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ドローンの仕事に許認可は要るか。航空法以外で関わる業法の一覧

公開 2026-10-19 更新 2026-10-19 読了 約17分

「ドローンで仕事を始めたい。営業許可のようなものは要るのか」。この問いに条文で答えると、答えは二段になります。 まず航空法の側には、無人航空機を使う事業を許可制・登録制にする条文がありません。第十一章「無人航空機」にあるのは、機体の登録、機体認証、技能証明、飛行の禁止空域と飛行の方法、飛行計画、飛行日誌——機体と飛ばし方の制度だけです。だから「ドローン事業の許可」という名前の許可は存在しません。 しかしそれは「何も要らない」という意味ではありません。縛るのは航空法ではなく、その仕事が属する業界の法律(業法)のほうだからです。警備なら警備業法、測量なら測量法、農薬散布なら農薬取締法。ドローンを使うかどうかと無関係に、その業務を他人のために請け負うこと自体に、別の法律が先にかかっています。 この記事は、その構造を一枚に整理し、業種ごとにかかり得る法律と根拠条文を並べます。当てはめは事案ごとに変わるため、結論は断定せず、条文の要件と確認先までを示します。

よく見る説明と、公式の記載
開業まわりは、制度の名前が似ているために取り違えが起きやすい領域です。この記事で扱う範囲について、一次ソースの記載と突き合わせます。
よく見る説明ドローンで仕事を受けるには、まず「ドローン事業の許可」を取る必要がある。
公式にはこう航空法第十一章「無人航空機」(第132条〜第132条の92)にあるのは、機体の登録、機体認証・型式認証、技能証明、飛行の禁止空域・飛行の方法、飛行計画、飛行日誌などの制度で、無人航空機を使う事業を許可制・登録制にする条はありません。
出典 航空法 第十一章(e-Gov現行条文)
よく見る説明ドローンで有償の撮影や点検を請け負うと、航空運送事業や航空機使用事業の許可・届出が必要になる。
公式にはこう航空法第2条第18項・第21項は、航空運送事業も航空機使用事業も「航空機を使用して」と定義しています。同条第1項の「航空機」は「人が乗つて航空の用に供することができる」機器で、無人航空機は同条第22項で「構造上人が乗ることができないもの」と別に定義されています。
出典 航空法第2条第1項・第18項・第21項・第22項
よく見る説明だから、航空法の手続さえ済ませれば仕事として飛ばしてよい。
公式にはこう航空法が許可制にしていないだけで、仕事の中身ごとに別の法律が先にかかっています。たとえば警備業法第4条は「警備業を営もうとする者は…都道府県公安委員会の認定を受けなければならない」と定め、測量法第55条の14は「登録を受けない者は、測量業を営むことができない」と定めています。
出典 警備業法第4条/測量法第55条の14

航空法は「飛ばし方」を規制する法律で、「事業」を許可制にしていない

まず出発点を条文で確かめます。無人航空機の制度は、航空法第十一章「無人航空機」(第132条から第132条の92まで)にまとまっています。この章の条見出しを頭から並べると、次のようになります。

  • 機体の登録(第132条〜第132条の12)
  • 機体認証・型式認証と登録検査機関(第132条の13〜第132条の39)
  • 技能証明と指定試験機関・登録講習機関(第132条の40〜第132条の84)
  • 飛行の禁止空域・飛行の方法(第132条の85・第132条の86)
  • 飛行計画・飛行日誌・事故等の報告(第132条の88〜第132条の91)

この92か条のどこにも、「無人航空機を使用する事業を営もうとする者は、国土交通大臣の許可(登録)を受けなければならない」という趣旨の条文はありません。規制の対象になっているのは機体と飛ばし方と飛ばす人の技能であって、事業者という単位ではないのです。

「有償だから許可が要る」という発想が、航空法では成り立ちません。 航空法の特定飛行の規制は、飛行が仕事か趣味か、有償か無償かで変わりません。人口集中地区の上空を飛ばすなら、趣味でも仕事でも同じように許可が必要です。逆に、報酬をもらって撮影しても、特定飛行に当たらなければ許可・承認は不要です。航空法の要否を分けるのは「どこを、どう飛ぶか」であって、「商売かどうか」ではありません。どの飛行が特定飛行に当たるかはドローンの飛行許可・承認申請 完全ガイドで整理しています。

有人機の事業許可は、無人航空機には向いていない

「航空の仕事なら航空運送事業の許可が要るのでは」という疑問は自然です。ここも条文で確認します。航空法第2条第18項は「この法律において『航空運送事業』とは、他人の需要に応じ、航空機を使用して有償で旅客又は貨物を運送する事業をいう」と定義し、第21項は「『航空機使用事業』とは、他人の需要に応じ、航空機を使用して有償で旅客又は貨物の運送以外の行為の請負を行う事業をいう」と定義します。第100条第1項は「航空運送事業を経営しようとする者は、国土交通大臣の許可を受けなければならない」と定めます。

