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期限を切らすと何が起きるか。許可・登録・技能証明・機体認証の期限を横断で管理する

公開 2026-10-24 更新 2026-10-24 読了 約16分

ドローンを業務で使う事業者は、性質のまったく違う期限を同時に5つ抱えます。飛行許可・承認(最長1年)、機体登録(3年)、技能証明(3年)、機体認証(第一種1年・第二種3年)、そして飛行日誌や保険のように期限に連動して効いてくるもの。 厄介なのは、窓の開き方が制度ごとに逆を向いていることです。包括申請の更新は早すぎると受け付けられず、機体登録と機体認証は早すぎると有効期間を捨てることになり、技能証明は満了日の1か月前に窓が閉じます。 この記事は、個々の更新手続きの説明ではありません。5つの期限を1枚に並べ、切らした場合にどの条文に当たり、法定刑がいくらになるのかを、e-Gov の現行条文で突き合わせます。あわせて、災害時に期限が延びる仕組みと、DIPS2.0からの通知をどこまで当てにしてよいかを整理します。

よく見る説明と、公式の記載
期限の話は「忘れずに更新しましょう」で終わる説明が多く、切らしたときに何が起きるかまで書かれているものは多くありません。この記事で扱う範囲について、一次ソースの記載と突き合わせます。
よく見る説明更新は早く出しておけば安心。とりあえず早めに手続きすればよい。
公式にはこう5つのうち3つは早すぎると損をするか、そもそも受け付けられません。包括申請の更新は満了日の40開庁日前より前には出せず(審査要領2-1(5))、機体登録と機体認証は満了日の1か月前より早く手続きすると、新しい期間が満了日の翌日から始まりません。
出典 審査要領 2-1(5) 施行規則 第236条の9・第236条の19
よく見る説明機体認証には、更新をいつまでに出すという決まりがない。
公式にはこう国土交通省の機体認証のページは「遅くとも有効期間満了日の1ヶ月前までに更新申請を行ってください」と明記しています。施行規則第236条の19 にも、機体登録とまったく同じ「1か月前」の起算日の規定があります。
出典 国土交通省「機体認証等」特記事項3. 施行規則 第236条の19
よく見る説明うっかり期限を切らして飛ばしても、悪意がなければ罰則の対象にはならない。
公式にはこう登録が失効した機体を飛ばせば1年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金に当たり得ます(法第157条の7第1項第1号)。しかも両罰規定により法人にも罰金刑が科され得ます(法第159条第2号)。
出典 航空法 第132条の2・第157条の7・第159条

5つの期限を1枚に並べる

まず全体像です。ドローン事業者が持つ期限は、有効期間の長さも、更新の窓の形も、管理する単位も、すべて違います。管理単位が違うということは、台帳の行が1本では足りないということです。

対象有効期間更新の窓根拠管理の単位
①飛行許可・承認
(包括申請)
原則3か月以内。申請内容に変更を生ずることなく継続的に飛行させることが明らかな場合は1年を限度 満了日の40開庁日前から10開庁日前まで 審査要領3-3・2-1(5) 申請ごと
②機体登録 3年 満了日の1か月前から満了日までに新しい通知を受けると、新しい期間が満了日の翌日から始まる 法第132条の6第1項、規則第236条の8第1項・第236条の9 機体ごと
③技能証明 3年 満了日の6か月前から1か月前まで。満了日の1か月前に窓が閉じる 法第132条の51第1項、規則第236条の57第1項 操縦者ごと(種類の限定ごと)
④機体認証 第一種1年/第二種3年 国土交通省は「遅くとも有効期間満了日の1か月前までに更新申請」と案内。起算日の規定も②と同じ構造 法第132条の13第10項、規則第236条の18・第236条の19 機体ごと
⑤期限に連動するもの
(飛行日誌・保険・リモートID)
飛行日誌の記載と保管は機体が登録されている間/保険は契約期間/リモートIDは登録記号に紐づく —(独立した更新の窓はない) 飛行日誌の取扱要領4.(4)、審査要領2-2-1(8)、規則第236条の6第1項第2号 機体ごと/契約ごと
⑤を「期限」として数える理由:飛行日誌の取扱要領は「飛行日誌の記載及び保管は、無人航空機が登録されている間は継続しなければならない」としています。つまり保管義務の終期が、機体登録の有効期間に連動しています。保険は、飛行計画の通報事項に「無人航空機の事故等により支払うことのある損害賠償のための保険契約の有無及びその内容」が入っており(規則第236条の83第1項第12号)、許可・承認の申請書にも保険会社名・商品名・補償金額まで書きます(審査要領2-2-1(8))。申請書に書いた保険が、許可の期間の途中で切れるという事態は、台帳に持っていなければ誰も気づきません。

