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災害対応でドローンを飛ばす。捜索救助の特例と緊急用務空域

公開 2026-10-12 更新 2026-10-12 読了 約18分

災害時のドローンには、正反対の向きに働く2つの制度があります。ひとつは捜索救助の特例(航空法第132条の92)で、飛行禁止空域も飛行の方法も、飛行計画の通報も飛行日誌も、丸ごと適用されなくなります。もうひとつは緊急用務空域で、こちらは許可を持っていても飛べません。 この2つは、同じ被災地で同時に成立します。捜索救助のヘリが飛ぶために空域が閉じられ、その閉じた空域を、特例の対象になる主体だけが飛べる——という構造です。 そして両者の境界にいるのが自治体から依頼を受けた民間事業者です。特例は「災害だから誰でも自由に飛ばせる」制度ではなく、主体・目的・緊急性の3つがそろって初めて成立する制度です。教則は「国や地方公共団体にかかわらない独自の活動にあっては、特例の対象とはならず」と明記しています。 この記事は、条文と省令と通達で特例の輪郭を確定させ、そのうえで「特例が使えないとき、災害時に何ができるか」まで整理します。人命に関わる領域なので、公式に書かれていないことは書かれていないと明示します。

よく見る説明と、公式の記載
災害対応は人命に関わるうえ、条文が令和4年12月の改正で第132条の3から第132条の92へ移っているため、古い条番号や緩い理解が広く流通しています。この記事で扱う範囲について、一次ソースの記載と突き合わせます。
よく見る説明災害時なら、ドローンは許可・承認なしで自由に飛ばせる。
公式にはこう特例の主体は都道府県警察・国・地方公共団体と、これらの依頼により捜索若しくは救助を行う者に限られます。教則第5版は「災害時の対応であっても、国や地方公共団体にかかわらない独自の活動にあっては、特例の対象とはならず、国の飛行の許可・承認などの手続き等が必要となる」としています。
出典 法第132条の92/規則第236条の88・第236条の89/教則第5版 3.1.2(2)3)a
よく見る説明緊急用務空域も、飛行許可を持っていれば飛べる。
公式にはこう「空港等の周辺の空域、地表若しくは水面から150m以上の高さの空域又は人口集中地区の上空の飛行許可があっても、緊急用務空域を飛行させることはできない」。国土交通省のQ&Aは、包括許可を含めて飛べないことと、関係機関から中止の指示があるかないかによらず違反の対象になることを明記しています。
出典 教則第5版 3.1.2(2)1)b/緊急用務空域Q&A A.3
よく見る説明災害時は忙しいので、飛行計画の通報は飛んだ後でよい。
公式にはこう事後の通報が認められる「あらかじめ通報することが困難な場合」は、省令で「飛行計画に係るシステムに障害が発生したことにより、飛行を開始するまでの間において飛行計画を通報する手段のない場合」と定められています。多忙や緊急性は、この場合に含まれていません。ただし特例の対象になる飛行では、通報義務そのものが適用されません。
出典 法第132条の88第1項ただし書/規則第236条の83第4項・第5項

捜索救助の特例を条文で読む。主体と目的

まず条文そのものを見ます。航空法第132条の92は、たった一文です。

「第百三十二条の八十五、第百三十二条の八十六(第一項を除く。)及び第百三十二条の八十七から第百三十二条の八十九までの規定は、都道府県警察その他の国土交通省令で定める者が航空機の事故その他の事故に際し捜索、救助その他の緊急性があるものとして国土交通省令で定める目的のために行う無人航空機の飛行については、適用しない。」

読み取るべき要素は3つです。①誰が(主体)②何のために(目的)③何が適用されなくなるか(効果)。主体と目的は、どちらも国土交通省令=航空法施行規則に投げられています。

主体は4種類。条文と省令に分かれて書かれている

法文が直接書いているのは都道府県警察だけです。残りは施行規則第236条の88にあります。

規則第236条の88(全文)
「法第百三十二条の九十二の国土交通省令で定める者は、国若しくは地方公共団体又はこれらの者の依頼により捜索若しくは救助を行う者とする。」

つまり特例の主体は、次の4つです。

  • 都道府県警察(法第132条の92が直接規定)
  • 国(規則第236条の88)
  • 地方公共団体(同)
  • 国又は地方公共団体の依頼により捜索若しくは救助を行う者(同)

解釈通達(無人航空機に係る規制の運用における解釈について)の8.と、運用ガイドラインの2.は、国・地方公共団体・その依頼を受けた者の3つだけを列挙しています。都道府県警察が抜けているのは、それが法文に直書きされていて省令の対象ではないからです。列挙の粒度が違うだけで、内容の食い違いではありません。

目的は「捜索又は救助」。ただし中身は通達で大きく広がる

規則第236条の89も一文です。「法第百三十二条の九十二の国土交通省令で定める目的は、捜索又は救助とする。」

これだけ読むと「行方不明者を捜す」「遭難者を助ける」に限られそうに見えます。ところが解釈通達8.は、この「捜索又は救助」を次のように定義しています。

「本規定における『捜索又は救助』とは、事故や災害の発生等に際して人命や財産に急迫した危難のおそれがある場合において、人命の危機又は財産の損傷を回避するための措置(調査・点検、捜査等の実施を含む。)を指しており、当該措置をとることについて緊急性がある飛行については、本特例が適用されることとなる。」

