず配置するとしています。

催し場所上空と、第三者の上空

催し場所上空

祭礼・縁日・展示会のほか、プロスポーツの試合、スポーツ大会、運動会、屋外コンサート、花火大会、マラソン、街頭パレードなどは、解釈通達が「多数の者の集合する催し」の例に挙げているものです。イベントの記録撮影や中継は、ここに当たるかが最初の分岐になります。

  • 人数の数値基準はなく、人数や密度、特定の場所・日時か、主催者の意図等で総合的に判断されます
  • 関与者のみが参加する催し(前述の間接関与者の要件を満たす者だけの撮影会等)は該当しない例とされています
  • 国家資格と認証機体があっても承認は省けず、包括申請を取得済みでも経路と日時を特定した個別申請が必要です
  • 申請前に主催者等との調整を行い、高度に応じた立入禁止区画を設定します

判断要素・追加基準・立入禁止区画の表・申請書の書き方は催し場所上空の飛行。イベント撮影で最も落ちやすい申請で詳しく扱っています。

第三者の上空(カテゴリーⅢ)

審査要領は、許可・承認を受ける飛行の体制として「原則として第三者の上空で無人航空機を飛行させないこと」を求めています(4-3-1(1))。解釈通達6.(2)は、第三者の上空には第三者が乗っている移動中の車両等の上空を含むとし、直上だけでなく機体が落下する可能性のある範囲に第三者がいる場合も上空とみなすとしています(屋内や停止中の車両の中にいて遮蔽物で保護される第三者は除く)。

立入管理措置を講じずに特定飛行を行うカテゴリーⅢ飛行は、一等無人航空機操縦士の技能証明を受けた者が第一種機体認証を受けた機体を飛ばし、許可・承認を受けた場合に限られます。空撮の案件の大半は、経路下に第三者を入れない設計(カテゴリーⅡ)で組むことになります。観客や通行人の頭上を通すカットが絵コンテにあるなら、そのカットの経路と立入管理の方法を、企画の段階で見直す必要があります。

撮影中に想定外の人の集まりに遭遇したら。 審査要領は、多数の者の集合する場所の上空を飛行することが判明した場合には即時に飛行を中止するとしています(4-3-1(4))。また航空法第132条の87は、立入管理措置を講じて特定飛行を行っている場合に、機体の下に人の立入り又はそのおそれを確認したときは、直ちに飛行を停止し、経路の変更や安全な場所への着陸等の措置を講じることを義務付けています。撮影を優先してカットを撮り切る判断は、この義務と両立しません。

案件を受けたら確認する順番

ここまでの論点を、案件の打合せで聞き取る順番に並べ替えます。上から順に確認すると、後の工程で申請が足りないと分かる事態を減らせます。

屋内か屋外か。スタジオ・体育館・倉庫の中だけで完結するなら航空法の各規制は適用されません。解釈通達は窓・扉の開いた建物等も屋内とみなしますが、屋外に出る経路が1カットでもあれば屋外として手続を組みます
機体の登録とリモートID。屋外で100g以上の機体を飛ばすなら登録が前提です(無人航空機の登録制度 完全ガイド)
場所。空港等周辺か、DIDか(工業専用地域か)、150m以上を飛ぶか。あわせて、重要施設の周辺で小型無人機等飛行禁止法の対象地域に入らないか
時間。撮影地の日の入り時刻をまたぐか(夜間)
撮り方。操縦者本人が肉眼で常時見るか(目視外)、第三者・第三者の物件に30m未満まで寄るか、催しの上空か
現場の人。出演者・スタッフ・立会人を間接関与者として整理できるか。経路下に第三者を入れない立入管理ができるか
手持ちの許可・承認で足りるか。包括申請の範囲、使っている飛行マニュアル(標準マニュアルの制約)、催しの個別申請の要否
航空法の外。離着陸地点と撮影地の土地・施設管理者、公園・河川・国有林等の管理者、道路の使い方、電波、写り込み
足りない手続を洗い出し、飛行開始予定日の10開庁日前から逆算して申請・調整のスケジュールを組む

