DIPS2.0の「複製」で申請を使い回す方法と、使えない場合
DIPS2.0の「申請書の複製」は、過去に作った申請書の内容を丸ごと写した新しい申請書を作る機能です。毎回ゼロから入力しなくて済むので、同じ内容で繰り返し申請する事業者ほど頼りにしています。 ただし、複製は審査要領上の申請の区分ではありません。複製した申請書は新規申請として入力し、提出するもので、更新申請や変更申請とは期限もルールも違います。 さらに2025年12月18日の審査要領改正で、それより前の電子申請のうち「ホームページ掲載無人航空機」や「民間技能認証」を含むものは、複製そのものができなくなりました。 この記事では、DIPS2.0操作マニュアル(ver2026/6/22)と国土交通省の告知をもとに、複製の手順、複製が効く場面、複製できない申請、複製したあとに必ず直す項目を整理します。
審査要領2-1(5) DIPS2.0操作マニュアル P.03-4/P.04-10国土交通省「今後の申請に係る注意事項」 説明会資料 令和7年11月 p.41DIPS2.0操作マニュアル P.07-12 DIPS2.0 よくある質問「複製」は申請の種類ではない。新規・変更・更新との違い
最初に押さえるべきは、複製が審査要領に出てこないことです。審査要領(令和8年9月29日最終改正)の全文を検索しても「複製」「複写」の語は1件もありません。審査要領2-1が定める申請の区分は、一括申請・包括申請・代行申請・更新申請・変更申請で、複製はここに含まれていません。複製はDIPS2.0の入力補助機能です。
DIPS2.0の操作マニュアルは、複製後の作業について「以降、申請書の作成手順と同じように申請書の内容入力、編集してください。(操作マニュアル『01.新規申請方法』P01-39~56参照)」と案内しています。補正の場面ではさらに直接的に「提出済の申請書を複製して、新規申請として提出ください」と書いています。
| 手続 | 何をするものか | DIPS2.0の一覧に出る申請書 | 変えられないもの | 提出期限 |
|---|---|---|---|---|
| 新規申請 | 申請書を一から作って出す | — | — | 飛行開始予定日の10開庁日前まで(審査要領2-1(1)b) |
| 変更申請 | 許可・承認の期間内に、登録記号・機体・操縦者・飛行マニュアル(安全体制)の一部を変えて飛行を続ける | 申請状況が「審査終了」または「手続終了」のもの | 飛行日時・提出先。代表者氏名や保険内容の変更も変更申請に該当しない | 審査要領2-1(6)に変更申請固有の期限の定めはない |
| 更新申請 | 既に受けている許可・承認の飛行の日時のみを延長する | 「審査終了」または「手続終了」で、許可等の終了日まで2か月以内のもの | 日時以外の内容(定義上、日時のみの延長) | 期間の満了の日の40開庁日前から10開庁日前まで(審査要領2-1(5)) |
| 申請書の複製 | 選んだ申請書と同じ内容が入った新しい申請書を作り、新規申請の手順で編集して出す | 「作成中の申請書や審査中、手続終了となった申請書」 | 全項目を編集する前提(新規申請の手順で入力) | 複製固有の期限の定めは公式資料に見当たらない。新規申請として出す以上、10開庁日前が基準になると読める |
表の最終行が、この記事全体の前提です。複製は「前回の続き」ではなく「前回の内容を下書きにした新しい申請」です。したがって、前回の許可を取った時点から制度・様式・自社の状況が変わっていれば、その差分はすべて申請者が自分で直す必要があります。
DIPS2.0で申請書を複製する手順
操作マニュアル「04.申請書の複製方法」は4ステップです。ボタン名はマニュアルの記載どおりに書いています。
なお、複製で添付ファイルや飛行経路図がどこまで引き継がれるかは、マニュアルに「同じ内容が表示されます」とある以上の説明がなく、公式には明示されていません。飛行経路図については、新規申請の手順に「『作成』ボタンをクリックした時点で表示されている画面の状態が、画像として保存され、申請に添付されます」との注意書きがあります(P.01-45)。範囲を変えたなら経路図も作り直す、変えていないなら保存された画像に範囲がすべて写っているかを確認する、の2点は複製でも欠かせません。