それぞれの手続きそのものは、包括申請の更新。40開庁日前から10開庁日前までの窓、機体登録の更新。満了日の1か月前から、が損しない、技能証明の更新。有効期間3年と更新講習、申請は満了日の1か月前までで個別に扱っています。この記事では、それらを1つの台帳に載せて回すことに集中します。

窓の向きが制度ごとに違う

更新の失敗のほとんどは、ある制度の感覚を別の制度に持ち込むことから起きます。5つの期限は、窓の「向き」が揃っていません。

窓の型該当するものやってはいけないこと
早すぎても受け付けない
(両側に締切)
①飛行許可・承認の更新
③技能証明の更新
「思い出したときに早めに出しておく」。①は40開庁日前より前、③は6か月前より前には出せません
早すぎると期間を捨てる
(出せるが損をする)
②機体登録の更新
④機体認証の更新
余裕を見て半年前に手続きすること。新しい期間の起算日が前倒しになり、その分を失います
後ろ側だけ締切 ①の新規申請(飛行開始予定日の10開庁日前まで) ここだけは前倒しに制限がありません。早く出して困ることは基本的にありません

②と④が同じ構造になっていることは、条文を並べると一目でわかります。

機体登録(規則第236条の9):「無人航空機の登録の有効期間の起算日は、国土交通大臣が当該登録に係る…通知をした日とする。ただし、無人航空機の登録の有効期間が満了する日の一月前から当該期間が満了する日までの間に新たに…通知をする場合は、当該期間が満了する日の翌日とする。」

機体認証(規則第236条の19):「機体認証の有効期間の起算日は、当該機体認証に係る機体認証書を交付する日とする。ただし、機体認証の有効期間が満了する日の一月前から当該期間が満了する日までの間に新たに機体認証書を交付する場合は、当該期間が満了する日の翌日とする。」

国土交通省の「機体認証等」のページは、この規定を実務の言葉に直して案内しています。「機体認証の更新申請について、機体認証の有効期間満了後も継続して機体認証を受けたい場合、遅くとも有効期間満了日の1ヶ月前までに更新申請を行ってください。」としたうえで、例まで示しています。有効期間が「令和4年12月2日から令和7年12月1日まで」の第二種機体認証で、更新後の有効期間を「令和7年12月2日から令和10年12月1日」としたい場合は、令和7年11月1日までに更新申請を行う、という書き方です。

機体認証の「1か月前まで」は二重の意味を持ちます。 1か月前より早く交付を受ければ、その分だけ有効期間が前倒しになって短くなります。1か月前より遅く申請すれば、満了日までに新しい機体認証書が交付されず、空白が生じかねません。狙う位置は「満了日の1か月前に申請を出し終えている」状態です。第一種機体認証は有効期間が1年しかないため、この作業が毎年回ってきます。

なお国土交通省は、期限とは別に更新申請が必要になる場面も案内しています。「機体認証を受けている機体について、機体の設計変更や装備品の変更などについて機体メーカーから案内があり、その変更を適用した場合には、機体認証の更新申請が必要となります」。装備品やソフトウェアの変更を適用した時点で、期限が来ていなくても手続きが発生し得るということです。機体認証の制度そのものは機体認証・型式認証とは。第一種と第二種の違いで扱っています。

切らすと何が起きるか、制度ごとに

ここからが本題です。「切れたあとどうなるか」は、制度ごとにまったく違います。公式に書かれていることと、書かれていないことを分けて並べます。

①飛行許可・承認 —— 公式には明示されていない

審査要領の全文を確認しましたが、許可等の期間が満了した後の取扱いを述べた記載はありません。「満了」の語が出てくるのは、更新申請の窓を定めた2-1(5)だけです。

ただし、更新申請という手続きが何を前提にしているかは読み取れます。審査要領2-2-3(8)は、変更申請または更新申請の申請書について「変更申請又は更新申請に関する現に有効な許可等の年月日及び番号を記載するとともに、当該許可書又は承認書の写しを添付すること」と定めています。申請書の様式にも【変更又は更新申請に関する現に有効な許可等の情報】という欄があります。DIPS2.0のよくある質問も、「既に受けている許可・承認について、引き続き飛行の日時のみを延長(期間の更新)をしたい」という問いに対して「許可等の終了日の2か月内に飛行許可・承認の更新申請を行うことで、可能です」と答えています。

