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無資格のドローン申請代行はなぜ違反になるのか、条文で確かめる

公開 2026-09-04 更新 2026-09-04 読了 約10分

ドローンの申請代行をめぐる説明の多くは、根拠条文の引用が省かれているか、改正前の古い条番号のままです。この記事では、行政書士法の現行条文を1条ずつ原文で引き、ドローンの飛行許可・承認申請に当てはめていきます。 要点を先に書きます。禁止規範は第19条第1項、その罰則は第21条ではなく第21条の2、法人にも罰金が及ぶ両罰規定は第23条の3です。そして第19条第1項が引いているのは第1条の3(書類の作成)だけで、「報酬を得て」は削れない構成要件です。この2点を押さえると、どこまでが条文で言えてどこからが言えないのかがはっきりします。

よく見る説明と、公式の記載
この分野は制度改正が続いており、古い説明や条文上の裏付けがない説明が広く流通しています。この記事で扱う範囲について、実際の一次ソースの記載と突き合わせます。
よく見る説明罰則は「1年以下の懲役又は100万円以下の罰金」。
公式にはこう現行条文は「1年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金」です。2025年6月1日施行の刑法改正で懲役と禁錮が一本化されました。
出典 行政書士法 第21条の2
よく見る説明改正で新しく独占業務の範囲が広がった。
公式にはこう日本行政書士会連合会の会長談話は「現行法においても変わりはなく、改正法の施行日前であってもこうした行為があれば同条に違反する」としています。実質は確認的規定+両罰規定の拡大です。
出典 日行連 会長談話 2025-11-01

まず条番号を直す:2026年1月1日の条ズレ

2026年1月1日に施行された改正(令和7年法律第65号)で、行政書士法には条ズレが生じています。世に出回る解説の多くが旧条番号のままなので、最初にここを直しておきます。

よく見かける記載現行法での実際
第1条の2=業務(独占業務)第1条の2は「職責」(新設)。業務の規定は第1条の3へ移動
第21条=無資格業務の罰則第21条は虚偽登録の罰則。無資格業務の罰則は第21条の2(新設)
第1条の3=代理・提出等条ズレにより第1条の4へ移動

改正法の本文にも、この移動がそのまま書かれています。

「第一条の四を第一条の五とする。/第一条の三第一項第二号中「作成した」を「作成することができる」に改め、同条を第一条の四とする。/第一条の二の前の見出しを削り、同条を第一条の三とし、同条の前に見出しとして「(業務)」を付する。/第一条の次に次の一条を加える。」 出典:行政書士法の一部を改正する法律(令和7年法律第65号)
「第21条の罰則」という解説を見たら、まず現行条文を確認してください。現行の第21条は虚偽登録の罰則で、無資格で報酬を得て書類を作成した場合の罰則は第21条の2です。法定刑がどちらも同じため誤りに気づきにくいのですが、条番号を取り違えると、両罰規定(第23条の3)の対象がどれかを説明できなくなります。

第19条第1項の原文と、4つの構成要件

禁止規範の本体は第19条第1項です。原文を引用します。

「第十九条 行政書士又は行政書士法人でない者は、他人の依頼を受けいかなる名目によるかを問わず報酬を得て、業として第一条の三に規定する業務を行うことができない。ただし、他の法律に別段の定めがある場合及び定型的かつ容易に行えるものとして総務省令で定める手続について、当該手続に関し相当の経験又は能力を有する者として総務省令で定める者が電磁的記録を作成する場合は、この限りでない。」 出典:行政書士法 第19条第1項(e-Gov法令検索)

この1文を分解すると、次の4つの要件になります。すべてを満たしたときに初めて第19条第1項に該当します。

#構成要件ドローンの現場での当てはめ
①行政書士または行政書士法人でない者ドローンスクール、機体メーカー、販売代理店、個人で代行を行う者など
②他人の依頼を受け顧客からの依頼。自社の飛行のための本人申請はここで外れる
③いかなる名目によるかを問わず報酬を得て受講料・機体代金・サポート料・会費・コンサルタント料への内包を含む
④業として、第1条の3に規定する業務(=書類の作成)を行う飛行許可・承認申請書、機体登録申請、DIPS2.0上の入力データの作成

要件①〜③:他人の依頼/名目を問わない報酬/業として

③の「いかなる名目によるかを問わず」が今回の追加部分

2026年1月1日施行の改正で第19条第1項に加えられたのは、「者は」の後に置かれた「他人の依頼を受けいかなる名目によるかを問わず報酬を得て」という文言です。日本行政書士会連合会の会長談話は、この趣旨を次のように説明しています。

