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「第三者」はどこまでか。関係者・間接関与者の線引き

公開 2026-10-25 更新 2026-10-25 読了 約16分

ドローンの制度は、ほとんどの場面で「第三者かどうか」を分岐に使っています。30mの距離を保つ相手も、立入管理措置で立入りを管理する相手も、カテゴリーⅡとⅢを分ける「上空」の相手も、すべて第三者です。 にもかかわらず、航空法の条文は「第三者」という語をほとんど使いません。定義を置いているのは解釈通達6.(1)で、そこには直接関与者と間接関与者という2つの枠と、間接関与者の3つの要件が書かれています。 現場でいちばん問われるのは、発注者・施設管理者・荷受人・立会いの社員がこの枠に入るかどうかですが、通達の例示は「映画の空撮における俳優やスタッフ」「学校等での人文字の空撮における生徒」の2つだけです。 この記事では、条文・通達・教則が実際に何と書いているかを原文で並べ、要件に沿ってどう当てはめを考えるのかまでを整理します。立場や肩書きで自動的に決まる規定は、公式には存在しません。

よく見る説明と、公式の記載
「第三者」は判断が分かれやすく、立場や肩書きで説明されがちな論点です。この記事で扱う範囲について、実際の一次ソースの記載と突き合わせます。
よく見る説明「関係者」の範囲を定めた公式の規定はなく、すべて個別判断である。
公式にはこう解釈通達6.(1)が「第三者」を定義し、直接関与者と間接関与者を「第三者に該当しない」者として列挙しています。定義は存在します。公式に示されていないのは、間接関与者の3要件をどこまで満たせば足りるかの具体的な基準のほうです。
出典 無人航空機に係る規制の運用における解釈について 6(1)
よく見る説明現場に立ち会って同意書にサインした人は、関係者として扱える。
公式にはこう通達に「同意」という語はありません。間接関与者の要件は飛行目的についての共通の認識に加えて、a)操縦者の判断、b)計画外の挙動を示した場合に従うべき明確な指示と安全上の注意、c)関与するかどうかを自ら決定できることのいずれにも該当することです。
出典 解釈通達 6(1)②/教則 第5版 3.1.2(2)4)a
よく見る説明30mは、人だけでなく地面や樹木からも取らなければならない。
公式にはこう通達3.(7)は、距離を保つべき物件に該当しないものとしてa)土地(田畑用地及び舗装された土地(道路の路面等)、堤防、鉄道の線路等であって土地と一体となっているものを含む。)b)自然物(樹木、雑草 等)を明記しています。
出典 解釈通達 3(7)/教則 第5版 3.1.2(2)2)c

条文は「第三者」をほとんど使っていない

まず、どこに何が書かれているかを確認します。多くの解説が「第三者」という語で説明する場面を、航空法の条文は別の言い方で書いています。

場面条文が使っている言葉「第三者」と書いてあるか
立入管理措置
(法第132条の85第1項括弧書き)
「無人航空機を飛行させる者及びこれを補助する者以外の者の立入りを管理する措置」 使っていない。名指しされているのは操縦者と補助者の2者
30mの距離
(法第132条の86第2項第3号)
「当該無人航空機と地上又は水上の人又は物件との間に国土交通省令で定める距離を保つて飛行させること」 使っていない。「人又は物件」とだけ書いている
立入り時の措置
(法第132条の87)
条見出しは「(第三者が立ち入つた場合の措置)」だが、本文は「特定飛行中の無人航空機の下に人の立入り又はそのおそれのあることを確認したとき」 条見出しにだけ現れる。本文は「人」

つまり、条文の側には「第三者」を定義した規定がありません。定義は下位の行政文書、具体的には解釈通達(無人航空機に係る規制の運用における解釈について)に置かれています。通達6.(1)の柱書は「航空法132条の87などで規定する『第三者』の定義については、以下のとおり」と書き出しており、条見出しの語を受けて定義を与える構造になっています。

なぜこの構造を知っておく必要があるのか。「第三者」の範囲は法律の改正を経ずに変わり得るからです。定義を置いているのは通達であり、通達は法改正より短い手続で改正されます。実際、第三者と第三者上空の定義は教則の第4版(令和7年2月1日)で見直された項目として改訂履歴に挙げられています。数年前の解説が今の定義と一致している保証はありません。