つまり、更新は「現に有効な許可等」があることを前提に組まれた手続きです。期間が満了して現に有効な許可等が存在しなくなった場合に、このレールに乗れるとする記載は見当たりません。他方で、満了後は新規申請になると公式に明示されているわけでもありません。該当する場合は、許可・承認を出した官署に確認するのが確実です。申請先は、空港等周辺・緊急用務空域・150m以上が空港事務所長、DID上空および飛行の方法の承認が地方航空局長です。

②機体登録 —— 失効し、抹消され、登録記号が変わる

ここは条文がはっきりしています。航空法第132条の6第1項は「三年以上五年以内において国土交通省令で定める期間ごとにその更新を受けなければ、その期間の経過によつて、その効力を失う」と定め、同法第132条の11第2項により国土交通大臣が登録を抹消し、所有者に通知します。再登録は新規の登録となり、登録記号が変わります。記号が変われば、機体の表示、リモートIDへの書き込み、申請書、飛行計画、飛行日誌がすべて影響を受けます。詳細は機体登録を失効させたらどうなるか。登録記号も変わるで扱っています。

③技能証明 —— 窓が閉じるのは満了日の1か月前

技能証明でいちばん危険なのは、満了日がまだ先なのに、もう更新できない期間が1か月あることです。規則第236条の57第1項は申請期間を「有効期間が満了する日の六月前から一月前までの間」と定めています。国土交通省の技能証明のページも「有効期間満了日の6か月前から1か月前までに申請が必要です」と案内し、登録ポータルは「有効期間満了の1か月前までに、必ず下記のSTEP03まで完了してください」としています。ポータルのSTEPは、01事前準備 → 02更新講習受講・身体適性検査 → 03更新申請 → 04更新手続き完了の順です。1か月前までに終わらせるべきなのは、講習ではなく更新申請の提出までだということになります。

満了すれば技能証明は効力を失い、再取得は新規申請です。満了日から3年以内であれば技能証明書返納証明書を受けて学科試験・実地試験が免除されるルートがあります。手順は技能証明の更新。有効期間3年と更新講習、申請は満了日の1か月前までにまとめています。

④機体認証 —— 空白期間がそのまま運航の制約になる

機体認証には、機体登録のような「失効したら記号が変わる」という副作用はありません。代わりに効いてくるのが、機体認証があることを前提に組んだ運航設計が、その期間だけ成り立たなくなることです。その条文の構造は技能証明・機体認証が切れると、許可が要らなかった飛行が無許可になるで見ます。

期限切れのまま飛ばすと、何条違反でいくらか

ここは e-Gov の現行条文(航空法・2025年12月1日施行のもの)で1件ずつ突き合わせました。現行条文の表記は「懲役」ではなく「拘禁刑」です。国土交通省の案内ページや世の解説には「懲役」の表記が残っているものがありますが、下表は条文どおりの表記にしています。

切れているもの/した行為違反し得る規定罰条法定刑
機体登録が失効した機体を飛ばした 法第132条の2(登録の一般的効力) 法第157条の7第1項第1号 1年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金
再登録後、新しい記号の表示・リモートIDの措置をせずに飛ばした 法第132条の5第2項 法第157条の9第1号 50万円以下の罰金
許可が切れたまま飛行禁止空域を飛ばした
空港等周辺/緊急用務空域/150m以上/DID上空
法第132条の85第1項 法第157条の9第9号 50万円以下の罰金
承認が切れたまま夜間・目視外・30m未満・催し場所上空で飛ばした 法第132条の86第2項第1号〜第4号 法第157条の9第14号 50万円以下の罰金
承認が切れたまま危険物を輸送した/物件を投下した 法第132条の86第2項第5号・第6号 法第157条の9第15号・第16号 50万円以下の罰金
機体認証で指定された使用の条件の範囲を超えて特定飛行を行った 法第132条の14第1項 法第157条の9第3号 50万円以下の罰金
技能証明の限定・条件の範囲外で特定飛行を行った 法第132条の43第2項・第132条の44第2項 法第157条の9第7号・第8号 50万円以下の罰金
飛行計画を通報しないで特定飛行を行った 法第132条の88第1項 法第157条の10第1項第10号 30万円以下の罰金
技能証明書を携帯しないで特定飛行を行った 法第132条の54 法第157条の11第1号 10万円以下の罰金
飛行日誌を備えなかった/記載すべき事項を記載しなかった 法第132条の89第1項・第2項 法第157条の11第2号・第3号 10万円以下の罰金
これらを法人の業務として従業者が行った 両罰規定 法第159条第2号 法人にも各本条の罰金刑
両罰規定の射程が広いことを確認してください。 航空法第159条第2号が挙げる条文には、第157条の7第1項、第157条の9、第157条の10第1項、第157条の11 のすべてが含まれます。上の表のどの行であっても、法人の代表者や従業者がその法人の業務に関して行ったのであれば、行為者を罰するほか法人にも各本条の罰金刑が科され得るということです。「操縦者個人が期限を見落とした」という整理は、法人にとっての免責にはなりません。
参考:無人航空機関係でいちばん重い罰則は、期限ではなく事故対応です。事故が発生したときに危険を防止するために必要な措置を講じなかった場合(法第132条の90第1項違反)は、2年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金(法第157条の6)です。落としたときの責任の全体像はドローンを落として人にけがをさせたときの責任。民事・刑事・航空法で整理しています。