ここが実務上もっとも重要です。「調査・点検、捜査等の実施を含む」と明記されているため、人を直接捜していなくても、人命の危機や財産の損傷を回避するための調査であれば対象になり得ます。さらに解釈通達は、大規模災害時の具体例を挙げています。

通達・教則が挙げる飛行位置づけ
被災者の捜索又は救助 特例の中核。文言どおりの適用
被災地の孤立地域等への医薬品、衛生用品、食料品、飲料水等の生活必需品の輸送 「多数の道路の寸断や集落の孤立が発生する可能性がある」ことを理由に、特例に該当する飛行として取り扱うものとされています
危険を伴う箇所での調査・点検 同上。人が立ち入れない箇所の状況確認がここに入ります
住民避難後の住宅やその地域の防犯対策のための飛行 同上。「財産の損傷を回避するための措置」として明記されています
震災発生に伴う仮設住宅建設予定調査 教則第5版が、国土交通省ホームページの参考資料に示された具体的な適用事例として挙げています
獣害を未然に防ぐための飛行 同上。適用事例の資料は熊の事例を示し「当該特例は熊に限らず、人命に危難のおそれのある獣害全般に適用される」としています
運用ガイドラインは「人命の危機(災害関連死を含む)」と書いています。 令和6年11月29日最終改正の運用ガイドライン2.は、解釈通達と同じ定義を置きながら「人命の危機(災害関連死を含む)」と括弧書きを加えています。解釈通達と教則第5版にはこの括弧書きがありません。矛盾ではなく、ガイドラインのほうが明示的という関係です。避難生活の長期化による災害関連死を回避するための飛行——たとえば仮設住宅の建設予定地調査——が特例に入る根拠がここにあります。

「緊急性がある」の定義は、申請の手段又はいとまがないこと

主体と目的を満たしても、それだけでは足りません。解釈通達と運用ガイドラインは、どちらも「緊急性がある」ことを要件として挙げ、その意味を注で定義しています。

「緊急性がある場合とは、飛行の許可・承認申請の対応窓口への申請を行う手段又はいとまがない状況であること。」 これが特例の最後の関門です。裏返すと、申請できる手段があり、申請する時間的余裕もあるなら、特例ではなく通常の許可・承認で飛ぶべきということになります。災害の規模や社会的な重大性ではなく、その時点で申請できたかで線が引かれています。

この線引きは、抽象論ではありません。国土交通省航空局が公開している適用事例の資料には、特例を使わずに飛んだ事例が含まれています。台風10号の大雨災害で被災箇所を調査した事例は、見出しが「特例を適用することも想定される事例」となっており、本文はこう書いています。

「実際の飛行においては、当該特例を適用することなく、自治体からの要請に基づき、飛行計画の通報を行った上で飛行が行われたところ。」
「例えば、土砂崩れ等が発生し、人命等に危難のおそれがある地域において、被災状況の全容把握や二次災害防止のための調査を行う場合で、かつ申請する暇がない場合にあっては、自治体からの依頼により、当該特例を適用の上、有志で結成された団体が無人航空機により調査を実施することが可能。」

同じ災害、同じ目的、同じ主体でも、申請する余裕があったかどうかで特例に乗るか乗らないかが変わるという実例です。そして国土交通省自身が、特例に乗らずに飛行計画の通報だけで飛んだケースを「そういうものだ」と紹介しています。災害時だから特例、という自動的な当てはめはできません。

「手段がない」ほうも要件のひとつ

注の文言は「申請を行う手段又はいとまがない」です。通信が途絶して申請の手段がない場合も、時間的余裕がない場合も、どちらも該当し得ます。ただし後述するとおり、審査要領は災害時に電話や電子メールでの申請を認めており、執務時間外でも管轄事務所に電話で連絡を入れるルートを用意しています。「手段がない」と言えるかどうかは、このルートが使えたかどうかで判断されることになると読めますが、この点を明示した公式の記述は確認できていません。

特例で消える義務と、消えない義務

効果の範囲は、条文の列挙で機械的に決まります。運用ガイドライン1.は、その範囲を条文単位で書き出しています。

「…無人航空機の飛行の禁止空域(航空法第132条の85)、飛行の方法(航空法第132条の86(第1項を除く。))、第三者が立ち入った場合の措置(航空法第132条の87)、飛行計画(航空法第132条の88)及び飛行日誌(航空法第132条の89)に関する規定の適用を除外していることに留意する必要がある。」
項目根拠条文特例が適用されると
飛行禁止空域
(空港等周辺・緊急用務空域・150m以上・DID上空)とその許可
法第132条の85 適用されない。許可が不要になり、緊急用務空域の飛行禁止も及びません
立入管理措置・安全確保措置 法第132条の85
第1項・第3項
適用されない(条文ごと除外されるため)
技能証明・機体認証を要件とする仕組み 法第132条の85第1項
法第132条の86第2項
これらを要件とする条文自体が働かなくなります。ただしこの点を明示した公式の解説は確認できていません
夜間・目視外・30m未満・催し場所上空・危険物輸送・物件投下とその承認 法第132条の86
第2項〜第5項
適用されない。承認は不要になります
アルコール又は薬物の影響下での飛行禁止 法第132条の86
第1項第1号
残ります
飛行前の確認 法第132条の86
第1項第2号
残ります
航空機・他の無人航空機との衝突予防(降下等) 法第132条の86
第1項第3号
残ります。捜索救助のヘリが飛ぶ現場でこれが効きます
他人に迷惑を及ぼす方法での飛行禁止 法第132条の86
第1項第4号
残ります
飛行中に人の立入りを確認したときの措置 法第132条の87 適用されない
飛行計画の通報 法第132条の88 適用されない
飛行日誌 法第132条の89 適用されない
事故の報告(人の死傷・物件の損壊・航空機との衝突接触)と事故時の措置 法第132条の90 残ります。第132条の92の列挙に入っていません
重大インシデントの報告 法第132条の91 残ります。同じ理由です
機体の登録・登録記号の表示・リモートID 法第132条の2以下 残ります。同じ理由です
「第132条の85〜89が適用外」という要約は、1か所ずれます。 除外されるのは「第132条の85、第132条の86(第1項を除く)、第132条の87から第132条の89まで」です。第132条の86第1項は除外されません。アルコール・飛行前確認・衝突予防・迷惑飛行の4つは、特例の下でも義務として残ります。そして事故報告(第132条の90)と重大インシデント報告(第132条の91)も残ります。特例は「記録も報告もいらない制度」ではありません。
適用除外は、安全確保の責務を解除するものではありません。 運用ガイドライン1.は「特例適用者が第一義的に負っている安全確保の責務を解除するものではなく」「特例適用者の責任において、その飛行により航空機の航行の安全並びに地上及び水上の人及び物件の安全が損なわれないよう許可等を受けた場合と同程度の必要な安全確保を自主的に行って、無人航空機を飛行させる必要がある」としています。さらに注1で「航空法第132条の92の適用を受ける場合であっても、航空の危険を生じさせる行為等の処罰に関する法律(昭和49年法律第87号)の規定は適用される」と明記しています。