解釈通達6.(1)が置いている定義

原文を引きます。枠組みは「第三者=関与していない者」という引き算の定義で、関与している者として2つの類型が列挙されています。

解釈通達 6.(1)「第三者」について
「『第三者』とは、無人航空機の飛行に直接的又は間接的に関与していない者をいう。次に掲げる者は無人航空機の飛行に直接的又は間接的に関与しており、『第三者』には該当しない。」

①無人航空機の飛行に直接的に関与している者
「直接的に関与している者(以下『直接関与者』という。)とは、操縦者、現に操縦はしていないが操縦する可能性のある者、補助者等無人航空機の飛行の安全確保に必要な要員とする。」

②無人航空機の飛行に間接的に関与している者
「間接的に関与している者(以下『間接関与者』という。)とは、飛行目的について操縦者と共通の認識を持ち、次のいずれにも該当する者とする。
a)操縦者が、間接関与者について無人航空機の飛行の目的の全部又は一部に関与していると判断している。
b)間接関与者が、操縦者から、無人航空機が計画外の挙動を示した場合に従うべき明確な指示と安全上の注意を受けている。なお、間接関与者は当該指示と安全上の注意に従うことが期待され、操縦者は、指示と安全上の注意が適切に理解されていることを確認する必要がある。
c)間接関与者が、無人航空機の飛行目的の全部又は一部に関与するかどうかを自ら決定することができる。」

例:映画の空撮における俳優やスタッフ、学校等での人文字の空撮における生徒 等

同じ文言が、教則 第5版 3.1.2(2)4)a にも置かれています。教則と通達で内容の差はありません。国家資格の学科試験の出題範囲である教則に載っているという事実は、この定義が実務の基本知識として扱われていることを意味します。

読み取っておきたいのは、この定義が「関与しているか」という行為の実態で線を引いており、肩書きや契約上の立場では引いていないという点です。直接関与者の側も「操縦者、現に操縦はしていないが操縦する可能性のある者、補助者等無人航空機の飛行の安全確保に必要な要員」という書き方で、職名ではなく役割で括られています。

区分通達が書いている内容現場で当たるのは
直接関与者 操縦者、現に操縦はしていないが操縦する可能性のある者、補助者等飛行の安全確保に必要な要員 操縦者、交代要員、補助者、監視員など。「安全確保に必要な要員」であることが軸
間接関与者 飛行目的について操縦者と共通の認識を持ち、a・b・cのいずれにも該当する者 例示は映画の空撮における俳優やスタッフ/学校等での人文字の空撮における生徒の2つ
第三者 飛行に直接的にも間接的にも関与していない者 通行人、近隣住民、無関係の作業員、事情を知らない来訪者など
「関係者」という語の扱いには注意が必要です。通達が「関係者」を使うのは、立入管理措置の説明のなかで「関係者以外の立入りを制限する旨の看板、コーン等による表示」と書く箇所などで、看板に書く文言としての用法です。一方、立入りを管理される相手の定義を与えているのは6.(1)の「第三者」のほうです。この2つが完全に同じ外延を指すと明示した記述は、本記事が確認した一次資料の範囲では見当たりませんでした。実務の説明では「関係者=第三者でない者」と対にして使われますが、根拠を示すときは6.(1)の「第三者」の定義を引くほうが正確です。

間接関与者の3要件を分解する

当てはめの実質は、ここに集約されます。3要件は「いずれにも該当する者」と書かれているため、ひとつでも欠ければ間接関与者にはなりません。しかも3要件の手前に「飛行目的について操縦者と共通の認識を持ち」という前提が置かれています。合計すると、満たすべき事項は4つです。

要件通達の文言何を問うているか
前提 飛行目的について操縦者と共通の認識を持ち その人が、何のための飛行かを操縦者と同じように理解していること。「ドローンが飛ぶらしい」程度の認識は、飛行目的の共通認識とは別物です
a) 操縦者が、間接関与者について飛行の目的の全部又は一部に関与していると判断している 判断の主体が操縦者である点が特徴です。その人が名簿に載っているかではなく、操縦者がその人を飛行の目的に関与する者として把握しているかが問われます
b) 操縦者から、無人航空機が計画外の挙動を示した場合に従うべき明確な指示と安全上の注意を受けている/操縦者は適切に理解されていることを確認する必要がある 3要件でもっとも重い部分です。伝えるだけでは足りず、理解の確認まで求められています。しかも内容は「計画外の挙動を示した場合に従うべき指示」=異常時にどう動くかです
c) 飛行目的の全部又は一部に関与するかどうかを自ら決定することができる その人が「関わらない」を選べる立場にあるか。断れない、そこにいるしかない、という状況の人は、この要件を満たしません

