other-laws

ドローンを落として人にけがをさせたときの責任。民事・刑事・航空法

公開 2026-10-01 更新 2026-10-01 読了 約13分

ドローンを落として人にけがをさせたとき、問題になる責任は3つの層に分かれます。1つ目は航空法上の義務で、直ちに飛行を中止して負傷者を救護すること、そして国土交通大臣へ事故を報告することです。どちらにも罰則があります。2つ目は民事の責任で、被害者に対する損害賠償です(民法第709条ほか。従業員が業務中に起こした場合は会社の使用者責任〔第715条〕も問題になります)。3つ目は刑事の責任で、刑法の過失傷害や業務上過失致死傷などの罪です。 3つは根拠となる法律も、手続きも、誰に対する責任かも別々です。この記事では、それぞれの条文が何を要件にしているかを現行条文で確認し、事故が起きた直後に何をするかまでを整理します。個別の事故で責任を負うかどうかは事実関係によって決まるため、ここでは条文の要件の説明にとどめます。

よく見る説明と、公式の記載
事故時の罰則は、国土交通省の案内ページ自体に古い表記や一括りの説明が残っている分野です。現行の条文と突き合わせます。
よく見る説明事故も重大インシデントも、報告しなければ30万円以下の罰金。
公式にはこう罰則(第157条の10第2項)が引用しているのは第132条の90第2項=事故の報告だけです。重大インシデントの報告(第132条の91)も義務ですが、それを引く罰条は現行の航空法に置かれていません。
出典 航空法 第157条の10第2項・第132条の91
よく見る説明負傷者を救護しなかった場合は「2年以下の懲役」。
公式にはこう現行条文は「2年以下の拘禁刑又は百万円以下の罰金」です。国土交通省の案内ページには旧表記の「懲役」が残っています。
出典 航空法 第157条の6
よく見る説明従業員が仕事中に起こした事故は、操縦した本人の責任。
公式にはこう民法は、事業のために人を使用する者も、被用者が事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負うと定めています(ただし書による例外あり)。
出典 民法 第715条第1項

全体像:責任は3つの層に分かれる

「ドローン事故の責任」とひとまとめに語られがちですが、条文の上では次の3つが、根拠となる法律も手続きも別々の仕組みとして定められています。

層主な根拠何に対する責任か結果
① 航空法上の義務 航空法第132条の90・第132条の91 国(事故時の措置と、国土交通大臣への報告) 措置義務違反は2年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金、事故報告義務違反は30万円以下の罰金
② 民事の責任 民法第709条・第715条・第415条、製造物責任法 被害者(けがをした人、物を壊された人)や契約の相手方 損害賠償
③ 刑事の責任 刑法第209条〜第211条 国家の刑罰権(捜査・起訴・裁判) 罰金・科料、又は拘禁刑

なお、①の航空法の規定は「無人航空機」、つまり重量100グラム以上の機体が対象です(詳しくは無人航空機の登録制度 完全ガイド)。一方、②の民法第709条や③の刑法第209条〜第211条の条文は、機体の重さや航空法の許可・承認の有無を要件にしていません。

航空法:救護等の措置義務と事故の報告義務

事故が起きたときの2つの義務(第132条の90)

「次に掲げる無人航空機に関する事故が発生した場合には、当該無人航空機を飛行させる者は、直ちに当該無人航空機の飛行を中止し、負傷者を救護することその他の危険を防止するために必要な措置を講じなければならない。一 無人航空機による人の死傷又は物件の損壊 二 航空機との衝突又は接触 三 その他国土交通省令で定める無人航空機に関する事故」(第1項)
「前項各号に掲げる事故が発生した場合には、当該無人航空機を飛行させる者は、当該事故が発生した日時及び場所その他国土交通省令で定める事項を国土交通大臣に報告しなければならない。」(第2項)

