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事故と重大インシデントの報告。何を、いつ、どこに報告するか

公開 2026-10-26 更新 2026-10-26 読了 約13分

ドローンが落ちた直後にやることは、航空法上2つに分かれます。1つは直ちに飛行を中止し、負傷者を救護するなど危険を防止するために必要な措置を講じること(航空法第132条の90第1項)。もう1つが国土交通大臣への報告で、こちらは「事故」(同条第2項)と「重大インシデント」(同法第132条の91)で条文が分かれています。 報告はドローン情報基盤システム(DIPS2.0)の事故等報告機能から行うのが原則で、夜間は24時間対応の空港事務所に電話する、という運用まで公式に示されています。 この記事は、現場で起きた直後から順に追える形で、航空法上の報告手続きの実務だけを扱います。民事・刑事を含む責任の全体像はドローンを落として人にけがをさせたときの責任を参照してください。

よく見る説明と、公式の記載
事故報告は、国土交通省の案内ページ自体に一括りの説明や古い表記が残っている分野です。条文と報告要領の原文に当てて確認します。
よく見る説明事故も重大インシデントも、報告しなければ30万円以下の罰金。
公式にはこう罰条(第157条の10第2項)が明文で引用しているのは第132条の90第2項=事故の報告だけです。重大インシデントの報告を定めた第132条の91を引用する罰条は現行の航空法に置かれていません。報告が義務であること自体は変わりません。
出典 航空法 第157条の10第2項・第132条の91(全文を機械検索して確認)
よく見る説明墜落したら「制御不能」なので重大インシデントとして報告する。
公式にはこう航空局の資料は、操縦ミス・フェールセーフ機能の確認不足・飛行前点検不足による墜落を「制御不能となった事態」に該当しなかった事例として挙げています。令和5年度は非該当と判定された事案が361件ありました。
出典 事故・重大インシデントについて(国土交通省航空局 無人航空機安全課)
よく見る説明報告すると処罰されるので、黙っていたほうが得。
公式にはこう報告要領は目的を原因究明と再発防止とし、「当事者に対しペナルティを科すことを目的としたものではない」と明記しています。一方、事故の報告をしないことと虚偽の報告は、それ自体が30万円以下の罰金の対象です。
出典 無人航空機の事故及び重大インシデントの報告要領 1.目的

起きた直後にやること──罰則が重いのは報告ではなく「措置」

条文の順番どおりに読むと、報告より先に来るのが現場での措置です。

「次に掲げる無人航空機に関する事故が発生した場合には、当該無人航空機を飛行させる者は、直ちに当該無人航空機の飛行を中止し、負傷者を救護することその他の危険を防止するために必要な措置を講じなければならない。」(航空法第132条の90第1項)

この「必要な措置」を具体化しているのが、国土交通省の「無人航空機の事故及び重大インシデントの報告要領」(令和4年11月4日制定、令和4年12月5日施行)3.(4)です。3つの柱に分けて書かれています。

飛行の中止。事故の発生後も機体が飛行状態にあるなら、事故発生場所から最寄りの、安全に着陸できる場所(出発地、目的地、緊急着陸場所を含む)を選んで速やかに着陸させる
負傷者の救護。医師・救急車等が到着するまでの間、ガーゼや清潔なハンカチ等での止血など可能な応急救護処置を行う。むやみに動かさない(特に頭部に傷を受けているとき)。ただし二次的な事故等のおそれがある場合は速やかに安全な場所へ移動させる。救急車の要請
その他の危険防止措置。火災が発生している場合の消防への連絡や消火活動。警察官への事故の概要の報告(発生場所、負傷者数や負傷の程度、物件の損壊の程度等)
ここまでが第132条の90第1項の「措置」。国土交通大臣への報告は、この後(第2項・第132条の91)

押さえておきたいのは、罰則が重いのは報告ではなくこの措置のほうだという点です。措置を講じなかった場合は2年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金(航空法第157条の6)で、事故の報告義務違反の30万円以下の罰金より重く設定されています。現場で迷ったときの優先順位は、条文の順番がそのまま答えになります。

