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ドローンで仕事を始めるときの手続き。法人か個人事業主か、最初にそろえるもの

公開 2026-10-18 更新 2026-10-18 読了 約16分

ドローンを仕事にするとき、手続きは3つの層に分かれます。①事業そのものの形をどうするか(個人事業主か、法人か)、②機体を誰の名義で登録するか、③飛ぶたびに何をするか。この3つは所管する役所も、根拠になる法律も、期限もばらばらです。 たとえば個人事業の開業届は、2026年1月1日以後に開業した場合、「開業から1か月以内」ではなく「開業した年分の確定申告期限まで」になりました(所得税法第229条)。一方で青色申告の承認申請は「開業の日から2月以内」(同第144条)で、年の後半に開業するとこちらのほうが先に締め切られます。 この記事は、税額や節税の話には立ち入らず、何を・いつ・どこへ出すのかだけを、国税庁・法務省・国土交通省の原本で確認して順番に並べたものです。売上の見込みや初期費用の相場は、公式の根拠がないため扱いません。

よく見る説明と、公式の記載
開業の手続きは制度改正が反映されるまでに時間がかかる分野で、改正前の期限を書いたままの説明が広く残っています。この記事で扱う範囲について、条文と役所のページの記載と突き合わせます。
よく見る説明開業届は、事業を始めてから1か月以内に出さなければならない。
公式にはこう現行の所得税法第229条は「その事実があつた日の属する年分の所得税に係る確定申告期限までに」と定めています。国税庁の手続案内も「事業の開始等の事実があった日の属する年分の確定申告期限までに提出してください」です。1か月以内は、2025年12月31日までに生じた事実についての旧法の期限です(改正規定の施行日は令和8年1月1日)。
出典 所得税法229条 国税庁 A1-5
よく見る説明国家資格(技能証明)がないと、ドローンを仕事にはできない。
公式にはこう教則第5版は「カテゴリーⅡA飛行及びカテゴリーⅡB飛行はともに、機体認証及び技能証明の両方又はいずれかを有していない場合であっても、あらかじめ①使用する機体、②操縦する者の技能及び③運航管理の方法について国土交通大臣の審査を受け、飛行の許可・承認を受けることによっても可能となる」としています。
出典 教則(第5版)3.1.1(2)5)a
よく見る説明法人を作れば、DIPS2.0は法人アカウント1本ですべて回せる。
公式にはこう共通で使える機能の一覧のうち、技能証明取得申請にだけ「※個人アカウントのみ申請可能」の注記が付いています。DIPS2.0のFAQも「技能証明の各種申請は個人の方を対象としています。そのため、個人アカウントをご利用ください」としており、これは個人事業主であっても同じです。
出典 DIPS2.0 よくある質問

手続きは3つの層に分かれる

ドローンを仕事にするときに必要な手続きを1本の列にして並べようとすると、たいてい途中で混乱します。所管する役所も、根拠になる法律も、期限の数え方も違うものが混ざっているからです。先に層を分けておくと、あとの判断が速くなります。

層内容相手根拠
①事業の形 個人事業主として始めるか、法人を設立するか。届出・登記・税務署への届出 税務署/法務局(登記所) 所得税法、法人税法、会社法
②機体 機体の登録(誰の名義で登録するか)、登録記号の表示とリモートID 国土交通省(DIPS2.0) 航空法、同施行規則
③飛行 特定飛行に当たるなら許可・承認、飛行のたびに飛行計画の通報と飛行日誌 地方航空局・空港事務所/DIPS2.0 航空法、同施行規則、審査要領
この3層に、上下の依存関係があります。 ②機体の登録は、所有者が個人か法人かで入力する情報も本人確認の方法も変わります。つまり①を決めないと②が確定しません。そして③の許可・承認は、申請者の氏名・名称で審査されるため、②の名義と食い違っていると後で作り直しになります。「とりあえず個人名義で登録して、あとから法人にする」は、やり直しの手間を後払いしているだけになりがちです。逆に言えば、①→②→③の順で決めていけば、手戻りはほとんど起きません。

