business

ドローン業務の委託契約で決めておくこと。中止・再委託・納品物・責任の分担

公開 2026-10-20 更新 2026-10-20 読了 約18分

ドローンの受発注で揉めるところは、だいたい決まっています。風が強くて飛べなかった日の費用は誰が持つのか。操縦者を外注したとき、許可の名義は誰なのか。撮ったデータは誰のものか。落としたとき、発注者にも責任が及ぶのか。 これらはいずれも航空法が答えを書いていない領域で、答えを書いているのは民法です。そして民法の多くの規定は「契約で別に定めなければこうなる」という形をしています。つまり契約書に書かなかった項目は、空白になるのではなく、民法の規定がそのまま結論になります。 この記事は、ドローン業務に特有の揉めどころを、e-Gov法令検索の現行条文と国土交通省の審査要領の原文に当てながら整理します。契約書のひな形は載せていません。条項の意味と、決めておかないと何が起きるかだけを書きます。個別の契約についての判断は扱いません。

よく見る説明と、条文の記載
契約の話は「よく揉めるので決めておきましょう」で終わっている説明が多い領域です。この記事で扱う範囲について、現行条文と公式資料の原文と突き合わせます。
よく見る説明天候で飛べなかった日は、完成していないのだから報酬はゼロになる。
公式にはこう民法は契約の型で結論を分けています。請負なら第634条第1号が「注文者の責めに帰することができない事由によって仕事を完成することができなくなったとき」に、可分な部分の給付で注文者が利益を受けるならその割合に応じた報酬を請求できるとしています。準委任なら第648条第3項第1号が「既にした履行の割合に応じて報酬を請求することができる」としています。
出典 民法第634条/第648条第3項
よく見る説明元請が包括申請を持っていれば、操縦者を外注してもその許可で飛ばせる。
公式にはこう審査要領は申請書に「無人航空機を飛行させようとする者」の情報を記載させ、包括申請は「同一の申請者が…反復して飛行を行う場合」と書いています。委託者が受託者の飛行について申請を代行する仕組みは2-1(4)「代行申請」として別に定められており、代行申請者は飛行させようとする者の情報をとりまとめて添付することとされています。
出典 審査要領(カテゴリーⅡ飛行)2-1(3)(4)・2-2-1(1)
よく見る説明免責条項が無効になるのは消費者契約法があるからで、法人同士なら自由に書ける。
公式にはこう消費者契約法第8条・第10条はいずれも「消費者契約の条項」についての規定で、同法第2条第3項は消費者契約を「消費者と事業者との間で締結される契約」と定義しています。一方、民法第572条は担保責任を負わない特約をしても「知りながら告げなかった事実」については責任を免れないとし、第559条は売買の節の規定を売買以外の有償契約に準用するとしています。
出典 消費者契約法第2条・第8条/民法第559条・第572条

最初に決まるのは契約の型。請負か、準委任か

ドローンの受注で交わされる書面は、たいてい「業務委託契約書」という名前をしています。ところが民法に「業務委託契約」という契約類型はありません。実際の中身は、多くの場合請負か準委任のどちらか、あるいはその混合です。そしてこの型の違いが、飛べなかったときの報酬・中止したときの扱い・再委託の可否に、そのまま効いてきます。条文を見ます。

型条文(原文)約束している内容
請負 民法第632条「請負は、当事者の一方がある仕事を完成することを約し、相手方がその仕事の結果に対してその報酬を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。」 結果を出すことを約束する。報酬は仕事の結果に対して支払われる
準委任 民法第656条「この節の規定は、法律行為でない事務の委託について準用する。」(第643条の委任の規定を準用する) 事務を処理することを約束する。第644条により善良な管理者の注意をもって処理する義務を負う

ドローン業務に引き直すと、次のような対応になります。ただしどの契約がどちらに当たるかを示した公式の当てはめはありません。条文の要件に照らして個別に決まるもので、ここでは条文の書き方を並べるにとどめます。

「完成」が何を指すのかを書いていない契約は、ここで揉めます。 空撮なら、素材の撮影までか、編集済みの納品物までか。点検なら、撮影データの提出までか、所見をまとめた報告書までか。測量なら、点群データまでか、成果としての図面までか。請負は「仕事の完成」に対して報酬を払う契約です(第632条)。その「仕事」の輪郭が書かれていなければ、完成したかどうかも決まりません。業務の範囲をどこまで含むかは、ドローン申請の費用相場は、何に対する対価かで扱った「何に対する対価か」という問題と同じ構造です。

混合になることも珍しくありません。たとえば「月次で点検飛行を行い、そのつど撮影データを提出し、年度末に総括報告書を納める」という契約では、飛行と提出の部分が事務の処理に近く、総括報告書の部分が成果物に近い、という見方があり得ます。民法は第648条の2で、委任事務の履行により得られる成果に対して報酬を支払うことを約した場合の規定を置き、第2項で第634条を準用しています。成果型の準委任という形も条文上は想定されているということです。

飛べなかった日の報酬は、どちらの型かで結論が変わる

ドローン業務で最も高い頻度で起きる「揉めどころ」が、ここです。現場に行き、機材を展開し、補助者を配置し、そのうえで飛ばせなかったという日が必ず出ます。原因は大きく4つに分かれます。