b)が実務上の分かれ目になる

a)は操縦者側の認識、c)は相手側の立場に関する要件で、いずれも状態の問題です。これに対してb)だけが操縦者の側に具体的な作為を求めています。「計画外の挙動を示した場合に従うべき明確な指示と安全上の注意」を与え、さらに「適切に理解されていることを確認する」までが要件です。

現場に置き換えると、機体が制御を失ったとき、その人がどこへ動くかを、その人が言えるかということになります。これを一人ひとりに対して成立させるのは、人数が増えるほど難しくなります。通達が例示に挙げているのが、撮影現場のスタッフや、教員の管理下にある生徒という、まとまった説明が可能な集団であることは、この要件の性格と整合しています。

説明の方法や記録の様式は、公式に定められていません。通達が求めているのは「明確な指示と安全上の注意」を与えること、それが「適切に理解されていること」を操縦者が確認することまでで、書面を作れとも、署名を取れとも書かれていません。したがって「同意書があるから関係者だ」という整理は、通達の文言とは対応していません。
一方で、要件を満たしたことを後から説明できる状態にしておく価値はあります。飛行マニュアルにブリーフィングの手順を書き、当日は誰に何を伝えたかを残す——という運用は、公式の義務ではありませんが、a)の「操縦者が判断している」を裏づける材料にはなります。

「同意」ではなく「自ら決定できること」

c)の文言は「関与するかどうかを自ら決定することができる」です。通達に「同意」という語はありません。この違いは小さくありません。同意は取った/取らないの結果ですが、c)が問うているのはその人が決定できる立場にあるかという状態です。

たとえば、飛行の実施を知らされないまま作業していた人に、その場で説明して了承を得たとします。同意は取れましたが、その人が「では今日は帰ります」と言える状況だったかどうかは別の話です。c)は、断る選択肢が実際にあることを求めていると読むのが素直です。

発注者・施設管理者・荷受人はどうなるのか

ここが実務でもっとも問われる論点です。結論から書くと、これらの立場の人が間接関与者に当たるかどうかを一般的に定めた規定は、公式には見当たりません。通達と教則の例示は「映画の空撮における俳優やスタッフ」「学校等での人文字の空撮における生徒」の2つだけで、発注者・施設管理者・荷受人・設備の所有者を挙げた例示はありません。

ただし、まったく手がかりがないわけではありません。公式の文書が「発注者」を名指しで関係者に含めた例が1つだけあります。

通達「航空法施行規則第236条の82第1項第2号の規定により飛行の方法に係る承認が不要な飛行の取扱い」3.(5)
農薬等の空中散布について承認を不要とする要件のうち、「無人航空機を飛行させる者その他の関係者が所有又は管理する土地」という要件の「関係者」を、この通達は次の3類型として定義しています。
①直接関与者(解釈通達6.(1)①と同一)
②間接関与者(解釈通達6.(1)②と同一の3要件)
③作業の発注者「農薬等の空中散布等に係る作業を委託している場合に、当該作業を発注している者(作業実施時に飛行場所にいない場合を含む。)」

注目すべきは、③が①②と並ぶ第3の類型として立てられていることです。発注者を間接関与者の3要件に当てはめて関係者にしたのではなく、別枠で明記されています。しかも「作業実施時に飛行場所にいない場合を含む」とまで書かれています。

この③を、他の分野の発注者に一般化することはできません。この通達が定義しているのは、農薬等の空中散布等について承認を不要とする要件のうち「土地」の要件における「関係者」であり、通達の適用対象も空中散布等に限られています。インフラ点検や空撮の発注者に及ぶとする根拠にはなりません。
この例から読み取れるのは、公式の文書は、発注者を関係者に含める意図があるときには別立てで明記しているという書きぶりだけです。逆に言えば、明記がない分野で「発注者は当然に関係者だ」と扱う根拠は、通達の文言からは出てきません。