なお、この記事は手続きの順番と期限だけを扱います。税額の計算や申告書の作成は税理士法第2条にいう税理士の業務、登記の申請手続の代理は司法書士法第3条第1項第1号にいう司法書士の業務とされており、有利不利や節税の判断はここでは扱いません。法務省のページ自体も、不明な点は専門家に問い合わせるよう案内しています。

①事業の形を決める(個人事業主の場合)

個人事業主として始める場合、最初に出すのは「個人事業の開業・廃業等届出書」です。国税庁の手続案内(A1-5)が定める内容は次のとおりです。

項目内容
様式名個人事業の開業・廃業等届出書
手続根拠所得税法第229条
提出時期事業の開始等の事実があった日の属する年分の確定申告期限まで(期限が土・日曜日・祝日等に当たる場合は翌日)
提出先納税地を所轄する税務署長
提出方法e-Taxソフトで作成して電子提出。書面で作成して持参・送付も可
「開業から1か月以内」は、2025年12月31日までの開業についての期限です。 所得税法第229条の改正規定は令和8年(2026年)1月1日から施行されており、改正法の附則は「新所得税法第二百二十九条…の規定は、それぞれ令和八年一月一日以後に生ずる新所得税法第二百二十九条に規定する事実…について適用し、同日前に生じた旧所得税法第二百二十九条に規定する事実…については、なお従前の例による」としています。つまり2026年1月1日以後に開業した人の期限は「開業した年分の確定申告期限まで」、それより前に開業した人は旧法の期限です。解説記事の多くは改正前の「1か月以内」のままなので、条文と国税庁の手続案内で確認してください。

青色申告の承認申請は、期限の数え方が違う

もう1つ、開業とセットで検討されるのが「所得税の青色申告承認申請書」です。これは届出ではなく承認で、所得税法第143条が「納税地の所轄税務署長の承認を受けた場合には」青色の申告書を提出できると定めています。申請の期限は同第144条です。

所得税法第144条は「その年三月十五日まで(その年一月十六日以後新たに同条に規定する業務を開始した場合には、その業務を開始した日から二月以内)に…申請書を納税地の所轄税務署長に提出しなければならない」と定めています。

ここで実務上効いてくるのが、開業届と青色申告承認申請で期限の数え方が違うことです。開業届は「開業した年分の確定申告期限まで」(通常は翌年3月15日)、青色申告承認申請は「開業の日から2月以内」。年の後半に開業すると、青色申告承認申請のほうがはるかに早く締め切られます。

開業した日開業届の期限青色申告承認申請の期限先に来るのは
1月10日翌年の確定申告期限その年の3月15日(1月16日より前の開業のため原則どおり)青色
4月1日翌年の確定申告期限5月31日(開業から2月以内)青色
10月1日翌年の確定申告期限11月30日(開業から2月以内)青色

つまり青色申告の承認を受けるつもりなら、期限を管理すべきはこちらです。両方の期限の前後関係を国税庁が明示的に注意喚起した記載は確認できませんでしたが、上の2つの条文から機械的に導けます。なお、承認を受けようとする年の12月31日(その年の11月1日以降に業務を開始した場合は翌年2月15日)までに処分の通知がなかったときは承認されたものとみなされます。

人を雇う(操縦者を雇用する)なら、もう1本

操縦者を雇って給与を支払う場合は、「給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書」が別に必要です。根拠は所得税法第230条、提出時期は「開設、移転又は廃止の事実があった日から1か月以内」。229条の期限は変わりましたが、230条の「一月以内」は現行条文でもそのままです。提出先も違い、開業届が「納税地を所轄する税務署」なのに対し、こちらは「給与支払事務所等の所在地の所轄税務署」です。

①事業の形を決める(法人の場合)

