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農薬散布ドローンを使い始めるまでの実務。機体登録・資格・農薬取締法・飛行計画

公開 2026-10-10 更新 2026-10-10 読了 約17分

農薬散布ドローンの始め方でつまずくのは、踏むべき手続が航空法と農薬取締法の2本に分かれていることです。航空法の側は機体登録から始まり、飛行の許可・承認、飛行計画の通報、飛行日誌へと続きます。これとまったく別に、農薬取締法の側で「その農薬をその撒き方で使っていいのか」という要件があります。国家資格を取っても、機体認証を受けても、こちらは免除されません。 さらに、農業用の散布機は総重量が25kgを超えるものがあり、重量区分をまたぐと制度の当てはまり方が変わります。機体登録の申請書でも、区分は25kg未満と25kg以上の2つに分かれています(航空法施行規則第236条の3第1項第9号)。 この記事では、散布を始めるまでに踏む手続を順番どおりに並べ、それぞれの根拠条文と一次資料を示します。2026年3月23日に始まった承認が不要になる特例そのものの要件は農薬散布ドローンの特例。承認が不要になる条件で扱っているので、ここでは「その特例に乗るか、乗らないか」という分岐点として扱います。

よく見る説明と、公式の記載
農薬散布は航空法と農薬取締法の両方が同時にかかる領域で、片方だけの説明が流通しやすい状態です。この記事で扱う範囲について、条文と公式資料の記載を突き合わせます。
よく見る説明ドローンの資格(国家資格)を取れば、農薬を撒けるようになる。
公式にはこう技能証明は航空法の手続に関する制度です。農薬の使用には別に農薬取締法の要件があり、「何人も」登録農薬と特定農薬以外を使用してはならないとされています(同法第24条)。さらにラベルの適用作物・希釈倍数・使用量等を守る基準があり、違反すると罰則の対象です。
出典 農薬取締法 第24条・第25条第3項・第47条第3号
よく見る説明ドローンで農薬を撒くなら、農林水産省に散布計画を出さなければならない。
公式にはこう農林水産省のQ&Aは「ドローンによる農薬等の空中散布に関して、農林水産省に散布計画を提出する必要はありません」としています。ただし都道府県が独自に提出を求めている場合があり、これは「任意の取組」と説明されています。
出典 農林水産省 Q&A(使用者向け)Q24・Q26
よく見る説明農薬散布の経験を積むには、まず特定の団体の認定を受ける必要がある。
公式にはこう農林水産省は「ドローンで農薬散布を行うために、特定の団体の資格、免許、ライセンス等の取得義務はありません」「特定団体による機体の認定は不要です」としています。団体の認定を代行申請の前提にしていた農林水産省の通知は令和元年7月に廃止されました。
出典 同Q&A Q2・Q8・Q36・Q37

全体像:散布までに踏む7つの手続

最初に順番を示します。上から3つは機体と人の準備、4つめが航空法の許可・承認、5つめ以降が農薬の側と、飛ばすたびの義務です。この並びを崩すと、機体を買ってから「この機体では要件を満たせない」と気づく、といった手戻りが起きます。

機体登録(航空法第132条の2)。登録記号の表示とリモートID機能まで済ませる。申請書で25kg未満/25kg以上の重量区分を申告する
どの道で飛ばすかを決める。①承認が不要になる特例に乗る(機体認証と技能証明が前提)②許可・承認を申請する(技能証明がなくても申請はできる)
①なら機体認証と技能証明、散布の練習まで。②なら操縦者の飛行経歴・知識・能力を審査基準に合わせる
②なら許可・承認の申請。危険物輸送・物件投下は散布の中核で、加えて夜間・目視外・30m未満・DID上空が絡む。飛行開始予定日の10開庁日前までに提出
農薬取締法の側の確認。使う農薬が登録農薬か、ラベルの適用作物・希釈倍数・使用量・使用時期・総使用回数をドローンの撒き方で守れるか
飛行計画の通報(法第132条の88第1項)と飛行日誌(法第132条の89)。承認が不要になっても、特定飛行ならどちらも残る
周辺への情報提供と危険防止措置。学校・病院・家屋・蜜蜂の巣箱・有機農業のほ場が近い場合の事前周知、立入管理措置、防護装備
散布の実施 → 飛行日誌への記載、事故があれば航空法と農薬取締法の2系統の報告
手続2が分岐点です。 2026年3月23日に施行された航空法施行規則第236条の82第1項第2号により、要件を満たす農薬等の空中散布は夜間・目視外・30m未満・危険物輸送・物件投下の承認が不要になりました。国土交通省の「無人航空機の飛行の安全に関する教則」第5版も、3.1.2(2)3)dに「航空法施行規則第236条の82第1項第2号の規定による農薬散布等の例外」としてこれを書き入れています。ただし国土交通省の通達は、その前提として第一種か第二種の機体認証と一等か二等の技能証明を求めています。「承認が不要になる」ほうが手続の総量が少ないとは限りません。要件の詳細は農薬散布ドローンの特例。承認が不要になる条件で整理しています。

手続1:機体登録と、リモートID

出発点は機体登録です。航空法第132条の2は「無人航空機は、無人航空機登録原簿に登録を受けたものでなければ、これを航空の用に供してはならない」と定めています。対象は重量100g以上の機体で、100g未満のものは施行規則第5条の2により無人航空機から除かれます。散布機で100g未満はまず考えられないため、例外なく登録が必要な機械と考えて差し支えありません。

農林水産省のマルチローター向け安全ガイドラインも、第2の1(3)で「無人マルチローターの所有者は、航空法第132条の2の規定に基づき、当該無人マルチローターについて国土交通大臣の登録を受ける義務があることから、これを確実に行う」と書いています。農薬の側の資料が航空法の手続を念押ししている、という構造です。