確認の結果、空港等周辺・緊急用務空域・150m以上・DID上空・夜間・目視外・30m未満・催し場所上空・危険物輸送・物件投下のどれにも当たらないなら、特定飛行ではなく許可・承認は不要です。郊外や山間部の自然風景を昼間に目視内で撮る案件は、ここに収まることがあります。ただし、その場合でも土地・施設管理者の確認などの航空法以外の論点は残ります。

申請の組み立て:包括か個別か、標準マニュアルで回るか

包括申請で持っておけるもの、個別に要るもの

同一の申請者が一定期間内に反復して飛行する場合や、異なる複数の場所で飛行する場合は、包括して申請できます(審査要領2-1(3))。期間は原則3か月以内、変更なく継続的に飛行させる場合は1年が限度ですが、DID上空・夜間・目視外を同時に行う場合はこの1年の扱いから除かれています。空撮の案件で、包括申請では済まないものは次のとおりです。

飛行包括申請との関係
催し場所上空経路と日時を特定した個別申請。包括を取得済みでも個別に必要
DID上空で夜間の目視外経路と日時を特定する必要がある
空港等周辺・150m以上飛行の範囲を可能な限り限定し、地図を添付する。場所を特定しない(全国)申請では扱えない
DID上空で夜間飛行の範囲を可能な限り限定し、地図を添付する。場所を特定しない(全国)申請では扱えない
夜間の目視外/補助者を配置しない目視外飛行の範囲を可能な限り限定し、地図を添付する。場所を特定しない(全国)申請では扱えない

包括申請の考え方は包括申請とは。個別申請との違いと、使い分けの判断基準、場所を特定しない申請の範囲は全国包括は取れるか。標準マニュアル02の使い方をご覧ください。

標準マニュアルの制約が、街なかロケに効く

航空局標準マニュアルを使って許可・承認を受けた場合、そのマニュアルの内容を守って飛ばすことになります。空撮で影響が大きい記載を並べます。

記載標準マニュアル01
(場所を特定した申請)
標準マニュアル02
(場所を特定しない申請)
不特定多数の人が集まる場所(学校、病院、神社仏閣、観光施設など) 上空やその付近は飛行させない。施設上空が必要な場合は、経路を施設内に限定し、施設の管理者等と体制を調整したのちに飛行 上空やその付近は飛行させない。施設から依頼があった場合は、休校日・休診日・早朝など第三者が往来する可能性が低い時間帯とし、経路を施設内に限定
道路・鉄道 一般道上空は車両及び歩行者の通行がないことを確認できた場合のみ。鉄道上は管理者等と調整し、その指示に従い安全が確認できた場合のみ 高速道路、交通量が多い一般道、鉄道の上空やその付近では飛行させない
DID上空の夜間・目視外 (01の基本的な体制には、この禁止の記載はない) DID上空では夜間飛行は行わない。DID上空では目視外飛行は行わない(業務上やむを得ない場合の条件付きの例外あり)
夜間の目視外 夜間飛行においては目視外飛行は実施しない(01・02とも夜間飛行の体制に記載。02は基本的な体制にも「夜間の目視外飛行は行わない」)
催し場所上空 対象(プロペラガード装備、補助者の配置、風速の制限、主催者等と調整して立入禁止区画を設定) 対象外
「全国包括を持っているから、どこでも撮れる」とはなりません。 場所を特定しない申請に使う標準マニュアル02は、交通量が多い一般道や鉄道の付近、観光施設の付近、DID上空の夜間を、そもそも飛ばさない前提で書かれています。駅前・繁華街・観光地の夜景といった典型的な空撮のロケ地ほど、02の範囲から外れやすいということです。案件ごとに場所を特定した申請(標準マニュアル01)を出すか、実際の運用に合わせた独自の飛行マニュアルを作るかを、受注の段階で判断してください。