法人の場合、手続きの性質そのものが変わります。個人事業の開業届が「始めたことを知らせる届出」であるのに対し、法人は登記をすることで初めて成立するからです。会社法第49条は「株式会社は、その本店の所在地において設立の登記をすることによって成立する」と定めています。合同会社などの持分会社も同じです(同第579条)。

定款を作成する(株式会社は発起人が、合同会社は社員になろうとする者が作成し、全員が署名又は記名押印)
公証人の認証を受ける(会社法第30条第1項・公証人法第62条の2)。合同会社の定款には認証が不要です
出資を履行する(株式会社は発起人が払込取扱機関へ払込み。合同会社は設立登記の時までに払込み又は給付)
機関を設置する(株式会社。設立時取締役等の選任、設立時代表取締役の選定、設立手続の調査)
本店の所在地を管轄する登記所に設立の登記を申請する。株式会社は調査が終了した日と発起人が定めた日のいずれか遅い日から2週間以内(会社法第911条第1項)
登記がされた日が設立の日。ここから2月以内に税務署へ法人設立届出書(法人税法第148条)

登記の申請は書面(持参又は郵送)でもオンラインでもできます(商業登記法第17条第1項、商業登記規則第101条第1項)。法務省のページは、設立登記の申請をデジタル庁の「法人設立ワンストップサービス」からも行えるとしており、これは「法人設立に関する各省庁の手続を一度にまとめてオンライン申請できるサービスの総称」と説明されています。

国に払う額が決まっているもの:登録免許税

設立登記には登録免許税がかかります。これは公式に額が定まっているため、ここで挙げておきます。

会社の種類登録免許税額根拠
株式会社 資本金の額に1000分の7を乗じた金額。これによって計算した税額が15万円に満たないときは、申請件数1件につき15万円 登録免許税法別表第1第24号(1)イ
合同会社 資本金の額に1000分の7を乗じた金額。これによって計算した税額が6万円に満たないときは、申請件数1件につき6万円 登録免許税法別表第1第24号(1)ハ

書面で申請する場合は、登録免許税額分の収入印紙を申請書の余白等に貼付します。なお、これ以外にかかる費用(定款認証の手数料、代理を依頼した場合の報酬など)は、ここでは扱いません。公式に一律の額が定まっているものと、そうでないものを混ぜると、記事としての信頼性が落ちるためです。

登記の後に、税務署へ

登記が完了したら、法人設立届出書を提出します。国税庁の手続案内(C1-4)によれば、提出時期は「法人設立の日(設立登記の日)以後2月以内」、添付書類は定款、寄付行為、規則又は規約の写し、根拠は法人税法第148条、法人税法施行規則第63条です。提出先は納税地の所轄税務署長。

一般社団法人・一般財団法人でドローン事業を行う場合の注意。 国税庁 C1-4 は「一般財団法人又は一般社団法人で非営利型法人に該当する場合は、公益法人等に該当するため、法人設立届出書の提出は不要です。ただし、新たに収益事業を開始した場合は、『公益法人等又は人格のない社団等の収益事業開始の届出』が必要です」としています。地域の団体としてドローンを扱う形を検討する場合は、この分岐があることを押さえておいてください。