飛べなかった原因公式資料上の位置づけ誰の責めに帰すべき事由か
強風・降雨・視程不良 審査要領4-3-1(2)は飛行前に気象(仕様上設定された飛行可能な風速等)を確認することを、(3)は取扱説明書等に記載された風速以上の突風が発生するなど安全に飛行させることができなくなる不測の事態が発生した場合に即時に飛行を中止することを、(11)は視界上不良な気象状態においては飛行させないことを求めています 通常はどちらの責めにも帰しがたい
電波状況・機器の不調 審査要領4-3-1(2)は機体の状況の確認を求め、4-1-1は操縦装置により適切に制御できることを基準として挙げています 原因によって分かれます。機材管理の問題なら受託側に寄り得ます
緊急用務空域が指定された 施行規則第236条の71第4項は飛行を開始する前に、飛行させる空域が緊急用務空域に該当するか否かの別を確認する義務を課しています。該当すれば許可を持っていても飛べません どちらの責めにも帰しがたい。詳しくは災害対応でドローンを飛ばす。捜索救助の特例と緊急用務空域
許可・承認の条件に触れる状況になった 審査要領3-2(1)は「許可等を行うにあたっては、条件を付すことができるものとする」とし、さらに重要な事情の変化があった場合は許可等を取り消し、又は新たに条件を付すことができるとしています。3-4は申請内容に変更が生じた場合には改めて申請を行わせるものとしています 案件の組み方によります。現場が申請内容とずれていたなら、どちらの準備の問題かが問われます
発注者側の事情(立入りが確保できない、対象施設に入れない等) 審査要領4-3-1(4)は多数の者の集合する場所の上空を飛行することが判明した場合には即時に飛行を中止することを求めています 発注者の責めに帰すべき事由に当たり得ます

請負の場合に働く条文

請負は仕事の完成に対して報酬を払う契約です(第632条)。では完成しなかったらゼロかというと、民法はそうは書いていません。

第634条(注文者が受ける利益の割合に応じた報酬)
「次に掲げる場合において、請負人が既にした仕事の結果のうち可分な部分の給付によって注文者が利益を受けるときは、その部分を仕事の完成とみなす。この場合において、請負人は、注文者が受ける利益の割合に応じて報酬を請求することができる。
一 注文者の責めに帰することができない事由によって仕事を完成することができなくなったとき。
二 請負が仕事の完成前に解除されたとき。」

条文の要件は2段構えです。①注文者の責めに帰することができない事由で完成できなくなったこと、②既にした仕事の結果のうち可分な部分の給付によって注文者が利益を受けること。ドローン業務では、この②が悩ましくなります。1日目に半分の区画を撮り終え、2日目が強風で中止になったという場合と、現場に着いた時点で中止になり、何も撮れていないという場合では、②の当てはめが同じにはなりません。

準委任の場合に働く条文

第648条(受任者の報酬)
第1項「受任者は、特約がなければ、委任者に対して報酬を請求することができない。」
第2項「受任者は、報酬を受けるべき場合には、委任事務を履行した後でなければ、これを請求することができない。ただし、期間によって報酬を定めたときは…」
第3項「受任者は、次に掲げる場合には、既にした履行の割合に応じて報酬を請求することができる。一 委任者の責めに帰することができない事由によって委任事務の履行をすることができなくなったとき。二 委任が履行の中途で終了したとき。」

第648条第3項が見ているのは「既にした履行の割合」であって、第634条のような「注文者が受ける利益」ではありません。現場に赴き、準備を整え、気象を確認して中止を判断した——この一連の作業が「既にした履行」として評価され得るかどうかは、事務の内容をどう定めたかによります。第648条第1項が「特約がなければ報酬を請求することができない」と書いていることも、あわせて押さえておく価値があります。

決めておかないと何が起きるか。 契約書に何も書かないと、①その契約が請負なのか準委任なのかの争い、②第634条の「可分な部分の給付によって利益を受けるとき」または第648条第3項の「既にした履行の割合」の評価の争い、という2段階の争いになります。逆に言えば、決めておく項目は多くありません。(ア)中止したときに請求できる金額(出動費・機材費・人件費の扱い、定額にするか実費にするか)(イ)誰の判断で中止するか(ウ)再飛行の費用を誰が持つか(エ)再飛行の日程調整の期限。この4つが書いてあれば、第634条や第648条第3項の当てはめを争う場面はかなり減ります。

なお、双務契約の一般的な規定として第536条があります。第1項は「当事者双方の責めに帰することができない事由によって債務を履行することができなくなったときは、債権者は、反対給付の履行を拒むことができる」、第2項は「債権者の責めに帰すべき事由によって債務を履行することができなくなったときは、債権者は、反対給付の履行を拒むことができない」としています。発注者側の事情で飛べなかった場合を考えるときに、この条文の建て方が視野に入ります。

中止・解除そのものについての条文

条文原文意味
第641条
(請負)
「請負人が仕事を完成しない間は、注文者は、いつでも損害を賠償して契約の解除をすることができる。」 発注者は完成前ならいつでも解除できます。ただし損害を賠償してという条件が条文に置かれています
第651条
(委任・準委任)
第1項「委任は、各当事者がいつでもその解除をすることができる。」第2項「…次に掲げる場合には、相手方の損害を賠償しなければならない。ただし、やむを得ない事由があったときは、この限りでない。一 相手方に不利な時期に委任を解除したとき。…」 どちらの側からもいつでも解除できます。損害賠償が必要になるのは、相手方に不利な時期の解除等に限られ、やむを得ない事由があれば不要とされています

撮影日の前日に発注者からキャンセルが入る、という場面を考えると、この2条の差は小さくありません。キャンセル料を定めていない契約では、第641条や第651条第2項の「損害」がいくらかという話になります。「◯日前までの連絡なら無償、それ以降は◯%」という形の条項は、この評価を事前に固定するために置かれるものです。

中止の判断は、受託側の義務として組み込まれている

契約の話に入る前に、ひとつ押さえておくべきことがあります。「飛ばさない」という判断は、単なる現場判断ではなく、許可・承認の前提として求められている事項です。審査要領は、許可等に係る基本的な基準として、次に掲げる事項を遵守しながら飛行させることができる体制を構築することを求めています(4-3-1)。

