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機体が複数・操縦者が複数のときの飛行日誌の回し方

公開 2026-09-29 更新 2026-09-29 読了 約11分

機体が3台、操縦者が5人いる事業者は、飛行日誌を何冊備えればよいのでしょうか。答えは機体の数です。航空法が飛行日誌の義務を課している相手は「無人航空機を飛行させる者」ですが、国土交通省の「無人航空機の飛行日誌の取扱要領」は、日誌そのものを無人航空機の機体毎に備え、記載するとしています(4(2))。1つの送信機で複数機を操縦する場合も、機体ごとです(4(3))。 では、同じ機体を複数の人が使う日は誰が書くのか。同じ国交省の「飛行日誌の取扱いに関するガイドライン」は、複数の操縦者で飛行を行う場合は主たる操縦者が代表して携行し、飛行記録と日常点検記録を記載するとしています(2①)。 本記事は、この「義務は人に、帳簿は機体に」というずれを、航空法・施行規則・取扱要領・ガイドライン(記載例を含む)の原文でほどき、複数機体・複数操縦者の現場での記載者、記載のタイミング、総飛行時間の積み上げ方、罰則までを整理します。記載項目そのものの書き方は飛行日誌の書き方の記事で扱っています。

よく見る説明と、公式の記載
飛行日誌の「単位」は、条文だけを読むと人ごとにも読めてしまうため、説明が分かれがちです。この記事で扱う範囲について、一次ソースの記載と突き合わせます。
よく見る説明飛行日誌は操縦者が1人1冊ずつ持ち、自分の飛行を書き込んでいくもの。
公式にはこう飛行日誌は無人航空機の機体毎に備え、記載するものです。操縦者個人の飛行時間の管理や経歴には、機体ごとの飛行記録の記録面を複写して使うことができるとされています。
出典 取扱要領 4(2)・4(8)※
よく見る説明1つの送信機で複数の機体を飛ばすなら、日誌は送信機に付けて1冊にまとめればよい。
公式にはこう1つの操縦装置で複数機を操縦する場合も機体毎に飛行日誌を備え、記載し保管するとされています。操縦装置単体での管理は「行ってもよい」とされた追加の扱いです。
出典 取扱要領 4(3)
よく見る説明複数人で飛ばす現場では、関わった全員がそれぞれ日誌を携行して記載する。
公式にはこう複数の操縦者により飛行を行う場合は、主たる操縦者が代表して飛行日誌を携行し、飛行記録及び日常点検記録を記載するとされています。
出典 ガイドライン 2①

義務は「人」、日誌は「機体」──条文と要領の分担

まず、誰に何が課されているかを文書ごとに分けます。法律と施行規則には「機体ごと」「操縦者ごと」という言葉は出てきません。単位を決めているのは取扱要領です。

文書書かれていること単位の手がかり
航空法第132条の89第1項「無人航空機を飛行させる者は、特定飛行を行う場合には、飛行日誌を備えなければならない。」主語は人(飛行させる者)
航空法第132条の89第2項「特定飛行を行う者は、無人航空機を航空の用に供し、又は整備し、若しくは改造した場合には、遅滞なく飛行日誌に国土交通省令で定める事項を記載しなければならない。」主語は人(特定飛行を行う者)
施行規則第236条の84第2項3種類の記録すべてが「無人航空機の登録記号、種類及び型式」「製造者及び製造番号」などの機体を特定する事項から始まる記載事項は機体を軸に組まれている
取扱要領4(2)機体の過去の飛行実績や点検・整備・改造の記録を「時系列的に確認することができることから、無人航空機の機体毎に備え、記載するものとする。」日誌の単位は機体
取扱要領4(7)「操縦者は無人航空機を飛行させる場合、飛行日誌を紙媒体又は電磁的記録により常時携行」携行するのは飛ばす人
取扱要領3(2)・4(8)使用者=「無人航空機及びこれに係る飛行日誌の管理責任を負う者」。操縦者は適切に管理し、使用者は同様に保管保管の責任は使用者