個人と法人で、その後の手続きがどう変わるか

ここまでを1枚に整理します。左右で違う行こそが、あとで効いてくる箇所です。

項目個人事業主法人
事業を始める手続 開業・廃業等届出書を提出(所得税法第229条)。提出は開業した年分の確定申告期限まで 定款作成 →(株式会社は)公証人の認証 → 出資 → 設立登記で成立(会社法第49条)
国に払う額が決まっているもの 開業届自体に手数料の定めはありません 登録免許税(株式会社は最低15万円、合同会社は最低6万円)
税務署への届出 青色申告承認申請は3月15日まで/開業から2月以内(所得税法第144条) 法人設立届出書は設立登記の日以後2月以内(法人税法第148条)
機体登録の名義 所有者は個人。本人確認にマイナンバーカード等を使う 所有者は法人。法人番号・代表者氏名等が必要で、オンラインではgBizIDが関わります
DIPS2.0のアカウント 個人アカウント 法人アカウント。ただし技能証明の申請は個人アカウントでしかできません
全国包括の申請先 本人の住所を管轄する地方航空局 申請者の住所=本店又は主たる事務所の所在地を管轄する地方航空局と読めます
操縦者を雇うとき どちらも給与支払事務所等の開設届出(所得税法第230条、1か月以内)が必要です
「法人にすれば手続きが一本化される」わけではありません。 DIPS2.0で法人アカウントを作っても、技能証明(国家資格)の申請だけは、代表者や従業員が自分の個人アカウントで行います。DIPS2.0のFAQは「技能証明の各種申請は個人の方を対象としています。そのため、個人アカウントをご利用ください」としており、個人事業主であっても同じ扱いです。したがって法人でも、法人アカウントと、操縦者それぞれの個人アカウントが併存するのが通常の形になります。詳しくはDIPS2.0の法人アカウントと個人アカウントの使い分けで整理しています。

②機体の登録は「所有者が誰か」で変わる

事業の形が決まったら、次は機体です。100g以上の無人航空機は登録が必要で、未登録の機体を航空の用に供することは航空法第132条の2に違反し、1年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金の対象です(第157条の7第1項第1号)。登録の一般論は無人航空機の登録制度 完全ガイドで扱っています。

ここで開業の文脈として押さえるべきなのは、登録は「所有者」を軸にした制度であることです。DIPS2.0のFAQは「登録しようとするドローンの所有者が個人である場合は個人のアカウントを、法人である場合は法人のアカウントを開設してください」としています。つまり機体を誰が買うか=どちらの名義で登録するかが、そのままアカウントの選択になります。

本人確認の方法1機目2機目以降
オンライン:マイナンバーカードの電子証明書/gBizIDのアカウントにログインする方法900円890円
オンライン:運転免許証又はパスポート+顔認証/本人確認書類を郵送する方法1,450円1,050円
書面(郵送)2,400円2,000円

2機目以降の額は「同一の申請者が登録又は更新申請を同時にする無人航空機の数が2以上の場合」に適用されます。最初にまとめて登録するほうが1機あたりの手数料は下がるという構造です。登録記号の発行までの目安は、手続完了後に手数料納付の通知まで1〜5開庁日、納付後に登録記号の発行まで1〜5開庁日とされています。

法人名義の登録は、個人名義より準備する情報が多くなります。 法人アカウントの開設には法人番号/企業・団体名/代表者氏名/本店又は主たる事務所の所在地に加えて、システムを使う担当者の氏名・住所・部署名・電話番号・メールアドレスが必要です。また、法人の所有者と使用者の関係、本人確認の方法、リース・レンタルの場合の扱いなど、法人固有の論点があります。法人でドローンを登録するときの手続き。所有者と使用者、本人確認で整理しています。

登録を済ませたら、飛ばす前に①登録記号の表示(25kg未満は文字高3mm以上、25kg以上は25mm以上)と②リモートID機能を備えることが必要です(施行規則第236条の6第1項第2号)。これを講じずに航空の用に供すると50万円以下の罰金の対象です。登録には有効期間があり、更新を忘れると失効します。機体登録の更新と機体登録を失効させたらどうなるかもあわせてご覧ください。

③飛ぶ前にそろえるもの。順番はこうなる

ここからが航空法の本体です。仕事として飛ばす場合、①〜⑤の順番で確認していくと漏れません。

機体を登録し、登録記号を表示してリモートIDを備える(ここまでは飛ばすかどうかに関係なく必要)
その飛行が「特定飛行」に当たるかを判定する。空域6類型(空港等周辺/緊急用務空域/150m以上/DID上空 ほか)と方法6類型(夜間/目視外/30m未満/催し場所上空/危険物輸送/物件投下)
当たらない=カテゴリーⅠ飛行。教則第5版は「航空法上は特段の手続きは不要で飛行可能である」としています
当たる → 許可・承認を受ける。反復して飛ぶ・場所が複数なら包括申請を検討。新規は飛行開始予定日の10開庁日前までに申請し、不備による追加確認を見込んで3〜4週間程度の余裕を見る
飛行のたびに飛行計画を通報する(法第132条の88第1項)。特定飛行はあらかじめ通報が必要
飛行日誌を備え、記録する(法第132条の89第1項)。飛行記録・日常点検記録・点検整備記録の3つを機体毎に

