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建築物の外壁調査(定期報告)にドローンを使う。赤外線調査が認められる条件

公開 2026-10-02 更新 2026-10-02 読了 約15分

建築基準法の定期報告では、タイル・石貼り・モルタルの外壁について、手の届く範囲の打診に加えて、一定の時期に「全面打診等」が求められます。この調査方法を定める平成20年国土交通省告示第282号が改正され、「無人航空機による赤外線調査であって、テストハンマーによる打診と同等以上の精度を有するもの」が打診等に含まれることが明記されました(令和4年国土交通省告示第110号。令和4年1月18日公布、令和4年4月1日施行)。 ただし、認められたのはドローンで赤外線写真を撮ることそのものではありません。打診と同等以上の精度があることが条件で、その判定にあたって参考にするよう国が示しているのが、令和4年3月の「定期報告制度における赤外線調査(無人航空機による赤外線調査を含む)による外壁調査ガイドライン」です。 一方で、ドローンを外壁に寄せる以上、航空法の側では人又は物件から30m未満の飛行の承認がほぼ前提になります。この記事は、建築基準法の側(誰が・いつ・どの方法で調べるか)と航空法の側(どの許可・承認が要るか)を、告示・通知・ガイドラインの原文でつなぎます。

よく見る説明と、公式の記載
この分野は制度改正が続いており、古い説明や条文上の裏付けがない説明が広く流通しています。この記事で扱う範囲について、実際の一次ソースの記載と突き合わせます。
よく見る説明ドローンで外壁の赤外線画像を撮れば、定期報告の打診の代わりになる。
公式にはこう告示が打診等に含めたのは「無人航空機による赤外線調査であって、テストハンマーによる打診と同等以上の精度を有するもの」です。ガイドラインは、調査に先立って同じ部位で打診とドローンによる赤外線調査の両方を行い、浮きの検出状況を確認すること、検出が難しい部位は測定条件を変えるか打診で調査することを求めています。
出典 平成20年告示第282号 別表第一 二(十一)/ガイドライン 4.2.2
よく見る説明外壁の全面打診は、10年ごとに必ずやり直さなければならない。
公式にはこう告示の文言は「竣工後、外壁改修後又は全面打診等を実施した後十年を超え、最初に実施する定期調査等にあっては、全面打診等により確認する」です。そのうえで、3年以内に実施された全面打診等の結果を確認する場合、3年以内に外壁改修等が行われることが確実な場合、別途歩行者等の安全を確保するための対策を講じている場合は除かれています。
出典 同告示 別表第一 二(十一)
よく見る説明建物の所有者から頼まれた調査なのだから、その建物に近づいても30m未満の承認は要らない。
公式にはこう解釈通達は、30mを保つべき「物件」から操縦者及びその関係者(飛行に直接的又は間接的に関与している者)が所有又は管理する物件を除いていますが、依頼者が「間接関与者」に当たるかは通達の要件次第で、一律には決まりません。さらに、隣の建物・電線・道路上の車両は第三者の物件です。
出典 無人航空機に係る規制の運用における解釈について 3(7)・6(1)

定期報告の外壁調査で、告示が求めていること

出発点は建築基準法第12条第1項です。政令で定める特定建築物と、特定行政庁が指定する特定建築物(国等の建築物を除く)の所有者(所有者と管理者が異なる場合は管理者)は、定期に、一級建築士若しくは二級建築士又は建築物調査員資格者証の交付を受けている者(建築物調査員)に建物の状況を調査させ、その結果を特定行政庁に報告しなければなりません。

報告の時期は、建築基準法施行規則第5条第1項で「おおむね六月から三年までの間隔をおいて特定行政庁が定める時期」とされています。同条第2項は、調査の項目・方法・判定基準を「国土交通大臣の定めるところによる」としており、それを定めているのが平成20年国土交通省告示第282号(建築物の定期調査報告における調査及び定期点検における点検の項目、方法及び結果の判定基準並びに調査結果表を定める件)です。

外壁のタイル等について定めているのは、告示の別表第一「二 建築物の外部」の(十一)、調査項目「タイル、石貼り等(乾式工法によるものを除く。)、モルタル等の劣化及び損傷の状況」です。調査方法の欄は、現行(令和7年7月1日施行の改正後)で次のとおりです。