つまり、記載と携行の義務は飛ばす人に、帳簿そのものは機体に、長期の保管は使用者に付いています。これを取り違えると、「操縦者ごとに日誌を作ったら、機体の総飛行時間がどの日誌にも通しで残っていない」という状態になります。

比べると分かりやすいのが技能証明書です。航空法第132条の54は「技能証明を受けた者は、…特定飛行を行う場合には、技能証明書を携帯しなければならない」としており、こちらは人に付く書類です。複数機体・複数操縦者の現場では、機体の数だけ日誌、操縦者の数だけ技能証明書が動くことになります(技能証明を受けている操縦者の場合)。技能証明の有効期間と更新は技能証明の更新の記事で扱っています。

3種類の記録は、誰がどの単位で書くか

飛行日誌は飛行記録・日常点検記録・点検整備記録の3種類です(施行規則第236条の84第1項)。3つとも機体ごとに備えますが、書く人と書く単位はそれぞれ違います。複数人で回すときに崩れるのは、たいていこの違いが共有されていない部分です。

記録記載の単位・タイミング書く人(原文の定め)
飛行記録 1飛行毎(6(1)a))。操縦者が飛行させた都度(5(1)a)) 操縦者。「飛行させた者の氏名」欄には操縦者の氏名、技能証明を受けている者は技能証明書番号も(7(1)c))。不具合の処置は「確認を行った者が記名」(7(1)l))
日常点検記録 操縦者が飛行させる都度(5(2)a))。機体設計者が頻度を指定しない限り原則「1飛行毎」(ガイドライン4(2)①) 「日常点検を実施した者が記名する」(7(2)g))
点検整備記録 定期的な点検整備又は改造を行った都度(5(3)a)) 使用者及び点検整備等を受託する設計製造者等(5(3)a))。「点検整備等を実施した者により記入」(6(3)a))

ここから、複数人で回すときの基本形が見えてきます。

  • 飛行記録は、1飛行ごとの行に、その飛行を実際に飛ばした人が載る。機体の飛行記録は1つでも、行ごとに氏名が変わってよい構造です
  • 日常点検記録は、点検をした人が実施者として記名する。飛ばす人と点検する人が別でも構いません
  • 点検整備記録は、飛行の現場ではなく使用者側の整備の流れで書かれる。後で見るように、ガイドラインの「主たる操縦者が代表して記載」の対象にも入っていません

なお、登録記号・型式・製造番号などの機体の概要は、各記録の冒頭にまとめて記載でき、各ページに書く必要はないとされています(取扱要領6(1)d)・6(2)a)・6(3)b))。機体ごとに日誌を分けるなら、表紙や冒頭行に機体の概要を置き、以降は飛行ごとの行を積むだけで足ります。

1台の機体を複数の操縦者が使う日

「複数の操縦者が同じ機体を使う」には、実務上いくつかの形があります。公式資料が示している形と、示していない形を分けて見ます。

形1:1つの飛行に複数の操縦者が関わる

ガイドライン2①の原文は次のとおりです。

「複数の操縦者により飛行を行う場合は、主たる操縦者(訓練飛行の場合は最終的に責任を持つ教官等の操縦者)が代表して飛行日誌を携行し、飛行記録及び日常点検記録を記載するものとします。」

代表して携行・記載するのは主たる操縦者1人です。ただし対象は飛行記録と日常点検記録で、点検整備記録は挙げられていません。訓練飛行については、ガイドラインの記載例(別添1-4「監督者の下に行う訓練飛行の場合」)が「飛行させた者の氏名欄に監督者の氏名を併記する」としています。訓練生の名前だけを書くのではなく、監督者の名前も同じ行に載せる形です。

形2:遠隔地の操縦者と、現場の作業補助者等

インフラ点検などで、現場の作業補助者等が日常点検を含む機体の準備をし、離れた場所の操縦者が飛ばす運用です。ガイドライン2①は、遠隔操作を行う操縦者が携行する飛行日誌に、日常点検記録を作業補助者等又は遠隔操作を行う操縦者のいずれかが記載するとし、作業補助者等が日常点検の一部として飛行させた場合の飛行記録も同様としています。