この5段階のうち、開業直後にいちばん時間を食うのが④の許可・承認です。仕事の依頼が来てから申請を始めると、10開庁日前という締切に間に合いません。事業として続けるつもりなら、案件の前に包括申請を取っておく設計が現実的です。許可・承認の全体像はドローンの飛行許可・承認申請 完全ガイド、包括申請の考え方は包括申請とは。個別申請との違いと、使い分けの判断基準、場所を特定しない申請の限界は全国包括は取れるか。標準マニュアル02の使い方で扱っています。

⑤の飛行計画の通報と飛行日誌は、許可・承認と違って飛行のたびに発生する義務です。開業直後は件数が少ないので運用でしのげますが、案件が増えると必ず抜けが出ます。ドローンの飛行計画の通報はいつ必要かとドローンの飛行日誌の書き方。3種類の記録と、毎回の運用で、最初から回る形を作っておく価値があります。

④資格がなくても、許可・承認を受ければ飛ばせる

開業を検討する段階で最も多い誤解が、「国家資格がないと仕事にできない」というものです。これは教則の原本を読むと、そうではないことがはっきりします。

教則(第5版)3.1.1(2)5)aの原文:
「なお、カテゴリーⅡA飛行及びカテゴリーⅡB飛行はともに、機体認証及び技能証明の両方又はいずれかを有していない場合であっても、あらかじめ①使用する機体、②操縦する者の技能及び③運航管理の方法について国土交通大臣の審査を受け、飛行の許可・承認を受けることによっても可能となる。」

つまり、特定飛行を行うための道は2本あります。

ルート必要なものできること
A:許可・承認を受ける 技能証明も機体認証も要りません。使用する機体・操縦する者の技能・運航管理の方法について、国土交通大臣の審査を受けます カテゴリーⅡA飛行・カテゴリーⅡB飛行のいずれも可能
B:技能証明+機体認証で回す 技能証明を受けた者が機体認証を受けた機体を飛ばすこと。安全確保措置として飛行マニュアルの作成・遵守 カテゴリーⅡB飛行のみ「特段の手続き等なく飛行可能」。カテゴリーⅡA飛行は、両方そろっていても許可・承認が必要です

ここで重要なのは、Bのルートを選んでも、カテゴリーⅡA飛行では申請がなくならないことです。カテゴリーⅡA飛行とは、教則第5版の定義で空港周辺、高度150m以上、催し場所上空、危険物輸送及び物件投下並びに最大離陸重量25kg以上の飛行を指します。イベント撮影や大型機を使う業務を想定しているなら、資格を取っても申請の手間は残ります。

資格を取る判断と、事業を始める判断は、切り分けて考えられます。 教則第5版を全文で確認した範囲で、「業として飛行させるには技能証明が必要」という趣旨の記述は見当たりません。資格が効くのは「カテゴリーⅡB飛行を申請なしで回せるようになる」点と、カテゴリーⅢ飛行(第三者上空)の前提になる点です。どちらの効き目も、実際に受ける仕事の内容によって価値が変わります。認証機体をそろえるか許可・承認で回すかの比較は認証機体を買うか、許可・承認で回すか、組織として資格取得を計画するときの等級と限定の逆算は法人が従業員に国家資格を取らせるときの計画で扱っています。

なお、カテゴリーの区分と、よく使われる「レベル1〜4」の区分は厳密には一致しません。教則第5版も「上記のカテゴリーによる分類とレベルによる分類は厳密には一致しない場合があるため注意が必要である」と注記しています。この関係はレベル1〜4とレベル3.5。カテゴリーの区分と一致しない理由で整理しています。