特例適用者に残る、ガイドライン上の手続き

法律上の義務ではありませんが、運用ガイドライン3.(1)は、特例適用者が空港等周辺・緊急用務空域・150m以上の高さ(法第132条の85第1項第1号の空域)を飛ばす場合の手順を定めています。

空港等の管理者又は空域を管轄する関係機関と調整する
当該空域の場所を管轄する空港事務所に電話したうえで、電子メールなどにより通知する
通知するのは、a飛行目的(例:山岳救助(滑落者の捜索))b飛行範囲(所在地・緯度経度)c最大の飛行高度(地上高・海抜高)d飛行日時(終了時刻未定ならその旨)e機体数 f機体諸元 g飛行の主体者の連絡先 h飛行の依頼元(依頼に基づく場合)
この通知に基づき航空局が航空情報を発行し、空港等の管理者等が航行する航空機に対し安全上の必要な措置を行う
法第132条の85第1項第1号の空域以外で飛ばす場合は、空港事務所等への通知は不要

hの「飛行の依頼元」の例として挙げられているのは「○○県△△消防局」です。依頼に基づく飛行では、依頼元を事案ごとに特定して伝える前提になっていることが読み取れます。

ガイドラインはこのほか、飛行空域を監視して航空機を確認したときは飛行を中止させ又は十分な距離を保つこと(3.(2))、審査要領を参考に目的に応じた飛行マニュアルを定めておくことが望ましいこと(4.)、大規模災害時は現地災害対策本部等を通じて飛行の日時・場所を調整することが望ましいこと(5.)を挙げています。4.と5.はいずれも「望ましい」「期待される」という書き方で、義務ではありません。

民間事業者は「依頼を受けた者」に当たるのか

ここが、この記事を読む方の多くにとって本題でしょう。結論から言えば、条文の文言上は入ります。規則第236条の88が「これらの者の依頼により捜索若しくは救助を行う者」と書いており、主体を公的機関に限定していません。教則第5版も「国や地方公共団体又はこれらから依頼を受けた者が」と書いています。

そして国土交通省航空局は、民間事業者が特例で飛んだ事例を公表しています。「航空法第132条の92の特例適用の対象となり得る事例」という資料に、次の事例が載っています。

事例実施者と依頼元資料の記載
仮設住宅建設予定地調査
(能登半島地震)
イームズロボティクス株式会社
依頼元:地方自治体
「地方自治体からの依頼により、民間事業者が無人航空機の飛行を実施」。避難生活の長期化による災害関連死を防ぐため早急に仮設住宅を建設する必要があった、と理由が書かれています
港湾施設の被災状況確認
(能登半島地震)
いであ株式会社
依頼元:国
「国からの要請により、民間事業者が無人航空機の飛行を実施」。令和6年1月2・3・4日、金沢港・七尾港・輪島港
河川災害の被災箇所調査
(能登半島地震)
株式会社国土開発センター
依頼元:国
立ち入ることが困難、若しくは立ち入ることにより作業員の人命に危険が及ぶ区域の調査。目視内飛行に限定し、補助者を配置
台風による大雨災害の
被災箇所調査
高校生ドローン防災航空隊
依頼元:自治体
「特例を適用することも想定される事例」。実際は特例を使わず、自治体からの要請に基づき飛行計画の通報を行ったうえで飛行
獣害を未然に防ぐ飛行
(市街地への熊の侵入)
一般社団法人秋田県ドローン協会
依頼元:地方自治体
赤外線を使用した行動範囲調査。「目視外や夜間等における飛行では、原則として国土交通大臣の許可・承認を得たうえで飛行させる必要があるものの、本特例を適応し、飛行許可・承認なしでドローンを飛行させることができた」

公表されている5事例のうち4件が民間事業者・民間団体で、依頼元が国または自治体です。民間事業者が「依頼を受けた者」として特例の主体になり得ることは、公式資料で裏づけられていると言えます。

