包括申請とは。個別申請との違いと、使い分けの判断基準
包括申請とは、同一の申請者が一定期間内に反復して飛行を行う場合、または異なる複数の場所で飛行を行う場合に、許可・承認をまとめて受ける運用です(許可・承認の審査要領2-1(3))。 有効期間は原則3か月以内、継続的に飛ばす場合は1年を限度としますが、DID上空・夜間・目視外を同時に行う場合はこの1年上限の対象外という括弧書きが審査要領に置かれています。 飛行経路を特定しない「全国包括」も可能ですが、航空局標準マニュアル02が前提で、標準マニュアル01との併用はできません。 そして「包括申請」という制度は法律にも省令にも存在しません。審査要領という通達上の運用です。 業務で反復飛行する事業者が押さえるべきは、この期間区分と、2025年12月18日施行の改正がもたらした「更新できない許可」の問題です。
あなたの飛行に、許可・承認は必要か
航空法の条文と国土交通省の資料に沿って、その場で判定します。入力は保存されず、どこにも送信されません。
判定はあくまで航空法の許可・承認についてのものです。電波法・小型無人機等飛行禁止法・自治体の条例・施設管理者のルールは別に確認が必要です。
審査要領 2-1(3) / 航空法・施行規則 全文検索審査要領 2-2-1(3)b(5-2、5-3及び5-4)包括申請の定義(審査要領2-1(3)の原文)
国土交通省の「無人航空機の飛行に関する許可・承認の審査要領(カテゴリーⅡ飛行)」2-1(3)は、次のように定めています。
読み取るべき要素は3つです。①主体が同一の申請者であること、②「反復」または「複数場所」であること、③「行わせることができる」という行政側の裁量的な運用であること。①から、複数の事業者の飛行を1件にまとめることはできません。②から、包括には期間包括(同じ場所を繰り返し飛ぶ)と場所包括(複数の場所を回る)の2方向があると分かります。
個別申請は、包括の枠に乗せられない飛行、すなわち特定の経路・日時を指定して1件ずつ出す申請です。両者は排他ではありません。包括申請を持つ事業者でも、経路の特定が必要な飛行が生じれば、その飛行を別途個別に申請します。
包括申請・一括申請・代行申請は3つとも別物
審査要領2-1は、包括申請の直前後で、似た名前の別概念を定義しています。検索でよく混ざる3語を分けておきます。
| 用語 | 何をまとめるのか | 典型例 |
|---|---|---|
| 包括申請 | 複数の飛行(期間内の反復飛行/複数の場所での飛行)をまとめる | 1年間、全国で、DID上空の空撮を反復する |
| 一括申請 | 1個の飛行に必要な複数の許可・承認事項をまとめる | 同じ飛行にDID上空の許可と夜間飛行の承認の両方が要る場合に1件で出す |
| 代行申請 | 複数の申請者の分をとりまとめて提出する | 複数の申請者の申請書をまとめて提出する形態 |
混同が実害になるのは「包括を取ったから必要な承認は全部入っているはずだ」という思い込みです。包括がまとめているのは飛行の回数と場所であって、許可・承認の事項そのものではありません。夜間飛行の承認を申請していなければ、包括の有効期間内でも夜間には飛ばせません。許可と承認の切り分けはドローンの飛行許可・承認申請 完全ガイドで条番号つきに整理しています。
有効期間は3か月か1年か──1年上限の例外
審査要領は、包括申請で期間および時間帯を記載する場合について次のように書いています。
末尾の括弧書きが、ほとんどの解説記事で落ちている部分です。審査要領の5-2は人口集中地区(DID)上空の飛行、5-3は夜間飛行、5-4は目視外飛行にそれぞれ対応する節です。つまり──
| 飛行の組み合わせ | 記載できる期間 | 年間の申請回数の目安 |
|---|---|---|
| DID上空のみ/夜間のみ/目視外のみ、あるいは2つまでの組み合わせ | 継続的に飛行させる場合は1年を限度 | 年1回 |
| DID上空・夜間・目視外を同時に行う | 原則3か月以内(1年上限の対象外) | 年4回 |
| 申請内容に変更が生じる見込みがある場合 | 原則3か月以内 | 変更のたび |