教則に1か所だけある「構造物の関係者」

もうひとつ、教則第5版に手がかりがあります。地表・水面から150m以上の空域のうち、高層の構造物から30m以内の空域が飛行禁止空域から除外されている件についての記述です。

教則 第5版 3.1.2(2)1)b
「煙突や鉄塔などの高層の構造物の周辺は、航空機の飛行が想定されないことから、高度150メートル以上の空域であっても、当該構造物から30メートル以内の空域については、無人航空機の飛行禁止空域から除外されている。ただし、当該構造物の関係者による飛行を除き、第三者又は第三者の物件から30メートル以内の飛行に該当することから、当該飛行の方法に関する手続き等は必要となる。」

「当該構造物の関係者による飛行を除き」という書き方は、構造物の側の関係者による飛行なら30m未満の手続きが要らない場面があり得ることを示唆しています。ただし教則は、ここで言う「関係者」がどういう要件で判断されるのかを書いていません。6.(1)の間接関与者の要件で判断するのだとすれば、結局は3要件の当てはめに戻ります。

立場ごとに、何を確かめることになるか

以上を踏まえると、当てはめの作業は「その人は関係者か」を問うのではなく、「3要件のどれが満たせていて、どれが満たせていないか」を1つずつ確かめることになります。下の表は、要件の当てはめで論点になりやすい点を整理したものです。いずれも結論を示すものではありません。

立場要件の当てはめで論点になる点
点検・調査の発注者
(設備や建物の所有者)
a)は満たしやすい一方、b)の「計画外の挙動時に従うべき指示」を受けているかが実際には抜けやすい部分です。発注はしたが当日は現場にいない、担当者が交代した、といった場合にb)をどう満たすのかが問われます。物件の側の扱いは太陽光・送電線・外壁調査の各記事で個別に整理しています
施設管理者
(現場に常駐する担当者)
飛行の目的を共有し、異常時の対応まで打ち合わせているなら要件に近づきます。逆に「施設に立ち入る許可を出しただけ」の関係では、飛行目的の共通認識があるとは言いにくいのが通常です。施設の管理権限と航空法上の第三者性は、別の話として整理する必要があります
荷受人
(配送先で荷物を受け取る人)
通達・教則・物流の公式ガイドラインはいずれも同じ3要件を示しますが、荷受人を例示した公式の記載は確認できていません。詳細は物流・配送でドローンを使うのに必要な許可・承認で扱っています
クライアントの立会人
報道関係者・見学者
当日その場で合流した人について、b)の「理解されていることの確認」まで済ませられるかが分かれ目です。後から来た人をそのまま数に入れることはできません。空撮現場での扱いは空撮・映像制作でドローンを使うのに必要な許可・承認で整理しています
元請・他の協力会社の作業員 同じ現場にいることと、飛行に関与していることは別です。現場にいるから関係者になる、という一律の扱いは通達にありません。測量や林業のように複数の事業者が同時に動く現場では、この点が実際の制約になります(林業・測量)

この記事は、これらの立場について「関係者にできる」とも「できない」とも書きません。通達が示しているのは要件と2つの例示までで、それを超えて当てはめの結論を示した公式の記述は確認できていないからです。要件を満たすと言い切れないなら、その人を第三者として数え、必要な承認を取る前提で設計するのが安全側の組み方になります。

「第三者上空」はどこまでか

第三者の定義が決まると、次に効いてくるのが「第三者上空」です。立入管理措置を講じずに特定飛行を行うこと=第三者上空での特定飛行がカテゴリーⅢになるため、ここの範囲がカテゴリーの分岐そのものになります。

解釈通達 6.(2)「第三者上空」について
「『第三者上空』とは、(1)の『第三者』の上空をいい、当該第三者が乗り込んでいる移動中の車両等(3.(7)に例示する車両等をいう。)の上空を含むものとする。この場合の『上空』とは、『第三者』の直上だけでなく、飛行させる無人航空機の落下距離(飛行範囲の外周から製造者等が保証した落下距離)を踏まえ、当該無人航空機が落下する可能性のある領域に第三者が存在する場合は、当該無人航空機は当該第三者の上空にあるものとみなす。」

2点あります。第一に、移動中の車両等の上空も第三者上空に含まれること。走っている自動車や鉄道車両の中にいる人は、その車両ごと第三者上空の対象になります。第二に、「上空」は直上に限られないこと。落下距離を踏まえた領域に第三者がいれば、その第三者の上空にあるものとみなされます。経路の真下だけを見て「誰もいない」と判断するのは、通達の読み方としては足りません。