一方で、「協定を結んでいること」が「依頼」に当たるかは、公式には明示されていません。 自治体とドローン事業者・団体が災害時応援協定を結ぶ例は増えていますが、協定の存在そのものを第132条の92の「依頼」と評価した公式資料は確認できませんでした。公式資料から読み取れるのは、①運用ガイドラインが通知項目に「飛行の依頼元(依頼に基づく場合)」を置き、事案ごとに依頼元を特定する前提を取っていること、②適用事例がいずれも「依頼元:国」「依頼元:地方自治体」とその事案の依頼元を記載していること、③教則第5版が「国や地方公共団体にかかわらない独自の活動にあっては、特例の対象とはならず」としていることです。
ここから安全側に設計するなら、協定は平時の枠組み、依頼は事案ごとの発動と分けて考え、出動のたびに誰からどの目的で依頼されたかを記録に残せる形にしておくのが無理のない運用です。協定の文面と発動手順が特例の要件を満たすかは、締結先の自治体と所管の航空局・空港事務所に事前に確認してください。
自治体が委託先の飛行について代行申請する道もあります。 特例に乗らない場合の話ですが、審査要領2-1(1)(4)は「飛行の委託を行っている者が受託者の飛行について行う場合の申請は、飛行の委託を行っている者に、代行して行わせることができる」としています。平時に自治体側で許可・承認を取っておく設計も、選択肢として条文上あり得ます。反復・複数箇所の申請の考え方は包括申請とは。個別申請との違いと、使い分けの判断基準で整理しています。

緊急用務空域。許可があっても飛べない空域

ここから、特例とは向きが逆の制度に移ります。緊急用務空域です。

根拠は施行規則第236条の71第1項第4号で、法第132条の85第1項第1号の「国土交通省令で定める空域」の一類型として置かれています。条文はこうです。

「国土交通省、防衛省、警察庁、都道府県警察又は地方公共団体の消防機関その他の関係機関の使用する航空機のうち捜索、救助その他の緊急用務を行う航空機の飛行の安全を確保する必要があるものとして国土交通大臣が指定する空域(以下「緊急用務空域」という。)」

そして同条第2項が「国土交通大臣は、前項第四号の規定による指定をしたときは、インターネットの利用その他の適切な方法により、その旨及び当該指定に係る緊急用務空域を公示しなければならない」と定め、第3項で変更・解除にも準用しています。

飛行許可を持っていても飛べません。 教則第5版は「空港等の周辺の空域、地表若しくは水面から150m以上の高さの空域又は人口集中地区の上空の飛行許可があっても、緊急用務空域を飛行させることはできない」としています。国土交通省の緊急用務空域Q&Aはさらに踏み込み、包括許可を含めて飛べないことと、「緊急用務者等関係機関等から飛行中止の指示があるかないかによらず、当該空域での飛行を継続させた場合、航空法違反の対象となります」と明記しています。誰にも止められなかったことは、理由になりません。

確認方法。国土交通省のホームページとX

公示の方法は、教則第5版とQ&Aがそろって「国土交通省のホームページ・X(旧Twitter)」としています。Xのアカウントは@mlit_mujinkiです。掲載先は無人航空機(ドローン・ラジコン機等)の飛行ルールのページで、指定がある場合は市区町村名と「令和◯年度緊急用務空域公示第◯号」、指定空域の詳細資料が掲載される運用です。

2026年9月27日時点では、同ページに「現在、緊急用務空域は指定されていません。」と記載されています。指定は「災害等の規模に応じ、その都度」行われるため、平時に見て何もないことは、出動時に何もないことを意味しません。なお同日時点で、DIPS2.0のポータルトップにも「【お知らせ】緊急用務空域に関する情報について(現在:指定空域なし)」という掲示があり、詳細は航空局のページへ案内されています。

規制の対象は100g以上に限りません。 Q&A A.1は「※規制対象は100g以上の無人航空機に限らず、すべての機体が対象です」としており、教則第5版も「(重量100グラム未満の模型航空機も飛行禁止の対象となる)」と書いています。登録の対象外である100g未満の機体も、緊急用務空域では飛ばせません。

飛行開始前の確認義務と、飛行中に指定されたとき

規則第236条の71第4項は「無人航空機を飛行させる者は、その飛行を開始する前に、当該無人航空機を飛行させる空域が緊急用務空域に該当するか否かの別を確認しなければならない」と定めています。該当しないことを確認する行為そのものが義務である点に注意してください。

問題は、飛行中に指定された場合です。Q&A A.3は「無人航空機を飛行させる者(航空法第132条の92の適用を受けて無人航空機を飛行させる者を除く。)は、飛行エリアに新たに『緊急用務空域』が指定された場合、速やかに飛行を中止させる必要があります」としています。そして A.4 が運用の設計を示しています。

「飛行中、操縦者は飛行に専念することが求められることから、補助者・運航管理部門が「緊急用務空域」の設定等の情報を収集し、トランシーバー等により操縦者に対して必要な指示・助言を与えるようにしてください。」「合わせて、必要に応じ飛行マニュアルに位置付けることを検討してください。」(緊急用務空域Q&A A.4)

つまり公式が想定しているのは、操縦者ではない誰かが指定情報を監視し続ける体制です。災害直後に飛ばす運用では、ここを人員配置として先に決めておく価値があります。独自の飛行マニュアルの作り方は独自の飛行マニュアルを作るべきときと作り方で扱っています。