技能証明・機体認証が切れると、許可が要らなかった飛行が無許可になる

ここが、期限管理でいちばん見落とされやすい論点です。技能証明と機体認証を揃えることで許可・承認を不要にしている事業者にとって、どちらか片方が切れた瞬間に、その飛行は無許可・無承認の特定飛行に変わります。条文の柱書を読むと構造がはっきりします。

法第132条の85第1項(飛行の禁止空域)の柱書:「何人も、次に掲げる空域においては、技能証明を受けた者が機体認証を受けた無人航空機を飛行させる場合(立入管理措置を講ずることなく無人航空機を飛行させるときは、一等無人航空機操縦士の技能証明を受けた者が第一種機体認証を受けた無人航空機を飛行させる場合に限る。)でなければ、無人航空機を飛行させてはならない。」

法第132条の86第2項(飛行の方法)の柱書:「無人航空機を飛行させる者は、技能証明を受けた者が機体認証を受けた無人航空機を飛行させる場合(…)を除き、次に掲げる方法により、これを飛行させなければならない。」

どちらの条文も、「技能証明を受けた者」と「機体認証を受けた無人航空機」がセットで成立していることを入口にしています。期限が切れればこの入口が閉じ、許可・承認を取り直すまでその飛行はできません。切れたのが操縦者側か機体側かを問わず、結論は同じです。

審査要領の側にも、同じ趣旨の書き方が随所にあります。訓練方法の記載を省略できるのは「飛行させる無人航空機に対応した現に有効な無人航空機操縦者技能証明(飛行にあたって必要な限定解除を受けたものに限る。)を保有している場合」とされており、夜間飛行や目視外飛行、レベル3.5飛行の追加基準にも「現に有効な」という限定が繰り返し出てきます。審査要領は「持っている」ではなく「現に有効である」ことを要件にしています。

逆算すると、機体認証の期限が事業の設計そのものを縛ります。 第一種機体認証の有効期間は1年です。認証機体を前提に許可・承認を省く設計を取るなら、1年ごとに必ず来る機体側の更新と、3年ごとに来る操縦者側の更新が、交互に事業の稼働を左右することになります。認証機体を買うか許可・承認で回すかの判断材料は認証機体を買うか、許可・承認で回すかで整理していますが、この記事の観点から付け加えるなら、判断材料には「毎年の更新作業に耐えられる体制があるか」も入ります。

災害で期限が延びることがある

期限は必ず切れるものではありません。大規模災害の被災者については、法律に基づいて有効期間が延長される仕組みがあります。実例が2026年にあります。

仕組み:特定非常災害特別措置法第3条

特定非常災害の被害者の権利利益の保全等を図るための特別措置に関する法律(平成8年法律第85号)第3条第1項は、特定非常災害の被害者について、行政庁の処分により付与された権利で存続期間が災害発生日以後に満了するものの満了日を延長する措置を定めています。限度は「特定非常災害発生日から起算して6月を超えない範囲内において政令で定める日」です。

そして同条第2項が、その措置の出し方を定めています。「前項の規定による延長の措置は、告示により、当該措置の対象となる特定権利利益の根拠となる法令の条項ごとに、地域を単位として、当該措置の対象者及び延長後の満了日を指定して行うものとする。」——条項ごと・地域ごとに、告示で指定する仕組みです。全国一律でも、自動でもありません。

実例:令和8年熊本地震

国土交通省航空局は2026年9月4日付で「無人航空機操縦者技能証明等の有効期間の弾力的運用について」を公表しました。根拠となる国土交通省告示第千百十三号(令和8年9月4日公布)を読むと、対象は次のとおりです。