「開口隅部、水平打継部、斜壁部等のうち手の届く範囲をテストハンマーによる打診等(無人航空機による赤外線調査であって、テストハンマーによる打診と同等以上の精度を有するものを含む。以下この項において同じ。)により確認し、その他の部分は目視等により確認し、異常が認められた場合にあっては、全面打診等(落下により歩行者等に危害を加えるおそれのある部分の全面的な打診等をいう。以下この項において同じ。)により確認する。ただし、竣工後、外壁改修後又は全面打診等を実施した後十年を超え、最初に実施する定期調査等にあっては、全面打診等により確認する(三年以内に実施された全面打診等の結果を確認する場合、三年以内に外壁改修等が行われることが確実である場合又は別途歩行者等の安全を確保するための対策を講じている場合を除く。)。」

判定基準は「外壁タイル等に剥落等があること又は著しい白華、ひび割れ、浮き等があること」です。分解すると、次の3段構えになっています。

場面告示の調査方法ドローンの赤外線調査との関係
毎回の定期調査 開口隅部・水平打継部・斜壁部等のうち手の届く範囲を打診等で、その他の部分を目視等で確認 打診等には、打診と同等以上の精度を有する無人航空機による赤外線調査が含まれます
異常が認められたとき 全面打診等(落下により歩行者等に危害を加えるおそれのある部分の全面的な打診等)で確認 全面打診等の「打診等」にも同じ括弧書きが掛かります
竣工・外壁改修・全面打診等の後、10年を超えて最初の定期調査 全面打診等で確認(3つの除外あり) ドローンが最も効くのはここです。高所の外壁を足場やゴンドラなしで面的に調べる手段になり得ます

なお、乾式工法によるタイル・石貼り等は別の項目(十二)として扱われ、この(十一)の打診等の規定は掛かりません。また告示は、特定行政庁が規則で項目・方法・判定基準を付加すること(告示第二)や、安全上等支障がないと認める場合に項目の一部を適用しないこと(告示第三)を認めています。報告時期とあわせて、具体的な運用は所管の特定行政庁の規則・案内で確認する必要があります。

全面打診等が必要になる時期

国土交通省の技術的助言(令和4年3月29日付 国住指第1581号・国住参建第3982号)は、この項目の全体像を「おおむね6ヶ月から3年以内に一度の手の届く範囲の打診等に加え、おおむね10年に一度、落下により歩行者等に危害を加えるおそれのある部分の全面的な打診等を求めている」と説明しています。

ただし、告示の本文は「10年ごと」ではなく、起点と「最初に実施する定期調査等」で書かれています。

起点は竣工、外壁改修、全面打診等の実施のいずれか(直近のもの)
起点から10年を超えた後、最初に実施する定期調査等か
除外に当たらないか。①3年以内に実施された全面打診等の結果を確認する ②3年以内に外壁改修等が行われることが確実 ③別途歩行者等の安全を確保するための対策を講じている
除外に当たらない → その定期調査等で全面打診等により確認(打診と同等以上の精度を有する無人航空機による赤外線調査を含む)
除外に当たる → 全面打診等は求められない(手の届く範囲の打診等と目視等、異常があれば全面打診等)

技術的助言は、令和4年の改正で無人航空機による赤外線調査を明確化したことに加えて、「全面打診等の実施に係る実施周期の明確化を行った」としています。改正前の告示は「十年を超え、かつ三年以内に…全面的なテストハンマーによる打診等を実施していない場合」という書き方でした。

③の「別途歩行者等の安全を確保するための対策」には、国の通知で具体例があります。 落下防止措置付き外壁タイル(ステンレス鋼線・ステンレスレール・タイル取付け用の突起等で落下を防ぐもの)で、所定の要件と施工記録等の資料が確認できるものは、この対策を講じているものとして取り扱って差し支えないとされています(令和7年6月30日最終改正 国住参建第1579号)。資料が確認できない場合は、従前どおり全面打診等です。性能の確認方法については令和8年7月21日付の事務連絡も出ています。