なお報告要領は、この措置について「事故に該当する場合に限らず、必要と認められる場合には、所要の救護活動を行うべきである」とも書いています。「事故」の定義に当たるかどうかを現場で判定してから動く、という建て付けにはなっていません。

墜落した機体に近づくとき:航空局の概要資料は、墜落時の注意として「回転しているプロペラには絶対に手を出さない」ことを挙げています。墜落後もプロペラが回転を続ける中、機体の電源ボタンを操作しようとして怪我をするケースが多発しているためです。キルスイッチなど、機体の動作を強制的に停止させる操作を日頃から確認しておくこと、そしてリチウムポリマー(LiPo)バッテリーは強い衝撃を受けると、直後に異常がなくても時間をおいて発火するおそれがあることが、あわせて注意喚起されています。バッテリーが膨張していないか等、状態を確認してから触れてください。
表記について:第157条の6の現行条文は「2年以下の拘禁刑又は百万円以下の罰金」です。国土交通省の事故等報告ページには「2年以下の懲役」という改正前の表記が残っていますが(2026年9月29日時点)、条文は拘禁刑に改まっています。

これは「事故」か「重大インシデント」か

報告義務は、条文が2本に分かれています。事故は第132条の90第2項、重大インシデントは第132条の91です。報告の様式も、どちらに当たるかを「✓」で選ぶ形になっています。中身を条文・施行規則・報告要領の3段で並べると次のとおりです。

区分対象となる事態報告要領による補足
事故
第132条の90
第1項各号
無人航空機による人の死傷 重傷以上のもの。悪天候等の外的要因によるもの(飛行させる者に過失がないもの)も含む。「人」は第三者に限らず操縦者及びその関係者を含む
無人航空機による物件の損壊 第三者の所有物(人工物)を損傷させた場合の全て。衝突による瓦のひび割れ、構造物の壁を傷つけた等、軽微なものを含む
航空機との衝突又は接触 航空機・無人航空機のいずれか又は双方の機体に、衝突・接触による損傷が発生したと確認できるもの
重大インシデント
第132条の91
規則第236条の86
飛行中の航空機との衝突・接触のおそれがあったと認めたとき 飛行経路上及びその周辺の空域で飛行中の航空機を確認し、衝突を予防するため機体を地上に降下させるなどの衝突回避措置を講じたもの
無人航空機による人の負傷(重傷以上を除く) いわゆる軽傷。「人」には操縦者及びその関係者を含む。飛行によらない地上待機・地上移動・離着陸のための地上滑走中の事案(回転中のプロペラによる負傷、飛行させようとしている機体の発火による負傷等)も対象
無人航空機の制御が不能となった事態 飛行中に機体不具合により制御不能となった事態。これにより機体を紛失した場合も含む。操縦ミスに起因する操縦不能は対象外
無人航空機が発火した事態(飛行中に発生したものに限る) 飛行のために推進装置が稼働状態にある場合に発生したもの。保管中のバッテリーの発火等は、飛行に関連しない発火として対象外

線引きの軸は3つです。人は重傷以上か軽傷か(重傷以上なら事故、軽傷なら重大インシデント)、航空機とは当たったかヒヤリか(損傷が確認できれば事故、回避措置を講じただけなら重大インシデント)、物は第三者の所有物か。この3つで、ほとんどのケースは振り分けられます。

区分を間違えたら:報告システムでは報告者が「事故」「重大インシデント」のいずれかを選んで入力します。ただし最終的な判定を行うのは国土交通省航空局の本省です。報告要領の「事故等の判定の考え方」は、本省が事案発生の報告を受けた後、当事者と必要な事実確認等を行い、事故・重大インシデントの判定を速やかに行うとしています。現場での区分の判断に自信がなくても、報告しないでおく理由にはなりません。