複製が効く5つの場面
複製が「便利だから使う」だけの機能ではなく、公式が複製を指定している場面があります。以下の1〜4は操作マニュアル・よくある質問に明記されたもの、5は明記された制約から導かれる使い方です。
| # | 場面 | 公式の記載 | 出典 |
|---|---|---|---|
| 1 | 同じ飛行を2つの提出先に出す(空港周辺空域で夜間飛行を行う場合など) | 「空港事務所と地方航空局のいずれにも申請する必要があります。その場合、申請書複製機能を使用し、各提出先に応じた申請書に編集し直してください。」 | 操作マニュアル P.01-44 |
| 2 | 許可・承認の期限が切れてしまった | 「既に許可承認の期限が切れた許可承認書の更新を希望する場合は、申請書の複製よりご対応ください。」 | 操作マニュアル P.03-9 |
| 3 | 提出したあとで入力の誤りに気づいた | 「一度送信した申請書については、申請者の方では訂正することができません。」「『申請書の複製』を行い、正しい内容を入力し直してください。」「複製元とした不要な申請については、取下げを行ってください。」 | DIPS2.0 飛行許可・承認申請 よくある質問 |
| 4 | 補正で申請者情報(会社名・代表者名・電話番号・メールアドレス)を直せと言われた | 「申請者情報を変更しても、提出済の申請書には反映できません。提出済の申請書を複製して、新規申請として提出ください。」 | 操作マニュアル P.07-12 |
| 5 | 変更申請・更新申請では扱えない変更をしたい(飛行日時の変更、提出先の変更、代表者氏名の変更、保険内容の変更 など) | 変更申請では「飛行の日時を変えて申請は出来ません」「提出先を変えて申請は出来ません」。「代表者氏名の変更や、保険内容の変更については、変更申請には該当しません。変更を希望される場合は『新規申請』でお手続きをお願いいたします。」 | 操作マニュアル P.02-10/P.02-11 |
場面5について補足します。マニュアルが指定しているのは「新規申請」であって、「複製を使え」とは書いていません。ただ、複製は既存の申請書の内容を写した新しい申請書を新規申請の手順で作る機能なので、変わらない部分を写して、変わる部分だけ直すという使い方は、機能の説明と矛盾しません。
場面2の注意:「期限切れ」と「更新の窓を過ぎた」は同じではない
更新申請には、2つの異なる基準が重なっています。
- DIPS2.0の一覧に出る条件:許可等の終了日まで2か月以内(P.03-9、よくある質問)
- 審査要領上の提出期限:期間の満了の日の40開庁日前から10開庁日前まで(審査要領2-1(5))
このため、満了日の10開庁日前を過ぎたが、まだ期限は切れていないという期間が生まれます。この期間の申請書がDIPS2.0の更新一覧に出るのか、出た場合に更新として受け付けられるのかは、公式には明示されていません。審査要領の文言上は更新申請の期限を過ぎているので、新規申請の期限(飛行開始予定日の10開庁日前)で出し直すことになると読めます。この隙間に落ちないためには、更新の窓が開いた直後に出すことです。窓の設計は包括申請の更新。40開庁日前から10開庁日前までの窓で詳しく扱っています。
使えない場合①:2025年12月18日改正で複製できなくなった申請
ここが、この記事でいちばん重要な論点です。2025年12月18日施行の審査要領改正により、申請手続の一部省略を可能としていた「ホームページ掲載無人航空機」および「ホームページ掲載講習団体等が行う技能認証(民間技能認証)」に係る運用が廃止されました。あわせて「航空局ホームページに掲載されている団体等が定める飛行マニュアル」も廃止されています。
国土交通省は、過去の申請の扱いを次のように案内しています。
「なお、ホームページ掲載無人航空機及び技能認証を含まない申請は、12月18日以降もそのまま補正申請が可能です。」
「12月18日以降、新規申請頂いた申請書については、変更申請や更新申請等は可能です。」
「※紙申請は、新たな様式でのご提出をお願いしたく、改正後、一律新規申請をお願いいたします。」