一方で、みなさない場合も定められています。

第三者上空とみなさない場合(通達6.(2))内容
①遮蔽物で保護 「第三者」が遮蔽物に覆われており、当該遮蔽物に無人航空機が衝突した際に当該第三者が保護される状況にある場合(屋内、又は車両等(移動中のものを除く)の内部にある場合等)
②レベル3.5での横断 「第三者」が移動中の車両等(衝突時に保護される状況にある場合に限る)の中にある場合で、必要な要件を満たしたうえで審査要領5-4(3)c)カ)(iii)に規定されるレベル3.5飛行として一時的にその上空を飛行するとき

ただし通達は、直後にこう釘を刺しています。「ただし、『第三者』が遮蔽物に覆われず、無人航空機の衝突から保護されていない状況になった場合には、無人航空機が『第三者上空』にあるとみなされる点に留意すること。」建物から人が出てくる、車から降りる、窓を開ける——状況が変われば評価も変わります。レベルとカテゴリーの対応関係はレベル1〜4とレベル3.5で整理しています。

30m規制の「人」と「物件」

30m未満の飛行について、条文は「人又は物件」としか書いていません(法第132条の86第2項第3号、距離は施行規則第236条の79で30メートル)。これを第三者に限定しているのが通達3.(7)です。

解釈通達 3.(7)
○「人」とは、操縦者及びその関係者(無人航空機の飛行に直接的又は間接的に関与している者)以外の者(第三者)をいう。
○「物件」とは、次に掲げるもののうち、操縦者及びその関係者(無人航空機の飛行に直接的又は間接的に関与している者)が所有又は管理する物件以外のもの(第三者の物件)をいう。a)中に人が存在することが想定される機器(車両等)b)建築物その他の相当の大きさを有する工作物

ここで「人」の側は6.(1)の第三者と同じ線が引かれます。操縦者・補助者・間接関与者からは30mを取らなくてよいということです。

「物件」の側は、所有又は管理する主体で決まります。関係者が所有・管理していれば第三者の物件ではありません。だからこそ、発注者が間接関与者に当たるかという論点が、そのまま発注者の設備から30mを取る必要があるかという論点に直結します。インフラ点検や設備点検でこの問いが繰り返し出てくるのは、この構造のためです。

土地と自然物は「物件」に含まれない

見落とされやすいのが、通達3.(7)の※書きです。

解釈通達 3.(7)※
「なお、以下の物件は、本規定の趣旨に鑑み、本規定の距離を保つべき物件には該当しない。
a)土地(田畑用地及び舗装された土地(道路の路面等)、堤防、鉄道の線路等であって土地と一体となっているものを含む。)
b)自然物(樹木、雑草 等) 等」

教則第5版 3.1.2(2)2)c も「なお、土地や自然物(樹木、雑草等)などは、『物件』に該当しない。」と同旨を記載しています。

つまり地面からの高さが30mを切っていること自体は、30m未満の飛行には当たりません。道路の路面も、堤防も、鉄道の線路も、土地と一体のものとして除かれています。樹木や雑草も物件ではありません。低空で飛ぶ農業・林業・測量の現場では、この点が実務上の前提になります。

ただし「土地の上だから低く飛べる」と言えるのは、その上に第三者も第三者の物件もいない場合に限られます。道路の路面は物件ではありませんが、道路上を走る自動車は「中に人が存在することが想定される機器(車両等)」として物件に挙げられています。線路は物件ではありませんが、鉄道車両は物件です。樹木は物件ではありませんが、その下に人がいれば人です。除外されているのは地面と草木であって、その上にあるものではありません。
通達3.(7)が「物件」に該当するとして挙げる例
車両等:自動車、鉄道車両、軌道車両、船舶、航空機、建設機械、港湾のクレーン 等
工作物:ビル、住居、工場、倉庫、橋梁、高架、水門、変電所、鉄塔、電柱、電線、信号機、街灯 等