法令ではない「飛行自粛要請空域」もあります。 教則第5版 3.2.4は「法令等に基づく規制ではないが、警備上の観点等から警察などの関係省庁等の要請に基づき、国土交通省が無人航空機の飛行自粛を要請することがある」としています。公示先は緊急用務空域と同じくホームページとXで、「飛行を開始する前に、当該空域が飛行自粛要請空域に該当するか否かの別を確認し、その要請内容に基づき適切に対応すること」とされています。第5版で「飛行自粛空域」から「飛行自粛要請空域」に表記が変わりました。
加えて、緊急用務空域が指定されていない段階でも、国土交通省は「災害等の発生している地域では、捜索、救難活動等の緊急用務を行う有人機(ヘリコプターなど)が飛行する可能性がありますので、まずは有人機の災害活動の妨げにならないよう、当該地域でのドローン・ラジコン機等の飛行は控えてください」と案内しています。

緊急用務空域をどうしても飛ぶ必要があるとき

特例の主体でない者が緊急用務空域を飛ぶには、あらためて許可を取るしかありません。Q&A A.3は「なお、飛行の目的が『災害等の報道取材やインフラ点検・保守など、「緊急用務空域」の指定の変更又は解除を待たずして飛行させることが真に必要と認められる飛行』に限り、新たに国土交通大臣の飛行許可を取得してください」としています。

この「真に必要」の中身は、審査要領(カテゴリーⅡ飛行)の5-1(2)c)にあります。追加基準は7項目です。

#審査要領 5-1(2)c) の追加基準
①「災害時等の報道取材やインフラ点検・保守など、緊急用務空域の指定の変更又は解除を待たずして飛行させることが真に必要と認められる飛行であること。」
②飛行の際には、空港事務所及び緊急用務空域を飛行する航空機の運航者等の関係機関と常に連絡がとれる体制を確保すること
③飛行経路全体を見渡せる位置に、航空機及び無人航空機の飛行状況・気象状況の変化等を常に監視できる補助者を配置し、助言を行わせること
④飛行経路上及びその周辺の空域で、飛行中の航空機及び法第132条の92の適用を受けた無人航空機の接近を確認した場合には直ちに地上に降下させるなどし、衝突のおそれがないことを確認できるまでは飛行させないこと
⑤空港事務所又は関係機関から飛行の中止又は飛行計画(飛行日時・経路・高度等)の変更等の指示がある場合には、それに従うこと
⑥関係機関から飛行に係る情報の提供(飛行の開始・終了の連絡等)を求められた場合には報告すること
⑦第三者に対する危害を防止するため、原則として第三者の上空で飛行させないこと。飛行経路の直下及びその周辺に第三者が立ち入った場合には、飛行の中止又は飛行計画の変更等を行うこと

④は読み飛ばしやすいのですが、制度の設計思想がここに出ています。許可を得て緊急用務空域を飛ぶ者と、特例で飛ぶ者が同じ空域に併存することが前提になっていて、その場合に譲るのは許可側だと書かれているわけです。

緊急用務空域の許可は、期間で取ることができません。 審査要領3-3は、許可等の期間を原則3か月以内、継続的に飛行させることが明らかな場合は1年を限度としつつ、「ただし、5-1に掲げる緊急用務空域を飛行させる場合は、真に必要な日時又は期間及び時間帯に限り許可を行うものとする」としています。包括申請で前もって押さえておく、という設計はできません。指定されてから、その都度取ることになります。

さらに5-1(3)により、緊急用務空域を含む法第132条の85第1項第1号の空域の申請では航空情報の発行手続きが必要で、飛行を行う日の前日までに管轄事務所長等へ飛行日時・経路(緯度経度と所在地)・高度(下限と上限の海抜高度)・機体数・機体諸元を通知する体制の構築が求められます。申請先も、DID上空や飛行の方法の承認とは異なり、飛行を行おうとする場所を管轄する空港事務所長です。

災害時の緊急申請。電話と電子メール

通常、許可・承認の申請は飛行開始予定日の10開庁日前までに書面又はDIPS2.0で提出します。災害対応でこの日数が確保できるはずもなく、審査要領2-1(1)c)はその例外を置いています。

「a)及びb)の規定にかかわらず、緊急を要するものについては、以下の区分により電話、電子メールなどで申請させることができる。なお、後日、申請書を所定の提出先に提出させるものとする。」
「また、緊急を要する場合の夜間等の執務時間外における申請については、管轄事務所に電話で連絡を入れさせること。当該申請については、その後、国土交通省航空局安全部無人航空機安全課、地方航空局保安部運航課又は空港事務所の担当者が申請者宛てに電話等で連絡を行うことにより、必要な内容を聞き取った上で、許可等の可否を判断するものとする。」
ルート使える場合(審査要領2-1(1)c))
(ア)
電話による申請
「事故及び災害」が災害対策基本法第2条第1号の「災害」にあたる場合又はこれに類する場合で、かつ緊急に支援活動をする必要がある場合
(イ)
電子メール等による申請
・事故及び災害に際して緊急に支援活動をする必要がある場合
・事故及び災害の報道取材のため緊急を要する場合
・その他特に緊急を要する場合

電話のほうが要件が絞られていて、災害対策基本法第2条第1号の「災害」という具体的な参照が入っています。その定義は「暴風、竜巻、豪雨、豪雪、洪水、崖崩れ、土石流、高潮、地震、津波、地盤の液状化、噴火、地滑りその他の異常な自然現象又は大規模な火事若しくは爆発その他その及ぼす被害の程度においてこれらに類する政令で定める原因により生ずる被害」です。