登録申請で申告する「重量の区分」

散布機で意識しておきたいのは、登録の申請書に重量区分を書く欄があることです。施行規則第236条の3第1項第9号は、記載事項として「次に掲げる無人航空機の重量の区分の別」を挙げ、区分を「イ 二十五キログラム未満」「ロ 二十五キログラム以上」の2つとしています。同項第13号ではリモートID機能の有無(機器を装備する場合は型式・製造者・製造番号を含む)も申告します。

この区分は、登録記号の表示の仕様にもそのまま効いてきます。

項目25kg未満の機体25kg以上の機体
登録記号の文字・数字の高さ
(規則第236条の6第1項第1号ハ)
3ミリメートル以上 25ミリメートル以上
表示の方法(同号イ・ロ) 装飾体でないアラビア数字又はローマ字の大文字で、耐久性のある方法で鮮明に。胴体のうち容易に取り外すことができない部分の表面で、外部から容易に確認できる場所に表示する
リモートID機能(同項第2号) 機体に登録記号等を入力する方法か、リモートID機能を有する機器を装備して入力する方法のいずれか

散布機は機体が大きいぶん、25mmの文字を貼る場所自体は確保しやすいはずです。逆に、タンクやカバー類のように整備で取り外す部品に貼ってしまうと条文の要件から外れます。「容易に取り外すことができない部分」という限定を、貼る前に確かめてください。登録の手順そのものは無人航空機の登録制度 完全ガイド、法人名義で登録する場合の本人確認は法人でドローンを登録するときの手続き。所有者と使用者、本人確認で扱っています。

リモートIDを備えなくてよい場合

リモートID機能には例外があります。施行規則第236条の6第2項は、次の3つの飛行に用いる機体について、リモートIDを備える規定を適用しないとしています。

  • あらかじめ国土交通大臣に届け出た区域の上空での飛行で、飛行を監視するための補助者の配置その他の措置と、区域の範囲を明示する標識の設置その他の措置が講じられているもの(届出書には氏名等・登録記号・飛行の日時、区域及び高度を記載します)
  • 十分な強度を有する紐等(長さ30m以下)で係留して、飛行の範囲を制限した飛行
  • 警察庁・都道府県警察・海上保安庁その他大臣が指定する機関の、警備その他特に秘匿を必要とする業務のための飛行

加えて、国土交通省の無人航空機登録ポータルサイトは、事前登録期間(2021年12月20日〜2022年6月19日)に登録手続をした機体は、登録更新後もリモートIDの搭載は不要のままとしています。中古で古い散布機を引き継ぐ場合は、この扱いに当たるかどうかが変わってくる点です。なお機体登録の有効期間は3年で、更新を忘れると登録は効力を失います(機体登録の更新。満了日の1か月前から、が損しない/機体登録を失効させたらどうなるか。登録記号も変わる)。

1つめの例外は、散布ほ場での運用に転用できるものではありません。 条文が求めているのは「あらかじめ届け出た区域」であることと、補助者の配置および区域の範囲を明示する標識の設置です。ほ場で補助者を置いて作業していることは、それ自体ではこの例外の要件を満たしません。届出をしていない区域での飛行に、この例外は使えません。

25kgの線を越えると何が変わるか

農業用の散布機は、タンク容量が大きくなるほど重くなります。総重量が25kgを超えるかどうかは、航空法の中でくり返し出てくる線です。施行規則第236条の73は「法第132条の85第2項及び第3項並びに法第132条の86第3項及び第4項の国土交通省令で定める総重量は、二十五キログラムとする」と定めています。

場面25kg未満25kg以上根拠
立入管理措置を講じてDID上空を飛ぶとき 技能証明+機体認証があれば、所定の措置を講じることで許可が不要になり得る 許可が必要(法第132条の85第2項の括弧書きが「省令で定める総重量を超える無人航空機」を対象に含める) 法第132条の85第2項・第3項
規則第236条の73
承認が不要になる特例で、夜間・目視外・30m未満を行うとき 対象になり得る 対象外(規則第236条の82第1項第2号ロ)。昼間・目視内で30m以上を保つ散布なら25kg以上も対象になり得る 規則第236条の82第1項第2号ロ
技能証明の限定 そのまま 通達は総重量の限定変更(解除)を求めている 通達3(4)ハ関係
第三者賠償責任保険 任意 教則第5版2.3.3は、カテゴリーⅡ飛行のうち総重量25kg以上の機体を飛行させる場合に「十分な補償が可能な第三者賠償責任保険に加入していることが求められる」としている 教則第5版 2.3.3
登録記号の文字の高さ 3mm以上 25mm以上 規則第236条の6第1項第1号ハ
「総重量」は機体の自重だけの話ではありません。 条文が使う語は「総重量」です。散布機は薬液を積んだ状態で飛ぶため、空の状態で25kgを下回っていても、満載で超えることがあります。どの状態の重量で判断するかは飛行ごとの当てはめになります。機体の仕様書で「最大離陸重量」と「機体重量」の両方を確認し、25kgに近い機体では余裕を持って判断してください。

手続2:資格と機体認証が必要になるのは、どの道を選ぶか次第

ここで誤解が生まれやすいのですが、農薬散布のために国家資格が義務づけられているわけではありません。農林水産省のQ&Aも「ドローンで農薬散布を行うために、特定の団体の資格、免許、ライセンス等の取得義務はありません」としています。技能証明と機体認証が必要になるのは、承認が不要になる特例に乗る道を選んだときです。