報告対象かどうか迷う例

実務で判断に詰まるのは、機体は壊れたが人も第三者の物も無事というケースです。国土交通省は、報告を受けた事案のうち「制御不能となった事態」に該当しなかった事例が多数あるとして、非該当例を公表しています。

ケース公式の整理根拠
操縦ミスで墜落した(飛行経路の設定ミス、目測誤り等) 「制御不能となった事態」には該当しない。人の負傷も第三者の物件の損壊もなければ、事故の3類型にも当たらない 報告要領3.(2)c)/概要資料
自動帰還機能が作動し、帰還中に樹木に衝突して墜落した 自動帰還機能自体は正常に動作しており、想定される帰還経路と高度設定を飛行前に確認していれば回避できたと思われる場合は、制御不能に該当しないと考えられる(頻発している事案として明示) 概要資料
飛行前点検が不十分で制御不能になり墜落した バッテリーやプロペラの装着不良、センサーのキャリブレーション未実施、経年劣化したバッテリーの使用など、原因が飛行前点検の不足であることが明確な場合は該当しないと考えられる 概要資料
通信が切れて機体を見失った 通信可能な範囲から逸脱したものは操縦ミスの例とされ対象外。一方、範囲内での通信障害は機体不具合の例で、制御不能として報告対象(紛失した場合も含む) 報告要領3.(2)c)
バッテリーが切れて落ちた 想定しないバッテリー切れは機体不具合の例。残量の確認不足によるものは操縦ミスの例で対象外 報告要領3.(2)c)
自社の機体同士がぶつかった 双方の所有者が同一なら「物件の損壊」に当たらない。ただし報告要領は「その他に事故等の事態に該当するものがあるか否かで提出の要否について判断を行う」と続けており、報告不要と結論づけてはいない 報告要領6.(1)
相手の機体が第三者の所有だった 「物件の損壊」に当たるため、双方の機体について、それぞれの操縦者が報告書を提出する 報告要領6.(1)
保管中のバッテリーが発火した 飛行のために推進装置が稼働状態にある場合でなければ、飛行に関連しない発火として報告の対象外 報告要領3.(2)d)
「制御不能に当たらない=報告不要」ではありません:概要資料は、非該当例を並べたうえで「人の負傷や飛行中に発火した事態、航空機との衝突または接触のおそれがあったと認められる事態が発生した場合は、無人航空機の制御が不能となった事態に該当しない場合であっても、重大インシデントに分類されます」と注記しています。操縦ミスによる墜落であっても、その拍子に誰かが軽いけがをしていれば重大インシデントです。

樹木や農作物のような自然物を傷つけた場合は、報告要領が「物件の損壊」を「第三者の所有物(人工物)」と書いているため、文言上は含まれないと読めます。ただし自然物を明示的に除くとは書かれていません。報告要領6.(3)は「事故等への該当性が明らかでなく、事故等報告書の提出の判断に困るものがあれば、適宜管轄の官署に相談する」としています。判断を自分の側で狭めるより、相談する運用のほうが安全です。

出して損をする設計にはなっていません:報告要領の「事故等の判定の考え方」は、本省が対象外と判定した場合も「報告自体の取り下げは行わずに、対象外又はその他の事案として受けた連絡の内容を保存」するとしています。非該当と判定された事案が令和5年度に361件あるのは、この設計の裏返しでもあります。

どこへ、どうやって報告するか

原則はDIPS2.0の事故等報告機能

報告要領4.(1)は、事故等の報告をドローン情報基盤システム(DIPS)の事故等報告機能を用いて電磁的に速やかに行うことを原則とし、やむを得ない理由でシステムから報告できない場合は、官署宛てに様式で報告できるとしています。その場合も速やかに報告しなければなりません。様式は国土交通省のページからExcelでダウンロードできます。