ドローンの赤外線調査が「打診等」に入った経緯と施行日

赤外線装置による調査自体は、令和4年の改正より前から使われていました。平成30年5月23日付の技術的助言(国住防第1号)は、全面打診に加え「これまで行われている赤外線調査による方法」に言及し、あわせて有機系接着剤張り工法の外壁タイルについて引張接着試験による方法を認めています。令和4年の技術的助言も、地上に設置した赤外線装置による赤外線調査と引張接着試験は「打診等」に含まれると整理しています。

令和4年の改正で加わったのは、無人航空機(ドローン)に赤外線装置を載せた調査です。経緯は技術的助言にこう書かれています。

日付出来事資料
平成29〜30年度 国総研・建築研究所の協力のもと建築基準整備促進事業等で検討。「一定の実施要領に則れば、赤外線装置を搭載した無人航空機による調査によりテストハンマーによる打診と同等以上の精度で浮きを検出することが可能であることが判明」 令和4年3月29日 技術的助言
平成30年5月23日 有機系接着剤張りタイルの引張接着試験による方法を認める通知(赤外線調査による方法にも言及) 国住防第1号
令和3年6月18日 成長戦略実施計画(閣議決定)に「一級建築士等による打診調査と同等以上の精度を確認の上、制度改正を行い、来年度以降、建築物の定期検査における外壁調査で使用可能とする」 同 技術的助言
令和4年1月18日 改正告示(令和4年国土交通省告示第110号)を公布 同 技術的助言
令和4年3月 日本建築防災協会が設置した委員会がガイドラインをとりまとめ ガイドライン表紙
令和4年4月1日 改正告示の施行(避難施設等の改正規定は令和5年1月1日) 同 技術的助言・告示附則
「令和4年1月18日」は公布日、施行日は「令和4年4月1日」です。 国土交通省の案内ページは「令和4年1月18日付けで平成20年国土交通省告示第282号を一部改正し」と書いています。これは改正告示の日付(公布日)で、技術的助言と告示の附則を見ると、施行は令和4年4月1日です。過去の定期報告を振り返って「いつの調査からドローンの赤外線調査が告示上の打診等に当たるのか」を確認する場面では、この2つの日付を取り違えないでください。

「打診と同等以上の精度」の判定はガイドラインを参考にする

告示は「打診と同等以上の精度を有するもの」と書くだけで、その中身は定めていません。技術的助言は、精度の判定にあたって、一般財団法人日本建築防災協会が設置した「赤外線装置を搭載したドローン等による外壁調査手法に係る体制整備検討委員会」がとりまとめたガイドラインを参考とされたいとしています。国土交通省の案内ページも同じ趣旨で、地上に設置した赤外線装置による調査も同ガイドラインを参照するよう書いています。

ガイドラインの目的は、赤外線調査とドローンによる赤外線調査を「告示…に位置付けられているテストハンマーによる打診と同等以上の精度で実施するために必要な事項を定め、広く周知すること」です。適用範囲は告示(十一)のタイル・石貼り等・モルタル等の調査で、「航空法等の関連法令に基づき、外壁調査においてドローンの安全な飛行が可能となる技術の利用及び安全管理の対策を行った上で赤外線調査を実施することを前提とする」と明記されています。航空法の手続は、ガイドラインの外側にある前提条件です。