審査要領 4-3-1原文
(2)「飛行前に、気象(仕様上設定された飛行可能な風速等)、機体の状況及び飛行経路について、安全に飛行できる状態であることを確認すること。」
(3)「取扱説明書等に記載された風速以上の突風が発生するなど、無人航空機を安全に飛行させることができなくなるような不測の事態が発生した場合には即時に飛行を中止すること。」
(4)「多数の者の集合する場所(5-6で規定する場所を除く。)の上空を飛行することが判明した場合には即時に飛行を中止すること。ただし、5-6と同様の安全上の措置を講じている場合は、この限りでない。」
(11)「飛行目的によりやむを得ない場合を除き、視界上不良な気象状態においては飛行させないこと。」
(16)「負傷者の救護が必要な事態が発生した場合は、直ちに無人航空機の飛行を中止し、『無人航空機の事故及び重大インシデントの報告要領』に示す救護措置を行うこと。」
中止したことを不利益に扱う条項は、この体制と正面からぶつかります。 「悪天候でも所定の日に飛行を完了すること」「中止した場合は一切の報酬を支払わない」という条項が入っていると、受託側は飛ばす方向に傾きます。ところが審査要領は、安全に飛行できる状態であることを確認し、不測の事態には即時に中止する体制を求めています。「中止を判断する権限が受託側にあること」と「中止した場合の費用の扱い」を先に決めておくほうが、双方にとって安全です。飛行マニュアルの側でも同じことが問題になります(独自の飛行マニュアルを作るべきときと作り方)。

また、許可・承認そのものに条件が付くことがあります。審査要領3-2(1)は「許可等を行うにあたっては、条件を付すことができるものとする。また、航空機の航行の安全並びに地上及び水上の人及び物件の安全に影響を及ぼすような重要な事情の変化があった場合は、許可等を取り消し、又は新たに条件を付すことができるものとする」としています。許可が後から取り消され得ること自体が、契約上のリスク配分の対象になります。あわせて3-4は、申請内容に変更が生じた場合には改めて申請を行わせるものとするとしており、現場の条件が変わったときは再申請の期間(新規は飛行開始予定日の10開庁日前まで)を見込む必要があります。

再委託。許可・承認の名義と、実際に飛ばす者

受注が続けば、自社の操縦者だけでは回らなくなります。ここで発生するのが再委託——外部のパイロットや同業者に飛行そのものを出す形です。ドローン業務では、この再委託が契約の問題と、航空法の手続の問題の両方に同時に引っかかります。順に見ます。

契約の側:準委任には条文がある

第644条の2第1項(復受任者の選任等)
「受任者は、委任者の許諾を得たとき、又はやむを得ない事由があるときでなければ、復受任者を選任することができない。」

準委任と評価される契約では、この条文が働きます。「委託者の書面による事前承諾がなければ再委託できない」という条項は、この条文と同じ方向の定めです。逆に、再委託を前提にした体制で受けているなら、契約の段階で許諾の範囲を決めておかないと、条文の原則側(=許諾がなければ選任できない)に戻ることになります。

一方、請負については、民法に復請負を制限する一般的な規定は置かれていません。型が違えば出発点が違うということです。この点も、s1の「どちらの型か」が効いてくる場面です。

手続の側:申請書の主語は「飛行させようとする者」

ここが、ドローン業務に特有の落とし穴です。審査要領の申請書記載事項は、次のように書かれています。

審査要領 2-2-1(1)
「・無人航空機を飛行させようとする者の氏名、住所及び電話番号、電子メールアドレスその他の連絡先を記載すること。
・代行申請の場合には、代行申請者の氏名、住所及び電話番号、電子メールアドレスその他の連絡先を記載すること。なお、代行申請者は、無人航空機を飛行させようとする者に関する情報として、本項(1)~(8)に関する内容をとりまとめた資料を申請書に記載又は添付すること。」

そして包括申請は、2-1(3)で「同一の申請者が一定期間内に反復して飛行を行う場合又は異なる複数の場所で飛行を行う場合の申請は、包括して行わせることができる」と書かれています。申請の単位は「飛行させようとする者」であって、案件でも現場でもありません。そのうえで、複数の者の飛行をまとめる仕組みが別に用意されています。

審査要領 2-1(4)(代行申請)
「複数の申請者による飛行をとりまとめて行う場合の申請は、それらの飛行をとりまとめる者を代表者として、代行して行わせることができる。また、飛行の委託を行っている者が受託者の飛行について行う場合の申請は、飛行の委託を行っている者に、代行して行わせることができる。」

後段が、まさに再委託の場面を想定した書き方になっています。飛行を委託した側が、受託者の飛行についての申請を代行できる——これが審査要領の定める代行申請です。ただし、2-2-1(1)が求めているとおり、代行申請者は飛行させようとする者に関する情報をとりまとめて申請書に記載又は添付する必要があります。つまり、代行申請は「元請の名義で誰でも飛ばせるようになる仕組み」ではなく、誰が飛ばすかを申請の中で明らかにしたうえで、手続の窓口を一本化する仕組みだと読めます。

誰が飛ばすかは、飛行計画の通報事項でもあります。 施行規則第236条の83第1項は、飛行計画の通報事項として第3号に「無人航空機を飛行させる者の氏名」、第4号に技能証明書番号、第5号に許可又は承認の番号、第11号に立入管理措置の有無及びその内容、第12号に保険契約の有無及びその内容を挙げています。当日になって操縦者が入れ替わる運用は、この通報の内容とずれます。包括申請で操縦者を追加する手続については包括申請の変更申請。機体・操縦者を追加するを、通報のタイミングについてはドローンの飛行計画の通報はいつ必要かをご覧ください。
「申請を代行する」ことと、「報酬を得て業として申請書類を作成する」ことは、別の話として整理されています。 審査要領2-1(4)は手続上どのように申請を行わせるかを定めたもので、書類の作成を誰が報酬を得て行えるかについては触れていません。後者は行政書士法の領域で、2026年1月1日施行の改正で条文の書き方が変わっています。両者の関係については無資格のドローン申請代行はなぜ違反になるのか、条文で確かめるとドローンの飛行許可、2026年からは誰に頼めば適法なのかで扱っています。再委託先に「申請もやっておいて」と頼む場面は、この2つの論点が同時に立ち上がる場面です。