「申請内容に変更を生ずることなく」という条件も軽視できません。1年で申請したあとに機体を入れ替えたり操縦者を追加する予定が確実にあるなら、期間だけ1年にしても途中で変更申請が必要になります。機体更新のタイミングが読めているなら、その周期に申請の周期を合わせるほうが手戻りが少なくなります。
全国包括は可能。ただし標準マニュアル02が要る
飛行場所を「日本全国」として申請することは可能です。国土交通省は次のように明示しています。
ただし条件があります。飛行経路を特定しない申請では、航空局標準マニュアル02に沿った安全体制の設定が必要で、標準マニュアル01との併用はできません。標準マニュアル01は特定の場所を想定した内容、02は場所を特定しない運用を想定した内容です。
ここが事業者にとっての実質的な分岐点です。全国包括を取ると申請の頻度は下がりますが、日々の運用が標準マニュアル02の条件に縛られます。02の条件では回らない飛ばし方をする場合、独自の飛行マニュアルを作成して申請することになり、その分だけ審査が重くなります。「申請の手間」と「現場運用の自由度」のどちらを取るかという設計判断であって、全国包括が常に最適解ではありません。
飛行場所が全国の場合の申請先は、申請者の住所を管轄する地方航空局または空港事務所です。
全国包括ができない飛行(経路・日時の特定)
包括申請そのものは可能でも、飛行経路を特定せずに出すことができない飛行があります。さらにその中には、経路だけでなく日時まで特定しなければならないものがあります。
| 要求される特定の水準 | 該当する飛行 | 実務上の扱い |
|---|---|---|
| 経路を特定せずに申請できる | DID上空、夜間、目視外、人・物件から30m未満のうち、下記に当たらないもの | 全国包括が可能(標準マニュアル02が前提) |
| 飛行経路の特定が必要 | 空港等の周辺/地表・水面から150m以上/DID上空の夜間飛行/夜間の目視外飛行/補助者を配置しない目視外飛行/趣味目的/研究開発目的 | 全国包括の対象外。経路を指定して申請する |
| 飛行経路および日時の特定が必要 | DID上空での夜間の目視外飛行/催し場所上空 | 事実上の個別申請。日程が決まってから逆算する |
包括申請を持っていても、経路や日時の特定が必要な飛行については個別に申請手続が必要になります。「包括を取ってあるから当日でも飛ばせる」という運用は成り立ちません。イベント撮影(催し場所上空)を受ける事業者は、包括の有無にかかわらず、案件ごとに10開庁日前の期限が走ると考えてスケジュールを組む必要があります。
また、補助者を配置しない目視外飛行等で航空情報の発行が必要な場合は、別に「飛行を行う日の1開庁日前まで」に飛行内容を通知する手続があります(審査要領5-4(4))。許可申請の期限と混同しないでください。
包括申請には、法律にも省令にも根拠がない
ここは、包括申請を扱う記事でほとんど触れられていない事実です。
この違いは、実務上2つの帰結を生みます。
第一に、条文を検索しても根拠が見つからないのは正常です。社内の法務チェックや監査で「根拠条文を示せ」と言われた場合、示すべきは条文ではなく審査要領2-1(3)です。
第二に、通達の改正は法改正よりはるかに軽い手続で行われます。国会審議も政令改正も不要で、航空局が改正を公布すれば数日から数週間で施行されます。実際、2025年12月の改正は12月15日に公布が告知され、12月18日に施行されました。年単位の事業計画を包括申請の現行運用に依存させる場合、この速度を前提に織り込んでおく必要があります。
更新の窓と、毎年の更新をどう回すか
更新には、新規とは別枠の期限が設定されています。審査要領2-1(5)により、満了日の40開庁日前から10開庁日前までが更新申請の窓です。早すぎても遅すぎても受け付けられない設計になっています。
| 区分 | 提出のタイミング | 根拠 |
|---|---|---|
| 新規 | 飛行開始予定日の10開庁日前まで(土日・祝日を除く) | 審査要領2-1(1)b |
| 実務上の推奨 | 飛行開始予定日から3〜4週間程度の余裕をもって申請 | 国土交通省 飛行許可・承認手続ページ |