いずれも主語は「航空機」です。そして同第2条第1項は、「航空機」を「人が乗つて航空の用に供することができる飛行機、回転翼航空機、滑空機、飛行船その他政令で定める機器」と定義し、第22項は「無人航空機」を「構造上人が乗ることができないもの」と、別の項で別に定義しています。無人航空機は航空法上の「航空機」ではありません。したがって、ドローンで有償の空撮や点検を請け負っても、これらの事業許可の定義には入らないと読めます。

例外は1つだけ。講習をやる場合です。 航空法第132条の69は「無人航空機講習を行う者は、申請により、国土交通大臣の登録を受けることができる」と定めています。これが登録講習機関です。条文は「受けることができる」であり、義務ではありません。登録を受ける意味は第132条の50にあり、登録講習機関の講習を修了した者について、国土交通大臣が技能証明の学科試験又は実地試験の全部又は一部を行わないことができることにあります。つまり登録は「スクールを開くための許可」ではなく、「修了者の試験免除を成立させるための登録」です。法人としての資格取得計画は法人が従業員に国家資格を取らせるときの計画で扱っています。

教則が挙げる「航空法以外の法令等」は2つだけ

国土交通省の「無人航空機の飛行の安全に関する教則」は、技能証明の学科試験の出題範囲を示す公式文書です。その第5版(令和8年7月7日公布・7月14日適用)には「3.2 航空法以外の法令等」という節があります。原本を開いて、この節が何を扱っているかを確かめると、次の4項目しかありません。

教則 第5版 3.2 の項目内容
小型無人機等飛行禁止法 重要施設とその周囲おおむね1,000mの上空の飛行禁止、例外3類型、公安委員会等への通報、罰則。詳しくは小型無人機等飛行禁止法の記事
電波法 無線局の免許、技適(適合表示無線設備)、アマチュア無線、携帯電話の上空利用。詳しくは5.7GHz帯のドローンを使うには
その他の法令等 「その他の法令等又は地方公共団体が定める条例に基づき、無人航空機の利用方法が制限されたり…する場合がある」「こうした法令等や条例については、国土交通省ホームページに一覧等が掲載されている」という案内のみ
飛行自粛要請空域 法令等に基づく規制ではないが、関係省庁等の要請に基づき国土交通省が飛行自粛を要請することがある

警備業法も、測量法も、建築基準法も、農薬取締法も、電気事業法も、運送事業法も、この節には1つも出てきません。これは教則の不備ではなく、役割分担です。教則は操縦者が飛行にあたって知っておくべき法令を扱う文書であり、その飛行で何の仕事をするかは扱う対象の外にあります。

ここが、開業時にいちばん見落とされる構造です。 国家資格の教本を通読し、DIPS2.0で包括申請を通し、飛行日誌の様式も整えた。航空法の側は完璧です。それでも、受ける仕事の種類によっては、まだ入口に立っていないことがあります。教則を読んでも出てこない法律が、その仕事には先にかかっているからです。「操縦者として何を守るか」と「事業者として何を持つべきか」は、別々に確認する必要があります。

業種別・かかり得る法律の一覧

受ける仕事の種類ごとに、航空法とは別に関わり得る法律を並べます。この表は「この業種ならこの許可が要る」という対応表ではありません。当てはまるかどうかは、業務の内容・契約の形・誰のために行うかによって変わります。ここで示すのはどの条文を読みに行けばよいかです。

仕事の種類関わり得る法律条文が定めていること所管
警備・監視 警備業法
第2条第1項
第4条
「警備業務」は他人の需要に応じて行う4類型の業務。警備業を営もうとする者は都道府県公安委員会の認定を受けなければならない 警察庁・
都道府県公安委員会
測量 測量法
第10条の2
第55条・第55条の14
「測量業」は基本測量・公共測量・それ以外の測量を請け負う営業。登録を受けない者は測量業を営むことができない(有効期間5年) 国土交通省
(国土地理院・
地方整備局等)
建築物の
定期報告
建築基準法
第12条第1項
特定建築物の所有者等は、一級・二級建築士又は建築物調査員に調査をさせ、結果を特定行政庁に報告しなければならない 国土交通省・
特定行政庁
農薬散布 農薬取締法
第24条・第25条第3項
何人も登録農薬等以外を使用してはならない。農薬使用者は遵守基準に違反して使用してはならない。散布業の許可制度ではない 農林水産省・
環境省
電気設備の点検 電気事業法
第42条・第43条
事業用電気工作物を設置する者が保安規程を定めて届け出、主任技術者を選任する。工事・維持・運用に従事する者は主任技術者の指示に従う 経済産業省
(産業保安監督部)
物流・配送 貨物利用運送事業法
貨物自動車運送事業法
ドローン配送への適用の有無は公式に明示されていません。国土交通省の配送ガイドラインは、法令編でこれらの法律に触れていません 国土交通省
すべての業種
(機材の側)
電波法
第4条
無線局を開設しようとする者は総務大臣の免許を受ける。免許不要の小電力局は適合表示無線設備(技適)に限られる 総務省
(総合通信局)
すべての業種
(申請書の側)
行政書士法
第1条の3・第19条
他人の依頼を受け報酬を得て、業として官公署に提出する書類(電磁的記録を含む)を作成することは行政書士の業務。自社の申請を自分で作ることは対象外 総務省・
日本行政書士会連合会