契約の条項として決めるべき項目は、次のあたりになります。①再委託の可否と事前承諾の要否 ②許可・承認を誰の名義で取るか(再委託先が自ら申請するのか、代行申請にするのか) ③飛行計画を誰が通報するか ④再委託先の技能証明・機体登録・機体認証の確認方法 ⑤再委託先が起こした事故についての責任の所在 ⑥再委託先に守らせる飛行マニュアルはどれか。このうち②③は、契約書ではなく運用の話に見えて、実際にはどちらが手続の主体になるかという契約事項です。

納品物。何を、どの権利とともに渡すのか

納品物をめぐる条項は、大きく2つに分かれます。「何を渡すか」(成果物の範囲と検収)と「どの権利とともに渡すか」(著作権等の処理)です。後者のうち著作権の帰属については、空撮映像を納品するときの権利処理。プライバシー・肖像権・著作権で条文単位で整理しています。ここでは契約条項の側から見ます。

何を渡すか

業務「納品物」の候補決めていないと起きること
空撮・映像制作 撮影素材(RAW・ログ)/編集済み納品データ/静止画の切り出し/ぼかし処理前後のファイル 素材そのものを求められるかどうかで作業量が変わります。加工前の映像を保存しているかは個人情報保護法の議論にも接続します
点検 撮影画像/オルソ画像/損傷の所見/判定を含む報告書 「判定」まで含むのかが最大の分かれ目です。建築物の定期報告など、資格者の関与が前提になる制度もあります(インフラ点検でドローンを使うのに必要な許可・承認)
測量 撮影画像/点群データ/オルソ画像/数値地形図データ/精度管理表 公共測量では作業規程の準則が成果の形式を定めています(作業規程の準則が定めるUAV測量)。準則に沿った成果を出すのか、データだけ渡すのかで契約の性質が変わります

検収についても、民法は請負の場合の規定を置いています。第637条第1項は、注文者が不適合を知った時から1年以内にその旨を請負人に通知しないときは、不適合を理由とする追完請求・報酬減額請求・損害賠償請求・解除ができないとしています(第2項により、引渡時に請負人が不適合を知り、又は重大な過失によって知らなかったときは適用されません)。また第636条は、注文者の供した材料の性質又は注文者の与えた指図によって生じた不適合を理由とする請求等を制限しています(請負人がその材料又は指図が不適当であることを知りながら告げなかったときを除く)。

第636条は、ドローン業務では「指図」の条項として効いてきます。 発注者が飛行経路・撮影高度・撮影範囲・使用機材を指定してくる案件は珍しくありません。その指定どおりに撮った結果、必要な解像度が出ない、死角が残る、という事態が起きたとき、条文が見ているのは「注文者の与えた指図によって生じた不適合」かどうかです。指定を受けた事項を記録に残すかどうかが、この条文の当てはめに効きます。逆に、受託側が「その指定では目的を達しない」と分かっていて告げなかった場合には、ただし書のほうが問題になります。

どの権利とともに渡すか

著作権の帰属と譲渡の条文(著作権法第15条・第16条・第29条・第59条・第61条第2項・第63条)については、空撮映像を納品するときの権利処理で原文を引いて整理しています。契約条項の側から見たときの要点だけを挙げると、次の3つです。

  • 渡すのは「著作権」か「利用の許諾」か。譲渡なら著作権法第61条、許諾なら第63条が働きます。第63条第2項は「その許諾に係る利用方法及び条件の範囲内において」利用できるとしており、範囲の書き方がそのまま効力の範囲になります
  • 譲渡するなら第27条・第28条を特掲するか。第61条第2項は、これらの権利が譲渡の目的として特掲されていないときは譲渡した者に留保されたものと推定するとしています
  • 著作者人格権は譲渡できない(第59条)。納品後の編集・クレジット・公表のタイミングをどう扱うかは、譲渡条項とは別に決める話になります
点検データ・測量成果は、著作権だけでは整理しきれません。 著作権法第2条第1項第1号は著作物を「思想又は感情を創作的に表現したもの」と定義しています。点検で機械的に取得した画像や、測量の点群データがこの定義に当たるかは、案件ごとの個別判断になります。当たらないなら著作権の譲渡条項を書いても動かす対象がなく、残るのは「データそのものの引渡し」と「利用・第三者提供の制限」という契約上の取り決めです。準委任と評価される場合には、民法第646条第1項が「受任者は、委任事務を処理するに当たって受け取った金銭その他の物を委任者に引き渡さなければならない」と定めており、成果物とは別に引渡しの義務が条文上あり得ます。また第645条は、委任者の請求があるときはいつでも処理の状況を報告し、終了後は遅滞なくその経過及び結果を報告する義務を定めています。

責任の分担。使用者責任と、注文者の責任

機体を落とし、人や物に損害を与えたときの責任そのものについては、ドローンを落として人にけがをさせたときの責任。民事・刑事・航空法で整理しています。ここでは、発注者・元請・再委託先という3者の間で、その責任がどう分かれるかだけを見ます。民法には、この分岐を扱う条文が2つ並んでいます。

条文原文効果
第715条
使用者等の責任
第1項「ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、使用者が被用者の選任及びその事業の監督について相当の注意をしたとき、又は相当の注意をしても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。」第3項「前二項の規定は、使用者又は監督者から被用者に対する求償権の行使を妨げない。」 使用する側が、原則として責任を負う建て方。免責はただし書の要件を満たす場合
第716条
注文者の責任
「注文者は、請負人がその仕事について第三者に加えた損害を賠償する責任を負わない。ただし、注文又は指図についてその注文者に過失があったときは、この限りでない。」 注文した側は、原則として責任を負わない建て方。例外は注文・指図についての過失

2つの条文は、向きが逆です。第715条は使用する側に責任を寄せ、第716条は注文する側から責任を外しています。そして、どちらの条文が視野に入るかは、その関係が「使用」なのか「請負」なのかで変わります。条文は「ある事業のために他人を使用する者」「注文者は、請負人が」としか書いておらず、個別の体制がどちらに当たるかを示した公式の当てはめはありません。ここでは条文の書き方を示すにとどめます。