報告先の官署は、許可・承認の有無で決まる

  • 許可・承認を受けた飛行:その飛行を許可・承認した官署(飛行許可・承認の手続きを行った官署)
  • 許可・承認を受けていない飛行(カテゴリーⅠ等):飛行した場所(飛行経路)を管轄する官署
官署管轄区域(許可・承認の必要がない飛行)執務時間時間外の連絡先
東京航空局 保安部 運航課北海道、青森、岩手、宮城、秋田、山形、福島、茨城、栃木、群馬、埼玉、千葉、東京、神奈川、新潟、山梨、長野、静岡平日09:00〜17:00東京空港事務所
大阪航空局 保安部 運航課富山、石川、福井、岐阜、愛知、三重、滋賀、京都、大阪、兵庫、奈良、和歌山、鳥取、島根、岡山、広島、山口、徳島、香川、愛媛、高知、福岡、佐賀、長崎、熊本、大分、宮崎、鹿児島、沖縄平日09:00〜17:00関西空港事務所
国土交通省 航空局 安全部 無人航空機安全課公海上/カテゴリーⅢ飛行平日09:00〜17:00東京空港事務所又は関西空港事務所
東京空港事務所
(航空管制運航情報官)
東京航空局と同じ18都道県24時間平日・夜間・休日共通
関西空港事務所
(航空管制運航情報官)
大阪航空局と同じ29府県24時間平日・夜間・休日共通

電話が必要になる場面

報告要領7.は、報告先の官署を列挙したうえで「原則報告システムを用いて行うものとする。また、適宜電話又は電子メールを用いることも可能とする」としています。さらに国土交通省の報告先一覧には、次の2つの注記が置かれています。

  • 夜間等の執務時間外に事故等が発生した場合は、飛行を行った場所を管轄区域とする空港事務所に連絡する(東京・関西の空港事務所は24時間対応)
  • メールで報告した場合には、電話での連絡もお願いします

つまり、土日や夜間の現場で事故が起きたときに、平日の窓口が開くまで待つ運用は想定されていません。飛行マニュアルの非常時の連絡体制に、管轄の空港事務所の電話番号を入れておく意味はここにあります(連絡先は上記の報告先一覧PDFに掲載されています)。体制づくりの全体像は会社としての運航管理体制の作り方で扱っています。

手続きの相談窓口は別です:報告先の官署とは別に、制度や操作の問い合わせ先として無人航空機ヘルプデスク(03-5539-0225、平日9時〜17時。土日・祝・年末年始を除く)が設けられています。2026年8月3日に電話番号が変更されましたので、社内の連絡表が古い番号のままになっていないか確認してください。

何を報告するか──入力項目と添付

報告事項は、事故が航空法施行規則第236条の85(13号)、重大インシデントが同第236条の87(14号)に定められています。両者はほぼ同じ構成で、事故側の「事故の概要」「人の死傷又は物件の損壊概要」が、重大インシデント側では「報告に係る事態の概要」「人の負傷の概要」に置き換わります。報告システムへの入力の仕方は報告要領5.が定めています。

入力欄報告要領が求めている中身
発生日時西暦。時刻は日本標準時(JST)の24時間制で1分単位。現場で分単位の時刻を控えておく必要がある
発生場所可能な限り詳細に入力し、発生場所の特定ができる周辺地図等の情報も添付する
飛行させた者(操縦者)氏名・住所、技能証明書番号、所属
飛行の許可/承認該当する場合、許可承認年月日と許可承認番号
無人航空機の情報登録記号(試験飛行等で登録記号がない場合は届出番号)、製造者、製造番号、機体認証書番号、型式、機体の使用者
出発地及び到着予定地地名(都道府県+市区郡+町村)又は固有名称。目的地に到達していない場合は、通報した飛行計画上の目的地を入力する
当該飛行の目的及び概要目的は空撮、報道取材、警備、農林水産業、測量、環境調査、設備メンテナンス、インフラ点検・保守、資材管理、輸送・宅配、自然観測、事故・災害対応等、趣味、研究開発 等から。概要は飛行の段取りを文章で
人の死傷/物件の損壊状況可能な限り詳細に。前者は第三者及び操縦者を含む関係者、後者は第三者の物件(無人航空機を含む)のみが対象。該当がない場合は「該当なし」と入力する
機体の損壊状況操縦していた当該機体の損壊状況。物件の損壊とは別の欄(自機の損壊は「物件の損壊」ではない)
その他参考事項死傷者がある場合はその者の氏名等。1人の操縦者が複数の機体を操縦していた場合、主となる機体以外はこの欄に入力する