「…『会費』、『手数料』、『コンサルタント料』、『商品代金』等のどのような名目であっても、対価を受領し、業として官公署に提出する書類…を作成することは、法第19条第1項に違反することが明確化されたもので、これらは現行法においても変わりはなく、改正法の施行日前であってもこうした行為があれば同条に違反することになります。」 出典:日本行政書士会連合会 会長談話(2025年11月1日)

押さえておきたいのは、改正が新たな規制を作ったのではなく、従来の解釈を条文に書き込んだ確認的な規定だと日行連自身が明示している点です。「2026年から違法になった」ではなく「従来から違反だったものが条文上明確化され、罰則の対象が法人にまで拡大された」が正しい説明になります。なお改正法の附則第2条は「この法律の施行前にした行為に対する罰則の適用については、なお従前の例による」と定めています。

「業として」は反復継続の意思

④に含まれる「業として」は、反復継続してその行為を行う意思を指します。単発・一回限りの手伝いがこれに当たるかは評価が分かれ得るところで、明確な線引きは公式には明示されていません。この記事でもそこは断定しません。

要件④:ドローンの申請は「官公署に提出する書類」か

第19条第1項が引く第1条の3は、業務を次のように定めています。

「第一条の三 行政書士は、他人の依頼を受け報酬を得て、官公署に提出する書類(その作成に代えて電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によつては認識することができない方式で作られる記録であつて、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)を作成する場合における当該電磁的記録を含む。以下この条及び次条において同じ。)その他権利義務又は事実証明に関する書類(実地調査に基づく図面類を含む。)を作成することを業とする。」 出典:行政書士法 第1条の3第1項(e-Gov法令検索)

ドローンの各手続が「官公署に提出する書類」に当たるかは、航空法の条文で確認できます。

手続航空法の根拠提出先
飛行許可第132条の85第2項「…国土交通大臣がその運航の管理が適切に行われるものと認めて許可した場合でなければ、無人航空機を飛行させてはならない。」国土交通大臣
飛行承認第132条の86第3項「…あらかじめ、その運航の管理が適切に行われることについて国土交通大臣の承認を受けて…」国土交通大臣
機体登録第132条の4第1項「登録を受けていない無人航空機の登録は、所有者の申請により…」国土交通大臣

いずれも国の行政機関に対する申請であり、「官公署に提出する書類」に当たります。

DIPS2.0の入力も対象です。第1条の3の括弧書きが「その作成に代えて電磁的記録(略)を作成する場合における当該電磁的記録を含む」と明示しているため、紙の申請書に限りません。国土交通省の飛行許可・承認申請ポータルサイトも、これらの手続はDIPS2.0で行えるとしています。実務上ほぼ全件が電磁的記録の作成に当たると考えられます。

ただし書の適用除外に、ドローンは入っていない

第19条第1項にはただし書があり、「定型的かつ容易に行えるものとして総務省令で定める手続」について「総務省令で定める者」が電磁的記録を作成する場合は適用されません。この総務省令は行政書士法施行規則第20条です。全文を確認すると、除外されているのは次の範囲だけです。

区分内容
除外される手続①自動車の新規登録及び新規検査の申請(保管場所証明・OSSを含む)/②検査対象軽自動車の新規検査の申請/③登録自動車・検査対象軽自動車の継続検査の申請
除外される者一般社団法人日本自動車販売協会連合会/一般社団法人日本自動車整備振興会連合会/一般社団法人全国軽自動車協会連合会

ドローン関係の手続も、ドローン関係の団体も、一切含まれていません。「ドローンは定型的で容易だから除外される」という主張は、施行規則第20条の文言からは出てきません。

ここまでを合わせると、条文上は次のように読めます。

条文の当てはめ

行政書士・行政書士法人でない者が、他人の依頼を受け、報酬を得て、業として、無人航空機の飛行許可・承認申請書や機体登録申請(DIPS2.0上の入力データを含む)を作成する行為は、行政書士法第19条第1項に違反します。報酬の名目が「受講料」「機体代金」「サポート料」「会費」「コンサルタント料」であっても同じです。