指示を出せば出すほど、第716条のただし書に近づきます。 発注者が飛行経路・高度・撮影対象・当日の進行を細かく指定する案件では、条文が「注文又は指図についてその注文者に過失があったとき」と書いている部分の当てはめが問題になり得ます。「発注者は一切の責任を負わない」という条項を置いても、それは発注者と受託者の間の取り決めであって、損害を受けた第三者が誰にどの条文で請求できるかを変えるものではありません。契約で決められるのは、当事者の間でどちらが最終的に負担するか(求償の扱い)です。第715条第3項が求償権について明文を置いているのも、この構造を前提にした規定です。

契約条項として決める項目は、おおむね次のとおりです。①第三者に対する賠償を一次的にどちらが対応するか ②保険をどちらが手当てするか(対人・対物・機体・捜索費用の別、免責金額、被保険者の範囲に再委託先が入るか) ③再委託先が起こした事故の負担 ④賠償額の上限を置くか ⑤事故が起きたときの通知と報告の手順。⑤は法令上の報告(航空法第132条の90・第132条の91)とは別に、契約の相手方にいつ何を伝えるかという話で、書いていないと初動で必ず混乱します。

免責条項はどこまで書けるのか

「当社は一切の責任を負わない」「賠償額は委託料を上限とする」といった条項が、どこまで効くのか。ここは、条文がどう書かれているかだけを確認します。

消費者契約法は、条文上「消費者契約」を対象にしている

免責条項の制限としてよく挙げられるのが消費者契約法第8条です。同条第1項は「次に掲げる消費者契約の条項は、無効とする」として、事業者の債務不履行により消費者に生じた損害を賠償する責任の全部を免除する条項(第1号)、故意又は重大な過失による債務不履行についてその責任の一部を免除する条項(第2号)などを挙げています。第10条も「消費者契約の条項」についての規定です。

消費者契約法第2条
第1項「この法律において『消費者』とは、個人(事業として又は事業のために契約の当事者となる場合におけるものを除く。)をいう。」
第2項「…『事業者』とは、法人その他の団体及び事業として又は事業のために契約の当事者となる場合における個人をいう。」
第3項「…『消費者契約』とは、消費者と事業者との間で締結される契約をいう。」

条文の定義から読めるのは、第8条・第10条が対象にしているのは「消費者契約の条項」であり、消費者契約とは消費者と事業者との間で締結される契約であるということです。事業者間の契約についてこの法律がどう及ぶかを正面から述べた公式の資料は、本記事の確認範囲では見当たりませんでした。ここでは条文の定義を示すにとどめます。なお、個人(事業としてではなく契約の当事者となる場合)から空撮を依頼されるような場面では、条文の定義の当てはめが変わり得る点に注意が必要です。

民法の側には、事業者間でも働き得る条文がある

第572条(担保責任を負わない旨の特約)
「売主は、第五百六十二条第一項本文又は第五百六十五条に規定する場合における担保の責任を負わない旨の特約をしたときであっても、知りながら告げなかった事実及び自ら第三者のために設定し又は第三者に譲り渡した権利については、その責任を免れることができない。」

第559条(有償契約への準用)
「この節の規定は、売買以外の有償契約について準用する。ただし、その有償契約の性質がこれを許さないときは、この限りでない。」

第572条は売買の節に置かれた規定で、第559条が同じ節の規定を売買以外の有償契約に準用する建て方をしています。ただし第559条にはただし書があり、「その有償契約の性質がこれを許さないとき」は準用されません。この記事では、条文がこのように組まれているという事実を示すにとどめ、請負や準委任にそのまま適用されると断定はしません。請負については、別に第636条が担保責任の制限を、第637条が期間の制限を定めており、こちらは請負の節の規定です。

免責条項について決めておくと実務が楽になるのは、「限度」の書き方です。 責任を一切負わないという条項は、その有効性が争われたときに全部が問題になります。一方、①賠償の上限額(委託料相当額とするか、保険の保険金額に連動させるか) ②対象から外す損害の類型(逸失利益・間接損害・データの復旧費用など) ③期間の制限(第637条第1項が請負について「不適合を知った時から1年以内の通知」を定めていることとの関係)といった形で範囲を切る条項は、何が決まっていて何が決まっていないかが明確になります。個別の条項が有効かどうかの判断は、条文の文言をその契約に当てはめる作業になります。結論が問題になる場面では、弁護士等の専門家に確認するのが確実です。

飛行記録・許可書・保険は、法律ではなく契約で決まる

発注者から「許可書の写しと飛行記録を出してください」と言われることがあります。これが法律上の義務なのかを、公式資料で確認しておきます。

書類公式に求められていること発注者への提出
許可書・承認書 審査要領4-3-1(18)「飛行の際には、無人航空機を飛行させる者は許可書又は承認書の原本又は写しを携行すること。ただし、口頭により許可等を受け、まだ許可書又は承認書の交付を受けていない場合は、この限りでない。なお、この場合であっても、許可等を受けた飛行であるかどうかを行政機関から問われた際に許可等の年月日及び番号を回答できるようにしておくこと。」=飛行させる者に対する携行の求め 発注者への提出を求める規定は見当たりません
飛行日誌
(飛行記録・日常点検記録・点検整備記録)
航空法第132条の89第1項は特定飛行を行う者に備付けを、第2項は遅滞ない記載を義務付けています(ドローンの飛行日誌の書き方)。審査要領4-3-1(12)(13)も、取扱要領に従った点検整備記録の作成と、飛行の都度の実績の記録を求めています 発注者・第三者への提出を求める規定は見当たりません
飛行実績の報告 審査要領3-2(2)「許可等を行った飛行について、飛行実績の報告並びに…資料の提出又は説明を求めることができるものとする。」=求める主体は許可等を行った側(国) 発注者への報告義務の規定は見当たりません
保険 審査要領4-3-1(19)は総重量25kg以上の機体について第三者賠償責任保険への加入を求めています。施行規則第236条の83第1項第12号により、保険契約の有無及びその内容は飛行計画の通報事項です 発注者への提示義務の規定は見当たりません
つまり、これらは公式の義務ではなく、契約で決める事項です。 航空法・施行規則・審査要領・飛行日誌の取扱要領を確認した範囲では、発注者に許可書の写しや飛行記録を提出することを求める規定は見当たりませんでした。網羅的に確認したとは言えないため「存在しない」とまでは書きませんが、少なくとも「法律で決まっているから出さなければならない」という性質のものではありません。 だからこそ、求められる前に決めておく価値があります。決める項目は、①提出するのは許可書の写しか、許可等の年月日及び番号か ②飛行記録は様式のどの範囲か(機体のシリアルや操縦者の個人情報をどこまで含めるか) ③提出の期限 ④受け取った側がそれをどう扱うか(目的外利用の制限)。とくに④は、飛行日誌が機体毎に備えるものであり、他の案件の記録も含み得る点で重要です。