①特例に乗る道
(規則第236条の82第1項第2号)
②許可・承認を取る道
機体 第一種か第二種の機体認証を受け、行う飛行に応じた項目が機体認証の審査で確認されていること 機体認証は不要。申請で機能・性能が審査基準に適合することを示す
操縦者 機体の種類の限定を受けた一等か二等の技能証明。25kg以上・夜間・目視外なら該当する限定変更。5回以上の空中散布の練習と物件投下の練習 技能証明は必須ではない。ない場合は飛行経歴・知識・能力が審査基準に適合することを示す
飛行の方法の承認 不要(夜間・目視外・30m未満・危険物輸送・物件投下) 必要
場所・高さの制約 関係者が所有・管理する現に使われている農地・森林の中で、作物の上端等から4m以下 この制約はない(申請内容の範囲で飛ばす)
飛行マニュアル 承認不要ルート専用の航空局飛行マニュアルを原則として使用 申請用の航空局標準マニュアル(空中散布)などを使用

散布事業を立ち上げる順序としては、②から入って、機体の入れ替えのタイミングで①に寄せるという組み方が現実的な場面が多いはずです。国土交通省の型式認証一覧(令和8年6月19日現在)を見ると、飛行の方法の欄に危険物輸送と物件投下が載っている型式は、重量区分25kg以上のヘリコプター型に限られていました。型式認証を受けていない機体でも1機ごとに機体認証を取ることはできますが、その機体は一覧には載りません。

「機体認証を受けている」だけでは、特例の要件を満たしません。 通達3(2)は「第一種機体認証又は第二種機体認証を受けた機体であり、かつ、飛行の方法に応じて以下の要件を満たすことが、機体認証に係る審査の中で確認されていること」を要件にしています。散布は物件投下を伴い、積む農薬が危険物に当たれば危険物輸送も伴います。実際に使う機体がこれを満たすかは、機体認証書と、交付された使用条件等指定書・無人航空機飛行規程で確認してください。制度の全体像は機体認証・型式認証とは。第一種と第二種の違い、一覧の読み方は型式認証を取得している機体の一覧と、その見方、認証機体を買うか申請で回すかの判断は認証機体を買うか、許可・承認で回すかと機体認証の手数料。型式認証の有無で桁が変わるをご覧ください。

技能証明を取る側の段取りは、等級と限定を「飛ばす内容から逆算する」のが要点です。25kg以上の機体を使うのか、夜間や目視外を行うのかで、必要な限定変更が変わります。従業員に取らせる場合の計画の立て方は法人が従業員に国家資格を取らせるときの計画。等級と限定は、飛ばす内容から逆算する、有効期間と更新は技能証明の更新。有効期間3年と更新講習、申請は満了日の1か月前までで扱っています。

手続3:特例に乗らない場合に取る許可・承認

特例に乗らないなら、従来どおり申請します。農薬散布で問題になる類型は決まっています。

類型根拠条文散布での当たり方
物件投下
(承認)
法第132条の86
第2項第6号
散布そのもの。農林水産省のQ&Aも空中散布を「危険物の輸送、物件投下」として説明しています
危険物の輸送
(承認)
法第132条の86
第2項第5号
積む農薬が危険物に当たる場合。危険物に当たるかは規則第236条の80と関係告示で個別に決まります
人又は物件から30m未満
(承認)
法第132条の86
第2項第3号
規則第236条の79
ほ場に隣接する家屋・電柱・車両など、第三者の物件が近い場面
目視外飛行
(承認)
法第132条の86
第2項第2号
ほ場が広い場合、樹園地で機体が樹冠の陰に入る場合。モニターや補助者の目は「目視」に当たりません
夜間飛行
(承認)
法第132条の86
第2項第1号
早朝・薄暮に作業する場合。日出前・日没後は夜間です
DID上空
(許可)
法第132条の85
第1項第2号
規則第236条の72
市街地に囲まれた農地。2026年7月1日から工業専用地域は対象外になりましたが、農地でこれに当たる場面は多くないはずです
催し場所上空
(承認)
法第132条の86
第2項第4号
通常の散布では想定されにくい類型。ただし特例はこの類型を外しません

申請には、国土交通省が公開している航空局標準マニュアル(空中散布)が使えます。飛行許可・承認手続ページには、標準マニュアル01・02、空中散布、研究開発、インフラ点検の01・02、レベル3.5飛行のマニュアルが並んでおり、空中散布用はその1つです。散布シーズンに繰り返し飛ぶなら、期間と場所をまとめる包括申請が現実的です(包括申請とは。個別申請との違いと、使い分けの判断基準/包括申請の更新。40開庁日前から10開庁日前までの窓)。標準マニュアルで運用が成り立たない場合は独自マニュアルを作ります(独自の飛行マニュアルを作るべきときと作り方)。

提出は飛行開始予定日の10開庁日前までです。 農林水産省のQ&Aも「散布予定日の少なくとも10開庁日前までに提出する必要があります」としています。国土交通省は不備による追加確認を見込んで3〜4週間程度の余裕を推奨しています。防除の適期は動かせません。散布の暦から逆算して申請日を決めてください。許可と承認の切り分けそのものはドローンの飛行許可・承認申請 完全ガイドで扱っています。
2025年12月18日より前の情報には、いまは使えない「省略」の説明が残っています。 かつては、民間講習団体の技能認証を持っていれば申請書類の一部を省略できる仕組みと、国土交通省がホームページに掲載した量産機を使えば資料の一部を省略できる仕組みがありました。いずれも2025年12月18日施行の審査要領改正で廃止されています。農林水産省のQ&Aは令和5年5月作成で、この2つを現行の仕組みとして説明しているため、申請書類の範囲については国土交通省の現行の審査要領と手続ページを基準にしてください。改正内容は2025年12月の審査要領改正で何が変わったかで整理しています。

なお、係留による特例は散布には使えません。施行規則第236条の82第1項第1号は危険物を輸送しない飛行を前提としているため、農薬を積む散布は対象外です(30m以下の係留で許可・承認が不要になる範囲)。