この表の最後の2行が、業種を問わず全員にかかるのが特徴です。電波法は機材の側から、行政書士法は申請書の側から、仕事の種類と無関係にかかってきます。以下、行ごとに条文を見ていきます。

警備 ― 警備業法第2条第1項と第4条の認定

警備業法第2条第1項は、「警備業務」を次のように定義します。

「この法律において『警備業務』とは、次の各号のいずれかに該当する業務であつて、他人の需要に応じて行うものをいう。
一 事務所、住宅、興行場、駐車場、遊園地等…における盗難等の事故の発生を警戒し、防止する業務
二 人若しくは車両の雑踏する場所又はこれらの通行に危険のある場所における負傷等の事故の発生を警戒し、防止する業務
三 運搬中の現金、貴金属、美術品等に係る盗難等の事故の発生を警戒し、防止する業務
四 人の身体に対する危害の発生を、その身辺において警戒し、防止する業務」

そして第4条が「警備業を営もうとする者は、前条各号のいずれにも該当しないことについて、都道府県公安委員会の認定を受けなければならない」と定めます。認定の有効期間は5年(第5条第4項)。認定を受けずに警備業を営んだ場合、第57条第1号により100万円以下の罰金、第59条の両罰規定により法人にも同額の罰金が科され得ます。

条文を読むと、警備業務に当たるかどうかを決めているのは「何をするか」と「誰のために行うか」の2点だけで、手段は要件に入っていません。人が巡回するかドローンが飛ぶかは、条文の文言からは区別されていないのです。

「ドローンで監視するだけなら警備業法の対象外」とは、公式には書かれていません。 警察庁の「警備業法等の解釈運用基準について(通達)」(令和6年6月27日付け丙生企発第240号)を通読しても、「ドローン」「無人航空機」の語は出てきません。「無人機」が出てくるのは、雑踏警備業務を行う区域を特定するときに勘案する情報通信技術の例として「検定合格警備員が遠隔地の現場の状況を把握するためのカメラ、センサー及び小型無人機」が挙げられている箇所だけです。ドローンによる監視が警備業務に当たるかを正面から示した公的な解釈は、確認できませんでした。この点は所轄の警察署・都道府県公安委員会に照会するのが確実です。

他方で、同通達が明示している切り分けが1つあります。第2条第1項の「他人の需要に応じて行う」について、通達は「他人との契約に基づき、他人のために行うことをいい、『他人』とは、当該業務を行う者以外の個人、法人等をいう」とし、当たらない例として「貸ビル業者が通常必要とされる範囲で自己の所有建物においてその建物自体の保全管理を行う業務」を挙げています(ただし「賃借人との契約に基づいて事故の発生を警戒し、防止する業務は、警備業務に該当する」と続きます)。自社の施設を自社で見回るのか、他人との契約で他人のために見回るのか——ここが最初の分岐点になります。警備分野の航空法側の手続は警備でドローンを使うのに必要な許可・承認と、警備業法との関係で扱っています。

測量 ― 測量業の登録は「公共測量かどうか」で決まらない

ドローン測量まわりでいちばん誤解が多いのがここです。「公共測量でなければ測量法は関係ない」という理解が広まっていますが、測量法の条文の建てつけは違います。

第10条の2は「この法律において『測量業』とは、基本測量、公共測量又は基本測量及び公共測量以外の測量を請け負う営業をいう」と定義します。第55条第1項は「測量業を営もうとする者は、この法律の定めるところにより、測量業者としての登録を受けなければならない」(有効期間5年)、第55条の14は「登録を受けない者は、測量業を営むことができない」と定めます。つまり、登録の要否を分けているのは「公共測量かどうか」ではなく、「測量を請け負う営業かどうか」です。