「下請法」は題名が変わっている。当たり得る要件

元請から受ける、あるいは再委託先に出す。どちらの立場でも、取引の規模によってはいわゆる下請法の適用が視野に入ります。ここで、条文を確認した結果として先に書いておくべきことがあります。

この法律の題名は、2026年1月1日施行の改正で変わっています。 昭和31年法律第120号の題名は、「下請代金支払遅延等防止法」から「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律」になりました。改正法は「下請代金支払遅延等防止法及び下請中小企業振興法の一部を改正する法律」(令和7年法律第41号、公布2025年5月23日、施行2026年1月1日)です。e-Gov法令検索が付している略称は「取適法」「中小受託取引適正化法」です。用語も、親事業者→委託事業者、下請事業者→中小受託事業者、下請代金→製造委託等代金に置き換わっています。「下請法」で検索して出てくる解説は、改正前の題名・用語のままのものが混ざり得ます。

適用されるかどうかは、取引の類型と当事者の規模の組合せで決まります。まず類型です。第2条第6項は「製造委託等」を、製造委託・修理委託・情報成果物作成委託・役務提供委託・特定運送委託の5つとしています。ドローン業務に関係しやすいのは後ろの2つです。

類型条文(原文の要旨)ドローン業務での当たり方
情報成果物
作成委託
(第2条第3項)
事業者が業として行う提供若しくは業として請け負う作成の目的たる情報成果物の作成の行為の全部又は一部を他の事業者に委託すること 等 第7項は「情報成果物」に第2号「映画、放送番組その他影像又は音声その他の音響により構成されるもの」、第3号「文字、図形若しくは記号若しくはこれらの結合又はこれらと色彩との結合により構成されるもの」を挙げています。映像や、図面・報告書の形の成果物が視野に入ります
役務提供委託
(第2条第4項)
事業者が業として行う提供の目的たる役務の提供の行為の全部又は一部を他の事業者に委託すること(建設業を営む者が業として請け負う建設工事を他の建設業を営む者に請け負わせることを除く) 自社が顧客に提供している点検・撮影・警備等の役務を、他の事業者に出す形。自社で使うための役務はこの類型の書き方から外れます

次に規模です。第2条第8項・第9項が、委託事業者と中小受託事業者の組合せを定めています。令和7年改正で、資本金による区分に加えて従業員数による区分が入りました。

類型委託する側受ける側根拠
情報成果物作成委託
役務提供委託
資本金の額又は出資の総額が5,000万円超の法人 個人、又は5,000万円以下の法人 第2条第8項第3号・第9項第3号
同上 1,000万円超5,000万円以下の法人 個人、又は1,000万円以下の法人 第2条第8項第4号・第9項第4号
同上 常時使用する従業員の数が100人超の法人 常時使用する従業員の数が100人以下の個人又は法人 第2条第8項第6号・第9項第6号
(令和7年改正で追加)
製造委託等
(一般)
資本金3億円超/1,000万円超3億円以下/従業員300人超 個人又は3億円以下/1,000万円以下/従業員300人以下 第2条第8項第1号・第2号・第5号
3億円の区分は、映像やデータの作成委託には使いません。 第2条第8項第1号は、情報成果物作成委託・役務提供委託については「それぞれ政令で定める情報成果物及び役務に係るものに限る」としています。その政令(2026年1月1日施行)は、政令で定める情報成果物を「プログラム」、政令で定める役務を「一 運送 二 物品の倉庫における保管 三 情報処理」としています。映像・図面・点検データの作成委託や、撮影・点検といった役務の提供委託は、3億円の区分ではなく5,000万円の区分(第3号・第4号)と従業員100人の区分(第6号)で見ることになります。

当たる場合に何が課されるかも、条文で確認しておきます。

  • 第4条第1項:製造委託等をした場合は直ちに、給付の内容・代金の額・支払期日及び支払方法その他の事項を、書面又は電磁的方法により明示しなければならない(内容が定められないことにつき正当な理由がある事項を除く)
  • 第3条第1項:支払期日は、給付を受領した日(役務提供委託・特定運送委託の場合は役務の提供を受けた日)から起算して60日の期間内、かつできる限り短い期間内に定めなければならない。第2項により、定めなかったときや違反して定めたときは、みなしの支払期日が働きます
  • 第5条第1項:受領拒否、支払期日経過後の不払い(手形の交付を含む)、代金の減額、返品、買いたたき、購入・利用強制、報復措置の禁止
  • 第5条第2項:経済上の利益の提供要請、不当なやり直し・給付内容の変更、費用の変動等が生じた場合に協議を求められたのに応じず、又は必要な説明・情報提供をせず一方的に代金額を決定することにより、中小受託事業者の利益を不当に害してはならない
ドローン業務で引っかかりやすいのは、第5条第2項第3号の「やり直し」です。 条文は「中小受託事業者の責めに帰すべき理由がないのに、給付の内容を変更させ、又は給付を受領した後(役務提供委託等の場合は役務の提供を受けた後)に給付をやり直させること」により利益を不当に害してはならない、としています。ドローンの撮影は、やり直しに再出動・再申請・再通報・天候待ちという固有のコストが乗ります。撮り直しの費用負担を契約で決めていないと、この条文の当てはめを争う場面になり得ます。本記事は個別の取引が同法の適用対象になるかを判定するものではありません。当たり得るという前提で、代金の明示・支払期日・やり直しの費用負担を最初に書面にしておくのが、どちらの立場でも取りやすい対応です。