手続4:農薬取締法の側で確認すること

ここが、航空法の話だけを追っていると抜け落ちる層です。航空法の承認が不要になっても、許可が下りても、農薬を使うことについてのルールは別に残ります。

使用者を縛る条文は第24条と第25条第3項

農薬取締法第24条(使用の禁止)は、こう定めています。

「何人も、次に掲げる農薬以外の農薬を使用してはならない。ただし、試験研究の目的で使用する場合、第三条第一項の登録を受けた者が製造し若しくは加工し、又は輸入したその登録に係る農薬を自己の使用に供する場合その他の農林水産省令・環境省令で定める場合は、この限りでない。
一 容器又は包装に第十六条の規定による表示のある農薬(第十八条第二項の規定によりその販売が禁止されているものを除く。)
二 特定農薬」

さらに同法第25条第1項は、農林水産大臣及び環境大臣が「農薬を使用する者が遵守すべき基準」を省令で定めなければならないとし、同条第3項が「農薬使用者は、第一項の基準…に違反して、農薬を使用してはならない」としています。その省令が農薬を使用する者が遵守すべき基準を定める省令(平成15年農林水産省・環境省令第5号)です。

同省令第2条第1項は、食用及び飼料の用に供される農作物等に農薬を使うときの基準を5つ挙げています。

  1. 適用農作物等の範囲に含まれない食用農作物等に、その農薬を使用しない
  2. 付録の算式によって算出される量を超えて、その農薬を使用しない(使用量の上限)
  3. 希釈倍数の最低限度を下回る希釈倍数(=濃くする方向)で使用しない
  4. 定められた使用時期以外の時期に使用しない
  5. 生育期間において、有効成分の種類ごとの総使用回数を超えて使用しない
第24条または第25条第3項に違反すると、3年以下の拘禁刑若しくは100万円以下の罰金、またはその併科の対象です。 農薬取締法第47条第3号が、第24条と第25条第3項の違反を挙げています。加えて同法第50条は両罰規定を置いており、法人の従業者が業務に関して違反したときは、行為者を罰するほか法人にも罰金刑が科されます(第24条・第25条第3項の違反は同条第2号により各本条の罰金刑)。散布を請け負う事業では、現場の判断で希釈倍数を濃くすることが法人のリスクに直結します。農林水産省のQ&Aも「省令の第2条第1項に違反した農薬使用(ラベルに記載された適用作物、希釈倍率、使用量等を守っていないなど)を行った場合は、罰則の対象となります」としています。

「ドローンで使える農薬」の正確な意味

ここは表現が難しいところなので、農林水産省の記載に沿って整理します。

言われ方農林水産省の記載
「無人航空機用として登録された農薬でなければ使えない」 そのままでは正確ではありません。農林水産省は「農薬の使用方法を始め、希釈倍数、使用量等を遵守できる範囲であれば、ドローンを使用して散布することができます」としています。使用方法が「無人航空機による散布」等とされている農薬は「これだけに限りませんが、ドローン向けの高濃度少量散布が認められた農薬です」と説明されています
「散布機器が書かれていない農薬なら何でも使える」 これも違います。「ドローンでの散布には、積載量の制約などから、高濃度・少量での散布が必要な場合が多いため、使用に当たっては、こうした希釈倍数、使用量等が認められているかを確認してください」とされています。「定められた希釈倍数を下回る希釈倍数とする(濃くする)など、登録の範囲を超えて農薬を使用することはできません」
「ラベルに『空中散布』と書いてあれば使える」 使えません。農林水産省は「使用方法が有人ヘリコプターでの空中散布を指す『空中散布』とされているものは、ドローンでは使用できません」と明記しています

つまり判断の順序は、①その農薬が登録農薬(ラベルに表示のあるもの)か特定農薬か → ②ラベルの適用作物にその作物が入っているか → ③ドローンで撒く濃度・量・時期・回数が、ラベルの範囲内に収まるかです。③で引っかかる農薬は、機体の性能とは無関係に使えません。

検索は農薬登録情報提供システム(pesticide.maff.go.jp)で行えます。農林水産省は、このシステムで「使用方法」を選んで「無人」と入力し、対象作物を選んで検索する手順を案内しています。

使った記録を残す努力義務があります。 同省令第9条は、農薬を使用したときに①使用した年月日②場所③農作物等④農薬の種類又は名称⑤単位面積当たりの使用量又は希釈倍数 を帳簿に記載するよう努めなければならないとしています。航空法の飛行日誌とは別の記録です。散布1回につき、航空法の飛行日誌と農薬の帳簿の2つが発生すると考えて、記入の様式を最初から2本立てで用意しておくと運用が崩れません。
「航空機を用いた農薬の使用」の計画書は、ドローンには当たらないと読めます。 同省令第4条は、航空機を用いて農薬を使用しようとするときに、毎年度、農薬使用計画書を農林水産大臣に提出する義務を課しています。ただしこの「航空機」は航空法第2条第1項に規定する航空機と定義されており、同項の「航空機」は「人が乗つて航空の用に供することができる」機器です。無人航空機は同条第22項で「構造上人が乗ることができないもの」として別に定義されているため、ドローンによる散布は第4条の計画書の対象ではないと読めます。農林水産省のQ&Aが「ドローンによる農薬等の空中散布に関して、農林水産省に散布計画を提出する必要はありません」としているのと整合します。

手続5:農林水産省の安全ガイドライン

農薬散布ドローンについて、農林水産省が出している文書の名称と最新版を確認しておきます。2026年9月27日時点で存在するのは、次の2本の「安全ガイドライン」です。