義務を負うのは「当該無人航空機を飛行させる者」です。許可・承認を受けた飛行かどうかで義務の有無は変わりません。報告先が変わるだけです(後述)。

「救護」とは具体的に何をするのか

国土交通省の「無人航空機の事故及び重大インシデントの報告要領」(令和4年11月4日制定)は、第132条の90第1項の措置を次のように具体化しています。

  • 負傷者の救護:医師や救急車が到着するまでの間、ガーゼや清潔なハンカチ等での止血など可能な応急救護処置を行う。むやみに負傷者を動かさない(特に頭部に傷を受けているとき)。ただし二次的な事故等のおそれがある場合は、速やかに安全な場所に移動させる。救急車を要請する
  • その他の危険防止措置:火災が発生している場合の消防への連絡や消火活動。警察官への事故の概要の報告(発生場所、負傷者数や負傷の程度、物件の損壊の程度等)
  • 飛行の中止:事故の後も機体が飛行状態にあれば、最寄りの安全に着陸できる場所(出発地、目的地、緊急着陸場所を含む)を選んで速やかに着陸させる

同じ要領は、「事故に該当する場合に限らず、必要と認められる場合には、所要の救護活動を行うべきである」とも書いています。けがの程度が軽く「事故」に当たらない場合でも、救護をしなくてよいという意味ではありません。

「事故」と「重大インシデント」の線引き

報告要領は、人のけがを重傷以上なら「事故」、軽傷なら「重大インシデント」として扱います。どちらも報告の対象です。

事故(第132条の90)重大インシデント(第132条の91)
人への被害重傷以上の死傷。悪天候等の外的要因によるもの(操縦者に過失がないもの)も含む軽傷。回転中のプロペラによる負傷など、離着陸のための地上での事案も含む
「人」の範囲第三者に限らず、操縦者及びその関係者を含む
物への被害第三者の所有物(人工物)の損傷はすべて。瓦のひび割れや壁の傷など軽微なものも含む—
航空機衝突・接触による損傷が確認できるもの衝突・接触のおそれがあったもの(回避措置を講じたもの)
機体側の事態—機体不具合による制御不能(操縦ミスによるものは対象外)、飛行中の発火
救護等の措置義務あり(第132条の90第1項)条文上は事故が対象。ただし報告要領は必要なら救護活動を行うべきとする
報告義務あり(第132条の90第2項)あり(第132条の91)
報告しなかった場合の罰則30万円以下の罰金(第157条の10第2項)罰条は置かれていない

罰則:第157条の6と第157条の10第2項

違反条文法定刑
危険を防止するために必要な措置(救護等)を講じなかった第157条の62年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金
事故の報告をせず、又は虚偽の報告をした第157条の10第2項30万円以下の罰金
重大インシデントの罰則について:第157条の10第2項の原文は「第百三十二条の九十第二項の規定による報告をせず、又は虚偽の報告をした者は、三十万円以下の罰金に処する。」です。重大インシデントの報告義務を定めた第132条の91を引用する罰条は、現行の航空法には置かれていません。ただし、国土交通省のレベル4ポータル(運航ルール)は「事故・重大インシデントの報告を行わなかった場合」について30万円以下の罰金と両者をまとめて案内しています。罰則の有無にかかわらず報告は法律上の義務ですので、重大インシデントも必ず報告してください。

もう1点、条文を読むと分かることがあります。航空法の両罰規定(第159条第2号)は、従業者等が法人の業務に関して違反したときに法人にも罰金刑を科す規定ですが、その列挙に第157条の6と第157条の10第2項は含まれていません(列挙されているのは第157条の7第1項、第157条の9、第157条の10第1項、第157条の11など)。この2つの罰則が条文上向けられているのは、義務を負う「飛行させる者」本人です。ただし、これは航空法の罰則の話であって、会社の民事上の責任(後述の第715条)とは別の問題です。