記載例(別添1-1「遠隔操作を行う運用の場合(送電線点検)」)では、同じ機体の飛行記録に、飛行前点検の行は現場の操縦者、本飛行の行は遠隔の操縦者と、行ごとに飛行させた者の氏名が変わって並んでいます。注記には「主たる飛行を行う操縦者(この場合は遠隔操縦を行う者)が携行し、現場の操縦者に代わって飛行記録を記載することができる」とあります。携行は1人に寄せ、氏名欄は実際に飛ばした人、という整理です。同じ記載例では、不具合の処置を確認した「確認者」欄に現場の操縦者が記名されています。点検業務に必要な許可・承認はインフラ点検の許可・承認の記事にまとめています。

形3:時間帯を分けて、別々の操縦者が同じ機体を使う

午前はAさんが現場1で、午後はBさんが現場2で同じ機体を飛ばす、という日です。この形を直接扱った一文は、取扱要領にもガイドラインにもありません。手がかりになるのは記載例(別添1-3「レンタル事業者の場合」)です。そこでは1台の機体の飛行記録に、貸し手の点検飛行、借り手Aの撮影(複数行)、再び貸し手の点検飛行、借り手Bの撮影が日付順に並び、総飛行時間が通しで積算されています。

この記載例と、日誌を機体ごとに時系列で確認できるようにするという要領4(2)の趣旨からすると、形3でも機体の日誌は1つのまま、各飛行の行にそのとき飛ばした人の氏名を書き、日誌は機体と一緒に次の操縦者へ渡るのが素直な運用です。携行は「飛行させる場合」の操縦者の義務なので(要領4(7))、午後にBさんが飛ばす時点では、Bさんの手元にその機体の日誌がなければなりません。

注意:ガイドライン2①の「複数の操縦者により飛行を行う場合」が、形1のように1つの飛行に複数人が関わる場合だけを指すのか、形3のように時間帯を分けて交代する場合まで含むのかは、公式には明示されていません。形3で「主たる操縦者が代表して記載するから、Bさんの飛行もAさんが後でまとめて書く」という運用にすると、Bさんの飛行の時点で日誌がBさんの手元にない、記載が「遅滞なく」(法第132条の89第2項)から離れる、といった問題が出やすくなります。

1つの飛行の途中で操縦者が交代したら

1飛行は「電源を作動させた後に出発地から離陸させ、目的地に着陸後、電源を停止させたときまで」です(取扱要領6(1)b))。この1飛行の途中で操縦を交代した場合に、1行に2人の氏名を書くのか、行を分けるのかは、公式には明示されていません。明示されているのは訓練時に監督者を併記する例(別添1-4)だけです。誰がどの時間帯に操縦していたかを後から説明できるよう、交代の時刻と両者の氏名を残しておくのが安全です。

1人の操縦者が複数の機体を使う日

今度は逆に、1人が機体Aと機体Bを使い分ける日です。ここは取扱要領4(3)がかなり具体的に書いています。

「1つの操縦装置で複数機を操縦する場合又は複数の操縦装置で複数機を操縦する場合もあり、これらの取扱いについても機体毎に飛行日誌を備え、記載し保管することとする。この場合、日常点検記録及び点検整備記録の点検項目については、機体毎に点検項目の1つとして操縦装置があるという考え方になるが、点検項目の操縦装置の欄は飛行毎に使用する操縦装置について点検を行えばよい。」

ここから読み取れるのは次の4点です。

場面日誌の扱い根拠
機体Aで2回、機体Bで3回飛ばした機体Aの飛行記録に2行、機体Bの飛行記録に3行。1つの記録にまとめない取扱要領4(2)・6(1)a)
飛行前点検機体Aの日常点検記録と機体Bの日常点検記録に、それぞれ結果を記載取扱要領4(3)・5(2)a)
1つの送信機をA・B共用操縦装置は「機体毎に点検項目の1つ」。点検欄はその飛行で使う操縦装置について点検すればよい取扱要領4(3)
送信機の履歴も追いたい操縦装置単体で飛行日誌を管理してもよい。その場合は様式1〜3の記載内容を網羅した独自様式で取扱要領4(3)なお書き