場面ごとに効き方が変わる

「第三者」という同じ語が、制度の場面ごとに違う働き方をします。横断して並べると、次のようになります。

場面第三者かどうかが効くか効き方
立入管理措置
(解説)
効く 飛行経路下に第三者を入れない措置を講じるかどうかで、カテゴリーⅡとⅢが分かれる
30m未満の飛行の承認 効く 距離を保つべき「人」は第三者、「物件」は第三者の物件に限られる(通達3.(7))
第三者上空 効く 第三者の上空=カテゴリーⅢ。落下する可能性のある領域、移動中の車両等を含む(通達6.(2))
催し場所上空の承認
(解説)
効く 通達3.(8)は該当しない例として「6.第三者に関すること に示す関与者のみが参加する催し場所上空の飛行」を挙げている
立入り時の措置
(法第132条の87)
条見出しには出るが、本文は「人」 特定飛行中の機体の下に人の立入り又はそのおそれを確認したら、直ちに飛行を停止し、経路変更・安全な場所への着陸その他の必要な措置を講じる義務
事故・重大インシデントの報告 効かない 報告対象の「人の死傷」「人の負傷」は第三者に限らず、操縦者及びその関係者を含む(事故等報告要領)

構造としては、飛ばす前の規制では第三者かどうかが効き、事故が起きた後の報告義務では問わないという整理になります。補助者は立入管理措置の対象外だが、その補助者が怪我をすれば報告の対象になる——この非対称は覚えておく価値があります。教則第5版も、操縦者の責任として「第三者や関係者が危険を感じるような操縦をしない」と、関係者を並べて書いています。関係者にしたから安全上の配慮が不要になる、という制度設計にはなっていません。

第132条の87には罰則があります。同条の規定に違反して必要な措置を講じなかったときは、航空法第157条の9第1項第19号により50万円以下の罰金とされています。また教則第5版の行政処分等基準の一覧では「特定飛行時に第三者が立ち入った場合に必要な措置を講じないこと」が3点とされ、処分等区分表では3〜5点が文書警告に当たります。
なお第132条の87は「立入管理措置を講ずることなく飛行を行う場合を除く」と書かれています。立入管理措置を講じて飛ぶ(カテゴリーⅡの)飛行だからこそ、下に人が入ったときに止める義務がかかるという構造です。

機体搭載カメラで確認する場合

地上に補助者を置かず、機体のカメラで経路下を確認する方式があります。解釈通達5.の末尾に置かれた規定です。

解釈通達 5.(立入管理措置に関すること)なお書き
「審査要領5-4(1)d)ウ)(iii)に基づき、機体に取り付けられたカメラを活用して補助者を配置せずに目視外飛行を行う場合(技能証明を有する者が機体認証を受けた機体を飛行させる場合であって、国土交通大臣の承認を受けずに同等の飛行を行う場合を含む。)にあっては、機体に取り付けられたカメラにより進行方向の飛行経路の直下及びその周辺への第三者の立ち入りが無いことを確認することを以て、立入管理措置が行われているものとみなす。」

ここで確認の対象になっているのも「第三者」の立ち入りが無いことです。つまりカメラで見て判断する場面でも、6.(1)の線引きが前提になります。もっとも、映像から「この人は間接関与者か」を判別することは通常できません。この方式は、経路下に人がいないこと自体を確認する運用として設計されていると読むのが自然です。

なお教則第5版は、レベル3.5飛行を「山、海水域、河川・湖沼、森林、農用地等の人口密度が低い地域といった第三者が存在する可能性が低い場所で行うもの」と説明しています。関与者と第三者を選り分ける方式ではなく、そもそも第三者がいない場所を選ぶ方式だということです。

当てはめを考える手順

最後に、現場で考える順序に並べ替えます。結論を出す手順ではなく、どこで詰まるのかを特定する手順です。

飛行経路下と、落下する可能性のある領域に入る人を全員書き出す。直上だけでなく、落下距離を踏まえた領域まで(通達6.(2))。移動中の車両の中の人も数える
直接関与者を分ける。操縦者、交代要員、補助者など飛行の安全確保に必要な要員。ここは通達6.(1)①で明確に第三者から外れる
残った人について、前提から順に確かめる。飛行目的について操縦者と共通の認識を持っているか
a)操縦者がその人を、飛行の目的に関与する者として把握しているか。名簿の有無ではなく、操縦者の認識
b)計画外の挙動を示した場合に従うべき明確な指示と安全上の注意を伝え、理解されていることを確認できているか。ここが最も落ちやすい
c)その人が、関与するかどうかを自ら決定できる立場にあるか
a〜cのどれかが満たせない → その人は第三者として数える。経路下から外す設計にするか、必要な許可・承認を取る前提で組む
すべて満たす → 間接関与者として整理できる。ただし当日の状況が変われば評価も変わる。後から合流した人、交代した担当者は、改めて3を回す
第三者の物件も同じ手順で確かめる。所有・管理する者が関係者かどうかで決まる。土地と自然物は物件に当たらない