ドローンによる赤外線調査は、ガイドライン第4章で次の流れとして定められています。

適用条件の把握、飛行の可否と安全対策の検討。気象条件(天候、環境温度、風速等)、建物条件(タイルの種類、建築物の形状等)、周辺環境(建築物からの放射熱の影響等)、撮影条件(赤外線装置、撮影角度、離隔距離等)を把握。建物高さ・離隔距離、電波環境・障害物等を確認し、安全装置や安全管理対策を講じる(4.2)
事前調査。予備調査に加えて現地調査が原則。ドローン飛行可否判断と飛行安全対策の確認、日射の状況、調査可能な時間帯、建築物の近隣状況、事前調査結果に基づく飛行書類作成及び申請など(4.3)
調査計画書とドローン飛行計画書の作成。調査対象の外壁面のうちドローンで調べる箇所と、その他の方法で調べる箇所を分ける(4.4)
打診との併用による確認。同じ部位で打診とドローンによる赤外線調査を行い、浮きの検出状況を確認。検出が難しい部位は測定条件の変更か打診で対応(4.2.2・4.5)
調査の実施。「ドローンをホバリングさせ静止した状態で静止画による撮影とし、可視画像も同時に撮影する」。熱画像は全て保存(4.5)
熱画像による浮きの判定。立地条件、仕上げ材の種類、撮影時の環境条件を整理し、反射等の外乱の影響を取り除きながら分析(4.6)
報告書の作成。適用条件のチェックリスト、打診との併用による確認の範囲と結果、浮きと判定した箇所の外壁調査結果図、熱画像と可視画像などを記載し、ドローン飛行計画書を添付(4.7)
ガイドラインに数値基準は書かれていません。 温度差、風速、外壁からの離隔距離、撮影角度といった項目は「把握する」「確認する」対象として挙げられていますが、何度以上・何m以内といった具体的な数値は、ガイドライン本文には記載されていません。赤外線調査が一般に難しい箇所として「軒裏、出隅、入隅」が例示されているほかは、個別の建物で事前調査と打診との併用によって確かめる構成になっています。この記事では、ガイドラインに書かれていない技術的な閾値には踏み込みません。

誰が調査し、誰がドローンの責任を負うのか

ガイドラインは、ドローンによる赤外線調査の実施者を4つの役割に分けています。

役割ガイドラインの要件担うこと
外壁調査実施者 建築物所有者等の依頼のもと外壁調査を実施する特定建築物調査員等(1級建築士もしくは2級建築士又は建築物調査員資格者証の交付を受けている者) 赤外線調査全体を統括し、判定結果を基に「著しい浮き」の有無を確認。外壁調査結果報告書を作成し、一式を建築物所有者等に提出
赤外線調査実施者 建築物及び赤外線調査に関する十分な知識を有し、建築物調査等の実務経験を有する者 熱画像の撮影(その指示のもと補助者又は操縦者が撮影した場合を含む)、分析、浮きの判定を行い、その責任を負う
ドローン調査安全管理者 建築物調査、かつドローンの飛行に関する知識を有する者 ドローンの管理・運用に関する作業全体を統括し、操縦者・補助者等を掌握。ドローンに関連する職務の遂行の責任を負う。ドローン飛行計画書を作成し、現場で飛行の可否・中止を判断
操縦者 ドローンの飛行技術について熟知した操縦経験を有する者。建築物の規模等に応じて補助を満足する体制で構成 赤外線調査実施者及びドローン調査安全管理者の指示のもとで操縦・撮影

定期報告の調査そのものを行う資格は、建築基準法第12条第1項が定める一級建築士・二級建築士・建築物調査員です。ガイドラインもこれに合わせ、統括役の外壁調査実施者をこの資格者としています。外壁調査結果報告書には、外壁調査実施者の氏名、所持資格名、資格者番号、調査対象の部分、告示の判定基準に基づく判定を記載します。そして、特定行政庁への報告義務を負うのは建築物の所有者等です。

操縦者の資格について、ガイドラインは技能証明(国家資格)に触れていません。 操縦者に求めているのは「ドローンの飛行技術について熟知した操縦経験」です。航空法の側でも、許可・承認を受けて行う飛行は、技能証明や機体認証の有無を問わず個別に許可・承認を受けるという整理です(技能証明と機体認証がそろう場合に許可・承認を不要にできるルートは別にあります)。一方でガイドラインのドローン飛行計画書には「飛行許可・承認情報、資格、加入保険等」を書く欄があり、資格の有無は計画書で明らかにする構成です。

2025年7月の「目視等」への改正との関係

外壁調査の告示には、令和4年の後にもう一つ改正があります。令和6年国土交通省告示第974号(令和6年6月28日公布、令和7年7月1日施行)です。この改正で、告示の各項目の「目視により確認する」が「目視又はこれに類する方法(以下「目視等」という。)」に改められ、外壁タイル等の(十一)でも「その他の部分は必要に応じて双眼鏡等を使用し目視により確認し」が「その他の部分は目視等により確認し」になりました。打診等の括弧書き(無人航空機による赤外線調査を含む)と、全面打診等の「ただし」以下の文言は変わっていません。