別紙で聞かれる「詳細」

様式には別紙があり、物件の損壊がある場合と飛行中に制御不能・発火が生じた場合に、次の項目をチェック・記載します。ここが、現場の段取りがそのまま問われる部分です。

  • 損壊した物件の種類(建造物(家屋、ビル、橋梁等)/自動車/鉄道車両/船舶/その他。複数選択可)
  • 損壊した物件の内部に人が居たか
  • 物件の損壊の発生場所において立入管理措置が講じられていたか
  • 損壊に伴い停電、通信障害、道路の閉鎖、公共交通機関・公共施設の休止等の影響が生じたか(生じた場合はその内容)
  • 損壊に伴い人(第三者)に危険が生じたか(生じた場合はその内容)
  • 制御不能・発火に伴い人(第三者以外の飛行させた者や関係者も含む)に危険が生じたか(生じた場合は人数と内容)

「立入管理措置が講じられていたか」を聞かれる以上、飛行計画の通報で「有」として申告した内容と、現場で実際に講じた措置が一致していることが前提になります。立入管理措置の中身は立入管理措置とは。現場で実際に何をするのか、通報の側はドローンの飛行計画の通報はいつ必要かで整理しています。

添付については、人の死傷状況がわかる医師による診断書、物件の損壊状況の写真、機体の損壊状況の写真がある場合はあわせて添付することとされています。現場を離れる前に撮っておくものは、おおむねこの3つに対応します。

複数の操縦者・複数の機体がいた場合

  • 複数の操縦者で飛行を行っていた場合:操縦者ごとに、それぞれ報告書を提出する。操縦者が同一の会社その他の団体に所属している場合はその会社等の名称で報告してもよいが、その場合でもそれぞれの操縦者名を入力した別々の報告書として作成・報告する
  • 1人の操縦者が複数の機体を操縦していた場合:主となる機体を「無人航空機の情報」欄に入力し、他の機体は「その他参考事項」欄に入力する

複数機・複数名での運用そのものの整理は機体が複数・操縦者が複数のときの飛行日誌の回し方もあわせて参照してください。

第一報で終わらない──事実確認と追加報告

報告要領に添付された「事故等報告の全体フロー」を見ると、報告は1回出して終わりという設計ではありません。

第一報を報告する(DIPS、電話又はE-mail)
航空局内で第一報が共有され、本省が事故・重大インシデントに当たるかを判定する
事実確認等が当事者に対して行われる(DIPS、電話又はE-mail)
追加報告(最終報まで)。報告した内容を変更する場合は、変更しようとする事項について報告システムから報告する
事故・重大インシデントと判定された事案は運輸安全委員会へ連絡され、調査が行われた場合は事故等調査報告書が国土交通大臣へ提出・公表される
航空局で年度別統計等として分析され、再発防止に役立てられる

実際に公表されている件数は次のとおりです(航空局の概要資料。令和5年度末時点の情報)。

年度事故重大インシデント非該当事案合計
令和4年度
(2022年12月5日の改正法施行以降)
2165775
令和5年度6521361447

非該当事案が全体の8割を占めています。該当するか分からないまま報告された事案が、そのまま受け止められているという数字の読み方ができます。国土交通省自身、概要資料を掲載した際のお知らせで「当局が報告を受けた事案のうち、事故・重大インシデントに該当しなかった事例も多数あることから、報告対象外となる事例についても記載しております」と書いています。