対象対象者延長後の満了日根拠
航空法第132条の13第1項の規定に基づく機体認証 特定被災地域内に住所を有する者 令和9年1月27日 告示第千百十三号(特定非常災害特別措置法第3条第2項)
航空法第132条の40の規定に基づく無人航空機操縦者技能証明 特定被災地域内に住所を有する者 令和9年1月27日 同上
機体登録の有効期間 特定被災地域内に住所を有する者 令和9年1月27日(伸長) 告示ではなく航空法施行規則第236条の8第2項
3つが同じ日まで延びていますが、根拠は2本に分かれています。告示第千百十三号の表に載っているのは機体認証と技能証明の2つだけです。機体登録については、国土交通省のお知らせが「航空法施行規則第236条の8第2項の規定に基づき、天災その他やむを得ない事由により、法第132条の6第1項の登録の更新を受けることができないと認める場合に該当することから」と説明しており、別の条文で処理されています。特定非常災害特別措置法第3条第5項が「災害その他やむを得ない事由がある場合における特定権利利益に係る期間に関する措置について他の法令に別段の定めがあるときは、その定めるところによる」としていることと整合的な扱いと読めます(この当てはめは本記事の整理です)。

対象者は「特定被災地域内に住所を有する者」で、告示の備考は「特定被災地域とは、令和八年熊本地震に際し災害救助法(昭和二十二年法律第百十八号)が適用された市町村の区域をいう。」としています。国土交通省のお知らせは、熊本市、八代市、水俣市、山鹿市、菊池市、宇土市、上天草市、宇城市、天草市、合志市、美里町、大津町、菊陽町、西原村、御船町、嘉島町、益城町、甲佐町、氷川町、芦北町、津奈木町を挙げています。

一方で、飛行許可・承認はこの措置の対象に挙がっていません。 今回の告示にも国土交通省のお知らせにも、飛行許可・承認の期間を延長する旨の記載は見当たりません。災害時に許可・承認が必要になる場面は、期間を延ばす方向ではなく緊急の申請で処理する建て付けになっています。審査要領2-1(1)c)は、災害対策基本法第2条第1号の「災害」に当たる場合等について電話や電子メールによる申請を認め、3-1は口頭による許可等の処分を認めています。この流れは災害対応でドローンを飛ばす。捜索救助の特例と緊急用務空域で扱っています。

そして当然ながら、これらの措置は「うっかり忘れていた」には使えません。施行規則第236条の8第2項が想定するのも「天災その他やむを得ない事由」です。

国からの通知は「届く前提」にできない

期限管理の話は、最後には「誰がどうやって思い出すか」に行き着きます。国の側にも通知の仕組みはあります。ただしその規約を読むと、事業者側で台帳を持つ以外に選択肢がないことがわかります。

DIPS2.0からは「更新期限通知」が来る。ただしメールだけ

ドローン情報基盤システム 利用規約(令和7年3月31日施行)の第7条第1項は、システムから登録されたメールアドレスへ送る通知を列挙しており、その中に「更新期限通知」が入っています。送信元は information@dips.mlit.go.jp または information@dips-reg.mlit.go.jp です。

同条第5項はショートメッセージによる通知も定めていますが、送られるのは「ログインID通知/パスワード初期化通知/到達確認通知/申請完了通知/到達確認リマインド通知/取消済リマインド通知」の6つで、更新期限通知はショートメッセージの一覧に入っていません。つまり期限の通知はメール1本です。

規約は、届かなかった場合の責任を明確に否定しています。
第7条第3項:「申請者の使用環境におけるメールフィルタ等の設定及び通信環境等の理由により電子メールが受信できない場合、システム提供者は一切の責任を負わないものとする。」
第7条第4項:「申請者が本システムに登録されたメールアドレスを第三者と共有する場合、本システムから通知された電子メールを第三者が開封することが可能であり、その結果申請者又は他の第三者が被った損害について、システム提供者は一切の責任を負わないものとする。」

法人でDIPS2.0を使う場合、登録するアドレスは事実上、部署の共有アドレスになります。第4項はその共有自体を禁じてはいませんが、共有に伴うリスクは利用者側が負うという整理です。「誰かが見ているはず」の共有アドレスは、実務上いちばん危ない置き方になります。