名称制定・最終改正対象
無人マルチローターによる農薬の空中散布に係る安全ガイドライン 制定 令和元年7月30日付け元消安第1388号消費・安全局長通知
最終改正 令和5年3月30日付け4消安第7181号(附則により令和5年4月1日施行)
「ほぼ垂直な軸回りに回転する三つ以上の回転翼によって主な揚力及び推進力を得る回転翼無人航空機」=一般的なマルチローター型のドローン
無人ヘリコプターによる農薬の空中散布に係る安全ガイドライン 同じ制定日・同じ最終改正 無人ヘリコプター。こちらには空中散布計画書・実績報告書の様式と提出の定めがあります

「無人航空機による農薬等の空中散布を安全かつ適正に実施するための指導指針」といった名称の文書は、農林水産省の該当ページにもガイドライン原本にも見当たりませんでした。この分野で「指針」として参照されているのは、上の2本のガイドラインです。国土交通省の通達3(9)⑲も、農薬取締法等の関係法令に従うとともに「『農薬の空中散布に係る安全ガイドラインの制定について』(令和元年7月30日付け元消安第1388号)等の関連通知に留意」するよう求めています。

ガイドラインの位置づけ

マルチローター版の第1(趣旨)は、自らの位置づけをこう書いています。「安全かつ適正な農薬使用を行うために参考とすることができる目安を示すため、本ガイドラインを定める」。農林水産省のQ&Aはさらに踏み込んで、「空中散布ガイドラインを守らなかった場合に罰則等がかかるものではありません」「しかし…ドローンを使用して農薬散布を行う場合には空中散布ガイドラインを守っていただきたいと考えます」としています。

罰則の有無と、守るべきかどうかは別の問題です。 ガイドライン自体に罰則はありませんが、その中身の多くは農薬取締法第25条第1項の省令の要件を現場でどう満たすかを具体化したものです。たとえばガイドライン第2の3(5)は「農薬ラベルに表示される使用方法(単位面積当たりの使用量、希釈倍数等)を遵守し、ドリフトが起こらないよう十分に注意する」としていますが、前半は省令第2条第1項そのもので、こちらには罰則があります。「ガイドラインは任意」で片づけると、罰則のある部分まで一緒に落ちます。

散布方法の目安

ガイドライン第2の3(3)は、機体等メーカーが取扱説明書等に記載した散布方法(飛行速度、飛行高度、飛行間隔及び最大風速)を参考に散布するよう求めています。メーカーによる設定がなく取扱説明書等に記載がない場合は、「当面の間」、次の方法により実施するとされています。

  • 飛行高度は、作物上2m以下
  • 散布時の風速は、地上1.5mにおいて3m/s以下
  • 飛行速度及び飛行間隔は、機体の飛行諸元を参考に農薬の散布状況を随時確認し、適切に加減する

航空法側の特例が定める高さの上限は「地表若しくは水面又は農作物の上端から4メートル以下」です。この2mと4mは別の基準で、目的も違います。4mは航空法の要件、2mは農薬を適正に使うための目安です。両方にかかる飛行なら、厳しいほうに合わせることになります。

そのほか、実務に直接効く記載を抜き出します。

  • 第2の3(1):風下から散布を開始する横風散布を基本に飛行経路を設定する
  • 第2の3(6):架線等の危険個所、実施除外区域、飛行経路、操縦者や補助者の経路をあらかじめ実地確認し、必要に応じて危険個所と実施除外区域を明示しておく
  • 第2の3(7):散布装置が適正に散布できること(所定の吐出量において間欠的でないことなど)を使用前に確認し、適時点検する
  • 第2の3(9):強風で作業が困難なら無理に続行せず、気象条件が安定するまで待機する
  • 第2の3(10):操縦者・補助者等の農薬暴露を回避するため、防護装備を着用する
  • 第2の3(11):作業終了後、散布装置(タンク、配管、ノズル等)を十分に洗浄し、洗浄液・残液等を安全に処理する
  • 第2の1(1):実施場所・実施予定月日・作物名・散布農薬名・10a当たりの使用量又は希釈倍数等を記載した計画書を作成する(提出先は定められていません)
  • 第2の1(2):作業を他者に委託する場合、防除委託者は防除実施者と十分に連携して計画を検討する
マルチローター版ガイドラインは、承認が不要になる特例を反映していません。 2026年9月27日時点で、このガイドラインの航空法に関する記載は、機体登録(第2の1(3))、飛行計画の通報(同(4))、飛行日誌(第2の3(13))、事故報告(第3)にとどまり、許可・承認の要否には触れていません。また農林水産省の「無人航空機による農薬等の空中散布に関する情報」ページには、いまも「航空法に基づき、事前に国土交通大臣へ許可・承認の申請を行うことが必要です」との記載が残っています。航空法の手続の要否は、所管する国土交通省の通達・手続ページ・飛行ルールページを基準に判断するのが確実です。ガイドラインが改正される予定があるかは、公式には明示されていません。

手続6:飛行計画の通報と飛行日誌

ここはどの道を選んでも残る部分です。承認が不要になっても、散布が特定飛行であることは変わりません。国土交通省の通達5(1)も、この通達を適用して夜間・目視外・30m未満・危険物輸送・物件投下を行う場合は特定飛行に該当するため、飛行計画を通報しなければならず、飛行日誌を備えて記載しなければならないとしています。

義務根拠内容
飛行計画の通報 法第132条の88第1項
規則第236条の83
あらかじめDIPSの飛行計画通報機能で通報します。周辺のほ場で他のドローンが飛ぶ予定も同じシステムで確認できます。通報せずに特定飛行を行うと30万円以下の罰金(法第157条の10第1項第10号)
飛行日誌 法第132条の89
規則第236条の84
飛行記録・日常点検記録・点検整備記録の3つを機体毎に備え、記載します。備えない・記載しない・虚偽記載は10万円以下の罰金(法第157条の11第2号・第3号)
技能証明書の携帯 法第132条の54 技能証明を持つ者が特定飛行を行うときは携帯します。携帯しないで特定飛行を行うと10万円以下の罰金(法第157条の11第1号)
緊急用務空域の確認 規則第236条の71第4項 飛行開始前に、飛ばす空域が緊急用務空域に該当するか否かを確認する義務。通達3(9)②もこの確認を求めています
事故・重大インシデントの報告 法第132条の90・第132条の91 DIPSの事故等報告機能で、飛行経路を管轄する官署へ報告します