無登録で測量業を営んだ場合には罰則があります。 測量法第61条の2第1号は、「第55条の14の規定に違反して登録を受けないで測量業を営んだ者」を1年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金に処すると定めています。さらに第65条は両罰規定で、従業者が業務に関して違反行為をしたときは、行為者を罰するほか法人にも各本条の罰金刑が科されます。ドローンを飛ばす技術の話とはまったく別の層に、この規制が乗っています。

ただし「測量」も「それ以外の測量」も定義語である

ここで慎重になる必要があります。第10条の2 が引く3つの語は、いずれも測量法の中で定義された言葉だからです。

語条文の定義
測量
(第3条)
「この法律において『測量』とは、土地の測量をいい、地図の調製及び測量用写真の撮影を含むものとする」
公共測量
(第5条)
基本測量以外の測量で、費用の全部又は一部を国又は公共団体が負担・補助して実施するもの等。ただし政令で定める局地的測量・高度の精度を必要としない測量を除く
基本測量及び
公共測量以外の測量
(第6条)
「基本測量又は公共測量の測量成果を使用して実施する基本測量及び公共測量以外の測量(建物に関する測量その他の局地的測量又は小縮尺図の調製その他の高度の精度を必要としない測量で政令で定めるものを除く。)」

第6条の定義に注目してください。「それ以外の測量」は何でも入るのではなく、基本測量又は公共測量の測量成果を使用して実施するものに限られ、さらに政令で定める局地的測量・低精度の測量が除かれています。したがって、「土地を測るドローン業務はすべて測量業」という読み方も、「公共測量でなければ無関係」という読み方も、どちらも条文に忠実ではありません。自分の受ける仕事がこの定義に入るかどうかは、国土地理院・地方整備局等に確認するのが確実です。

下請の側にも条文があります。 第56条の3は「測量業者は、その請け負つた測量(第4条から第6条までに規定する測量に限る。)を測量業者以外の者に請け負わせてはならない」と定めています。違反は第57条第2項第4号により登録の取消し・営業停止の事由です。元請の測量会社からドローン撮影部分だけを下請けする形を考える場合、その作業が第4条〜第6条の「測量」に当たるなら、下請側も測量業者である必要があるという読み方になります。当てはめは個別性が高いため、発注者と所管に確認してください。公共測量の手続とUAV測量の作業規程については測量でドローンを使うのに必要な許可・承認と、公共測量のルール、作業規程の準則が定めるUAV測量で扱っています。2026年12月3日施行の改正は2026年12月3日の測量法改正にまとめました。

建築物の定期報告 ― 資格が要るのは「調査する者」

建築物の外壁調査は、ドローン活用が制度的に位置づけられた数少ない分野です。ここでの法律は建築基準法第12条第1項で、条文の構造は前の2つとまったく違います。

第12条第1項は、政令で定める特定建築物等の所有者(所有者と管理者が異なる場合は管理者)に対し、「定期に、一級建築士若しくは二級建築士又は建築物調査員資格者証の交付を受けている者(…「建築物調査員」という。)にその状況の調査…をさせて、その結果を特定行政庁に報告しなければならない」と義務づけています。

条文が定めていること読み方
報告の義務を負うのは誰か 建築物の所有者等。調査を請け負った事業者ではありません
資格が必要なのは誰か 調査をする者。一級建築士・二級建築士・建築物調査員のいずれか
機材について条文は何を言っているか 何も言っていません。ドローンや赤外線装置に関する定めは、条文ではなく告示とガイドラインの側にあります
事業者側の登録・許可制度は 第12条第1項にはありません。制度の入口は、資格者が関与する体制を組めるかどうかです

つまり、この分野で押さえるべきは「業の許可」ではなく、誰が調査者として名前を出すかです。有資格者が自ら行うのか、有資格者と組んで撮影部分を担当するのか。赤外線調査が認められる条件と報告書の作り方は建築物の外壁調査(定期報告)にドローンを使うで詳しく扱っています。

農薬散布 ― 許可制ではなく「使用する者」への禁止

農薬散布も、許可制ではありません。農薬取締法第24条は「何人も、次に掲げる農薬以外の農薬を使用してはならない」と定め、第25条第3項は「農薬使用者は、第1項の基準…に違反して、農薬を使用してはならない」と定めます。

主語が「何人も」「農薬使用者」であることに注意してください。散布を業として行う者を登録制・許可制にする条文ではなく、使用する行為そのものを縛る条文です。事業者かどうかを問わず、散布した人に直接かかります。罰則は第47条第3号で3年以下の拘禁刑若しくは100万円以下の罰金(併科あり)、両罰規定は第50条第2号です。