罰則の書き分け──重大インシデントに罰条はない

違反の内容罰条法定刑
危険を防止するために必要な措置(飛行の中止・救護等)を講じなかった航空法第157条の62年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金
事故の報告をせず、又は虚偽の報告をした航空法第157条の10第2項30万円以下の罰金
重大インシデントの報告をしなかった—罰条は置かれていない

第157条の10第2項の原文は「第百三十二条の九十第二項の規定による報告をせず、又は虚偽の報告をした者は、三十万円以下の罰金に処する。」です。引用されているのは事故の報告を定めた第132条の90第2項だけで、重大インシデントの報告を定めた第132条の91を引用する罰条は、現行の航空法の中に置かれていません(同法の全文を機械検索し、第132条の91の出現が条文見出しの1件のみであることを確認しました)。

誤解しないでいただきたい点:罰条がないことは、報告しなくてよいという意味ではありません。第132条の91は「報告しなければならない」と書いており、義務であることに変わりはありません。また、国土交通省のレベル4ポータル(運航ルール)は「事故・重大インシデントの報告を行わなかった場合」について30万円以下の罰金と両者をまとめて案内しています。実務上は、重大インシデントについても必ず報告してください。この記事で罰条の有無を書き分けているのは、条文を確認せずに「罰則がある」と説明することを避けるためです。

両罰規定はこの2つを列挙していない

航空法の両罰規定(第159条第2号)は、法人の代表者や従業者が法人の業務に関して違反行為をしたときに、行為者を罰するほか法人にも罰金刑を科す規定です。無人航空機に関係する罰条のうち同号が列挙しているのは第157条の7第1項、第157条の9、第157条の10第1項、第157条の11などで、第157条の6(措置義務違反)と第157条の10第2項(事故報告義務違反)は列挙されていません。この2つの罰則が条文上向けられているのは、義務を負う「無人航空機を飛行させる者」本人です。

ただしこれは航空法の罰則の話にとどまります。会社が民事上どのような責任を負い得るかは別の問題で、ドローンを落として人にけがをさせたときの責任で扱っています。

報告のあとに残る実務

国への報告を出したところで、現場の処理が終わるわけではありません。残るのは主に次の4つです。

やること内容
飛行日誌特定飛行を行った場合や機体を整備・改造した場合は、遅滞なく飛行日誌に記載することが義務づけられています(航空法第132条の89第2項)。事故等が起きた飛行についても、飛行記録と、機体を修理した場合の点検整備記録が残ることになります。事故等の発生を日誌のどの欄にどう書くかについて、飛行日誌の取扱要領・ガイドラインに専用の定めは置かれていません(飛行日誌の書き方)
保険会社への連絡損害賠償責任保険や機体保険に加入している場合、保険会社への連絡と、契約内容の確認が必要になります。国が保険の加入を求めている場面と求めていない場面の整理はドローンの保険。国が加入を求めている場面と、求めていない場面にまとめています
社内の連絡体制の点検許可・承認の審査要領は、飛行マニュアルの記載事項として「事故及び重大インシデントの報告要領に定める事態の対応及び連絡体制」(非常時の連絡体制/最寄りの警察及び消防機関の連絡先/報告先の連絡先 等)を挙げています。実際に起きた事案は、この体制が機能したかを見直す材料になります(独自の飛行マニュアルを作るべきときと作り方)
追加報告への対応前章のとおり、第一報の後に事実確認と追加報告(最終報まで)が予定されています。担当者が現場と窓口で分かれる運用なら、誰が追加の問い合わせを受けるかを決めておく必要があります