「これに類する方法」の意味は、国土交通省の事務連絡(令和6年6月28日)に書かれています。

「『これに類する方法』とは、『定期報告制度における赤外線調査(無人航空機による赤外線調査を含む)による外壁調査 ガイドライン』に則った調査の他、定期調査・検査を実施する者が自らの目視によるときと同等以上の情報が得られると判断した方法(例えば、ファイバースコープや双眼鏡、赤外線装置、可視カメラ、拡大鏡等の検査器具類を使用した結果、目視と同等以上の情報が得られる方法等)をいう。」

同じ事務連絡は、この「目視」を「目視又はこれに類する方法」に改める部分について公布日以降に運用を開始して差し支えないとしています。また令和7年1月29日の技術的助言(国住指第369号)は、改正の趣旨を、目視によることで「実質的に資格者の立会いを必要として」いた状態から、センサー等の新技術を活用することを可能とするためと説明しています。

「目視等」と「打診等」は、別の話として読んでください。 「目視等」への改正は、手の届く範囲以外の「その他の部分」を確認する方法の話です。打診等(全面打診等を含む)をドローンで行うには、引き続き「テストハンマーによる打診と同等以上の精度を有する」赤外線調査であることが必要です。また、事務連絡は可視カメラを例示していますが、ドローンに載せた可視カメラによる撮影を名指しで「目視等」に当たるとした記載はなく、判断するのは「定期調査・検査を実施する者」とされています。 なお、国土交通省の定期報告制度のページに掲載されている告示のWord版は「令和5年3月20日改正」時点のもので、令和7年7月1日施行の改正は別掲の改正告示PDFで確認する必要があります。

航空法側:外壁調査で当たる特定飛行

ここから航空法の話です。ガイドラインは、事前調査の項目に「事前調査結果に基づく飛行書類作成及び申請」を、ドローン飛行計画書の記載事項に「飛行許可・承認情報」を、添付資料に「飛行許可・承認申請書等」を挙げています。建築側の調査計画は、航空法の手続が済んでいることを前提に組まれているということです。

外壁調査で当たりやすい特定飛行は、次のとおりです。

類型根拠条文外壁調査での当たり方
人又は物件から
30m未満
(承認)
法第132条の86
第2項第3号
規則第236条の79
外壁に寄って静止画を撮る以上、ほぼ常に論点になります。依頼者の建物が第三者の物件から外れるかは関与者の要件次第で一律に決まらず、隣接する建物・電線・道路上の車両は第三者の物件です。通行人など第三者の「人」も対象です
DID上空
(許可)
法第132条の85
第1項第2号
規則第236条の72
市街地の建物が多く、該当しやすい類型です。解釈通達は私有地内でもDID内である限り禁止空域としています。2026年7月1日から、用途地域「工業専用地域」の区域は対象外です
目視外飛行
(承認)
法第132条の86
第2項第2号
建物の裏側・入隅に回り込むと肉眼で見えなくなります。解釈通達は「飛行状況を専らモニターを用いて見ること」やカメラ等を用いて見ることは「目視」に当たらないとしています(バッテリー残量の確認等で一時的にモニターを見ることは目視飛行の範囲内)。画角合わせをモニターだけで行う運用は注意が必要です
夜間飛行
(承認)
法第132条の86
第2項第1号
ガイドラインは事前調査で「日射の状況」「調査可能な時間帯」の確認を求めています。調査の時間帯が日没後にかかる計画なら夜間の承認が必要です。ガイドライン自体は、調査を夜間に行うとは書いていません
150m以上
(許可)
法第132条の85
第1項第1号
規則第236条の71
第1項第5号
超高層建築物。解釈通達は「高層の建物の壁や屋上から30メートル以内の空域」を150m以上の規制から除かれる例に挙げています。ただし建物から30mを超えて離れる経路は対象に戻り、30m以内を飛ぶこと自体は関係者の飛行か30m未満の承認が前提です。DIDならDIDの許可は別途必要です
空港等周辺
(許可)
法第132条の85
第1項第1号
建物が空港の制限表面にかかる立地の場合。場所を特定した申請が必要です