ステップ7が、この記事でいちばん伝えたい部分です。迷った時点で第三者として数えても、飛べなくなるわけではありません。必要な承認を取れば飛べます。逆に、要件を満たさない人を関係者として数えて飛んだ場合、その飛行は本来必要だった承認を受けずに行われた飛行ということになります。判断の誤りのコストが非対称です。

要件の当てはめに迷う案件では、飛行の前に国土交通省の窓口に確認するのが確実です。申請そのものの流れはドローンの飛行許可・承認申請 完全ガイドで整理しています。

よくある質問

「第三者」を定義した公式の規定はあるのですか。
あります。解釈通達6.(1)が「『第三者』とは、無人航空機の飛行に直接的又は間接的に関与していない者をいう」と定義し、第三者に該当しない者として①直接関与者(操縦者、現に操縦はしていないが操縦する可能性のある者、補助者等飛行の安全確保に必要な要員)と②間接関与者(飛行目的について操縦者と共通の認識を持ち、a・b・cのいずれにも該当する者)を挙げています。同じ内容が教則第5版 3.1.2(2)4)a にも置かれています。公式に示されていないのは定義ではなく、間接関与者の要件をどこまで満たせば足りるかの具体的な基準のほうです。
点検の発注者は、関係者として扱ってよいですか。
一律には決まりません。通達6.(1)②の例示は「映画の空撮における俳優やスタッフ、学校等での人文字の空撮における生徒」の2つで、発注者を挙げた例示はありません。判断は3要件(飛行目的の共通認識/操縦者が関与していると判断していること/計画外の挙動時に従うべき明確な指示と安全上の注意を受け、理解されていることを操縦者が確認していること/関与するかどうかを自ら決定できること)の当てはめになります。要件を満たすと言い切れない場合は、第三者として数え、30m未満の承認を取る前提で設計するのが安全側です。
農薬散布の通達には「作業の発注者」が関係者として書かれていると聞きました。
そのとおりですが、適用範囲が限られています。「航空法施行規則第236条の82第1項第2号の規定により飛行の方法に係る承認が不要な飛行の取扱い」3.(5)は、「無人航空機を飛行させる者その他の関係者が所有又は管理する土地」という要件についての「関係者」を、①直接関与者②間接関与者③作業の発注者(作業実施時に飛行場所にいない場合を含む)の3類型と定義しています。③は①②と別立てで明記されており、間接関与者の要件を満たすから関係者になるという書き方ではありません。この通達の適用対象は農薬等の空中散布等であり、他の分野の発注者に及ぼす根拠にはなりません。農薬散布ドローンの特例で扱っています。
同意書を取れば、その人は関係者になりますか。
通達に「同意」という語はありません。c)の文言は「関与するかどうかを自ら決定することができる」で、同意を取った結果ではなく、その人が決定できる立場にあるかという状態を問うています。また、同意書があってもb)の「計画外の挙動を示した場合に従うべき明確な指示と安全上の注意」を受け、それが適切に理解されていることを操縦者が確認するという要件は別に残ります。書面の有無は、通達が定める要件ではありません。
自社の敷地内であれば、そこにいる人は全員関係者と考えてよいですか。
敷地の所有・管理と、航空法上の第三者性は別の話です。通達6.(1)は、その人が飛行に関与しているかで線を引いており、土地の権原には触れていません。自社の社員であっても、飛行目的を共有しておらず、異常時の指示も受けていなければ、3要件を満たしません。なお「物件」の側は所有・管理する主体で決まるため、自社の敷地内の建物や設備が第三者の物件に当たらないという整理は成り立ちます。人と物件で判断の軸が違う点に注意してください。
道路の上を低く飛ぶと、30m未満の飛行になりますか。
路面そのものは物件に当たりません。通達3.(7)の※書きは、距離を保つべき物件に該当しないものとして「土地(田畑用地及び舗装された土地(道路の路面等)、堤防、鉄道の線路等であって土地と一体となっているものを含む。)」を明記しています。ただし道路上を走る自動車は「車両等」として物件に挙げられており、通行人がいれば人です。また街灯・信号機・電柱・電線も工作物の例示に入っています。路面が物件でないことと、その上に何もないことは別です。道路の上空を飛ばす際の他の法令との関係はドローンに道路使用許可は必要かで整理しています。