報告の方法と報告先

  • 方法:DIPS(ドローン情報基盤システム)の事故等報告機能で、電磁的に速やかに行うのが原則。やむを得ない理由で使えない場合は、様式により官署宛てに報告できる(その場合も速やかに)
  • 報告先:許可・承認を受けた飛行は、その許可・承認をした官署。受けていない飛行は、飛行経路を管轄する官署(国土交通省航空局安全部無人航空機安全課、東京航空局保安部運航課、大阪航空局保安部運航課、東京空港事務所〔24時間対応〕、関西空港事務所〔24時間対応〕)
  • 添付:人の死傷状況がわかる医師による診断書、物件の損壊状況の写真がある場合はあわせて添付する
  • 複数の操縦者がいた場合:操縦者ごとに報告書を出す。同じ会社に所属していれば会社名で報告してもよいが、操縦者名を入れた別々の報告書にする
  • 判断に迷う場合:事故等に当たるか明らかでないときは、管轄の官署に相談する

報告要領は、この報告の目的を「原因を究明し、再発防止を図ること」とし、「当事者に対しペナルティを科すことを目的としたものではない」と明記しています。報告事項の細目は航空法施行規則第236条の85(事故)・第236条の87(重大インシデント)に定められています。飛行計画の通報や飛行日誌との関係はドローンの飛行計画の通報はいつ必要かでも触れています。

民事:被害者への損害賠償

被害者との関係で中心になるのは民法です。どの条文が問題になるかは、誰が操縦していたか、被害者と契約関係があるか、原因が機体の欠陥かによって変わります。

不法行為(民法第709条・第710条)

「故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。」(民法第709条)

条文の要件は、故意又は過失、他人の権利・法律上保護される利益の侵害、損害の発生、そしてそれらの因果関係(「これによって生じた」)です。第710条は、身体を侵害した場合などに財産以外の損害についても賠償しなければならないと定めています。

被害者側にも過失があった場合については、第722条第2項が「裁判所は、これを考慮して、損害賠償の額を定めることができる」としています。過失の有無や割合は、事故の具体的な状況をもとに判断されるもので、一律の基準が条文に書かれているわけではありません。

従業員が業務中に起こした場合(民法第715条 使用者責任)

「ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、使用者が被用者の選任及びその事業の監督について相当の注意をしたとき、又は相当の注意をしても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。」(民法第715条第1項)
  • 第2項:使用者に代わって事業を監督する者も、同じ責任を負う
  • 第3項:使用者や監督者が、被用者に対して求償することは妨げられない

業務でドローンを飛ばす会社にとっては、操縦した従業員個人の問題では終わらない可能性がある、というのがこの条文の意味です。ただし書(選任・監督について相当の注意をしたとき等)があるため、個別の事案で会社が責任を負うかどうかは事実関係によります。社内の安全管理体制をどう組むかは、独自の飛行マニュアルを作るべきときと作り方で扱っている飛行マニュアルの「事故等が発生した場合の連絡体制」の項目とも関わります。

発注者との関係(民法第415条 債務不履行)

「債務者がその債務の本旨に従った履行をしないとき又は債務の履行が不能であるときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。ただし、その債務の不履行が契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして債務者の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。」(民法第415条第1項)

空撮や点検の業務を受けて飛ばしていて、発注者の設備を壊した、発注者の従業員にけがをさせた、といった場合には、契約の相手方との関係で債務不履行(第415条)が問題になり得ます。不法行為(第709条)とどちらで、どの範囲の責任が問題になるかは、契約で何を約束していたか(損害賠償の定めを含む)と事故の事実関係によって変わります。業務を受ける段階で、事故時の責任分担が契約書にどう書かれているかを確認しておく意味はここにあります。

機体の欠陥が原因の場合(製造物責任法)

製造物責任法第3条は、製造業者等が、引き渡した製造物の欠陥により他人の生命、身体又は財産を侵害したときに損害賠償の責任を負うと定めています。押さえておくべき点は次のとおりです。

  • 対象は「欠陥」が原因の場合に限られる。欠陥とは「当該製造物が通常有すべき安全性を欠いていること」で、製造物の特性、通常予見される使用形態、引き渡した時期などを考慮して判断される(第2条第2項)
  • 責任を負うのは製造業者等(製造・加工・輸入した者、製造業者として氏名等を表示した者など。第2条第3項)。操縦者の責任を定めた法律ではない
  • 損害がその製造物だけに生じたとき(機体が壊れただけ)は対象外(第3条ただし書)
  • 製造業者等が証明すれば責任を負わない免責事由がある(第4条)