| 更新 | 満了日の40開庁日前から10開庁日前まで | 審査要領2-1(5) |
「40開庁日前」は暦日ではありません。土日祝日を除いて数えるため、おおむね満了日の2か月前あたりから窓が開くという感覚になります。年末年始や大型連休をまたぐ場合は、窓の開始日が数日ずれます。
年1回の更新を、担当者が変わっても落とさない仕組み
反復飛行を業務にする事業者にとって、包括申請は「取得するもの」ではなく「回し続けるもの」です。更新を落とせば、その日から特定飛行が止まります。次の手順を社内の運用に落としておくと、担当者の異動があっても切れません。
そして、包括申請を持っていても飛行のたびに残る義務があります。申請と一体で運用に組み込まないと、許可はあるのに法令違反という状態が生まれます。
| 飛行のたびに必要なこと | 内容 | 根拠条文 |
|---|---|---|
| 緊急用務空域の確認 | 飛行を開始する前に、飛行させる空域が緊急用務空域に該当するか否かを確認しなければならない。他の許可があっても緊急用務空域では飛ばせない | 施行規則第236条の71第4項 |
| 飛行計画の通報 | あらかじめ電磁的方法で通報する(実務上はDIPS2.0の飛行計画通報機能)。他の機体の飛行計画を確認したうえで通報し、日時・経路・高度がすべて重複する場合は飛行中止または当事者間で調整する | 航空法第132条の88第1項、規則第236条の83 |
| 飛行日誌の記載 | 飛行記録・日常点検記録・点検整備記録を機体ごとに備え、飛行のつど記載する。飛行時は紙または電磁的記録で常時携行する | 航空法第132条の89第1項、規則第236条の84 |
飛行計画の所要時間は最大24時間とされ、これを超える部分は別途の飛行計画として通報します。包括申請の有効期間が1年あることと、飛行計画を1回通報すれば足りることは、まったく別の話です。
2025年12月18日改正:更新できない許可が発生した
2026年時点で、包括申請の実務に最も大きな影響を与えているのがこの改正です。国土交通省は2025年12月15日、飛行許可・承認手続ページのお知らせ欄で次のように告知しました。「…許可・承認の申請手続の一部を省略可能としていた『ホームページ掲載無人航空機』及び『ホームページ掲載講習団体等が行う技能認証』に係る運用を廃止する旨の改正内容を公布しましたのでお知らせします。なお、施行は令和7年12月18日となります。」
廃止されたのは、実際には3つです。
| 省略の対象 | 改正前に使えたもの | 2025年12月18日以降 |
|---|---|---|
| 機体に関する資料の一部省略 | 型式認証機・機体認証機 または「ホームページ掲載無人航空機」 | 型式認証機・機体認証機のみ |
| 操縦者に関する資料の一部省略 | 無人航空機操縦者技能証明 または「民間技能認証」 | 無人航空機操縦者技能証明(国家資格)のみ |
| 安全体制を示す飛行マニュアル | 標準マニュアル または「航空局ホームページに掲載されている団体等が定める飛行マニュアル」、リスク評価ガイドラインに基づくもの、その他 | 標準マニュアル、リスク評価ガイドラインに基づくもの、その他(団体の飛行マニュアルは対象外) |
3つ目の「団体等が定める飛行マニュアル」の廃止は、告知の見出しに書かれていないため見落とされやすい項目です。所属団体の飛行マニュアルを添付して包括申請を回してきた事業者は、標準マニュアル(01または02)か、自作の飛行マニュアルに切り替える必要があります。
現行の審査要領(令和8年9月29日最終改正)全体を通して、「ホームページ掲載」「技能認証」「講習団体」「民間」といった語は使われていません。省略が認められる範囲は国家資格・国家認証に限定されました。民間ライセンスの利点として残るのは、登録講習機関の経験者コースによる講習時間の減免であって、許可申請の省略ではありません。
包括か個別かの判断フロー
自分で回すか外に出すかの判断軸はドローンの飛行許可、自分で申請するか依頼するか、費用が何に対する対価なのかはドローン申請の費用相場は何に対する対価か、誰であれば適法に受任できるのかはドローンの飛行許可、2026年からは誰に頼めば適法なのかで整理しています。