⑤法人名義で許可を取ったあと、申請者と操縦者の関係

法人でドローン事業を始めると、許可・承認を受ける主体(申請者)と、実際に機体を操縦する人が分かれます。ここはDIPS2.0の作りと直結しており、開業時に設計を誤ると毎回の運用が重くなります。

機体・操縦者の情報は、アカウントをまたいで渡せる

DIPS2.0の飛行許可・承認申請には、他のアカウントへ機体情報を提供する機能があります。操作マニュアルは「機体の所有者以外が許可承認申請を行う場合に使用します。申請者の依頼に基づき、機体所有者のアカウントで情報提供を行ってください。提供を行うと、提供先アカウントで使用可能な機体として登録され、申請に使用することが可能です」と説明しています。個人名義の機体を法人の申請で使う、といった場面がこれに当たります。

一方、操縦者情報の提供は「技能証明を有する操縦者のみ可能」です。技能証明を持たない操縦者は、申請する側のアカウントで「新規作成(技能証明なし)」として入力します。1アカウントの上限は機体300機・操縦者100名です。

飛行計画の通報は、操縦者が自分のアカウントから行う

ここが開業時にいちばん誤解されやすい点です。飛行計画の通報は申請者ではなく操縦者の義務で、DIPS2.0のFAQは「操縦者は、許可・承認を受けるか否かに関わらず特定飛行を行おうとするときは…事前に自らの飛行計画を通報する必要があります」としています。

他人が取った包括許可に基づく通報もできます。 DIPS2.0のFAQは「自分以外が包括で申請した飛行許可・承認申請に基づく飛行計画を通報することは可能ですか。」という問いに対し「可能です。許可・承認書を確認し、飛行計画通報時の『飛行許可番号』に内容を手入力してください。」と答えています。自分の申請であれば「飛行許可番号」から対象の申請を選べますが、法人が取った許可で従業員が飛ばす場合は、許可番号を手入力する運用になります。つまり操縦者に許可・承認書を渡しておかないと、現場で通報ができません。

「代行申請」は、代理人に頼む制度ではない

審査要領の用語である「代行申請」は、2つの類型だけを指しています。①複数の申請者による飛行をとりまとめて行う場合に、とりまとめる者を代表者として代行させるもの。②飛行の委託を行っている者が、受託者の飛行について申請するもの。第三者が代理人として申請を代わりに行う制度ではありません。言葉が似ているため混同されがちですが、開業時の体制を考えるうえでは区別が必要です。

申請先は「申請者の住所」で決まる

飛行エリアを日本全国として申請する場合、申請先は申請者の住所を管轄する地方航空局です。法人アカウントに登録する住所欄は「本店又は主たる事務所の所在地」で、支店の所在地を入れる欄は担当者住所しかありません。したがって法人アカウントで全国包括を出すと、申請先は本店所在地を管轄する地方航空局になると読めますが、支店単位の申請をどう扱うかについての公式の明示は確認できていません。

複数人でDIPS2.0を運用する場合の権限の切り分けは複数人でDIPS2.0を運用するときの権限設計、機体が複数・操縦者が複数になったときの飛行日誌の回し方は機体が複数・操縦者が複数のときの飛行日誌の回し方で扱っています。