建物の中にいる人の上を飛ぶのは、第三者上空になりますか。
通達6.(2)は、第三者が遮蔽物に覆われており、当該遮蔽物に無人航空機が衝突した際に当該第三者が保護される状況にある場合(屋内、又は移動中でない車両等の内部にある場合等)は、第三者上空にあるとみなさないとしています。ただし同項は続けて、「第三者」が遮蔽物に覆われず衝突から保護されていない状況になった場合には第三者上空にあるとみなされる点に留意するよう求めています。人が出てくる、車から降りるといった状況の変化は、評価を変えます。
関与者だけが参加する催しなら、催し場所上空の承認は不要ですか。
通達3.(8)は「多数の者の集合する催し」に該当しない例として「6.第三者に関すること に示す関与者のみが参加する催し場所上空の飛行」を挙げています。ただし前提として、参加者の全員について間接関与者の3要件を満たす必要があります。観覧が自由な催し、会場に入れる人を限定できない催しでは、この整理に乗せるのは難しいと考えるのが安全側です。詳細は催し場所上空の飛行で扱っています。
補助者は第三者ではないので、怪我をしても報告は不要ですか。
報告は必要になり得ます。事故等報告要領では、報告対象の「人の死傷」「人の負傷」の「人」は第三者に限らず、操縦者及びその関係者を含むとされています。飛ばす前の規制(30mの距離、立入管理措置、第三者上空)では第三者かどうかが効くのに対し、事故が起きた後の報告義務では問いません。「関係者だから」を理由に報告を省く判断は、報告要領の記述と噛み合いません。落とした場合の責任の全体像はドローンを落として人にけがをさせたときの責任で整理しています。
第三者が経路下に入ってしまったら、何をすればよいですか。
航空法第132条の87が義務を定めています。特定飛行中の機体の下に人の立入り又はそのおそれのあることを確認したときは、直ちに飛行を停止し、飛行経路の変更、安全を損なうおそれがない場所への着陸その他の必要な措置を講じなければなりません。違反には第157条の9第1項第19号により50万円以下の罰金が定められており、教則第5版の行政処分等基準では3点(文書警告の区分)とされています。「止める」の中身(ホバリング維持か、帰還か、着陸か)を事前に決めておくことが実務上の備えになります。
立入管理措置の看板は「関係者以外立入禁止」でよいのですか。
通達5.が挙げているのは「関係者以外の立入りを制限する旨の看板、コーン等による表示」で、教則第5版 3.1.2(2)4)b も同旨です。審査要領も、飛行マニュアルに書く立入管理区画の明示方法の例として同じ表現を挙げています。つまり看板の文言としては「関係者以外」が公式の書きぶりです。一方で、立入りを管理する相手の定義を与えているのは6.(1)の「第三者」です。表示の文言と、判断の基準は、別の文書の別の記述だと理解しておくと混乱しません。区画の作り方は立入管理措置とはで扱っています。
係留すれば、第三者の判断は要らなくなりますか。
要らなくはなりません。教則第5版は、十分な強度を有する紐等(30メートル以下)で係留する例外について「飛行可能な範囲内への第三者の立入管理等の措置を講じて」飛行させる場合に手続きが不要になると書いています。第三者の立入管理は、係留の例外を使うための条件の側に入っています。係留で不要になる範囲は30m以下の係留で許可・承認が不要になる範囲で整理しています。
本記事は2026年9月29日時点の情報です。 「第三者」「間接関与者」の定義は法律ではなく解釈通達と教則に置かれており、いずれも法改正より短い手続で改正され得ます(第三者及び第三者上空の定義は、教則の第4版で見直された項目として改訂履歴に挙げられています)。とくに間接関与者の3要件の当てはめは案件ごとの個別判断であり、本記事は要件と例示、当てはめの考え方までを扱い、特定の立場の人を関係者として扱えるとは述べていません。実際の飛行・申請の前に、必ず上記の一次ソースで最新の本文をご確認ください。

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