有人機向けの手続と取り違えないようにしてください。 「農薬を使用する者が遵守すべき基準を定める省令」第4条は、「航空機(航空法…第2条第1項に規定する航空機をいう。)を用いて農薬を使用しようとするとき」に、毎年度、最初の日までに農薬使用計画書を農林水産大臣に提出する義務を課しています。括弧書きのとおり、この「航空機」は航空法第2条第1項の有人機です。無人航空機は同条第22項で別に定義されているため、ドローンによる散布はこの計画書の対象外と読めます。農薬散布の実務全体は農薬散布ドローンを使い始めるまでの実務、航空法側の承認不要ルートは農薬散布ドローンの特例で扱っています。

電気設備の点検 ― 義務の名宛人は設置者

太陽光発電設備や送電線の点検は、電気事業法の保安体制の中で行われます。ここでも、義務の名宛人を読み違えないことが大事です。

第42条第1項は「事業用電気工作物(小規模事業用電気工作物を除く。以下この款において同じ。)を設置する者は…保安規程を定め…主務大臣に届け出なければならない」と定め、第43条第1項は「事業用電気工作物を設置する者は…主任技術者免状の交付を受けている者のうちから、主任技術者を選任しなければならない」と定めます。いずれも設置者の義務であって、点検を請け負う外部事業者に課された義務ではありません。

ただし、外部事業者にも直接効いてくる条文があります。第42条第4項「事業用電気工作物を設置する者及びその従業者は、保安規程を守らなければならない」、第43条第5項「事業用電気工作物の工事、維持又は運用に従事する者は、主任技術者がその保安のためにする指示に従わなければならない」。現場でドローンを飛ばす者は、この「従事する者」の側に立つことになります。

「ドローンで点検してよいか」を直接定めた条文は確認できていません。 電気事業法、同施行規則、発電用太陽電池設備に関する技術基準を定める省令、経済産業省の「主任技術者制度の解釈及び運用(内規)」とそのQ&A——これらを機械検索しても、「ドローン」「無人航空機」の語は1件も出てきません。点検の方法は、設置者が保安規程の中で定める領域です。したがって、ドローンによる点検が「認められている」とも「認められていない」とも書けません。実務上は、設置者の保安規程と主任技術者の判断にどう位置づけられるかを、案件ごとに確認することになります。設備ごとの航空法の手続は太陽光発電設備の点検、送電線・電力設備の点検で扱っています。

物流 ― 運送事業法との関係は公式に明示されていない

ドローン配送については、慎重な書き方をします。公式に明示がないからです。

国土交通省の「ドローンを活用した荷物等配送に関するガイドライン」は、ドローン配送について国が出している最も網羅的な文書です。その第2部「法令編」が挙げている法令は、航空法、道路交通法及び道路法、河川法、自然公園法、国有林野の管理経営に関する法律、港則法及び海上交通安全法、土地改良法、地方公共団体が定める条例、民法、小型無人機等飛行禁止法、電波法、薬機法、信書の送達(郵便法・信書便法)。全177ページを機械検索しても、「貨物利用運送事業法」「貨物自動車運送事業法」「利用運送」「航空運送事業」の語は1件も出てきません。

参考までに、貨物利用運送事業法の側の定義を見ておきます。第2条第1項は「『実運送』とは、船舶運航事業者、航空運送事業者、鉄道運送事業者又は貨物自動車運送事業者…の行う貨物の運送をいい、『利用運送』とは、運送事業者の行う運送(実運送に係るものに限る。)を利用してする貨物の運送をいう」と定め、同条第3項は「『航空運送事業者』とは、航空法第2条第18項の航空運送事業を経営する者をいう」と定めます。登録・許可の対象は第一種貨物利用運送事業(第3条・登録)と第二種貨物利用運送事業(第20条・許可)です。

ここから先は書けません。 条文の定義を並べると、利用運送は「他の運送事業者の実運送を利用してする運送」であり、実運送事業者の列挙に無人航空機の運航者は現れません。しかし、この当てはめを示した公的な見解は確認できませんでした。ドローン配送に貨物利用運送事業法・貨物自動車運送事業法が適用されるのか否かは、適用される・されないのいずれも公式には明示されていない——これが2026年9月28日時点で言える範囲です。配送事業を組み立てる段階では、国土交通省の物流担当部局に直接照会するのが確実です。航空法側の手続は物流・配送でドローンを使うのに必要な許可・承認で扱っています。

機材の側からかかる法律 ― 電波法

ここまでは「仕事の中身」からかかる法律でした。業種を問わず全員にかかるものが2つあり、その1つが電波法です。

第4条は「無線局を開設しようとする者は、総務大臣の免許を受けなければならない」と定め、ただし書で免許不要の4類型を挙げます。①発射する電波が著しく微弱な無線局 ②26.9〜27.2MHzで0.5W以下のもののうち適合表示無線設備のみを使用するもの ③空中線電力1W以下で総務省令の要件を満たし適合表示無線設備のみを使用するもの ④登録局。