最後の「操縦装置単体での管理」は、機体の入れ替えや買い替えで送信機側の履歴を追う必要があるときに「行ってもよい」とされているもので、機体ごとの日誌に代えてよいとは書かれていません。送信機単位の記録を作る場合も、機体ごとの日誌は別に維持する前提で考えるのが安全です。

携行の面では、1人で2機を持ち出す日は、2機分の日誌を携行することになります(取扱要領4(2)・4(7))。複数の機体を同時に飛行させる運航そのものに、許可・承認の上でどのような条件がかかるかは別の論点ですので、本記事では扱いません。許可・承認を受けている機体を増やす手続は包括申請の変更申請(機体・操縦者の追加)の記事にまとめています。

総飛行時間は機体に積み上がる。操縦者の飛行時間は別

複数人・複数機で最も壊れやすいのが総飛行時間です。飛行記録の「製造後の総飛行時間」は、機体に積み上がる累計です。操縦者個人の累計ではありません。

機体の総飛行時間の積み上げ方

  • 飛行時間は滞空時間:「離陸から着陸までに要した時間」で、「1飛行」の区切りとは別物です(ガイドライン2③、取扱要領7(1)i))。1分に満たない飛行は1分に切り上げます(ガイドライン5(1)②)
  • 総飛行時間は前回+今回:「前回の「総飛行時間」に今回の「飛行時間」を加算した時間」(ガイドライン5(1)③)。記載例(別添1-1〜1-6)はすべて、1飛行の行ごとに総飛行時間を積算しています
  • 「製造後」は出荷以降:機体設計者の完成検査に係る試験飛行の時間は記載不要(ガイドライン4(1)③)
  • 機体ボディを交換しても継続:「機体登録記号や製造番号の変更が生じない限り、飛行時間の累積は継続」(ガイドライン4(3)②)

「前回+今回」で積む以上、同じ機体の行は飛行した順に並んでいなければ計算が合いません。AさんとBさんが同じ日に同じ機体を使い、Bさんが先に書いてAさんが後から自分の午前の飛行を書き足す、という順序の入れ違いが起きると、総飛行時間の列を書き直すことになります。日誌が機体と一緒に動き、飛ばした人がその場で1飛行ずつ書く運用にしておけば、この入れ違いは起きにくくなります。

点検整備記録の側にも「最近の機体認証後の総飛行時間」の欄があります。機体認証を受けていない機体は、「点検整備作業を実施した時点での総飛行時間」を記入します(取扱要領7(3)c))。整備を担当する人は、飛行記録の最新行の総飛行時間を見て書くことになるため、整備の時点で飛行記録が最新になっている必要があります。

バッテリー交換を挟んだ連続飛行を1行で書ける場合

ガイドライン4(1)②は、単一の飛行エリア内(道路を隔てて隣接するエリアを含む)で同一ミッションの飛行を連続的に行い、複数回の電源停止・作動を伴う場合は、「1飛行」として1行で記載できるとしています。ただし記載例の注記では、これは機体認証を受けない機体の場合に限るとされ、その場合も最初の離陸時刻と最後の着陸時刻を書いたうえで正味の飛行時間を記載して総飛行時間を積算します。この1行の間に操縦者が交代した場合の書き方は、公式には示されていません。

操縦者個人の飛行時間はどう管理するか

操縦者ごとの飛行時間を集計したい場面はあります。たとえば技能証明を持たない操縦者について許可・承認を申請する場合、審査要領は飛行を予定している無人航空機の種類別に10時間以上の飛行経歴を求めています。取扱要領4(8)の※は、この用途を想定した一文を置いています。

「飛行記録は操縦者個人の飛行時間の管理や経歴を示すものとして…記録面を複写し、これらを使用することができる。」

つまり、操縦者個人の飛行時間は機体ごとの飛行記録から、その人の行を拾って集計するという設計です。操縦者ごとに別の飛行日誌を備えることを義務付けた記載は、法律・施行規則・取扱要領・ガイドラインのいずれにも見当たりません。社内で操縦者別の飛行時間台帳を作るのは自由ですが、それは機体の飛行日誌の代わりにはならない点に注意してください。