口頭で許可が出ることがあります。 審査要領3-1は「電話、電子メールなどによる申請を受理した場合には、口頭により許可等の処分を行うことができる。口頭により許可等を行う場合には、速やかに申請者に対し許可書又は承認書を交付するものとする」としています。教則第5版もこれを前提に、特定飛行の際に携行するものとして「許可書又は承認書の原本又は写し(口頭により許可等を受け、まだ許可書又は承認書の交付を受けていない場合は許可等の年月及び番号を回答できるようにしておく。)」と書いています。口頭で許可を受けたら、その年月と番号を現場で答えられるようにしておく——これが公式に求められている運用です。

なお、申請書の「飛行の目的」には「事故・災害対応等」という区分があり、例示は「土砂崩れ等の被害調査、山岳救助、水難者捜索、被災者捜索、火災の原因等の調査、交通事故現場検証 等」です。報道取材と物資輸送は別の区分になります。許可・承認の全体像はドローンの飛行許可・承認申請 完全ガイドを、差戻しの回避はDIPS2.0で差戻しになる原因と、その直し方をご覧ください。

飛行計画の通報を「後で」にできる場合は、省令で1つだけです。 法第132条の88第1項ただし書は事後の通報を認めていますが、その「あらかじめ飛行計画を通報することが困難な場合」は規則第236条の83第5項で「飛行計画に係るシステムに障害が発生したことにより、飛行を開始するまでの間において飛行計画を通報する手段のない場合」と定められています。同条第4項により、その場合も「当該特定飛行の開始後速やかに」通報しなければなりません。現場が忙しいこと、緊急であることは、省令の文言に入っていません。特例の対象になる飛行では通報義務そのものが適用されませんが、特例に乗らない飛行では原則どおりです。通報の考え方はドローンの飛行計画の通報はいつ必要かで整理しています。

航空法の外に残るもの

小型無人機等飛行禁止法は、航空法の特例では外れない

第132条の92は航空法の条文だけを適用除外にします。他の法律には届きません。災害対応でとくに当たりやすいのが小型無人機等飛行禁止法です。この法律にも独自の適用除外があり、第10条第2項の第3号が「国又は地方公共団体の業務を実施するために行う小型無人機等の飛行」を挙げています。

ただし、事前通報は外れません。 同条第3項は、第2項の適用除外に当たる飛行を行おうとする者に対し「あらかじめ、その旨を当該小型無人機等の飛行に係る対象施設周辺地域を管轄する都道府県公安委員会及び(施設の区分に応じて)皇宮警察本部長・管区海上保安本部長・当該対象施設の管理者に通報しなければならない」と定めています。国・地方公共団体の業務として飛ぶ場合でも、通報は必要です。通報の期限と方法は小型無人機等飛行禁止法の事前通報。48時間前と公安委員会で、対象施設と2026年7月の距離拡大は小型無人機等飛行禁止法。おおむね300mから1,000mへ拡大された2026年7月改正で扱っています。
なお、民間事業者が自治体の依頼で飛ぶ場合に、それが「国又は地方公共団体の業務を実施するために行う」飛行に当たるかを明示した公式資料は確認できませんでした。原子力事業所や自衛隊施設の周辺が絡む災害では、この点を警察(都道府県公安委員会)と施設管理者に事前に確認してください。違反には拘禁刑又は罰金の定めがあります(同法第13条第1項)。

屋内は航空法の外。避難所などの整理に使える

解釈通達9.は「建物内等の屋内での飛行については、航空法上の各規制は適用されない」としています。体育館などの屋内で飛ばす場合は、そもそも特例を持ち出す必要がありません。ただし施設管理者の承諾や労働安全衛生上の措置は別に残ります。

被災した事業者側の救済措置。令和8年熊本地震の例

災害は、飛ばす側の資格や登録にも影響します。国土交通省航空局は2026年9月4日、令和8年熊本地震による災害を受けて、次の弾力的措置を公表しました。

対象根拠措置
無人航空機操縦者技能証明及び機体認証 特定非常災害の被害者の権利利益の保全等を図るための特別措置に関する法律(平成8年法律第85号)第3条第2項に基づく告示(令和8年9月4日公布) 特定被災地域内に住所を有する者について、有効期間を令和9年1月27日まで延長
無人航空機の登録 航空法施行規則第236条の8第2項(天災その他やむを得ない事由により更新を受けることができないと認める場合) 同じく、登録の有効期間を令和9年1月27日まで伸長

対象は特定被災地域内に住所を有する者で、対象市町村として熊本市、八代市、水俣市、山鹿市、菊池市、宇土市、上天草市、宇城市、天草市、合志市、美里町、大津町、菊陽町、西原村、御船町、嘉島町、益城町、甲佐町、氷川町、芦北町、津奈木町が挙げられています。「住所を有する者」という基準であり、被災地で活動する者ではありません。平時の更新期限の考え方は技能証明の更新。有効期間3年と更新講習、申請は満了日の1か月前までと機体登録の更新。満了日の1か月前から、が損しないで扱っています。