操作ミスや確認不足が原因の事故は、製造物責任法の問題ではありません。なお航空法の側では、機体不具合による制御不能は重大インシデントとして報告の対象です(操縦ミスによる操縦不能は対象外)。

請求できる期間

請求の根拠知った時から行為・引渡しの時から
不法行為(民法第724条・第724条の2)損害及び加害者を知った時から3年。人の生命・身体を害する場合は5年不法行為の時から20年
製造物責任(製造物責任法第5条)損害及び賠償義務者を知った時から3年。生命・身体の侵害は5年引き渡した時から10年

刑事:過失傷害・過失致死・業務上過失致死傷

人にけがをさせた、あるいは死亡させた場合、刑法の過失犯の規定が問題になり得ます。いずれも現行の条文です。

罪名条文の要件法定刑
過失傷害(刑法第209条)過失により人を傷害した30万円以下の罰金又は科料。告訴がなければ公訴を提起できない(第2項)
過失致死(刑法第210条)過失により人を死亡させた50万円以下の罰金
業務上過失致死傷等(刑法第211条)業務上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた。重大な過失により人を死傷させた者も同様5年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金

第211条の「業務」が何を指すかは、刑法の条文には定義が置かれていません。ドローンの飛行がどのような場合に「業務上」に当たるのかについて、法令や国の公式資料での明示は確認できませんでした。どの罪に当たるか、そもそも罪が成立するかは、捜査機関と裁判所が個別の事実関係に基づいて判断することになります。

表記について:2025年6月1日施行の刑法改正で懲役と禁錮が一本化され、現行の条文は「拘禁刑」と表記されています。航空法第157条の6も同様に「拘禁刑」ですが、国土交通省の事故等報告ページとレベル4ポータルの運航ルールページには「2年以下の懲役」という旧表記が残っています。

刑法の罪は、航空法の罰則(第157条の6・第157条の10第2項)とは別の条文であり、民事の損害賠償とも手続きが別です。なお、報告要領は事故時の危険防止措置の一つとして「警察官への事故の概要の報告」を挙げています。

賠償責任保険と、許可・承認の審査

国土交通省の「無人航空機の飛行の安全に関する教則」(第5版・令和8年7月7日公布/令和8年7月14日適用)5.1.4(1)は、保険について次のように書いています。

「無人航空機を飛行させる場合、飛行中における航空機や他の無人航空機との接触又は衝突、落下等による地上の人又は物件との接触または衝突により、第三者に損害を与えることが想定され、その場合には当該損害を賠償することが求められることがある。このことから、無人航空機を飛行させる場合には、万一の場合に備え賠償能力を確保しておくことが望まれるが、その対応としては、損害賠償責任保険に加入しておくことが有効と考えられる。このことから国土交通省においては、加入している保険の確認など無人航空機を飛行させる者が賠償能力を有することの確認を、許可・承認の審査の際に行っている。」

同じ教則は、保険を「機体やカメラ自体の損傷に対する」機体保険と、「無人航空機を運航したことによっておこる損害に対する(対物・対人)」損害賠償責任保険に分けています。被害者への賠償に備えるのは後者です。

教則は2026年7月に第5版へ改訂され、改訂内容の筆頭に「保険の付保範囲拡大の反映(第2章 2.3.3)」が挙げられています。2.3.3「保険」の本文は、第4版では第三者賠償責任保険への加入が求められる飛行としてレベル3.5飛行だけを挙げていましたが、第5版では次のように書かれています。

「無人航空機の保険は、車の自動車損害賠償責任保険(自賠責)のような強制保険はなく、すべて任意保険であるが、万一の場合の金銭的負担が大きいので、保険に加入しておくとよい。(中略)なお、カテゴリーⅡ飛行のうち一部の飛行(総重量25kg以上の無人航空機を飛行させる場合又は3.1.2(2)4)c.レベル3.5飛行の場合)にあたっては、不測の事態が発生した場合に十分な補償が可能な第三者賠償責任保険に加入していることが求められる。」
(無人航空機の飛行の安全に関する教則 第5版 2.3.3)