携行と、事務所での一元管理の両立

機体ごとの日誌を飛ばす人が携行し、長期の保管は使用者が行う。複数の現場に機体が分かれる日には、この2つが衝突します。

ガイドライン2①は、携行を「飛行場所まで操縦者が飛行日誌(紙媒体、電磁的記録のいずれも可)を持参し、その場において速やかに確認ができる状態にしておくこと」と説明しています。紙で運用する場合、持ち出す範囲は種類ごとに違います。

記録紙で運用する場合に現場へ持っていく範囲
飛行記録直近の点検整備以降の分。それより前は使用者の責任で、必要に応じ参照又は提示が可能な状態で保管(取扱要領5(1)b))
日常点検記録直近の点検整備以降の分。それより前は同上(5(2)c))
点検整備記録紙・電子を問わず全て(5(3)b))

紙の場合、機体3台が3つの現場に出る日は、機体ごとの日誌の束が3つ、それぞれの操縦者と一緒に動くことになります。事務所には「直近の点検整備より前の飛行記録・日常点検記録」が残り、点検整備記録は現場に出ている、という配置です。帰着後に束を事務所に戻す手順を決めておかないと、次にその機体を使う人の手元に日誌がない、という事態が起きます。

複数の現場に同時に機体が出る事業者ほど、電子で運用する利点は大きくなります。ガイドライン2②はクラウドや専用アプリでの記録・管理も可能とし、様式1〜3に記載すべき事項が一括して参照又は提示でき、各様式のような形で表示又は印刷ができれば問題ないとしています。電子運用で満たすべき基準や、通信圏外の現場での注意点は飛行日誌を電子で運用するときに満たすことの記事で詳しく扱っていますので、ここでは深追いしません。

補足:電子で複数の操縦者が同じ機体の記録に同時に書き込める構成にすると、「前回+今回」の総飛行時間の計算が、書き込みの順序によってずれることがあります。電子でも、同じ機体の行は飛行した時刻の順に並ぶことを確かめる手順を入れておくと安全です(公式の要件ではなく運用上の工夫です)。

会社で運用するときの使用者の責任と、借りた機体

取扱要領は、使用者を「無人航空機登録原簿に記載された無人航空機の使用者」で「無人航空機及びこれに係る飛行日誌の管理責任を負う者」と定義しています(3(2))。DIPS2.0の登録に関するよくある質問は、法人で所有している機体について「基本的には使用責任も当該法人になるものと思われるため、使用者は同一法人を使用者として登録してください」としています。

会社の機体を社員の操縦者が飛ばす場合、記載と携行は現場の操縦者、日誌の管理責任と保管は使用者である会社という分担になります。点検整備記録を記載する主体にも使用者が挙げられています(取扱要領5(3)a))。法人で機体を登録するときの所有者・使用者の決め方は法人でドローンを登録するときの手続きの記事で扱っています。

借りた機体はどうでしょうか。同じよくある質問は、一時的なレンタル形態の場合、「レンタルを受けた者は使用者とはならず、…所有者及び使用者のいずれもがレンタル会社となります」としています。そしてガイドラインの記載例(別添1-3)は、レンタル会社の機体の同じ飛行記録に、貸し手の点検飛行と複数の借り手の飛行が時系列で並び、総飛行時間が通しで積算される形を示しています。

このため、一時的に借りた機体で特定飛行を行う場合は、その機体の日誌に自分の飛行を書き込む形が公式の記載例に沿っています。借り手が別の日誌を新しく起こすと、機体の総飛行時間が貸し手側の日誌と借り手側の記録に分かれてしまいます。ただし、レンタル期間中の日誌の受け渡しの方法は、公式には定められていません。借りる前に、日誌をどう受け取り、どう返すかを貸し手と決めておいてください。