判定フロー:この飛行は特例に当たるか

飛行の主体は、都道府県警察/国/地方公共団体/これらの依頼により捜索若しくは救助を行う者のいずれかか(法第132条の92、規則第236条の88)
目的は捜索又は救助か。すなわち「事故や災害の発生等に際して人命や財産に急迫した危難のおそれがある場合において、人命の危機又は財産の損傷を回避するための措置(調査・点検、捜査等の実施を含む)」に当たるか(規則第236条の89、解釈通達8.)
緊急性があるか。すなわち「飛行の許可・承認申請の対応窓口への申請を行う手段又はいとまがない状況」か(解釈通達8.注、運用ガイドライン2.注2)
1〜3すべて満たす → 特例。飛行禁止空域(緊急用務空域を含む)と飛行の方法の規制、許可・承認、飛行計画の通報、飛行日誌が適用されません。ただし第132条の86第1項の4つの義務、事故報告、重大インシデント報告、機体登録は残り、空港等周辺・緊急用務空域・150m以上を飛ぶならガイドライン3.(1)の空港事務所への通知を行います
1が満たせない(自主的な活動、依頼のない飛行) → 特例の対象外。通常の許可・承認と飛行計画の通報が必要です
3が満たせない(申請する手段と余裕がある) → 特例ではなく申請へ。緊急を要するなら審査要領2-1(1)c)の電話・電子メールでの申請を使います
飛行空域が緊急用務空域に指定されている → 特例の主体でなければ、許可があっても飛べません。「指定の変更又は解除を待たずして飛行させることが真に必要」な場合に限り、あらためて許可を取ります
迷ったら、飛ばす前に所管に確認してください。 この分野は、当てはめを誤ると人命に関わる有人機の活動を妨げます。特例に当たるかどうかの判断は、飛行の主体・目的・その時点の状況という個別事情に依存し、一般論で確定できるものではありません。迷う場面では、飛行する場所を管轄する空港事務所、地方航空局、そして依頼元となる自治体の防災担当・消防機関に確認するのが確実です。平時にその連絡先と手順を決めておくことが、災害時のいちばん効く準備になります。