農林水産省のQ&Aは、散布についての定期的な報告は不要としつつ、「国土交通省航空局から飛行日誌の報告を求められた場合には、速やかに報告する必要があります」としています。特定飛行に当たらない飛行(練習など)でも飛行日誌の作成を推奨する、とも書かれています。

通報の判断基準はドローンの飛行計画の通報はいつ必要か、日誌の書き方はドローンの飛行日誌の書き方。3種類の記録と、毎回の運用、電子で運用する場合の要件は飛行日誌を電子で運用するときに満たすことで扱っています。

事故の報告は2系統になります。 ガイドライン第3は、事故を①農薬事故(散布中のドリフト、流出等)②航空法に基づく事故 ③航空法に基づく重大インシデントの3つに分類しています。①は別記様式の事故報告書を実施区域内の都道府県農薬指導部局に提出し、第1報は事故発生後直ちに、最終報は1か月以内です。②③は航空法第132条の90・第91条に基づきDIPSで報告します。分類の線引きにも注意が必要で、航空法側の「第三者の所有する物件の損壊」には農薬に起因する農作物の被害を含まないとされ、人の死傷には農薬に起因する目の損傷を含むとされています。落下事故の民事・刑事の責任関係はドローンを落として人にけがをさせたときの責任。民事・刑事・航空法で整理しています。

手続7:周辺への周知と危険防止措置

ほ場は住宅や道路に隣り合っていることが多く、この層で失敗すると、法令上は適法でも作業が続けられなくなります。公式資料が求めていることを整理します。

場面求められていること出典
実施区域や周辺に学校・病院等の公共施設、家屋、蜜蜂の巣箱、有機農業のほ場等がある 施設の管理者・利用者、居住者、養蜂家、有機農業に取り組む農家等に対し、散布しようとする日時・農薬使用の目的・使用農薬の種類・実施主体の連絡先を十分な時間的余裕を持って情報提供し、必要に応じて日時を調整する ガイドライン第2の2(1)
天候等で日時が変わった 変更に係る事項について情報提供を行う 同(2)
実施区域周辺で人の往来が想定される 作業中の実施区域内への進入を防止するため、告知、表示等により散布の実施について情報提供を行うなど必要な措置を講ずる 同(3)
住宅・学校・保育所・病院・公園その他の人が居住し、滞在し、又は頻繁に訪れる施設の敷地及びこれらに近接する土地で使用する 農薬が飛散することを防止するために必要な措置を講じるよう努めなければならない(努力義務) 農薬を使用する者が遵守すべき基準を定める省令 第6条
水田で使用する 当該農薬が流出することを防止するために必要な措置を講じるよう努めなければならない 同省令 第7条
飛散により危被害を与える可能性が高い(周辺農作物の収穫期が近い、有機農業のほ場が近い等) 無風・弱風の日や時間帯の選択、使用農薬の種類の変更、飛散が少ない剤型の選択等を検討し、細心の注意を払う ガイドライン第2の3(8)
散布が終わった 事前周知を行った実施区域周辺に対しては、空中散布が終了した旨のお知らせも行うよう心がける 農林水産省 Q&A Q25

航空法側の立入管理措置は、これとは別の層です。承認が不要になる特例では、目視外飛行なら補助者の配置が必須、夜間・危険物輸送・物件投下なら原則として補助者、それ以外は補助者か立入管理区画の明示のいずれか、という整理になっています(通達3(12))。農林水産省のQ&Aも「農薬等の空中散布を行う場合には、原則、補助者を配置する必要があります」としています。区画の考え方は立入管理措置とは。現場で実際に何をするのかをご覧ください。

ガイドラインが定義する補助者の役割は、条文の「立入りを管理する措置」より広いことにも注意が必要です。第2の3(1)は補助者を「無人マルチローターの飛行状況、周辺区域の変化等を監視し、的確な誘導を行うとともに、飛行経路の直下及びその周辺に第三者が立ち入らないよう注意喚起を行い、操縦者を補助する者」としています。立入りの管理だけでなく、散布状況と気象の変化の監視まで含まれています。

民間団体の認定は、どこに位置づけられるか

農薬散布の分野には、民間団体による機体の確認や操縦者の技能認定の仕組みがあります。これらの位置づけについて、農林水産省の公式資料に明示の記載があります。

論点農林水産省の記載
団体の資格・認定は必要か 「ドローンで農薬散布を行うために、特定の団体の資格、免許、ライセンス等の取得義務はありません」(Q2)/「また、特定団体による機体の認定は不要です」(Q37)
特定の団体を通じて申請する必要はあるか 「特定の団体を通じて申請を行う必要はありません。航空法に基づく国土交通省への飛行の許可・承認申請は、個々人からの申請の他、機体メーカーや販売代理店等、どなたでも代行申請が可能です」(Q8)
かつての仕組み 民間機関による「機能・性能の確認と登録、操縦者の技能認定、それらに基づく航空法上の代行申請の仕組みを運用していた農林水産省通知は、令和元年7月に廃止されました」(Q8)。Q36は「その解釈に誤解を与えてしまう農林水産省通知を令和元年7月に廃止しました」と説明しています
散布性能の認証 「現在のところ、標準化された評価手法、基準は存在しません」。民間団体が「これまでの知見に基づいた評価手法、基準により、自主的な取組としてドローンの散布性能の確認を受け付けています」(Q38)。ISOで規格が検討中