よくある質問

報告はいつまでにしなければなりませんか。
航空法・航空法施行規則・報告要領のいずれにも「何時間以内」という具体的な期限は定められていません。条文と要領が求めているのは「速やかに」です。国土交通省の事故等報告ページも「以下に該当する場合、速やかにご報告お願いします」と書いています。夜間や休日であれば、飛行を行った場所を管轄区域とする空港事務所(東京・関西は24時間対応)に連絡することとされています。
人にも物にも被害がなく、自分の機体が壊れただけです。報告は必要ですか。
まず事故の3類型(人の死傷〔重傷以上〕、第三者の所有物の損壊、航空機との衝突・接触)には当たりません。自機の損壊は「物件の損壊」ではなく、報告様式でも機体の損壊状況は別の欄になっています。次に重大インシデントの4類型に当たるかを見ます。墜落の原因が機体不具合による制御不能であれば報告対象ですが、操縦ミス、フェールセーフ機能の確認不足、飛行前点検の不足が原因であることが明確な場合は「制御不能となった事態」に該当しないと整理されています。飛行中の発火があれば、それだけで重大インシデントです。判断に迷う場合は、報告要領6.(3)のとおり管轄の官署に相談してください。
機体の着陸時に、スタッフが回転中のプロペラで軽いけがをしました。飛行中ではないので対象外ですか。
対象です。報告要領は、重大インシデントの「人の負傷」について、飛行によらない地上待機・地上移動・離着陸のための地上滑走中に発生した事案も対象とし、回転中のプロペラによる負傷を例として挙げています。また「人」は第三者に限らず操縦者及びその関係者を含みます。けがが重傷以上であれば、重大インシデントではなく「事故」として扱われます。
報告すると、許可・承認に影響が出るのではないかと心配です。
報告要領は、この報告の目的を原因の究明と再発防止とし、「当事者に対しペナルティを科すことを目的としたものではないことから、当事者は安全の向上への貢献であるという視点を持つことが重要である」と明記しています。また、本省が対象外と判定した場合も報告自体の取り下げは行わず、受けた連絡の内容が保存される扱いです。一方で、事故の報告をしないことと虚偽の報告は、それ自体が30万円以下の罰金の対象です(航空法第157条の10第2項)。
会社の業務中の事故です。会社名で報告してよいですか。
報告義務の主体は「当該無人航空機を飛行させる者」です。複数の操縦者で飛行していた場合は操縦者ごとに報告書を提出します。操縦者が同一の会社その他の団体に所属している場合は会社等の名称で報告してもよいとされていますが、その場合でも、それぞれの操縦者名を入力した別々の報告書として作成・報告することとされています。
DIPS2.0から報告できない場合はどうしますか。
やむを得ない理由で報告システムから報告できない場合は、事故等報告の様式(Excel)に記載のうえ、報告先に該当する官署のメールアドレスへ送付する方法が認められています。報告要領も「適宜電話又は電子メールを用いることも可能とする」としています。国土交通省の報告先一覧は、メールで報告した場合には電話での連絡もあわせて行うよう求めています。なお、この場合も速やかに報告しなければならない点は変わりません。
第一報の後に、事実関係が変わりました。
報告要領4.(3)は、報告した内容を変更する場合、変更しようとする事項について報告システムを用いて報告することを原則としています(システムが使えない場合は様式で官署宛て)。もともと第一報の後に航空局からの事実確認と追加報告(最終報まで)が予定された仕組みですので、判明した時点で更新してください。
飛行中に有人機が近づいてきたので、慌てて降下させました。これも報告対象ですか。
重大インシデントに当たります。報告要領は「無人航空機の飛行経路上及びその周辺の空域において飛行中の航空機を確認した場合で、衝突を予防するため無人航空機を地上に降下させるなどの衝突回避措置を講じたもの」を報告の対象としています。実際にぶつかって損傷が確認できる場合は、重大インシデントではなく「事故」です。なお有人機の側にも、無人航空機との衝突・接触やそのおそれがあった場合に航空局へ電話で報告する運用が案内されています。
本記事は2026年9月29日時点の情報です。 条文はe-Gov法令検索の現行版(航空法は2025年12月1日施行版、航空法施行規則は2026年7月1日施行版)で確認しています。無人航空機に関する制度は改正が続いている分野ですので、実際の報告にあたっては上記の一次ソースで最新の内容をご確認ください。

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