飛行許可・承認手続ページのお知らせ欄(2025年12月9日掲載)は、同じ内容を「ホームページ掲載無人航空機及び民間技能認証が含まれていた過去の申請については、次回申請の際に『複製』『変更申請』『更新申請』等が行えません」「※12月18日以降、最初の申請において新規申請を行って頂きますように」と書いています。つまり該当する申請は、改正後の最初の1回を新規申請で出し直す必要があります。
| 複製元にしたい申請 | 複製 | 変更・更新 | 取るべき手続 |
|---|---|---|---|
| 2025年12月18日以前の電子申請で、HP掲載無人航空機・民間技能認証を含む | できない | できない | 新規申請を一から作成 |
| 2025年12月18日以前の電子申請で、上記を含まない | 公式の受付表では利用可能 | 可能 | 用途に応じて複製・変更・更新 |
| 2025年12月18日以降に新規申請したもの | 可能 | 可能 | 用途に応じて複製・変更・更新 |
| 紙(書面)申請 | — | — | 新たな様式で新規申請(過去の内容にかかわらず一律) |
2行目の「複製」の欄の根拠は、審査要領改正の説明会資料(令和7年11月)p.38の申請受付表です。12月18日以降の欄で、「過去申請からの複写申請」「過去申請からの変更申請」「過去申請からの更新申請」に「※ホームページ掲載無人航空機及び民間技能認証を含まない申請のみ利用可能」と注記されています。この資料では同じ機能を「複写」と呼んでおり、マニュアルやよくある質問の「複製」と表記が揺れている点に注意してください。
紙申請については、操作マニュアルも変更申請・更新申請の説明の中で、元の申請を「書面等の本システム以外の方法で実施している場合は、通常の新規申請として申請を行ってください」としています(P.02-4/P.03-4)。
公式に明示されていない2点
1点目:団体の飛行マニュアルだけを使っていた申請。複製・変更・更新ができなくなる対象として告知が挙げているのは、「ホームページ掲載無人航空機」と「(民間)技能認証」だけです。同時に廃止された「航空局ホームページに掲載されている団体等が定める飛行マニュアル」を含む過去の申請が複製できるかどうかは、公式には明示されていません。一方で、説明会資料は改正後の申請について「『標準マニュアル』等をご使用ください」としています。仮に複製できたとしても、団体の飛行マニュアルのまま出すことはできず、標準マニュアル・リスク評価ガイドラインに基づくマニュアル・その他作成したマニュアルのいずれかに差し替えることになります。
2点目:自分の過去申請が「含む」側かどうかの見分け方。判定の手順は公式には示されていません。当時の申請で、機体の資料をホームページ掲載無人航空機として省略していたか、操縦者の資料を民間技能認証で省略していたかを、申請書の内容から確かめることになります。更新の窓が開いてから気づくと、新規申請の準備期間がそのまま削られます。満了日よりずっと前に確認しておいてください。
使えない場合②:操作上の制約と、取り下げの順番
改正とは関係なく、DIPS2.0の操作の仕組みから生じる「複製できない」「複製では足りない」ケースもあります。
| ケース | 何が起きるか | 出典 |
|---|---|---|
| 複製の前に、複製元を取り下げた | 複製ができなくなる。マニュアルは補正の手順で「複製前に取り下げてしまうと、複製が出来なくなりますので、ご注意ください」としている | P.07-12 |
| 「作成中」「許可書発行」「手続終了」の申請書を取り下げたい | 取り下げられない。取り下げが行えるのは「審査待ち」「審査中」「補正申請書作成中」の申請書だけ。取り下げ操作は申請者自身が行う | P.08-10 |
| 補正中に「取り下げ」ボタンを押してしまった | 申請書が取り下げとなり、申請されない。補正は「申請書編集」から行う | P.07-13 |
| アカウントの申請者情報を直してから、提出済みの申請書を補正したい | 申請者情報の変更は提出済みの申請書に反映できない。複製して新規申請として出す | P.07-12 |
| 登録済みの機体情報・操縦者情報を直した | 補正の手順では、修正内容を申請書に反映させるには選択済みの機体(操縦者)を一度削除し、再選択する必要があるとされている。複製した申請書にも同じことが当てはまるかは公式には明示されていない | P.07-12 |