帯域無線局免許無線従事者資格業務での位置づけ
2.4GHz帯・920MHz帯等
(一般的な市販機)
不要 不要 ただし技適(適合表示無線設備)であることが条件
5.7GHz帯・2.4GHz帯
(無人移動体画像伝送システム)
要 第三級陸上特殊無線技士以上 長距離の画像伝送を使う業務で必要になる
アマチュア無線 要(アマチュア無線局) 要(アマチュア無線技士) 教則第5版は「利益を目的とした仕事などの業務に利用することはできない」と明記

仕事として飛ばす以上、アマチュア無線を使う選択肢は閉じているという点は、開業時に押さえておく価値があります。FPV機を趣味で使っていた人が、そのまま業務に転用できると考えると、ここで詰まります。5.7GHz帯を使う場合の手続は5.7GHz帯のドローンを使うには。無線局免許と第三級陸上特殊無線技士で扱っています。

申請書を誰が作るか ― 行政書士法

業種を問わず全員にかかるもう1つが行政書士法です。2026年1月1日施行の改正で条文が整理され、条番号も動いています。

第1条の3第1項は、行政書士の業務を「他人の依頼を受け報酬を得て、官公署に提出する書類(その作成に代えて電磁的記録…を作成する場合における当該電磁的記録を含む…)その他権利義務又は事実証明に関する書類…を作成することを業とする」と定めます。第19条第1項は「行政書士又は行政書士法人でない者は、他人の依頼を受けいかなる名目によるかを問わず報酬を得て、業として第1条の3に規定する業務を行うことができない」と定め、違反は第21条の2で1年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金、第23条の3の両罰規定により法人にも100万円以下の罰金が科されます。

飛行許可・承認の申請書は「官公署に提出する書類」です。 飛行許可は航空法第132条の85第2項の国土交通大臣の許可、承認は同第132条の86第3項の国土交通大臣の承認、機体登録も国土交通大臣に対する申請です。いずれも国の行政機関に対する申請であり、DIPS2.0上での入力も、第1条の3の括弧書きにより「電磁的記録」として書類の作成に含まれます。

自社の申請を自分でやることは、この条文の対象外

ここを正確に整理します。第19条第1項の構成要件は4つです。

他人の依頼を受けているか
報酬を得ているか(名目は問わない)
業として行っているか
官公署に提出する書類(電磁的記録を含む)の作成に当たるか
4つすべてを満たす → 行政書士法第19条第1項の対象
1つでも欠ける → 同項の適用対象にならない

自社が飛ばす飛行について、自社の申請を自分で作る行為は、①「他人の依頼を受け」の要件を欠きます。したがって第19条第1項の適用対象になりません。従業員が自社の申請を作るのも同じで、それは自社の業務であって他人の依頼ではありません。ドローン事業を始めるにあたって、自社分の包括申請を自分で作ることに、法律上の障害はないと読めます。自分で申請する場合の進め方はドローンの飛行許可、自分で申請するか依頼するかにまとめています。

問題になるのは、他社の申請を有償で引き受ける場面です。 機体を販売する、スクールを運営する、点検業務を元請ける——そうした関係の中で、顧客の申請書を作る側に回ることがあります。報酬の名目が「サポート料」「受講料」「機体代金」であっても、第19条第1項は「いかなる名目によるかを問わず報酬を得て」と定めています。2026年1月1日施行の改正では、両罰規定(第23条の3)の対象に第21条の2が加えられ、従業員の違反について法人にも罰金が科されることになりました。条文に即した詳しい読み方は無資格のドローン申請代行はなぜ違反になるのか、条文で確かめるで扱っています。

当てはめは所管の官庁に確認する

ここまで条文を並べてきましたが、「あなたの仕事がこの条文に当たるか」は、この記事では決められません。警備業務に当たるかは業務の内容と契約の形で変わり、測量業に当たるかは第3条〜第6条の定義語への当てはめで変わります。そして、その判断は最終的に所管の官庁が行います。