国家資格と認証機体で申請を省けるか

DID上空・夜間・目視外・30m未満の飛行は、総重量25kg未満の機体で、立入管理措置を講じ、技能証明を受けた者が機体認証を受けた無人航空機を飛ばし、飛行マニュアルの作成等の措置を講じれば、許可・承認を不要にできます(夜間・目視外は技能証明の限定変更が必要)。ただし催し場所上空・150m以上・空港等周辺はこのルートの対象外で、イベント撮影は技能証明と機体認証があっても承認が必要です。機体を認証機に揃えるかの判断は認証機体を買うか、許可・承認で回すかで扱っています。

スケジュール

申請は飛行開始予定日の10開庁日前までとされ、国土交通省は不備による追加確認を見込んで3〜4週間程度の余裕をもった申請を求めています。申請書の「飛行の目的」には「空撮(風景・施設の撮影、TV・映画制作、イベント撮影 等)」「報道取材」の区分があります。なお審査要領は、事故及び災害の報道取材のため緊急を要する場合には電子メール等による申請を認めています(2-1(1)c)。通常の番組制作や広告撮影がこれに当たるわけではありません。

航空法の外で確認すること

航空法の許可・承認は国に対する手続であり、その場所で撮ってよいかは別に決まります。空撮・ロケで確認先になりやすいものを、既存の記事への案内とあわせて並べます。

論点要点詳しく
重要施設の周辺 小型無人機等飛行禁止法。2026年7月14日から対象施設の周囲おおむね1,000mに拡大。重量要件がなく100g未満の機体も対象。飛ばせる場合も48時間前までの通報が要る 小型無人機等飛行禁止法/事前通報
道路 道路の上空を単に飛ばすだけなら、警察庁通達は原則として道路使用許可を要しないとしています。道路上での離発着・補助者の配置・立看板の設置や、道路に人が集まり一般交通に著しい影響を及ぼすような撮影は、個別に要否が判断されます ドローンに道路使用許可は必要か
他人の土地の上空 所有権が及ぶ高さに一律の基準は存在しないとするのが政府の整理。離着陸地点や機材を置く場所は、土地の所有者・管理者の承諾が別に要ります 私有地の上空、所有権はどこまで及ぶのか
公園・河川・国有地など 国や自治体が管理する土地・施設をロケに使う場合、管理者の許可や届出が別途要り得ます。条例の一般条項を根拠に飛行を禁止している例もあり(東京都は都立公園でのドローンの飛行を禁止と案内)、飛行地点ごとに管理者へ確認するのが確実です。国有林で飛ばすなら入林届が要ります 国有林でドローンを飛ばすときの入林届
電波 5.7GHz帯などの映像伝送は、無線局免許と第三級陸上特殊無線技士以上の資格が要る。アマチュア無線は業務に使えない 5.7GHz帯のドローンを使うには

撮影した映像の写り込み

空撮では、出演者以外の人、住宅、車のナンバープレートが映像に入ります。総務省は「『ドローン』による撮影映像等のインターネット上での取扱いに係るガイドライン」(平成27年9月、平成29年5月最終改定)で考え方を示しています。要点だけを挙げます。

  • 撮影行為の違法性は、①撮影の必要性(目的)②撮影方法・手段の相当性 ③撮影対象(情報の性質)等を基に、総合的かつ個別的に判断されるとしています
  • 撮影の際は被撮影者の同意を得ることを前提とし、困難な場合の注意事項として、住宅にカメラやズームを向けない、高層マンション等に水平にカメラを向けない、住宅地周辺ではライブストリーミング配信をしない、人の顔・ナンバープレート・表札・住居の外観・洗濯物等にぼかしを入れる、などを挙げています
  • 肖像権について、ガイドラインは法律の条文ではなく最高裁判決を引いて、承諾なしにみだりに容貌等を撮影・公開されない人格的な権利として説明し、侵害かどうかは社会生活上の受忍限度を超えるかで判断されるとしています
  • ガイドラインは平成29年の版のため、引用されている個人情報保護法などの条番号は現行法と一致しません。条文は現行法で確認してください