まとめると、民間団体の認定は民間の制度であり、航空法上の技能証明・機体認証の代わりになるものではありません。散布の練習や散布技術の習熟という点では意味がありますし、ガイドライン第1も「無人マルチローターの関係団体、メーカー、販売店、教習施設等が実施する講習会等を活用し、農薬の空中散布に関する知識・技能の習熟を図ることが重要である」としています。ただし、それが手続を減らすかどうかは別の話です。

「民間の技能認証で申請書類が省略できる」という説明は、いまは当てはまりません。 民間講習団体の技能認証を持つことで申請書類の一部を省略できる仕組みは、2025年12月18日施行の審査要領改正で廃止されています。DIPS2.0の操縦者情報の登録画面からも民間技能認証の項目は削除されました。改正後に技能証明を持たずに申請する場合は、飛行経歴・知識・能力が審査基準に適合することを自分で示すことになります。これは「民間団体の認定に価値がない」という話ではなく、「申請手続の省略という効果はなくなった」という話です。混同しないでください。

なお、ガイドラインの事故報告書の様式には「操縦者氏名、技能証明書番号(又は技能認証番号)」という欄があり、注1で「操縦者の能力等に関する基準を制定している団体等により講習会等を受講し、技能認証を受けている場合には、技能認証番号に当該認証の番号を記載すること」とされています。民間の技能認証は、様式の上では国の技能証明と「併記する情報」として扱われています。