確認先は法律ごとに違います。開業準備の段階で、自分の仕事に関係しそうな行だけを拾って照会してください。

法律照会先聞くべきこと
警備業法 所轄の警察署(生活安全課)・都道府県公安委員会 予定している業務が第2条第1項各号の「警備業務」に当たるか。認定の要否
測量法 国土地理院(地方測量部・支所)・国土交通省地方整備局等 受託内容が第3条〜第6条の「測量」に当たるか。測量業者の登録の要否
建築基準法 特定行政庁(都道府県・市の建築指導担当課) 定期報告の調査者としてどう関与できるか。赤外線調査の扱い
農薬取締法 都道府県の病害虫防除所・農薬指導担当課 使用する農薬のラベル記載事項、遵守基準、周辺への周知の進め方
電気事業法 産業保安監督部・設備の設置者(保安規程の所管) 点検方法として保安規程にどう位置づけるか。主任技術者との役割分担
貨物利用運送事業法等 国土交通省(物流・自動車局)・地方運輸局 予定している配送の形が登録・許可の対象になるか
電波法 総務省 総合通信局 使用する無線設備の免許の要否、技適の有無、運用調整
航空法 国土交通省(地方航空局・空港事務所)、DIPS2.0 予定している飛行が特定飛行に当たるか。包括申請の範囲
照会のときは「ドローンを使ってよいか」と聞かないでください。 多くの業法は、手段としてのドローンを要件にしていません。だから「ドローンでやってよいですか」と聞くと、答える側も困ります。聞くべきなのは「この業務内容を、この契約形態で、この相手のために行う場合、御庁の所管する法律の対象になりますか」です。業務の内容・契約の形・誰のために行うかの3点を具体的に書いて持っていくと、回答が得られやすくなります。

法令とは別に、必ず残る層がある

最後に付け加えます。業法をすべてクリアしても、飛ばせるとは限りません。土地・施設の管理者の同意、道路上での作業の扱い、私有地上空の権利関係、自治体の条例や施設の運用ルール——これらは業法とも航空法とも別の層にあり、実務では最も時間を食うことが多い部分です。教則第5版も「その他の法令等」の項で、条例等により飛行が制限される場合があることに触れています。関連する論点はドローンに道路使用許可は必要か、私有地の上空、所有権はどこまで及ぶのかで扱っています。