どの映像が権利侵害に当たるかは、ガイドライン自身が「最終的には事例ごとの判断」としています。本記事では概要にとどめます。

撮影当日に発生する義務

許可・承認を受けた後も、特定飛行を行う日には次の義務が発生します。撮影日が複数日にわたる案件、撮影場所が移動する案件では、1回ごと・1か所ごとに回っているかを確認してください。

義務根拠内容
飛行計画の通報 法第132条の88第1項
規則第236条の83
特定飛行を行う場合はあらかじめDIPSで通報。立入管理措置の有無及び内容、保険契約の有無及び内容も通報事項。詳しくはドローンの飛行計画の通報はいつ必要か
緊急用務空域の確認 規則第236条の71第4項 飛行を開始する前に確認する義務。緊急用務空域は、空港等周辺・150m以上・DID上空の許可があっても飛べません。災害や事故の現場の撮影では特に重要です
飛行日誌 法第132条の89第1項
規則第236条の84
飛行記録・日常点検記録・点検整備記録を機体毎に備える。詳しくはドローンの飛行日誌の書き方
許可書・承認書の携行 審査要領4-3-1(18) 原本又は写しを携行する
第三者が立ち入った場合の措置 法第132条の87 機体の下に人の立入り又はそのおそれを確認したら、直ちに飛行を停止し、経路変更や着陸等の措置
事故・重大インシデントの報告 法第132条の90・第132条の91 人の死傷、物件の損壊、制御不能等。「人」は関係者を含む。物件の損壊は第三者の所有物を損傷させた場合の全てで、軽微なものも含む