罰則:第21条の2と、第23条の3の両罰規定

罰則の原文は次のとおりです。第21条と第21条の2が別物であることが、原文で確認できます。

「第二十一条 行政書士となる資格を有しない者が、日本行政書士会連合会に対し、その資格につき虚偽の申請をして行政書士名簿に登録させたときは、一年以下の拘禁刑又は百万円以下の罰金に処する。
第二十一条の二 第十九条第一項の規定に違反したときは、その違反行為をした者は、一年以下の拘禁刑又は百万円以下の罰金に処する。」 出典:行政書士法 第21条・第21条の2(e-Gov法令検索)
条文対象行為法定刑
第21条資格のない者が日行連に虚偽申請をして名簿に登録させたとき1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金
第21条の2第19条第1項違反(無資格で報酬を得て書類を作成)1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金
第22条の4第19条の2違反(名称の使用制限)100万円以下の罰金
用語の確認が2点あります。ひとつは「拘禁刑」。2025年6月1日施行の刑法改正で懲役と禁錮が一本化されたため、現行条文は「懲役」ではありません。古い解説の「1年以下の懲役」は現在の表記ではありません。もうひとつは「又は」。これは選択刑を意味し、拘禁刑と罰金が併科されるわけではありません。

両罰規定(第23条の3)が今回の改正で拡大した

「第二十三条の三 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、第二十一条の二、第二十二条の四、第二十三条第二項又は前条の違反行為をしたときは、その行為者を罰するほか、その法人又は人に対して各本条の罰金刑を科する。」 出典:行政書士法 第23条の3(e-Gov法令検索)

改正前、この両罰規定の対象は「前条第一号」(=第23条の2第1号)だけでした。改正で第21条の2が対象に加えられたことが、事業者にとって最も重い変化です。ドローンスクールや販売代理店の従業員が無資格で顧客の申請書類を作成した場合、行為者本人が処罰されるのに加えて、雇用主である法人にも100万円以下の罰金が科されます。個人の逸脱では済まず、組織のリスクとして立ち上がる形に変わりました。依頼先の選び方はドローンの飛行許可、2026年からは誰に頼めば適法なのかで整理しています。

条文で言えないこと:無償・提出代理・ドローン名指しの見解

ここからは、条文からは言えないことを確認します。解説記事が踏み外しやすい3点です。

(1) 「無償でも違反になる」とは条文から出てこない

第19条第1項の文言は「他人の依頼を受けいかなる名目によるかを問わず報酬を得て」です。「報酬を得て」は構成要件そのものであり、報酬を得ていなければこの条文の適用対象になりません。「いかなる名目によるかを問わず」は報酬の呼び名を問わないという趣旨で、報酬の不存在まで取り込む文言ではありません。総務省の通知も「対価を受領して」、日行連の会長談話も「対価を受領し」と、いずれも有償を前提に説明しており、無償の行為について述べた公的資料は確認できませんでした。

正確な整理はこうなります。真に無償であれば第19条第1項の「報酬を得て」の要件を欠きます。ただし、受講料・機体代金・会費・サポート料に申請書類作成の対価が実質的に含まれていれば、「無償」と称していても報酬を得たものと評価されます。争点は「無償か有償か」ではなく、実質的に対価を受領しているかです。

(2) 第19条第1項が禁じるのは「作成」だけ

第19条第1項は「業として第一条の三に規定する業務を行うことができない」と書いています。第1条の3が定めるのは「書類を作成することを業とする」ことだけです。一方、官公署への提出手続の代理や意見陳述手続の代理は第1条の4に置かれており、第19条第1項の引用対象に入っていません。

「第一条の四 行政書士は、前条に規定する業務のほか、他人の依頼を受け報酬を得て、次に掲げる事務を業とすることができる。…一 前条の規定により行政書士が作成することができる官公署に提出する書類を官公署に提出する手続…について代理すること。」 出典:行政書士法 第1条の4(e-Gov法令検索)

改正で第19条第1項の引用先が「第一条の二」から「第一条の三」へ改められたのは、旧第1条の2(業務=書類作成)が新第1条の3へ移動したことに伴う条ズレの対応です。射程を第1条の4にまで広げた改正ではありません。したがって条文上、次の行為は第19条第1項の構成要件を直ちには満たしません。

  • 申請者本人が作成した申請を、単に窓口へ届ける・送信するだけの使者としての行為
  • DIPS2.0の操作方法を一般的に説明する行為(申請内容の作成に踏み込まない範囲)
  • 制度・規制の一般的な情報提供、セミナー・講義
ただし境界は薄いと考えてください。顧客からヒアリングして申請内容を一緒に作る、画面を見ながら入力内容を指示する、といった段階に入れば、実質的に「作成」に該当し得ます。どこからが作成に当たるかについて、公式の数値的・形式的な基準は公式には明示されていません。