よくある質問

災害が起きたら、ドローンは自由に飛ばしてよいのですか。
いいえ。捜索救助の特例(航空法第132条の92)の主体は都道府県警察・国・地方公共団体・これらの依頼により捜索若しくは救助を行う者に限られます(規則第236条の88)。教則第5版は「災害時の対応であっても、国や地方公共団体にかかわらない独自の活動にあっては、特例の対象とはならず、国の飛行の許可・承認などの手続き等が必要となる」と明記しています。さらに、災害地域では緊急用務空域が指定され得ますし、指定前でも国土交通省は「まずは有人機の災害活動の妨げにならないよう、当該地域でのドローン・ラジコン機等の飛行は控えてください」と案内しています。
自治体と災害協定を結んでいれば、特例で飛べますか。
協定の存在そのものを第132条の92の「依頼」と評価した公式資料は確認できていません。規則第236条の88の文言は「これらの者の依頼により捜索若しくは救助を行う者」であり、運用ガイドラインは空港事務所への通知項目に「飛行の依頼元(依頼に基づく場合)」を置き、公表されている適用事例はいずれも「依頼元:国」「依頼元:地方自治体」とその事案の依頼元を記載しています。協定は平時の枠組み、依頼は事案ごとの発動と分けて設計し、出動のたびに依頼の記録を残せる形にしたうえで、協定の文面と発動手順が要件を満たすかを自治体と所管の航空局・空港事務所に事前に確認してください。
民間事業者が特例で飛んだ実例はあるのですか。
あります。国土交通省航空局が公開している「航空法第132条の92の特例適用の対象となり得る事例」には5事例が載っており、そのうち4件が民間事業者・民間団体です。能登半島地震の仮設住宅建設予定地調査(依頼元:地方自治体)、港湾施設の被災状況確認(依頼元:国)、河川災害の被災箇所調査(依頼元:国)、市街地に侵入した熊の行動範囲調査(依頼元:地方自治体)です。いずれも見出しに「航空法の飛行許可・承認なしで実施した事例」と書かれています。
特例が適用されれば、飛行日誌も事故報告もいらないのですか。
飛行日誌(法第132条の89)と飛行計画の通報(法第132条の88)は適用されません。事故報告(法第132条の90)と重大インシデントの報告(法第132条の91)は残ります。第132条の92が列挙しているのは「第132条の85、第132条の86(第1項を除く)、第132条の87から第132条の89まで」で、第132条の90と第132条の91は入っていません。あわせて第132条の86第1項(アルコール又は薬物の影響下での飛行禁止、飛行前の確認、航空機等との衝突予防、他人に迷惑を及ぼす方法での飛行禁止)と、機体の登録・登録記号の表示・リモートIDも残ります。運用ガイドラインは、特例適用者が「許可等を受けた場合と同程度の必要な安全確保を自主的に行って」飛行させる必要があるとしています。
緊急用務空域は、DIPS2.0の地図で確認できますか。
公示先として公式に案内されているのは、国土交通省のホームページとX(旧Twitter、@mlit_mujinki)です。規則第236条の71第2項が「インターネットの利用その他の適切な方法により…公示しなければならない」と定め、教則第5版と緊急用務空域Q&Aはいずれも公示先としてこの2つを挙げています。DIPS2.0のポータルトップにも「【お知らせ】緊急用務空域に関する情報について(現在:指定空域なし)」という掲示があり、詳細は航空局ホームページへ案内されています(2026年9月27日時点)。一方で、DIPS2.0の地図上に指定空域が描画されるとする公式の記述は確認できていません。飛行前の確認は、航空局のページで行うのが確実です。
包括申請の許可を持っていれば、緊急用務空域も飛べますか。
飛べません。緊急用務空域Q&A A.3は「空港周辺、150m以上の空域、DID(人口集中地区)上空等の飛行許可(包括許可含む。)があっても、新たに設定される飛行禁止空域(緊急用務空域)を飛行させることはできません」としています。さらに「緊急用務者等関係機関等から飛行中止の指示があるかないかによらず、当該空域での飛行を継続させた場合、航空法違反の対象となります」とも書かれています。飛行中に指定された場合は、速やかに飛行を中止させる必要があります(特例の適用を受けて飛行させる者は除かれます)。
災害の報道取材や、被災した設備の点検で緊急用務空域を飛ぶ余地はありますか。
審査要領5-1(2)c)の1つ目の基準が「災害時等の報道取材やインフラ点検・保守など、緊急用務空域の指定の変更又は解除を待たずして飛行させることが真に必要と認められる飛行であること」です。この類型は想定されていますが、許可が要りますし、追加基準は全7項目あります。とくに特例で飛んでいる無人航空機の接近を確認したら直ちに降下させること、原則として第三者の上空で飛行させないことが求められます。さらに審査要領3-3により、緊急用務空域の許可は「真に必要な日時又は期間及び時間帯に限り」行われるため、包括的に前もって取っておくことはできません。インフラ点検側の許可・承認の全体像はインフラ点検でドローンを使うのに必要な許可・承認で扱っています。
特例で飛ばすのに、技能証明や機体認証は必要ですか。
技能証明と機体認証を要件にしているのは法第132条の85第1項と第132条の86第2項で、いずれも第132条の92によって適用されなくなります。したがって条文の構造上は要件になりません。ただし、この点を明示した公式の解説は確認できていません。また運用ガイドラインは、特例適用者が許可等を受けた場合と同程度の安全確保を自主的に行うべきこと、審査要領を参考に目的に応じた飛行マニュアルを定めることが望ましいことを述べています。資格が不要であることと、技量が不要であることは別です。
10開庁日前に間に合いません。災害時に短縮する方法はありますか。
審査要領2-1(1)c)が、緊急を要するものについて電話又は電子メール等による申請を認めています。電話は「『事故及び災害』が災害対策基本法第2条第1号の『災害』にあたる場合又はこれに類する場合で、かつ緊急に支援活動をする必要がある場合」、電子メール等は「事故及び災害に際して緊急に支援活動をする必要がある場合」「事故及び災害の報道取材のため緊急を要する場合」「その他特に緊急を要する場合」です。夜間等の執務時間外は、管轄事務所に電話で連絡を入れることとされています。後日、申請書を所定の提出先に提出する必要があります。また、電話・電子メールでの申請を受理した場合は口頭で許可等を行うことができ、その場合は許可等の年月と番号を現場で答えられるようにしておくこととされています。
被災地に物資を運ぶ飛行も特例に入りますか。
解釈通達8.と運用ガイドライン2.は、大規模災害発生時について「被災地の孤立地域等への医薬品、衛生用品、食料品、飲料水等の生活必需品の輸送」を、人命の危機又は財産の損傷を回避するための措置として第132条の92に該当する飛行として取り扱うものとしています。ただし主体(国・地方公共団体・その依頼を受けた者等)と緊急性の要件は同じように必要です。特例に乗らない通常の物流・配送の許可構成は物流・配送でドローンを使うのに必要な許可・承認。レベル3.5とカテゴリーⅢで扱っています。
この記事の一次ソース
  1. e-Gov法令検索|航空法(昭和二十七年法律第二百三十一号)(第132条の85〜第132条の92)
  2. e-Gov法令検索|航空法施行規則(昭和二十七年運輸省令第五十六号)(第236条の71、第236条の83、第236条の88、第236条の89)
  3. 国土交通省|航空法第132条の92の適用を受け無人航空機を飛行させる場合の運用ガイドライン(令和6年11月29日最終改正・PDF)
  4. 国土交通省航空局|航空法第132条の92の特例適用の対象となり得る事例(PDF)
  5. 国土交通省|無人航空機に係る規制の運用における解釈について(解釈通達・令和8年4月1日最終改正・PDF)
  6. 国土交通省|無人航空機の飛行に関する許可・承認の審査要領(カテゴリーⅡ飛行)令和8年9月29日最終改正(PDF)
  7. 国土交通省航空局|緊急用務空域の設定に関するQ&A(令和5年11月30日時点版・PDF)
  8. 国土交通省|無人航空機(ドローン・ラジコン機等)の飛行ルール(緊急用務空域の公示・航空局からのお知らせ)
  9. 国土交通省|無人航空機の飛行の安全に関する教則 第5版(PDF)
  10. 国土交通省|無人航空機の飛行禁止空域と飛行の方法
  11. e-Gov法令検索|重要施設の周辺地域の上空における小型無人機等の飛行の禁止に関する法律(平成二十八年法律第九号)
  12. e-Gov法令検索|災害対策基本法(昭和三十六年法律第二百二十三号)(第2条第1号)
  13. 国土交通省告示第1113号(令和8年9月4日・技能証明及び機体認証の有効期間の延長・PDF)
本記事は2026年9月27日時点の情報です。 緊急用務空域の指定状況は「その都度」変わり、本記事の確認時点では指定されていませんでした。解釈通達・審査要領・運用ガイドラインはいずれも通達として短い手続で改正され得ます。また、特例に当たるかどうかは飛行の主体・目的・その時点の状況という個別事情に依存する判断であり、本記事の整理は当てはめを保証するものではありません。災害時の飛行の前には、必ず上記の一次ソースで最新の内容を確認し、飛行する場所を管轄する空港事務所・地方航空局、および依頼元となる自治体の防災担当・消防機関に確認してください。

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