決めていないと何が働くか。条項の一覧

ここまでを、1枚にまとめます。左が契約で決める項目、右が決めていない場合に働く条文です。

決める項目決めていないと働く条文起きやすい争い
業務の範囲と「完成」の定義 民法第632条(請負)/第643条・第656条(準委任) そもそもどちらの型かの争いになります
飛べなかったときの報酬 第634条(請負)/第648条第3項(準委任)/第536条 「可分な部分の給付による利益」「既にした履行の割合」の評価
再飛行の費用負担 該当する条文なし 丸ごと交渉になります。最も書いておく価値が高い項目です
中止を判断する権限 契約上は該当条文なし。審査要領4-3-1(2)(3)(4)(11)(16)は中止・不飛行を体制として求めています 飛ばす圧力と安全確保の板挟み
キャンセルの扱い 第641条(請負・注文者はいつでも損害を賠償して解除)/第651条(委任・各当事者がいつでも解除) 「損害」がいくらかの争い
再委託の可否 第644条の2第1項(準委任は委任者の許諾等がなければ復受任者を選任できない)/請負には一般的な制限規定なし 無断再委託かどうか
許可・承認の名義 審査要領2-1(3)(同一の申請者)・2-1(4)(代行申請)・2-2-1(1) 誰の申請で飛ぶのかが現場で不明確になります
納品物の範囲・検収 第636条・第637条(請負の担保責任の制限と期間)/第645条・第646条(準委任の報告・引渡し) 素材まで渡すか、判定まで含むか
著作権の扱い 著作権法第15条・第29条(帰属)/第61条第2項(第27条・第28条の特掲)/第59条(人格権は譲渡不可) 二次利用の可否。詳しくはこちら
事故時の責任・求償 第709条/第715条(使用者等の責任)/第716条(注文者の責任) 元請・再委託先のどちらが最終的に負担するか
免責・賠償の上限 第415条/第572条・第559条/(消費者契約の場合)消費者契約法第8条・第10条 条項の有効性
飛行記録・許可書の提出 該当条文なし。審査要領4-3-1(18)は携行を、航空法第132条の89は備付けを求めるのみ 提出の可否・範囲・目的外利用
代金の明示と支払期日 第633条(請負は引渡しと同時)/第648条第2項(準委任は履行後)/適用対象なら中小受託取引適正化法第3条・第4条 支払サイトと手形の可否

この表を、受注の前に踏む順番に並べ替えると次のようになります。

何を納めるのかを言語化する。素材か、成果物か、判定まで含むか。ここが決まらないと、請負か準委任かも決まりません(第632条/第656条)
その飛行がどの特定飛行に当たるかを確認する。必要な許可・承認と、取得にかかる日数(新規は飛行開始予定日の10開庁日前まで)を先に把握します(許可・承認申請 完全ガイド)
自社の包括申請の範囲で足りるかを見る。足りないなら個別申請か変更申請。ここで再委託を使うなら、名義をどうするか(2-1(4)の代行申請を使うか)を同時に決めます
飛べなかったときの扱いを決める。中止の判断権限・そのときの請求額・再飛行の費用・日程調整の期限の4点
キャンセルの条件を決める。第641条・第651条が働く前提で、時期ごとの割合を書いておきます
納品物の権利の渡し方を決める。譲渡か許諾か。譲渡なら著作権法第27条・第28条の特掲の有無(第61条第2項)
責任と保険を割り付ける。一次対応・保険の手当て・被保険者の範囲・再委託先の事故・上限額・事故時の通知手順
記録の扱いを決める。許可書の写し・飛行記録の提出範囲と、受け取った側の目的外利用の制限
代金の明示と支払期日を書面にする。中小受託取引適正化法の適用対象になり得るなら、第4条の明示事項と第3条の60日を意識した形にします
個別の条項の効力や、その契約が法律の適用対象かどうかの判断は、条文の文言をその事案に当てはめる作業になります。本記事は条文と公式資料に書かれている内容を示すにとどめます