第17条:制度改正の通知も、同じアドレスに来る

見落とされがちなのが第17条です。国土交通省航空局は、次の情報の通知を登録されたメールアドレスへ送る場合があるとされています。

  • 無人航空機登録要領の改正
  • 無人航空機の試験飛行届出要領の改正
  • リモートID特定区域の届出要領の改正
  • 離着陸場所管理団体の飛行届出要領の改正
  • 無人航空機の飛行に関する許可・承認の審査要領の改正
  • 航空局標準マニュアルの改廃
  • その他無人航空機の飛行において航空機の航行の安全並びに地上及び水上の人及び物件の安全に影響を及ぼすような重要な情報

送信元は information@dips-reg.mlit.go.jp、information@dips.mlit.go.jp のほか hqt-jcab.mujin@ki.mlit.go.jp が加わります。審査要領の改正と標準マニュアルの改廃は、更新できるかどうかに直結する情報です。2025年12月18日の改正で一部の許可について更新申請そのものが行えなくなった例(2025年12月の審査要領改正で何が変わったか)を思えば、この通知が届かないアドレスで運用している状態のリスクは小さくありません。第17条第2項にも、第7条第3項と同じ免責が置かれています。

機体登録のお知らせメールは2025年4月から

無人航空機登録ポータルサイトのお知らせには、2025年4月28日付で「登録有効期限間近となった機体の所有者の方に宛てて、機体登録の更新に関するお知らせメールの配信を開始しました」と掲載されています。同サイトのよくある質問は、メールが届かない原因の大半として「対象のメールが迷惑メールフォルダに振り分けられている」「所有者のメールアドレスとして登録されているメールアドレスが、普段使用するメールアドレスと異なる」を挙げています。法人の機体で、所有者のメールアドレスが前任者の個人アドレスのままになっていれば、この通知は誰にも届きません。

横断台帳に持つ列

以上を踏まえると、台帳に必要なのは「満了日の一覧」ではなく「いつ動き出すか」の一覧です。制度ごとに動き出す日が違うので、満了日から逆算した日付を持ちます。

行の単位持つ日付持つ付帯情報
許可・承認(申請ごと) 満了日/40開庁日前/10開庁日前/10開庁日前の1週間前(社内締切) 許可承認番号、申請先の官署、使用している飛行マニュアル、載せている機体と操縦者
機体登録(機体ごと) 満了日/満了日の1か月前(着手日) 登録記号、製造番号、リモートIDの種別、所有者・使用者として登録したメールアドレス
技能証明(操縦者ごと・種類ごと) 満了日/6か月前(申請開始)/1か月前(申請の最終期限)/更新講習を受けられる時期 区分・種類・限定、身体適性の証明手段、処分歴
機体認証(機体ごと) 満了日/1か月前(更新申請の最終期限) 第一種か第二種か、型式認証の有無、機体認証書番号、指定された使用の条件
保険(契約ごと) 保険期間の満了日 保険会社名・商品名・補償金額(申請書と飛行計画に書いた内容と一致しているか)
通知の宛先 —— DIPS2.0に登録したメールアドレスが、現に読まれているか。前任者の個人アドレスになっていないか。上記の送信元が受信できる設定になっているか
もう1つ、飛行前に止められる仕組みを足してください。台帳の更新が漏れていても、飛行前確認に「この機体の登録と機体認証、この操縦者の技能証明、この飛行の許可・承認は、今日の日付で有効か」の1行を入れておけば、最後の段階で止められます。飛行日誌の日常点検記録は機体の状態を見るためのものですが、運用上の確認項目として期限の照合を重ねておく価値はあります。日誌の回し方はドローンの飛行日誌の書き方、飛行のつど発生する通報の義務はドローンの飛行計画の通報はいつ必要かを参照してください。

切れていることに気づかず飛ばしていた場合

最後に、いちばん起きてほしくない状況の話をします。この場面の事後の取扱いについて、公式に示された手順は確認できませんでした。したがって以下は、確かめられることと、確かめに行くべき先を並べたものです。