総重量25kg以上の機体に第三者賠償責任保険を求める取扱い自体は、2025年10月1日からカテゴリーⅡ飛行の審査要領で始まっていたものです。第5版は、それを教則の本文にも書き入れました。任意保険である点は変わりませんが、25kg以上の機体を特定飛行で使う場合は、実質的に加入が前提になります。

許可・承認の手続きの中で保険がどう扱われているかは、次のとおりです。

場面公式の記載
カテゴリーⅡ飛行の許可・承認申請第三者賠償責任保険の内容(加入状況、保険会社名、商品名、補償金額)を記載。未加入の場合は「参考として」賠償能力の有無等を記載(審査要領 カテゴリーⅡ飛行)
総重量25kg以上の機体第三者の負傷や交通障害等の不測の事態が発生した場合に十分な補償が可能となる第三者賠償責任保険に加入していること(同 4-3-1(19)。令和7年10月1日以降に新たに申請する場合)。教則 第5版 2.3.3 も同じ内容を記載
カテゴリーⅢ飛行の許可・承認申請保険の内容を記載し、未加入の場合は賠償能力の有無等の情報を記載(審査要領 カテゴリーⅢ飛行)。教則は「適切な保険に加入するなど賠償能力を有することの確認を行うこととしている」と書く
飛行計画の通報通報事項に「無人航空機の事故等により支払うことのある損害賠償のための保険契約の有無及びその内容」がある(航空法施行規則第236条の83第1項第12号)

この記事で確認した国の公式資料には、補償額の相場や基準額は示されていません。教則はカテゴリーⅢ飛行について「飛行の形態に応じたリスク評価を行い、その結果に基づき、必要な保険に加入することが望ましい」としています。カテゴリーⅢ飛行そのものの要件は認証機体を買うか、許可・承認で回すかを、許可・承認申請の全体はドローンの飛行許可・承認申請 完全ガイドを参照してください。

事故が起きたら、その場でやる順番

条文と報告要領の記載を、現場での順番に並べ直すと次のようになります。

直ちに飛行を中止する。機体がまだ飛んでいれば、最寄りの安全に着陸できる場所に速やかに着陸させる
負傷者を救護する。救急車を要請し、到着までの間、可能な応急救護処置を行う。頭部のけがはむやみに動かさない。二次的な事故のおそれがあれば安全な場所へ移す
危険の拡大を防ぐ。火災なら消防へ連絡・消火活動。警察官に事故の概要(発生場所、負傷者数や負傷の程度、物件の損壊の程度等)を報告する
記録を残す。発生日時(分単位)、場所(周辺地図)、損壊の写真、飛行の目的と経路。報告には医師の診断書や写真を添付できる。飛行日誌の飛行記録にも安全に影響のあった事項を記載する(飛行日誌の書き方)
DIPSで国土交通大臣に速やかに報告する。重傷以上の死傷・第三者の物件の損壊は「事故」、軽傷は「重大インシデント」。迷ったら管轄官署に相談
社内・契約先・保険の確認。業務中なら会社の連絡体制に沿って報告し、発注者との契約の定めと、加入している賠償責任保険の契約内容を確認する
被害者との示談や刑事手続きへの対応など、法的な判断が必要な場面は弁護士に相談する
「軽いけがだから」「瓦のひびくらいだから」で報告を省かない:報告要領上、第三者の所有物の損傷は瓦のひび割れのような軽微なものまで「事故」、軽傷も「重大インシデント」として報告の対象です。また「人」には操縦者や関係者も含まれます。一方、所有者が同じ機体同士の衝突は「物件の損壊」に当たらないとされています。

事故を起こさないための事前の備えとしては、飛行経路の下に第三者が立ち入らないようにする措置が基本になります。現場での具体的な方法は立入管理措置とは。現場で実際に何をするのかで整理しています。