なお、所有者の変更やリース契約の変更などで使用者そのものが変わる場合は、飛行記録は「総飛行時間」の情報を、日常点検記録と点検整備記録は記録を、当事者間で確実に受け渡すとされています(取扱要領4(5))。一時的な貸し借りとは扱いが異なります。

罰則──個人と法人の両方にかかる

飛行日誌の罰則は航空法第157条の11です。同じ条に技能証明書の不携帯も並んでいます。

違反の内容罰条法定刑
技能証明書を携帯しないで特定飛行を行った第157条の11第1号(第132条の54違反)10万円以下の罰金
飛行日誌を備えなかった第157条の11第2号(第132条の89第1項違反)10万円以下の罰金
飛行日誌に記載すべき事項を記載せず、又は虚偽の記載をした第157条の11第3号(第132条の89第2項違反)10万円以下の罰金

第157条の10と混同されることがありますが、第157条の10は飛行計画を通報しないで特定飛行を行った場合(第1項第10号)や事故報告をしなかった場合(第2項)などの罰条で、飛行日誌の罰条ではありません。飛行計画の通報については飛行計画の通報の記事にまとめています。

会社で運用する場合に見落とされやすいのが、航空法第159条(両罰規定)です。第2号は第157条の11を列挙しており、法人の代表者や従業者などが法人の業務に関して違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、法人にも各本条の罰金刑を科するとしています。社員の操縦者が業務で特定飛行を行い、日誌の備付けや記載を怠った場合、法人も罰金の対象になり得る構造です。

複数の操縦者がいる現場で、主たる操縦者が代表して記載した場合に、他の操縦者の条文上の義務がどう扱われるかは、ガイドラインにも書かれていません。ガイドラインは運用の整理であり、条文の主語は「飛行させる者」「特定飛行を行う者」のままです。代表者に任せきりにせず、自分が飛ばした行が書かれていることを各操縦者が確かめる運用にしておくのが安全です。

公式には書かれていないこと

取扱要領(全12ページ)とガイドライン(全25ページ、記載例を含む)を確認したうえで、複数機体・複数操縦者の運用について公式には明示されていない事項をまとめます。

  • ガイドライン2①の「複数の操縦者により飛行を行う場合」が、時間帯を分けて交代する場合まで含むか
  • 主たる操縦者が代表して記載した場合の、他の操縦者の法的義務の扱い
  • 1飛行の途中で操縦者が交代したときに、1行で書くか行を分けるか(訓練時の監督者併記の例のみ)
  • 同じ機体を別々の操縦者が使うときの日誌の受け渡し方法(使用者が変わる場合の受け渡し(4(5))は定めあり)
  • 予備機として現場に持ち込み、結果として飛ばさなかった機体の日誌の携行要否
  • 操縦装置単体で日誌を管理した場合に、機体ごとの日誌を省略できるか

取扱要領には「交代」「引継ぎ」という語自体が出てきません。以下は、公式に書かれていることと矛盾しない範囲で組んだ運用上の手順です。

機体を登録記号で洗い出し、機体ごとに3種類の記録を1組ずつ用意する(冒頭に機体の概要)
当日の割当てを決める:どの機体を、誰が、どの現場で、どの時間帯に使うか
1つの飛行に複数人が関わる現場では、主たる操縦者を事前に決める(訓練は教官等)
機体ごとの日誌を、その機体を飛ばす人に渡す(紙なら直近の点検整備以降の飛行記録・日常点検記録と、全ての点検整備記録)
飛行前に機体ごとに日常点検を行い、実施者が記名する(操縦装置はその飛行で使うものを点検)
1飛行ごとに、実際に飛ばした人の氏名で行を起こし、総飛行時間を「前回+今回」で積む
不具合は飛行記録の記事欄に書き、処置は点検整備記録に実施者が記入する
帰着後、日誌を使用者側に戻し、機体が登録されている間は記載と保管を継続する