まず飛行を止める。何が切れているかを特定できるまで、その機体・その操縦者・その飛行形態での飛行を再開しない
何が、いつから切れていたかを確定する。許可書・承認書、DIPS2.0の機体情報と技能証明の情報、機体認証書、保険証券を突き合わせ、満了日を1つずつ確認する
その期間に行った飛行を洗い出す。飛行日誌の飛行記録と、通報した飛行計画が手がかりになる
復旧の手続きを始める。機体登録なら新規登録、技能証明なら再取得のルート、機体認証なら更新申請、許可・承認なら官署への確認
所管の官署に確認する。許可・承認は、その許可等を出した官署(空港事務所長または地方航空局長)。制度全般は無人航空機ヘルプデスク(03-5539-0225、平日9時から17時まで。土日・祝・年末年始を除く)
再発防止として、台帳・通知の宛先・飛行前確認の3点を同時に直す。どれか1つだけでは、また同じ場所で落ちます
自己判断で「なかったこと」にしないでください。 期限が切れていた期間の飛行が事後にどう評価されるかを、一般論で断定することはできません。事情も、切れていたものも、飛行の内容も、案件ごとに違います。確かなのは、放置しても状況が良くなる要素が1つもないことです。飛行を止めたうえで、所管の官署に事実を伝えて確認してください。なお、事故や重大インシデントが伴っている場合は、期限の問題とは別に、法第132条の90・第132条の91に基づく報告が必要になり得ます。