よくある質問

悪天候で飛べませんでした。報酬は請求できますか。
契約の型と、契約に何を書いたかによります。請負なら民法第634条第1号が「注文者の責めに帰することができない事由によって仕事を完成することができなくなったとき」に、既にした仕事の結果のうち可分な部分の給付によって注文者が利益を受けるときは、その割合に応じた報酬を請求できるとしています。準委任なら第648条第3項第1号が「既にした履行の割合に応じて報酬を請求することができる」としています。いずれも「何もしていなければ請求できる」という条文ではありません。だからこそ、出動時点で発生する費用の扱いを契約で決めておく意味があります。
発注者から「強風でも予定日に飛ばしてほしい」と言われました。
審査要領4-3-1は、許可等に係る基本的な基準として、飛行前に気象(仕様上設定された飛行可能な風速等)、機体の状況及び飛行経路について、安全に飛行できる状態であることを確認すること((2))、取扱説明書等に記載された風速以上の突風が発生するなど安全に飛行させることができなくなるような不測の事態が発生した場合には即時に飛行を中止すること((3))を遵守できる体制の構築を求めています。中止の判断は、現場の裁量である前に、許可・承認の前提として組み込まれている事項です。その判断権限が受託側にあることと、中止した場合の費用の扱いを、契約で先に決めておく形になります。
操縦者を外注します。うちの包括申請で飛ばしてもらえますか。
審査要領2-1(3)は包括申請を「同一の申請者が一定期間内に反復して飛行を行う場合又は異なる複数の場所で飛行を行う場合」の申請と書いており、2-2-1(1)は申請書に「無人航空機を飛行させようとする者」の情報を記載させています。そのうえで2-1(4)は代行申請として、「飛行の委託を行っている者が受託者の飛行について行う場合の申請は、飛行の委託を行っている者に、代行して行わせることができる」と定めています。代行申請者は、飛行させようとする者に関する情報をとりまとめて申請書に記載又は添付することとされています。誰が飛ばすかは飛行計画の通報事項でもあります(施行規則第236条の83第1項第3号)。既存の包括申請に操縦者を追加する手続は包括申請の変更申請で扱っています。
再委託先が事故を起こしたら、元請も責任を負いますか。
民法には向きの違う2つの条文が並んでいます。第715条第1項は「ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う」とし、ただし書で選任及び監督について相当の注意をしたとき等を除いています。第716条は「注文者は、請負人がその仕事について第三者に加えた損害を賠償する責任を負わない」とし、ただし書で「注文又は指図についてその注文者に過失があったとき」を除いています。どちらの条文が視野に入るかは体制によって変わり、公式の当てはめは示されていません。契約で決められるのは、当事者の間で最終的に誰が負担するか(求償の扱い)です。事故そのものの責任の構造はドローンを落として人にけがをさせたときの責任で整理しています。
「当社は一切の責任を負わない」と書けば免責されますか。
条文の側から見ると、いくつかの制限が置かれています。消費者契約法第8条は「消費者契約の条項」について、債務不履行により消費者に生じた損害の賠償責任の全部を免除する条項等を無効としており、同法第2条第3項は消費者契約を「消費者と事業者との間で締結される契約」と定義しています。民法側では、第572条が「担保の責任を負わない旨の特約をしたときであっても、知りながら告げなかった事実…については、その責任を免れることができない」とし、第559条が売買の節の規定を「売買以外の有償契約について準用する」(ただし、その有償契約の性質がこれを許さないときを除く)としています。個別の条項が有効かどうかは条文の文言をその契約に当てはめる作業で、本記事では判断しません。
発注者に飛行記録と許可書の写しを出す義務はありますか。
審査要領4-3-1(18)が求めているのは「許可書又は承認書の原本又は写しを携行」することで、飛行日誌については航空法第132条の89が備付けと遅滞ない記載を義務付けています。審査要領3-2(2)の飛行実績の報告も、求める主体は許可等を行った側です。航空法・施行規則・審査要領・飛行日誌の取扱要領を確認した範囲では、発注者や第三者に提出することを求める規定は見当たりませんでした。したがって公式の義務ではなく、契約で決まるものと整理されます。提出するなら、範囲と目的外利用の制限までセットで決めておくのが実務的です。
撮り直しを何度も求められています。費用を請求できますか。
契約に書いていなければ、まず「その撮り直しが契約の範囲内か」という話になります。請負なら民法第636条が、注文者の供した材料の性質又は注文者の与えた指図によって生じた不適合を理由とする追完請求等を制限しています(請負人がその材料又は指図が不適当であることを知りながら告げなかったときを除く)。また、取引が中小受託取引適正化法(旧・下請代金支払遅延等防止法)の適用対象になる場合には、同法第5条第2項第3号が「中小受託事業者の責めに帰すべき理由がないのに…給付をやり直させること」により利益を不当に害することを禁じています。適用対象かどうかは取引の類型と資本金・従業員数の組合せで決まり、本記事では個別の判定はしません。
「下請法」と「中小受託取引適正化法」は別の法律ですか。
同じ法律です。昭和31年法律第120号の題名が、2026年1月1日施行で「下請代金支払遅延等防止法」から「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律」に変わりました(改正法は令和7年法律第41号、公布2025年5月23日)。e-Gov法令検索が付している略称は「取適法」「中小受託取引適正化法」です。用語も親事業者→委託事業者、下請事業者→中小受託事業者、下請代金→製造委託等代金に置き換わり、常時使用する従業員の数による区分(300人・100人)が追加されています。旧題名で書かれた解説を読むときは、条文を現行のもので確認してください。
許可が取り消されることはありますか。契約にどう書きますか。
審査要領3-2(1)は「許可等を行うにあたっては、条件を付すことができるものとする。また、航空機の航行の安全並びに地上及び水上の人及び物件の安全に影響を及ぼすような重要な事情の変化があった場合は、許可等を取り消し、又は新たに条件を付すことができるものとする」と定めています。また3-4は、申請内容に変更が生じた場合には改めて申請を行わせるものとするとしています。許可が前提として崩れ得ることは、契約上はスケジュールと費用のリスクとして現れます。再申請に要する期間(新規は飛行開始予定日の10開庁日前まで、更新は満了日の40開庁日前から10開庁日前まで)を見込んだ日程と、その間の費用の扱いを決めておく形になります。
契約書のひな形はどこかにありますか。
本記事ではひな形を扱いません。条項の文言は、業務の内容・当事者の規模・リスクの配分によって変わるべきもので、同じ文面がどの案件にも当てはまるという性質のものではないためです。この記事で示したのは、民法・著作権法・中小受託取引適正化法の条文と、国土交通省の審査要領が何を書いているかだけです。実際の契約書の文言や、個別の条項の効力については、弁護士等の専門家に確認するのが確実です。
本記事は2026年9月28日時点の情報です。 条文はいずれも、この時点でe-Gov法令検索が提供する現行条文(民法・消費者契約法は2026年6月24日施行版、製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律は2026年1月1日施行版、航空法施行規則は2026年7月1日施行版)で突合したものです。審査要領は令和8年9月29日最終改正のものを確認しました。 本記事は、民法その他の条文と国土交通省の公式資料に書かれている内容を整理したものです。個別の契約の内容がどの条文に当たるか、特定の条項が有効かどうかといった判断は扱いません。契約書のひな形も掲載していません。実際の契約にあたっては、必ず上記の一次ソースで最新の条文をご確認のうえ、必要に応じて弁護士等の専門家に確認してください。

飛行前チェックリスト(無料)

その飛行がどの特定飛行に当たり、どの許可・承認が要るかを1枚で判定できるPDFです。受注前の確認にもお使いいただけます。

チェックリストを受け取る