よくある質問

空撮の仕事を始めるとき、どの許可・承認を持っておけばよいですか。
受ける案件の中身で決まります。街なかの撮影ならDID上空、人や建物に寄るなら30m未満、夕景・夜景なら夜間、FPVやモニターだけで追うなら目視外が当たり得ます。これらは反復・複数場所の飛行として包括申請で持っておける範囲がありますが、催し場所上空は経路と日時を特定した個別申請が必要で、空港等周辺・150m以上は場所を特定しない申請では扱えません。また、使う飛行マニュアルの制約(標準マニュアル02は交通量が多い一般道・鉄道の付近やDID上空の夜間を飛ばさない前提)で、実際に撮れる場所が変わる点も確認してください。
出演者に向かってドローンを寄せるカットは、30m未満の承認が必要ですか。
30mの距離を保つべき「人」は第三者です。解釈通達は間接関与者の例に「映画の空撮における俳優やスタッフ」を挙げており、出演者が飛行目的について共通の認識を持ち、計画外の挙動時の指示と安全上の注意を受けて理解し、自ら参加を決めているなら、第三者に当たらないと整理し得ます。ただし、周囲に通行人がいる、第三者の建物・車・電柱などに30m未満まで近づく、といった場合はそちらで承認が必要になります。要件をどこまで満たせば足りるかの具体的基準は公式に示されていないため、迷う場合は承認を取る前提で組むのが安全です。
FPVゴーグルで操縦し、補助者が肉眼で機体を追っていれば目視内飛行ですか。
いいえ。解釈通達3.(6)は、目視は操縦者本人が自分の目で見ることとし、「補助者による目視は該当せず」、専らモニターやカメラ等を用いて見ることも目視に当たらないとしています。操縦者がゴーグルで映像を見て操縦しているなら、補助者がいても目視外飛行として承認が必要です。補助者の配置は、目視外飛行の安全体制として求められるものです。
日没直後の空が明るい時間帯に飛ばすのは、夜間飛行ですか。
解釈通達は「日出から日没までの間」を国立天文台が発表する日の出の時刻から日の入りの時刻までの間としています。空の明るさではなく時刻で決まるため、撮影地の日の入り時刻を過ぎていれば夜間飛行です。日出・日没の時刻は地域によって異なるため、撮影地ごとに確認してください。
クライアントの敷地内での撮影なら、DIDの許可は要りませんか。
要ります。解釈通達は「人口集中地区内の私有地内における飛行であっても…人口集中地区内である限り、飛行の禁止空域に該当する」としています。例外は、2026年7月1日から対象外になった用途地域「工業専用地域」の区域です(国土交通省告示第435号)。工業地域・準工業地域は対象外にならず、該当するかは自治体に確認するよう国土交通省は案内しています。
スタジオや体育館の中での撮影に、許可・承認は要りますか。
解釈通達は、屋内での飛行には航空法の各規制が適用されないとしており、開口部はあっても内部と外部が明確に区別された空間(窓・扉の開いた建物等)も屋内とみなしています。ただし、飛行経路が開口部に近づく場合は屋外へ飛び出さないための措置を講じ、飛び出した場合は直ちに飛行を終了するか速やかに屋内に引き返すよう求めています。屋内から屋外へ抜けるカットは屋外の飛行として手続が必要です。施設の管理者の承諾は、航空法とは別に必要です。
国家資格と認証機体があれば、イベント撮影の申請は不要になりますか。
なりません。技能証明と機体認証で許可・承認を不要にできるのは、DID上空・夜間・目視外・30m未満の飛行で、総重量25kg未満、立入管理措置を講じるなどの条件を満たす場合です。催し場所上空は、このルートの対象外で、承認が必要です。150m以上・空港等周辺も同じく対象外です。
撮影した映像に通行人の顔や住宅が映り込んだ場合、どうすればよいですか。
総務省のガイドラインは、撮影時は被撮影者の同意を得ることを前提としつつ、困難な場合には、住宅にカメラを向けない、人の顔・ナンバープレート・表札・住居の外観・洗濯物等にぼかしを入れるなどの配慮を挙げています。公共の場で普通の服装でいる人を、容貌が判別できないようにして公開する限り、肖像権の侵害は否定されると考えられる、とも書いています。ただし、権利侵害に当たるかは最終的に事例ごとの判断とされており、ガイドライン自体も平成29年の版です。
この記事の一次ソース
  1. e-Gov法令検索|航空法(昭和二十七年法律第二百三十一号)
  2. e-Gov法令検索|航空法施行規則(昭和二十七年運輸省令第五十六号)
  3. 国土交通省|無人航空機に係る規制の運用における解釈について(解釈通達・PDF)
  4. 国土交通省|無人航空機の飛行に関する許可・承認の審査要領(カテゴリーⅡ飛行)令和8年9月29日最終改正(PDF)
  5. 国土交通省|航空局標準マニュアル01(PDF)
  6. 国土交通省|航空局標準マニュアル02(PDF)
  7. 国土交通省|無人航空機の飛行許可・承認手続
  8. 国土交通省|無人航空機の飛行ルール(飛行禁止空域・飛行の方法)
  9. 国土交通省告示第435号(人又は家屋の密集している地域から除かれる区域の指定・PDF)
  10. 国土交通省|無人航空機の飛行計画の通報要領(PDF)
  11. 国土交通省|無人航空機の飛行日誌の取扱要領(PDF)
  12. 国土交通省|無人航空機の事故等の報告要領(PDF)
  13. 総務省|「ドローン」による撮影映像等のインターネット上での取扱いに係るガイドライン(平成29年5月最終改定・PDF)
  14. 警察庁|無人航空機に係る道路使用許可の取扱いについて(令和3年6月30日 丁規発第97号・PDF)
  15. 警察庁|小型無人機等飛行禁止法関係
  16. 内閣官房|無人航空機の飛行と土地所有権の関係について(PDF)
  17. 東京都建設局|都立公園Q&A
  18. 総務省 電波利用ポータル|ドローン等に用いられる無線設備について
本記事は2026年9月16日時点の情報です。 無人航空機の制度は改正が続いており、解釈通達・審査要領・航空局標準マニュアルは短い手続で改正され得ます。とくに間接関与者の当てはめ、目視外の基準のただし書、公園・河川等の管理者の取扱いは、案件ごとの個別判断です。実際の申請・飛行の前に、必ず上記の一次ソースと飛行地点の管理者で最新の内容をご確認ください。

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