よくある質問

通行人に軽いけがをさせました。国への報告は必要ですか。
必要です。報告要領は、重傷以上の死傷を「事故」、それに至らない軽傷を「重大インシデント」として扱い、どちらも報告の対象としています。重大インシデントの報告義務は航空法第132条の91に定められています。救護についても、報告要領は「事故に該当する場合に限らず、必要と認められる場合には、所要の救護活動を行うべきである」としています。
100g未満のトイドローンで人にけがをさせた場合も、同じですか。
航空法の救護等の措置義務や事故報告義務は「無人航空機」(重量100グラム以上)が対象の規定です。一方、民法第709条(不法行為)や刑法第209条〜第211条の条文は、機体の重さを要件にしていません。航空法の義務がかからないことと、民事・刑事の責任の有無は別の問題です。
従業員が業務中に事故を起こしました。会社はどんな責任を負い得ますか。
民事では、民法第715条が、事業のために他人を使用する者は被用者が事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負うと定めています(選任・監督について相当の注意をしたとき等のただし書あり)。航空法の報告は操縦者ごとに行い、会社名で報告することもできます。なお、航空法の両罰規定(第159条第2号)の列挙には、救護等の措置義務違反(第157条の6)と事故報告義務違反(第157条の10第2項)は含まれていません。
点検業務の最中に、発注者の設備を壊してしまいました。
契約の相手方との関係では、債務不履行(民法第415条)が問題になり得ます。どの範囲で責任を負うかは、契約書の損害賠償の定めや事故の事実関係によって変わります。航空法の報告については、報告要領が「物件の損壊」を「第三者の所有物(人工物)を損傷させた場合」としています。発注者の設備がこれに当たるかは報告要領に明示がないため、判断に迷う場合は、報告要領のとおり管轄の官署に相談してください。
機体が突然制御不能になって落ちました。メーカーに責任はありますか。
製造物責任法第3条は、製造業者等が引き渡した製造物の「欠陥」により他人の生命、身体又は財産を侵害したときの責任を定めています。欠陥が原因であることが前提で、損害が機体だけに生じた場合は対象外です(第3条ただし書)。免責事由(第4条)もあります。航空法の側では、機体不具合による制御不能は重大インシデントとして報告の対象です。
報告すると、それを理由に処罰されるのではないかと心配です。
報告要領は、報告の目的を原因の究明と再発防止とし、「当事者に対しペナルティを科すことを目的としたものではない」と明記しています。一方で、事故の報告をしない又は虚偽の報告をすることは、それ自体が30万円以下の罰金の対象です(航空法第157条の10第2項)。
被害者から損害賠償を請求できる期間はありますか。
不法行為による損害賠償請求権は、損害及び加害者を知った時から3年(人の生命・身体を害する場合は5年)、又は不法行為の時から20年行使しないと時効によって消滅します(民法第724条・第724条の2)。
許可・承認を受けて飛ばしていれば、事故の責任は軽くなりますか。
航空法の救護等の措置義務と事故報告義務は、許可・承認の有無にかかわらず「飛行させる者」に課されます(許可・承認の有無で変わるのは報告先です)。民法第709条や刑法第209条〜第211条の条文も、許可・承認の有無を要件にしていません。責任の有無や程度は、個別の事実関係に基づいて判断されます。
本記事は2026年9月19日時点の情報です。 教則は第5版(令和8年7月7日公布/令和8年7月14日適用)で確認しています。条文はe-Gov法令検索の現行版(航空法は2025年12月1日施行版、刑法は2026年5月21日施行版、民法は2026年6月24日施行版)で確認しています。本記事は条文と公式資料の記載を説明するもので、個別の事故について責任の有無を判断するものではありません。具体的な事案については弁護士にご相談ください。

飛行前チェックリスト(無料)

航空法の特定飛行に当たるか、事故時の報告先や他法令の確認先はどこかを1枚で整理したPDFです。

チェックリストを受け取る