それぞれの類型の考え方はインフラ点検でドローンを使うのに必要な許可・承認で、30mの「人・物件」の範囲や150m以上からの除外まで含めて整理しています。工業専用地域の扱いは工業専用地域とDIDの記事、許可と承認の区別と申請の全体像はドローンの飛行許可・承認申請 完全ガイドをご覧ください。

包括申請と飛行マニュアル

外壁調査を反復して請ける事業者は、DID・目視外・30m未満などを包括申請で先に取っておく設計が現実的です。ただし場所を特定しない申請では扱えない類型(空港等周辺、150m以上、DID上空の夜間飛行など)があります。詳しくは全国包括は取れるか。標準マニュアル02の使い方で扱っています。

飛行マニュアルには、航空局の標準マニュアルにインフラ点検を目的とした版があります。ただし、建築物の外壁調査がその「インフラ点検」に含まれるかは、マニュアル上明示されていません。適用範囲の読み方と汎用版との違いはインフラ点検専用の標準マニュアルがある。一般版との違いを参照し、判断に迷う場合は申請先の地方航空局・空港事務所に確認するのが確実です。

係留装置を使う場合の注意。 ガイドラインは用語の定義に「係留装置」(十分な強度を有する紐等でドローンを係留する安全装置)を置いています。一方、航空法施行規則の係留の特例(許可・承認が不要になる場合)には、紐等の長さが30m以下であることのほか、その範囲内に地上・水上の物件が存しないことや立入管理措置などの要件があります。外壁に近接する調査でこの特例が使えるかは個別に確認が必要です。安全装置として係留することと、特例で許可・承認が不要になることは別です。要件は30m以下の係留で許可・承認が不要になる範囲で整理しています。

許可・承認を受けても、特定飛行を行うたびに飛行計画の通報と飛行日誌の義務が発生します。解釈通達上、30mを保つべき物件にはビル・住居などの工作物が含まれ、機体を第三者の物件に接触させて損傷させた場合は事故報告の対象になり得ます。外壁に寄せる作業である以上、接触時の対応手順も運用に入れておくべきです。

歩行者のいる外壁と、立入管理措置

告示が全面打診等の対象にしているのは「落下により歩行者等に危害を加えるおそれのある部分」です。裏を返せば、ドローンで調べたい外壁の直下には、歩道・通路・出入口など人の通る場所があることが多いということになります。

航空法上、許可・承認を受けて行うカテゴリーⅡ飛行は、飛行経路下に立入管理措置を講じたうえで行う飛行です。立入管理措置を講じずに第三者の上空で特定飛行を行うのはカテゴリーⅢで、一等無人航空機操縦士の技能証明と第一種機体認証が求められ、飛行の許可・承認も必要です。外壁調査を通常のカテゴリーⅡの枠内で行うなら、調査中は外壁直下と落下の可能性がある範囲に第三者を入れない設計が前提になります。

検討事項内容
区画の範囲 外壁の直下だけでなく、機体の落下の可能性がある範囲まで。立入管理措置の具体的な方法は立入管理措置とは。現場で実際に何をするのかで扱っています
建物の利用者 調査中も営業・入居が続く建物では、出入口や避難経路の扱いを建物側と調整する必要があります
ガイドラインの計画書 ドローン飛行計画書に「作業区域の配置図」「飛行ルート図」、安全管理として「役割分担・指揮系統、作業区域、安全装備類・安全システム、緊急時対応」を記載します
道路に面した外壁 警察庁の通達は、道路の上空を単に飛行させる行為は原則として道路使用許可を要しないとしています。一方、道路での離発着、補助者の配置、立看板の設置などで交通の妨害となるおそれがある場合は個別に判断されます。詳しくは道路使用許可の記事をご覧ください