ここから導ける実務上の順番は1つです。「直す内容を登録情報に反映 → 複製 → 新しい申請書を提出 → 最後に複製元を取り下げ」。取り下げを最初にやってしまうと、複製元を失い、申請書を一から入力し直すことになります。
複製した申請書で必ず見直す項目
複製元の申請書は、それを作った時点の制度と自社の状況で書かれています。国土交通省は飛行許可・承認手続ページで「申請先の誤りにより補正指示が発生する事例が頻発」「所要の申請事項が未記載(空欄)のもの、必要な資料が添付されていないもの等、不備が多くみられます」と注意喚起しています。複製は入力を省ける分、見直しを省きやすい機能です。次の順に確認してください。
ステップ1〜3で引っかかった場合、それは「複製して少し直せば済む」状態ではありません。飛行マニュアルや提出先が変われば、申請書の骨格が変わります。特に飛行マニュアルの選択は、申請する飛行の種類と場所を特定するかどうかで決まるため、ここがずれている申請は内容をいくら丁寧に書いても整合しません。包括申請の設計そのものは包括申請とは:個別申請との違いと使い分けで扱っています。
更新・変更・複製・新規の選び方
最後に、手元の許可・承認に対して「何をしたいか」から手続を選べるよう、ここまでの内容を1枚にまとめます。上の行から順に当てはめて、最初に該当した行を選んでください。
| # | 状況 | 選ぶ手続 | 理由 |
|---|---|---|---|
| 1 | 元の申請が紙(書面) | 新規申請(新たな様式) | 改正後は一律新規。DIPS2.0の変更・更新の対象外 |
| 2 | 2025年12月18日以前の電子申請で、HP掲載無人航空機・民間技能認証を含む | 新規申請(一から作成) | 複製・変更申請・更新申請ができない |
| 3 | 許可・承認の期限が切れている | 複製して新規申請 | マニュアルが複製での対応を指定 |
| 4 | 期間内で、変えたいのが登録記号・機体・操縦者・飛行マニュアルのいずれかだけ | 変更申請 | 審査要領2-1(6)の4項目。ただし飛行日時・提出先は変えられない |
| 5 | 内容はそのままで日時だけ延長したい。終了日まで2か月以内で、満了日の40開庁日前〜10開庁日前に出せる | 更新申請 | 日時のみの延長。期間は1年が限度 |
| 6 | 提出先を変える/2つの提出先に出す/飛行日時を変える/代表者氏名・保険内容を変える | 複製して新規申請 | 変更申請の対象外。2つの提出先はマニュアルが複製を指定 |
| 7 | 提出後に誤りに気づいた/補正で申請者情報を直す | 複製して新規申請 → 複製元を取り下げ | 送信済みの申請書は申請者側で訂正できない。取り下げは複製の後 |
| 8 | 飛行の種類・範囲など、上記以外の申請内容を変えたい | 新規申請(複製を下書きにしてよい) | 審査要領3-4「申請内容に変更が生じた場合には、2-1に従って、改めて申請を行わせる」 |
この表で複製が選ばれる行(3・6・7・8)は、すべて提出期限が「飛行開始予定日の10開庁日前」になると読めます。更新のつもりでいた申請が行3や行8に落ちると、準備に使える時間の数え方が変わります。許可と承認の全体像はドローンの飛行許可・承認申請 完全ガイドを参照してください。
よくある質問
- 国土交通省|ドローン情報基盤システム 操作マニュアル 飛行許可・承認申請編 ver2026/6/22(PDF)
- 国土交通省|DIPS2.0 飛行許可・承認申請に係るよくある質問
- 国土交通省|DIPS2.0 よくある質問(システムの利用について)
- 国土交通省|無人航空機の飛行に関する許可・承認の審査要領(カテゴリーⅡ飛行)令和8年9月29日最終改正(PDF)
- 国土交通省|審査要領の改正に伴う、今後の申請に係る注意事項(PDF)
- 国土交通省|審査要領(カテゴリーⅡ飛行)改正に関する説明会資料 令和7年11月(PDF)
- 国土交通省|無人航空機の飛行許可・承認手続
- 国土交通省|航空局標準マニュアル01(PDF)
- 国土交通省|航空局標準マニュアル02(PDF)
- 国土交通省|ドローン情報基盤システム2.0(DIPS2.0)