よくある質問

操縦者ごとに、自分専用の飛行日誌を作る必要はありますか。
操縦者ごとに飛行日誌を備えることを義務付けた記載は、航空法・施行規則・取扱要領・ガイドラインのいずれにも見当たりません。取扱要領4(2)は飛行日誌を機体毎に備え記載するとし、操縦者個人の飛行時間の管理や経歴には、飛行記録の記録面を複写して使えるとしています(4(8)※)。社内で操縦者別の台帳を作ること自体は自由ですが、機体ごとの日誌の代わりにはなりません。
同じ日に、同じ機体を午前はAさん、午後はBさんが別の現場で飛ばします。記録は誰が書きますか。
飛行記録は1飛行毎に、操縦者が飛行させた都度記載するものです(取扱要領5(1)a)・6(1)a))。機体の日誌は1つのまま、午前の行はAさん、午後の行はBさんの氏名で、それぞれが飛ばした時点で書くのが、記載例(別添1-3)に沿った形です。携行は飛行させる操縦者の義務なので、午後にはBさんの手元にその機体の日誌がある必要があります。ガイドライン2①の「主たる操縦者が代表して記載」がこの形まで含むかは、公式には明示されていません。
1台の送信機で2機を切り替えて使います。日常点検記録はどう書きますか。
取扱要領4(3)により、日誌は機体毎です。日常点検記録も機体Aと機体Bでそれぞれ記載します。操縦装置は「機体毎に点検項目の1つ」という考え方で、点検欄は飛行毎に使用する操縦装置について点検を行えばよいとされています。送信機の履歴を別に追いたい場合は、様式1〜3の内容を網羅した独自様式で操縦装置単体の管理を行ってもよいとされています。
教官と訓練生が一緒に飛ばすとき、氏名欄には誰を書きますか。
ガイドライン2①は、訓練飛行の場合は「最終的に責任を持つ教官等の操縦者」を主たる操縦者として、代表して飛行日誌を携行し、飛行記録と日常点検記録を記載するとしています。記載例(別添1-4)は、飛行させた者の氏名欄に訓練生の氏名と監督者の氏名を併記する形を示しています。
一時的に借りた機体で特定飛行をします。自分で新しい日誌を作ればよいですか。
DIPS2.0の登録に関するよくある質問は、一時的なレンタルでは借りた者は使用者にならず、使用者はレンタル会社になるとしています。ガイドラインの記載例(別添1-3)は、レンタル会社の機体の同じ飛行記録に借り手の飛行が時系列で並び、総飛行時間が通しで積算される形です。新しい日誌を起こすと総飛行時間が分かれてしまうため、その機体の日誌に書き込む形が記載例に沿っています。受け渡しの方法は公式に定められていないので、貸し手と事前に決めてください。
予備機を現場に持って行き、結局飛ばしませんでした。予備機の日誌も携行が必要でしたか。
取扱要領4(7)は、操縦者が「無人航空機を飛行させる場合」に飛行日誌を常時携行するとしています。持ち込んだが飛ばさなかった機体の携行要否は、公式には明示されていません。現場の判断で予備機に切り替える可能性があるなら、切り替えた時点で日誌がないという状態を避けるため、予備機の分も持って行くのが安全です。
社員が日誌を書き忘れた場合、会社も罰せられますか。
飛行日誌を備えなかった場合、記載すべき事項を記載せず又は虚偽の記載をした場合は、航空法第157条の11第2号・第3号により10万円以下の罰金です。第159条(両罰規定)第2号は第157条の11を対象に含めており、従業者が法人の業務に関して違反行為をしたときは、行為者のほか法人にも罰金刑を科するとしています。実際に処罰されるかは個別の事情によります。
修理で機体のボディが新品に交換されました。総飛行時間はゼロに戻しますか。
戻しません。ガイドライン4(3)②は、機体設計者での点検整備で機体ボディの交換等が行われ新品同様の状態で納品された場合でも、「機体登録記号や製造番号の変更が生じない限り、飛行時間の累積は継続」するとしています。複数人で使っている機体ほど、整備で戻ってきた後の最初の行で総飛行時間を引き継ぎ損ねないよう注意してください。
本記事は2026年9月16日時点の情報です。 取扱要領・ガイドラインや関係法令は改正されることがあります。実際の運用にあたっては、必ず上記の一次ソースで最新の内容をご確認ください。

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