屋上・隣地・周辺施設。法令とは別の同意と確認

航空法の許可・承認は国に対する手続で、その場所で飛ばしてよいかを決めるものではありません。外壁調査では、次のような確認が別に必要になります。

場面誰との調整か公式の整理
屋上や敷地内で離着陸する 建物の所有者・管理者(管理会社、管理組合、テナントとの調整を含む) 航空法の許可・承認とは別の、施設管理上の承諾の問題です。依頼者が報告義務者(所有者又は管理者)でも、屋上の使用ルールは建物ごとに異なるため事前に確認します
飛行経路が隣地の上空にかかる 隣地の所有者 政府は、第三者の土地の上空を飛行させるに当たって常に土地所有者の同意を得る必要がある訳ではないとし、同意が必要となる高度についての一律の基準は存在しないとしています。詳しくは私有地の上空の記事で扱っています。ガイドラインも事前調査で「建築物の近隣状況の確認」を求めています
建物が重要施設の周辺にある 対象施設の管理者、都道府県公安委員会等 国の重要施設等の周辺地域では小型無人機等飛行禁止法が掛かります。2026年7月の改正を含めて小型無人機等飛行禁止法の記事で整理しています

建築側の事前調査(日射、調査可能な時間帯、打診との併用箇所)と、航空側の手続(許可・承認、立入管理措置の区画、屋上使用の承諾)は、同じ現地調査の中で並行して確認すると手戻りが少なくなります。ガイドラインが事前調査の項目に建築の確認事項と「飛行書類作成及び申請」を並べているのは、この並行作業を前提にしているためと読めます。