(3) ドローンを名指しした公的見解は確認できない

国土交通省の「無人航空機 飛行許可・承認申請ポータルサイト」には、代行・代理人・行政書士に関する記述は確認できませんでした。日行連や総務省のサイトにも、ドローンを名指しした注意喚起は確認できていません。「国土交通省がドローンの無資格代行を違反行為として名指しした」とは書けません。書けるのは、次の項で見る総務省通知の範囲までです。

行政側はどう動いているか:総行行第281号

2025年6月13日、総務省自治行政局長から各府省官房長等に宛てて「行政書士法の一部を改正する法律の公布について(通知)」(総行行第281号)が発出されています。国土交通省もこの名宛人に含まれます。

「各行政手続の所管部局におかれましては、下記事項にご留意いただくとともに、業務の制限に関する規定の改正によりその趣旨が明確化されることを踏まえ、別添の地方公共団体における取組も参考としながら、行政書士又は行政書士法人でない者による関与を防止するための取組を行っていただきますようお願いします。/併せて、本府省及び各地方支分部局等の各申請窓口にも、この旨周知いただきますようお願いします。」 出典:総務省自治行政局長 総行行第281号(令和7年6月13日)

同通知は改正の趣旨についても、次のように述べています。

「2.業務の制限規定の趣旨の明確化/(略)これは、行政書士や行政書士法人でない者が、他人の依頼を受け、『手数料』や『コンサルタント料』等どのような名目であっても、対価を受領して、業として、官公署に提出する書類等を作成することは違法であるという現行法の解釈を条文に明示することにより、行政書士や行政書士法人でない者による違反行為の更なる抑制を図ろうとする趣旨によるものであること。」 出典:同通知 記2

同日付で都道府県知事宛の総行行第282号も出ており、こちらは「地方自治法第245条の4第1項に基づく技術的な助言である」と明記されています。別添資料には、申請様式への代理人行政書士の記載例の付記(滋賀県)、電子申請フォームへの代理人欄の整備(東京都)、ホームページでの注意喚起の掲載(大阪市)といった窓口対応例が並びます。

整理すると、「ドローンの窓口で今すぐ何かが起きる」とまでは言えないが、申請窓口全般に無資格者の関与を防ぐ取組が求められているという段階です。現時点の公表資料から言えるのはここまでです。

よくある質問

結局、根拠条文はどれを見ればよいのですか
禁止規範が第19条第1項、その業務の定義が第1条の3、罰則が第21条の2、法人への罰金が第23条の3です。ただし書の適用除外は行政書士法施行規則第20条にあります。ドローン側の根拠は航空法第132条の85(許可)、第132条の86(承認)、第132条の4(登録)です。
「行政書士法21条」と書かれた解説は間違いですか
現行法では、無資格業務の罰則の条番号としては正確ではありません。改正で第21条は虚偽登録の罰則に書き換えられ、第19条第1項違反の罰則は第21条の2として独立しました。法定刑はどちらも1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金なので、金額だけを見ると誤りに気づきにくい点に注意してください。
改正で「補助金申請の代行が独占業務と明記された」と読みました。ドローンも条文に書かれたのですか
行政書士法の条文に「補助金」という語は出てきません。ドローンや無人航空機という語も同様です。明記されたのは「いかなる名目によるかを問わず報酬を得て」という部分で、対象となる手続の名称が条文に列挙されたわけではありません。個別の手続については、第19条第1項の一般的な要件を当てはめて判断することになります。
自分の会社の飛行のために、自分で申請書類を作るのは大丈夫ですか
第19条第1項は「他人の依頼を受け」を要件としています。自社の飛行のために自社で作成する本人申請は、この要件に当たりません。DIPS2.0も本人申請を前提に手続きが公開されています。
施行前に依頼した代行について、あとから問題になりますか
改正法の附則第2条は「この法律の施行前にした行為に対する罰則の適用については、なお従前の例による」と定めています。他方で日行連の会長談話は、名目を問わず対価を受領して業として書類を作成することは「現行法においても変わりはなく、改正法の施行日前であってもこうした行為があれば同条に違反することになります」としています。個別の事案の評価は捜査機関と裁判所の判断によります。
本記事は2026年9月4日時点の情報です。 条文は同日にe-Gov法令検索の法令データで確認した現行版に基づいています。行政書士法・航空法とも改正が続く分野です。実際の判断の前に、必ず上記の一次ソースで最新の条文と通知をご確認ください。

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行政書士法第19条第1項の4要件と、ドローンの各手続の根拠条文を1枚に並べたPDFです。解説を読むときの照合用に。

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