よくある質問

ドローンの国家資格を取れば、農薬を撒けるようになりますか。
いいえ。技能証明は航空法の手続に関する制度で、農薬を使うこと自体の要件は農薬取締法の側に別にあります。同法第24条は「何人も」ラベル表示のある登録農薬と特定農薬以外を使用してはならないとし、第25条第3項は農薬を使用する者が遵守すべき基準に違反して使用してはならないとしています。違反は3年以下の拘禁刑若しくは100万円以下の罰金、またはその併科の対象です(第47条第3号)。農林水産省も「ドローンで農薬散布を行うために、特定の団体の資格、免許、ライセンス等の取得義務はありません」としており、逆に言えば資格の有無は農薬側の要件を左右しません。
機体登録は農薬散布でも同じですか。25kg以上だと何か変わりますか。
登録そのものの手続は同じで、100g以上の機体は航空法第132条の2により登録が必要です。ただし申請書には25kg未満/25kg以上の重量区分を書く欄があり(規則第236条の3第1項第9号)、25kg以上だと登録記号の文字の高さが25mm以上になります(同第236条の6第1項第1号ハ。25kg未満は3mm以上)。さらに25kgを超えると、立入管理措置を講じてもDID上空等は許可が必要になり(法第132条の85第2項、規則第236条の73)、技能証明には総重量の限定変更が求められ、教則第5版は第三者賠償責任保険への加入が求められるとしています。
承認が不要になる特例に乗らないと、散布はできませんか。
できます。特例は承認を不要にする選択肢で、従来どおり許可・承認を申請して散布することもできます。申請する道では機体認証も技能証明も必須ではありません(技能証明がない場合は飛行経歴・知識・能力が審査基準に適合することを示します)。申請では国土交通省の航空局標準マニュアル(空中散布)が使え、繰り返し飛ぶなら包括申請が現実的です。提出は飛行開始予定日の10開庁日前までで、国土交通省は3〜4週間程度の余裕を推奨しています。
使いたい農薬がドローンで使えるかは、どこで確認しますか。
農薬登録情報提供システム(pesticide.maff.go.jp)です。農林水産省は「使用方法」を選んで「無人」と入力し、対象作物を選んで検索する手順を案内しています。ただし使用方法が「無人航空機による散布」等と書かれた農薬に限られるわけではなく、「希釈倍数、使用量等を遵守できる範囲であれば、ドローンを使用して散布することができます」とされています。逆に、使用方法が有人ヘリコプターでの空中散布を指す「空中散布」とされているものはドローンでは使用できません。実際にはドローンは高濃度・少量での散布になりやすいため、その希釈倍数と使用量がラベルで認められているかが判断の分かれ目になります。
農林水産省や都道府県に、散布計画を出す必要がありますか。
農林水産省のQ&Aは「ドローンによる農薬等の空中散布に関して、農林水産省に散布計画を提出する必要はありません」としています。ただし同Q&Aは「都道府県によっては、養蜂家への情報提供、農業用ドローンの活用状況の把握などのため、独自に農薬の散布計画の提出を求めている場合があります」とし、これを「任意の取組」と説明しています。散布する地域の都道府県の案内を必ず確認してください。なお、マルチローター版ガイドラインは計画書の作成自体は求めています(提出先の定めはありません)。無人ヘリコプター版には、計画書を実施月の前月末までに都道府県農薬指導部局に届け出る定めがあり、機体の種類で扱いが違います。
農林水産省の安全ガイドラインを守らないと、罰則がありますか。
ガイドライン自体に罰則はありません。農林水産省のQ&Aは「空中散布ガイドラインを守らなかった場合に罰則等がかかるものではありません」としています。ただし同じQ&Aは続けて、「農薬を使用する者が遵守すべき基準を定める省令の第2条第1項に違反した農薬使用(ラベルに記載された適用作物、希釈倍率、使用量等を守っていないなど)を行った場合は、罰則の対象となります」としています。ガイドラインの記載の多くは、この省令の要件を現場でどう満たすかを具体化したものです。罰則の有無で切り分けるのではなく、どの記載が省令・法令の要件に対応しているかを見てください。
民間団体の機体認定や技能認証は受けたほうがよいですか。
制度上の必要はありません。農林水産省は「特定の団体の資格、免許、ライセンス等の取得義務はありません」「特定団体による機体の認定は不要です」「特定の団体を通じて申請を行う必要はありません」と明記しています。団体の認定を代行申請の前提としていた農林水産省の通知は令和元年7月に廃止されました。散布性能についても「現在のところ、標準化された評価手法、基準は存在しません」とされ、民間団体の確認は「自主的な取組」と説明されています。これらは民間の制度で、航空法上の技能証明・機体認証の代わりにはなりません。また、民間技能認証による申請書類の省略は2025年12月18日施行の審査要領改正で廃止済みです。講習で散布の技能を身につける価値とは切り分けて考えてください。
承認が不要になる特例に乗れば、飛行計画の通報も要りませんか。
必要です。国土交通省の通達5(1)は、この通達を適用して夜間・目視外・30m未満・危険物輸送・物件投下を行う場合は特定飛行に該当するため、法第132条の88第1項により飛行計画を通報しなければならず、法第132条の89により飛行日誌を備えて記載しなければならないとしています。通報しないで特定飛行を行うと30万円以下の罰金、飛行日誌を備えない・記載しない・虚偽記載は10万円以下の罰金です。ガイドラインの側も、第2の1(4)と第2の3(13)で「これを確実に行う」と念押ししています。
ほ場の隣に住宅や学校があります。何をすればよいですか。
2つの層があります。農薬の側では、ガイドライン第2の2(1)が、施設の管理者・利用者、居住者、養蜂家、有機農業に取り組む農家等に、日時・目的・使用農薬の種類・連絡先を十分な時間的余裕を持って情報提供し、必要に応じて日時を調整するよう求めています。人の往来が想定される場合は告知や表示による情報提供も求められます(同(3))。省令第6条は、住宅・学校・保育所・病院・公園等の敷地とこれに近接する土地で農薬を使うときの飛散防止措置を努力義務としています。航空法の側では、第三者や第三者の物件から30m未満になる飛行の承認(または特例の要件充足)と、立入管理措置の設計が必要です。散布が終わったら、事前周知した先に終了のお知らせも行うよう案内されています。
散布の記録は飛行日誌だけでよいですか。
2種類あります。航空法側は飛行日誌(飛行記録・日常点検記録・点検整備記録)で、これは機体毎に備えます。農薬側は「農薬を使用する者が遵守すべき基準を定める省令」第9条により、農薬を使用したときに①年月日②場所③農作物等④農薬の種類又は名称⑤単位面積当たりの使用量又は希釈倍数 を帳簿に記載するよう努めなければならないとされています。こちらは努力義務ですが、ラベルどおりに使ったことを後から説明する材料になります。散布1回で2つの記録が発生する前提で、様式を用意しておくのが実務的です。
この記事の一次ソース
  1. e-Gov法令検索|航空法(昭和二十七年法律第二百三十一号)
  2. e-Gov法令検索|航空法施行規則(昭和二十七年運輸省令第五十六号)
  3. e-Gov法令検索|農薬取締法(昭和二十三年法律第八十二号)
  4. e-Gov法令検索|農薬を使用する者が遵守すべき基準を定める省令(平成十五年農林水産省・環境省令第五号)
  5. 国土交通省|航空法施行規則第236条の82第1項第2号の規定により飛行の方法に係る承認が不要な飛行の取扱い(令和8年3月23日制定 国空無機第338898号・PDF)
  6. 国土交通省|航空局飛行マニュアル(航空法施行規則第236条の82第1項第2号の規定により飛行の方法に係る承認が不要な飛行)令和8年5月29日版(PDF)
  7. 国土交通省|航空局標準マニュアル(空中散布)申請用(PDF)
  8. 国土交通省|無人航空機の飛行ルール(飛行禁止空域・飛行の方法)
  9. 国土交通省|無人航空機の飛行許可・承認手続
  10. 国土交通省|機体認証等
  11. 国土交通省|型式認証を取得している無人航空機一覧(令和8年6月19日現在・PDF)
  12. 国土交通省|無人航空機登録ポータルサイト
  13. 国土交通省|無人航空機の飛行の安全に関する教則 第5版(令和8年7月7日公布/7月14日適用・PDF)
  14. 国土交通省|無人航空機の飛行に関する許可・承認の審査要領(カテゴリーⅡ飛行)令和8年9月29日最終改正(PDF)
  15. 国土交通省|無人航空機の飛行計画の通報要領(PDF)
  16. 国土交通省|無人航空機の飛行日誌の取扱要領(PDF)
  17. 農林水産省|無人マルチローターによる農薬の空中散布に係る安全ガイドライン(令和5年3月30日最終改正・PDF)
  18. 農林水産省|無人ヘリコプターによる農薬の空中散布に係る安全ガイドライン(令和5年3月30日最終改正・PDF)
  19. 農林水産省|無人航空機による農薬等の空中散布に関するQ&A(使用者向け)令和5年5月・消費・安全局植物防疫課(PDF)
  20. 農林水産省|ドローンで使用可能な農薬
  21. 農林水産省|無人航空機による農薬等の空中散布に関する情報
  22. 農林水産省|農薬登録情報提供システム
本記事は2026年9月27日時点の情報です。 農薬散布に関する航空法の制度は2026年3月23日に大きく変わったばかりで、通達と飛行マニュアルは短い手続で改正され得ます。本記事が引用した航空局飛行マニュアルは令和8年5月29日版、型式認証一覧は令和8年6月19日現在、農林水産省の安全ガイドラインは令和5年3月30日最終改正のもの、同省のQ&Aは令和5年5月作成のものです。農林水産省のQ&Aには、2025年12月18日に廃止された申請書類の省略の仕組みや、承認が不要になるルートが反映されていない箇所があります。航空法の手続の要否は国土交通省の現行資料を、農薬の使用は農薬取締法・省令とラベルの表示を基準にご確認ください。都道府県が独自に求めている手続の有無は、散布する地域の農薬指導部局にご確認ください。実際に散布する前に、必ず上記の一次ソースで最新の内容をご確認ください。

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