よくある質問

ドローンの赤外線調査は、いつから定期報告の外壁調査で使えるようになりましたか。
告示に「無人航空機による赤外線調査であって、テストハンマーによる打診と同等以上の精度を有するもの」が打診等に含まれると明記した改正(令和4年国土交通省告示第110号)は、令和4年1月18日公布、令和4年4月1日施行です。国土交通省の案内ページにある「令和4年1月18日付け」は公布日です。なお、地上に設置した赤外線装置による調査は、それ以前の通知でも使われていた方法として整理されています。
どんな外壁でもドローンの赤外線調査で済ませられますか。
対象は告示(十一)のタイル、石貼り等(乾式工法によるものを除く)、モルタル等です。そのうえでガイドラインは、気象条件、タイルの種類、建築物の形状、周辺建物からの放射熱、撮影角度や離隔距離などを事前調査で確認し、ドローンによる赤外線調査が可能な部分を明確にしてから調査するとしています。軒裏・出隅・入隅は一般に赤外線調査が難しい箇所として例示され、同じ部位での打診との併用で検出が難しいと判断された部位は、測定条件を変えるか打診で調査します。適用が難しい箇所は、外壁調査実施者が代替方法を検討します。
ドローンを操縦する人が建築士である必要はありますか。
定期調査を行う資格は、建築基準法第12条第1項の一級建築士・二級建築士・建築物調査員です。ガイドラインは、調査全体を統括する外壁調査実施者をこの資格者(特定建築物調査員等)としていますが、操縦者には「ドローンの飛行技術について熟知した操縦経験を有する者」を求めるだけで、建築士であることは求めていません。ドローンの管理・運用を統括するドローン調査安全管理者には、建築物調査とドローンの飛行の両方の知識が求められます。
操縦者に国家資格(技能証明)は必要ですか。
ガイドラインは技能証明に触れていません。航空法の側では、許可・承認を受けて行う飛行は技能証明や機体認証の有無を問わず個別に許可・承認を受ける整理で、技能証明を受けた者が機体認証を受けた機体を飛ばす場合に一部の許可・承認を不要にできるルートが別にあります。ただし、外壁直下の第三者を立入管理措置で排除できず第三者の上空を飛ぶ計画になるなら、それはカテゴリーⅢで、一等の技能証明と第一種機体認証が必要です。
建物の所有者に依頼された調査なら、30m未満の承認は要りませんか。
一律には言えません。解釈通達は、30mを保つべき物件から操縦者及びその関係者(飛行に直接的又は間接的に関与している者)が所有又は管理する物件を除いていますが、依頼者が間接関与者に当たるかは、飛行目的の共通認識、操縦者からの指示と安全上の注意、関与を自ら決定できることといった要件次第です。加えて、隣接する建物・電線・道路上の車両や通行人は第三者で、市街地の外壁調査でこれらから30mを保つのは通常困難です。30m未満の承認を取る前提で設計するのが安全です。
地上に据えた赤外線カメラで撮る調査にも、航空法の手続は要りますか。
無人航空機を飛ばさない調査なので、航空法の無人航空機の規制は関係しません。建築側では、地上に設置した赤外線装置による調査も「打診等」に含まれると整理されており、打診と同等以上の精度の判定にあたっては同じガイドライン(第3章)を参考にするとされています。高所や見上げ角の大きい面をドローンで補う場合に、その部分についてだけ航空法の手続が必要になります。
報告の時期や調査の項目は、自治体によって違いますか。
報告の時期は、建築基準法施行規則第5条第1項により「おおむね六月から三年までの間隔をおいて特定行政庁が定める時期」です。また告示は、特定行政庁が規則で調査の項目・方法・判定基準を付加することや、支障がないと認める場合に項目の一部を適用しないことを認めています。したがって、実際の報告時期や添付書類などは、建物を所管する特定行政庁の規則・案内で確認してください。
2025年7月の「目視等」への改正で、ドローンの可視カメラ撮影も認められたのですか。
改正されたのは、手の届く範囲以外の「その他の部分」を確認する方法です。事務連絡は「これに類する方法」を、ガイドラインに則った調査のほか、定期調査・検査を実施する者が自らの目視によるときと同等以上の情報が得られると判断した方法(可視カメラ等の検査器具類の例示あり)としています。ドローンに載せた可視カメラを名指しした記載はありません。また、打診等(全面打診等を含む)の代わりになるのは、打診と同等以上の精度を有する赤外線調査であることに変わりはありません。
この記事の一次ソース
  1. e-Gov法令検索|建築基準法(昭和二十五年法律第二百一号)
  2. e-Gov法令検索|建築基準法施行規則(昭和二十五年建設省令第四十号)
  3. 国土交通省|定期報告制度における外壁のタイル等の調査について
  4. 国土交通省|定期報告制度における赤外線調査(無人航空機による赤外線調査を含む)による外壁調査ガイドライン(令和4年3月・PDF)
  5. 国土交通省|建築基準法施行規則の一部を改正する省令等の施行について(技術的助言)令和4年3月29日 国住指第1581号・国住参建第3982号(PDF)
  6. 国土交通省|建築基準法に基づく定期報告制度について(告示・改正告示の掲載ページ)
  7. 国土交通省|平成20年国土交通省告示第282号(令和5年3月20日改正時点・Word)
  8. 国土交通省|令和6年国土交通省告示第974号(令和7年7月1日施行・PDF)
  9. 国土交通省|事務連絡 令和6年6月28日(「目視又はこれに類する方法」の運用・PDF)
  10. 国土交通省|技術的助言 令和7年1月29日 国住指第369号(PDF)
  11. 国土交通省|建築物の定期調査報告における外壁の外装仕上げ材等の調査方法について 平成30年5月23日 国住防第1号(PDF)
  12. 国土交通省|建築物の定期調査報告における落下防止措置付き外壁タイルの取扱いについて 国住参建第1579号(PDF)
  13. 国土交通省|事務連絡 令和8年7月21日 落下防止措置付き外壁タイルの性能検証方法について(PDF)
  14. e-Gov法令検索|航空法(昭和二十七年法律第二百三十一号)
  15. e-Gov法令検索|航空法施行規則(昭和二十七年運輸省令第五十六号)
  16. 国土交通省|無人航空機に係る規制の運用における解釈について(令和8年4月1日最終改正・PDF)
  17. 国土交通省|無人航空機の飛行ルール(飛行禁止空域・飛行の方法)
  18. 国土交通省|告示第435号(工業専用地域の区域・PDF)
  19. 国土交通省|航空局標準マニュアル②(インフラ点検)(PDF)
本記事は2026年9月16日時点の情報です。 定期報告の告示は令和4年・令和6年・令和7年と改正が続いており、国土交通省のページに掲載されている告示の溶け込み版が最新の改正を反映していない場合があります。ガイドラインは令和4年3月の版を参照しています。報告時期や付加項目は特定行政庁ごとに定められるため、実際の調査・飛行の前に、必ず上記の一次ソースと所管の特定行政庁の案内で最新の内容をご確認ください。

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