よくある質問

ドローンで開業するのに、まず取るべき「許可」は何ですか。
「ドローン事業の許可」という制度は存在しません。航空法第十一章「無人航空機」には、機体の登録、機体認証、技能証明、飛行の禁止空域・飛行の方法などの制度はありますが、無人航空機を使う事業を許可制・登録制にする条文はありません。実務上まず必要になるのは、100g以上の機体の機体登録と、行う飛行が特定飛行に当たる場合の許可・承認です。そのうえで、受ける仕事の種類ごとに別の業法を確認するという順序になります。
有償で空撮を請け負うと、航空法の事業許可が必要になりますか。
航空法第2条第18項の「航空運送事業」も第21項の「航空機使用事業」も、定義が「航空機を使用して」となっています。同条第1項の「航空機」は「人が乗つて航空の用に供することができる」機器で、無人航空機は同条第22項で「構造上人が乗ることができないもの」と別に定義されています。したがって、ドローンで有償の撮影を請け負っても、これらの事業許可の定義には入らないと読めます。なお、航空法の飛行許可・承認の要否は有償か無償かで変わりません。空撮業務の実務は空撮・映像制作でドローンを使うのに必要な許可・承認、納品時の権利処理は空撮映像を納品するときの権利処理で扱っています。
ドローンで施設を監視する仕事は、警備業の認定が必要ですか。
一律には答えられません。警備業法第2条第1項は「警備業務」を、同項各号の業務であって「他人の需要に応じて行うもの」と定義し、第4条は警備業を営もうとする者に都道府県公安委員会の認定を義務づけています。条文は手段を要件にしていないため、ドローンを使うこと自体は要件にも除外事由にもなっていません。一方で、ドローンによる監視が警備業務に当たるかを正面から示した公的な解釈は確認できませんでした(警察庁の解釈運用基準に「ドローン」「無人航空機」の語はありません)。予定している業務の内容と契約の形を具体的にして、所轄の警察署に照会してください。
公共測量ではない民間の測量なら、測量業者の登録は不要ですか。
そう単純ではありません。測量法第10条の2は「測量業」を「基本測量、公共測量又は基本測量及び公共測量以外の測量を請け負う営業」と定義しており、登録の要否は公共測量かどうかでは決まりません。ただし第6条の「基本測量及び公共測量以外の測量」も定義語で、「基本測量又は公共測量の測量成果を使用して実施する」もので、政令で定める局地的測量・高度の精度を必要としない測量を除く、とされています。どちらの読み方にも寄せられないため、受託内容を具体的にして国土地理院・地方整備局等に確認してください。無登録で測量業を営んだ場合、第61条の2第1号により1年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金の対象になり得ます。
ドローンで荷物を運ぶ事業に、運送業の許可は要りますか。
公式に明示されていません。国土交通省の「ドローンを活用した荷物等配送に関するガイドライン」は法令編で多数の法令を挙げていますが、貨物利用運送事業法・貨物自動車運送事業法には一切触れていません。貨物利用運送事業法第2条第1項の「利用運送」は、船舶・航空・鉄道・貨物自動車の各実運送事業者の運送を利用してする運送と定義されていますが、ドローン配送がこれに当たるかを示した公的見解は確認できませんでした。適用される・されないのいずれも断定できないのが現状です。事業化の段階で、地方運輸局等に直接照会してください。
農薬散布を仕事にするには、何の許可が必要ですか。
農薬取締法に散布業の許可・登録の制度はありません。同法第24条は「何人も、次に掲げる農薬以外の農薬を使用してはならない」、第25条第3項は「農薬使用者は、第1項の基準…に違反して、農薬を使用してはならない」と定めており、使用する行為そのものを縛る構造です。違反は第47条第3号により3年以下の拘禁刑若しくは100万円以下の罰金(併科あり)、第50条第2号の両罰規定もあります。なお、省令第4条の農薬使用計画書は「航空機(航空法第2条第1項に規定する航空機)」を用いる場合の義務で、無人航空機は対象外と読めます。
自分の会社の飛行許可申請を自分で作るのは、行政書士法に触れますか。
触れません。行政書士法第19条第1項は「他人の依頼を受けいかなる名目によるかを問わず報酬を得て、業として…」と定めており、「他人の依頼を受け」が構成要件です。自社が飛ばす飛行について自社の申請を作る行為は、この要件を欠くため、同項の適用対象になりません。従業員が自社の申請を作るのも同じです。問題になるのは、他社の申請を報酬を得て業として作る側に回る場合で、報酬の名目が「サポート料」「受講料」「機体代金」であっても同項は「いかなる名目によるかを問わず」としています。
国家資格(技能証明)を取れば、事業者としての要件は満たせますか。
いいえ。技能証明は操縦する人の資格であり、事業を営むための要件ではありません。技能証明があっても、警備業法の認定や測量業者の登録が要る仕事なら、それらは別に必要です。逆に、技能証明がなくても、許可・承認を取れば多くの特定飛行は行えます。「操縦者として何を持つか」と「事業者として何を持つか」は別の話です。なお、講習を行う場合の登録講習機関の登録(航空法第132条の69)は「登録を受けることができる」という任意の制度で、スクールを開くための許可ではありません。
どの法律が関係するか、自分で調べる方法はありますか。
出発点は「ドローンで何をするか」ではなく「その仕事は、ドローンを使わなければ誰の仕事だったか」を考えることです。人が巡回していたなら警備業法、測量会社がやっていたなら測量法、建築士がやっていたなら建築基準法——というように、既存の業界にかかっている法律が、そのまま残っていると考えるのが実態に合います。そのうえで、e-Gov法令検索で所管法の定義規定(多くは第2条前後)と、業の登録・許可の条文を読んでください。教則第5版の「3.2 航空法以外の法令等」には業法が載っていないため、教則だけでは足りません。
この記事の一次ソース
  1. e-Gov法令検索|航空法(昭和二十七年法律第二百三十一号)
  2. e-Gov法令検索|警備業法(昭和四十七年法律第百十七号)
  3. e-Gov法令検索|測量法(昭和二十四年法律第百八十八号)
  4. e-Gov法令検索|建築基準法(昭和二十五年法律第二百一号)
  5. e-Gov法令検索|農薬取締法(昭和二十三年法律第八十二号)
  6. e-Gov法令検索|農薬を使用する者が遵守すべき基準を定める省令
  7. e-Gov法令検索|電気事業法(昭和三十九年法律第百七十号)
  8. e-Gov法令検索|貨物利用運送事業法(平成元年法律第八十二号)
  9. e-Gov法令検索|電波法(昭和二十五年法律第百三十一号)
  10. e-Gov法令検索|行政書士法(昭和二十六年法律第四号)
  11. 国土交通省|無人航空機の飛行の安全に関する教則 第5版(PDF)
  12. 国土交通省|無人航空機の飛行ルール(飛行禁止空域・飛行の方法)
  13. 国土交通省|無人航空機の飛行許可・承認手続
  14. 警察庁|警備業法等の解釈運用基準について(令和6年6月27日付け丙生企発第240号・PDF)
  15. 国土地理院|公共測量を実施するために必要な手続の解説
  16. 国土交通省|定期報告制度について
  17. 総務省|行政書士法の一部を改正する法律の公布について(総行行第281号・PDF)
  18. 日本行政書士会連合会|会長談話(行政書士法第19条第1項及び第23条の3の改正の趣旨等について)
本記事は2026年9月28日時点の情報です。 この記事は各法律の条文の要件を示すもので、個別の業務が特定の法律の対象になるかどうかを判定するものではありません。当てはめは業務の内容・契約の形・誰のために行うかによって変わり、最終的な判断は所管の官庁が行います。とくに警備業法の認定、測量業者の登録、貨物利用運送事業法の適用については、公式に明示されていない論点が残っています。事業を始める前に、上記の一次ソースで最新の条文を確認したうえで、所管の官庁に照会してください。

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