公式に明示されていないこと

この記事の範囲で、一次ソースでは確認できなかった点を挙げておきます。開業の設計でここに触れる場合は、事前に所管へ確認するのが確実です。

論点公式の記載の状況
開業届と青色申告承認申請の期限の前後関係 2つの条文から機械的に導けますが、国税庁が前後関係を明示して注意喚起した記載は確認できませんでした
DIPS2.0のアカウント種別(個人/法人)を後から変えられるか 変更できる項目として挙げられていません。アカウントの削除・退会の手順も、操作マニュアル・FAQのいずれにも記載がありません
飛行許可・承認申請を法人・個人のどちらのアカウントで出すべきか 機体登録と違い、飛行許可・承認申請の側にはアカウント種別の指定そのものがありません
既に受けた許可・承認の申請者を、個人から法人へ付け替える手続 審査要領の変更申請の対象に申請者の氏名・名称は含まれず、付け替えを定めた記載は見当たりません。新規申請になると読めます
法人がオンライン申請+本人確認書類の郵送(1,450円)を選べるか 登録要領の手数料表とFAQ、新規登録マニュアルの記載が一致しません。gBizIDがない場合は書面申請(2,400円)が確実です
「ドローン事業」という業種そのものへの開業規制 飛行の態様や取り扱う業務によって別の法令が関わることはありますが、業種としての開業許可・登録を一般的に定めた公式の記載は確認できませんでした