よくある質問

5つの期限のうち、最初に管理すべきものはどれですか。
技能証明です。理由は2つあります。第一に、更新申請の窓が満了日の1か月前に閉じるため、5つの中で唯一「満了日より前に手遅れになる」制度だからです。第二に、更新には登録更新講習の受講と身体適性の書類が必要で、他人の予定(講習機関・医療機関)に依存するからです。次いで、有効期間が1年しかない第一種機体認証を持っている場合は、その管理になります。
機体認証の更新は、いつ出すのが正解ですか。
国土交通省は「機体認証の有効期間満了後も継続して機体認証を受けたい場合、遅くとも有効期間満了日の1ヶ月前までに更新申請を行ってください」と案内しています。これは施行規則第236条の19 の起算日の規定に対応しています。満了日の1か月前から満了日までの間に新しい機体認証書が交付されれば、新しい期間は満了日の翌日から始まります。それより早く交付を受けると交付日が起算日になり、残っていた期間を失います。
包括申請の期間が満了してしまいました。更新はできますか。
審査要領には、期間が満了した後の取扱いを述べた記載がなく、公式には明示されていません。一方で、審査要領2-2-3(8)は更新申請の申請書について「現に有効な許可等の年月日及び番号を記載するとともに、当該許可書又は承認書の写しを添付すること」と定めており、DIPS2.0のよくある質問も「既に受けている許可・承認について…期間の更新」という書き方をしています。更新は現に有効な許可等があることを前提とした手続きだと読めます。手元の状況で更新申請が可能かどうかは、許可・承認を出した官署に確認してください。
技能証明が切れましたが、飛行許可は有効です。そのまま飛べますか。
その許可・承認が何を前提にしていたかによります。審査要領は、訓練方法の記載の省略や夜間・目視外の追加基準、レベル3.5飛行について「現に有効な無人航空機操縦者技能証明」を要件にしている箇所があるため、まずその内容を確認する必要があります。そして技能証明と機体認証を揃えることで許可・承認自体を不要にしていた飛行であれば、そちらは明確に成り立たなくなります。法第132条の85第1項・第132条の86第2項の柱書が「技能証明を受けた者が機体認証を受けた無人航空機を飛行させる場合」を入口にしているためです。判断に迷う場合は、許可・承認を出した官署に確認してください。
期限切れのまま飛ばした場合、故意でなければ罰則の対象外ですか。
航空法の罰則規定に、過失の場合を一律に除く定めは置かれていません。たとえば登録が失効した機体を飛行させれば、登録を受けた無人航空機でなければ航空の用に供してはならないとする法第132条の2に違反したことに該当し得て、罰条は法第157条の7第1項第1号(1年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金)です。さらに両罰規定(法第159条第2号)により、法人にも各本条の罰金刑が科され得ます。実際にどう扱われるかは個別の事情によりますので、まず飛行を止めて所管の官署に確認してください。
許可の期間の途中で、申請書に書いた保険が切れます。手続きは必要ですか。
公式には明示されていません。保険の内容は審査要領2-2-1(8)の「その他参考となる事項」として申請書に記載する項目で、2-1(6)が挙げる変更申請の対象事項(登録記号/機体認証書番号等/技能証明書番号等/安全を確保するために必要な体制)には含まれていません。他方、審査要領3-4は許可等の取得後に申請内容に変更が生じた場合は改めて申請を行わせるとしています。また、保険契約の有無と内容は飛行計画の通報事項でもあります(施行規則第236条の83第1項第12号)。切り替えや失効の予定がある場合は、許可・承認を出した官署に確認するのが確実です。
DIPS2.0から更新期限のお知らせは必ず届きますか。
利用規約第7条第1項の通知の一覧に「更新期限通知」は入っていますが、同条第3項は「メールフィルタ等の設定及び通信環境等の理由により電子メールが受信できない場合、システム提供者は一切の責任を負わない」としています。また、ショートメッセージで送られる通知の一覧に更新期限通知は入っていないため、期限の通知はメールだけです。届く前提で運用せず、社内の台帳と二重に持ってください。送信元は information@dips.mlit.go.jp、information@dips-reg.mlit.go.jp です(第17条の安全に関する重要な情報は hqt-jcab.mujin@ki.mlit.go.jp からも送られます)。
災害で手続きができませんでした。期限は延びますか。
延びる仕組みはあります。技能証明と機体認証は、特定非常災害特別措置法第3条に基づく告示により、地域と対象者を指定して満了日が延長されることがあります。機体登録は、施行規則第236条の8第2項により「天災その他やむを得ない事由」がある場合に有効期間を伸長できるとされています。令和8年熊本地震では、いずれも特定被災地域内に住所を有する者について令和9年1月27日まで延長・伸長されました。ただし、これは告示等が出て初めて適用されるものです。自社が対象になるかどうかは、国土交通省の公表内容を確認するか、無人航空機ヘルプデスクに問い合わせてください。
飛行日誌はいつまで保管すればよいですか。
飛行日誌の取扱要領4.(4)は「飛行日誌の記載及び保管は、無人航空機が登録されている間は継続しなければならない」としています。年数で区切る定めではなく、機体登録の有効期間に連動する書き方です。紙で管理している場合、携行するのは「直近の点検整備以降」の飛行記録・日常点検記録で足り、それ以外の記録は使用者の責任において、必要に応じ参照または提示が可能な状態で適切に保管するものとされています。なお、飛行日誌を備えなかった場合・記載すべき事項を記載しなかった場合の罰則は、10万円以下の罰金です(法第157条の11第2号・第3号)。
満了日は制度をまたいで揃えられますか。
揃えられません。有効期間の長さ(1年・3年・最長1年)も起算日の決まり方も制度ごとに違い、管理の単位も機体ごと・操縦者ごと・申請ごととばらばらだからです。揃えられるのは、同じ制度の中だけです。現実的なのは、「いつ動き出すか」を暦の日付に変換して1枚のカレンダーに置くことです。技能証明のように他人の予定に依存するものから先に押さえ、繁忙期に窓が重ならない位置を選ぶと、年間の負荷が平準化します。
この記事の一次ソース
  1. e-Gov法令検索|航空法(昭和二十七年法律第二百三十一号)第132条の2、第132条の5、第132条の6、第132条の11、第132条の13、第132条の14、第132条の40、第132条の43、第132条の44、第132条の51、第132条の54、第132条の85、第132条の86、第132条の88、第132条の89、第132条の90、第157条の6、第157条の7、第157条の9、第157条の10、第157条の11、第159条
  2. e-Gov法令検索|航空法施行規則(昭和二十七年運輸省令第五十六号)第236条の6、第236条の8、第236条の9、第236条の18、第236条の19、第236条の27、第236条の57、第236条の83、第236条の84
  3. e-Gov法令検索|特定非常災害の被害者の権利利益の保全等を図るための特別措置に関する法律(平成八年法律第八十五号)第3条
  4. 国土交通省|無人航空機の飛行に関する許可・承認の審査要領(カテゴリーⅡ飛行)令和8年9月29日最終改正(PDF)
  5. 国土交通省|無人航空機の飛行日誌の取扱要領(PDF)
  6. 国土交通省|機体認証等(特記事項について)
  7. 国土交通省|無人航空機操縦者技能証明等
  8. 国土交通省|無人航空機登録ポータルサイト
  9. 国土交通省|無人航空機(ドローン・ラジコン機等)の飛行ルール(2026.09.04「無人航空機操縦者技能証明等の有効期間の弾力的運用について」)
  10. 国土交通省告示第千百十三号(令和8年9月4日公布・PDF)
  11. 国土交通省|ドローン情報基盤システム 利用規約(令和7年3月31日施行)
  12. 国土交通省|無人航空機 飛行許可・承認申請ポータルサイト よくある質問
  13. 国土交通省|無人航空機の飛行の安全に関する教則 第5版(PDF)
本記事は2026年9月28日時点の情報です。 有効期間や更新の窓は、法律・省令のほか、審査要領や各要領といった通達でも定められており、通達は法改正より短い手続で改正され得ます。災害に伴う期限の延長・伸長は、その都度の告示等によるものです。実際の手続き前に、必ず上記の一次ソースで最新の内容をご確認ください。

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