よくある質問

開業届は、事業を始めてから何日以内に出せばよいのですか。
現行の所得税法第229条は「その事実があつた日の属する年分の所得税に係る確定申告期限までに」と定めており、国税庁の手続案内(A1-5)も同じです。よく見る「1か月以内」は改正前の期限で、改正規定の施行日は令和8年(2026年)1月1日です。改正法の附則は、同日以後に生じた事実には新法、同日前に生じた事実には旧法(なお従前の例による)としています。2025年中に開業していた場合は旧法の期限で判断されることになります。
個人事業主と法人、ドローンの手続き上はどちらが有利ですか。
航空法の側には有利・不利を分ける仕組みはありません。特定飛行に該当すれば許可・承認が要る点も、飛行計画の通報や飛行日誌の義務も、個人・法人で変わりません。違いが出るのは手続きの入口の形です。法人は設立登記が必要で登録免許税がかかり(株式会社は最低15万円、合同会社は最低6万円)、機体登録では法人番号や代表者氏名等が必要になり、DIPS2.0は法人アカウントになります。税務上の有利不利は税理士の業務にあたる領域のため、この記事では扱いません。
国家資格を取ってからでないと、仕事として飛ばせませんか。
いいえ。教則第5版は「カテゴリーⅡA飛行及びカテゴリーⅡB飛行はともに、機体認証及び技能証明の両方又はいずれかを有していない場合であっても、あらかじめ①使用する機体、②操縦する者の技能及び③運航管理の方法について国土交通大臣の審査を受け、飛行の許可・承認を受けることによっても可能となる」としています。そもそも特定飛行に当たらない飛行(カテゴリーⅠ飛行)は「航空法上は特段の手続きは不要で飛行可能」です。資格が効くのは、カテゴリーⅡB飛行を申請なしで回せるようになる点と、カテゴリーⅢ飛行の前提になる点であり、事業を始められるかどうかの条件ではありません。
機体は個人名義と法人名義、どちらで買うべきですか。
航空法の側から一義的に決まるものではありませんが、登録は所有者を軸にした制度です。DIPS2.0のFAQも「登録しようとするドローンの所有者が個人である場合は個人のアカウントを、法人である場合は法人のアカウントを開設してください」としています。所有者が個人で申請者が法人という形も、機体情報を他アカウントへ提供する機能で回せますが、毎回そのひと手間が乗ります。なお、一度開設したアカウントの種別を後から変える手順は、公式には明示されていません。法人化を予定しているなら、その前提で最初の名義を決めるほうが手戻りが少なくなります。
法人で技能証明を取らせたいのですが、法人アカウントで申請できますか。
できません。DIPS2.0のFAQは「法人アカウントでの申請はできますか。」という問いに「技能証明の各種申請は個人の方を対象としています。そのため、個人アカウントをご利用ください。」と答えています。これは個人事業主でも同じで、技能証明申請者番号のFAQにも同趣旨の記載があります。また、技能証明の代理申請については「今後のリリースにて実施可能となります」という記載のままです。従業員に資格を取らせる場合は、一人ひとりが自分の個人アカウントを開設する前提で計画してください。
会社の許可で従業員が飛ばすとき、飛行計画の通報は誰がしますか。
実際に飛ばす操縦者が、自分のアカウントから通報します。DIPS2.0のFAQは「操縦者は、許可・承認を受けるか否かに関わらず特定飛行を行おうとするときは…事前に自らの飛行計画を通報する必要があります」としています。他人が包括で取った許可に基づく通報も可能ですが、その場合は「飛行許可番号」を手入力することになります。したがって許可・承認書(許可番号)を操縦者に渡しておくことが、現場が止まらないための最低条件です。
「代行申請」を使えば、申請を誰かに任せられますか。
審査要領がいう「代行申請」は、①複数の申請者による飛行をとりまとめる者が代表者として行う申請と、②飛行の委託を行っている者が受託者の飛行について行う申請の2つを指す言葉で、第三者が代理人として申請を代わりに行う制度ではありません。言葉が似ているため混同されやすい点です。誰に何を頼めるのかという論点はドローンの飛行許可、2026年からは誰に頼めば適法なのかで扱っています。
開業して最初にやるべきことを1つだけ挙げるとしたら何ですか。
自分が受ける仕事がどの特定飛行に当たるかを先に洗い出すことです。ここが決まらないと、必要な許可・承認も、機体に求められる条件も、資格を取る意味があるかどうかも決まりません。手続きの締切という意味では、青色申告の承認を受けるつもりなら「開業の日から2月以内」が最初に来る期限(1月16日以後に開業した場合)であり、法人なら設立登記の日以後2月以内の法人設立届出書です。航空法側は許可・承認が飛行開始予定日の10開庁日前までで、国土交通省は3〜4週間程度の余裕を推奨しています。
この記事の一次ソース
  1. e-Gov法令検索|所得税法(昭和四十年法律第三十三号)第143条・第144条・第229条・第230条
  2. e-Gov法令検索|会社法(平成十七年法律第八十六号)第30条・第49条・第575条・第579条・第911条・第914条
  3. e-Gov法令検索|航空法(昭和二十七年法律第二百三十一号)
  4. e-Gov法令検索|航空法施行規則(昭和二十七年運輸省令第五十六号)
  5. e-Gov法令検索|司法書士法(昭和二十五年法律第百九十七号)第3条
  6. e-Gov法令検索|税理士法(昭和二十六年法律第二百三十七号)第2条
  7. 国税庁|A1-5 個人事業の開業届出・廃業届出等手続
  8. 国税庁|A1-8 所得税の青色申告承認申請手続
  9. 国税庁|A2-7 給与支払事務所等の開設・移転・廃止の届出
  10. 国税庁|C1-4 内国普通法人等の設立の届出
  11. 国税庁|No.2090 新たに事業を始めたときの届出など
  12. 法務省|株式会社の設立手続(発起設立)について
  13. 法務省|合同会社の設立手続について
  14. 法務局|商業・法人登記の申請書様式
  15. 国土交通省|無人航空機の飛行の安全に関する教則 第5版(PDF)
  16. 国土交通省|無人航空機の飛行に関する許可・承認の審査要領(カテゴリーⅡ飛行)令和8年9月29日最終改正(PDF)
  17. 国土交通省|無人航空機の飛行許可・承認手続
  18. DIPS2.0|よくある質問(システムの利用について/アカウントについて)
  19. DIPS2.0|【技能証明】よくある質問
  20. DIPS2.0|【飛行計画通報】よくある質問
  21. DIPS2.0|(登録機能)よくある質問
本記事は2026年9月28日時点の情報です。 税制と無人航空機の制度はいずれも改正が続いており、所得税法第229条の提出期限のように、解説記事が改正前の内容のまま残っている論点があります。とくに期限は、条文と役所の手続案内の両方で、自分の開業日が改正の前か後かを確かめてから判断してください。税額や有利不利の判断、登記申請の代理は、それぞれ税理士・司法書士の業務とされている領域です。実際の手続の前に、必ず上記の一次ソースで最新の内容をご確認ください。

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その飛行がどの特定飛行に当たり、どの許可・承認が要るかを1枚で判定できるPDFです。

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