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風力発電設備の点検でドローンを使う。ブレードに近づく飛行と150m以上

公開 2026-11-03 更新 2026-11-03 読了 約18分

風力発電設備の点検は、ほかの点検業務と2つの点で違います。1つは対象が回っていること。もう1つは対象が高いことです。国土交通省は航空障害灯の設置基準で風力発電設備を「高さ150m以上」と「150m未満」に分けて規定しており(風力発電設備に係る航空障害灯の設置基準の緩和について)、150mを超える風車が現に想定されていることが国の資料から読み取れます。 ところが150m以上の飛行禁止空域からは「地上又は水上の物件から30m以内の空域」が除かれています(航空法施行規則第236条の71第1項第5号)。除外の趣旨を説明する教則第5版の一文は「煙突や鉄塔などの高層の構造物」を例に挙げたうえで、「ただし…当該飛行の方法に関する手続き等は必要となる」と続きます。許可が外れても承認は残る、という構造です。 そして電気事業法の側には、太陽光にはない規定があります。出力500kW以上の風力発電設備は、電気事業法施行規則第94条が定める定期安全管理検査(定期自主検査)の対象です。太陽光はこの条の列挙に入っていません。風力は国が検査の時期と方法を条文で指定している数少ない再エネ設備だということになります。 この記事は、風車という対象に固有の論点だけを、条文と国の資料の原文で整理します。点検業務全般の入口はインフラ点検でドローンを使うのに必要な許可・承認、同じ電力設備である送電線・鉄塔は送電線・電力設備の点検でドローンを使うのに必要な許可・承認、太陽光は太陽光発電設備の点検でドローンを使うのに必要な許可・承認と、電気事業法の点検義務で扱っています。

よく見る説明と、公式の記載
風力発電は、航空法の資料に名前が出てこない一方で、電気事業法の資料には固有の規定がある業種です。混同しやすい3点を一次ソースの原文と突き合わせます。
よく見る説明風車は150mを超えるので、点検飛行には必ず150m以上の許可が必要。
公式にはこう施行規則は150m以上の禁止空域から「地上又は水上の物件から三十メートル以内の空域」を除いています。教則第5版も「当該構造物から30メートル以内の空域については、無人航空機の飛行禁止空域から除外されている」としています。ただし同じ一文が「当該飛行の方法に関する手続き等は必要となる」と続きます。許可が外れても承認は残ります。
出典 規則第236条の71第1項第5号 教則 第5版 3.1.2(2)3)b
よく見る説明太陽光と同じで、小規模な発電設備なら主任技術者も保安規程も要らない。
公式にはこう経済産業省の整理では、風力は20kW未満が小規模事業用電気工作物で、20kW以上になると保安規程の届出と主任技術者の選任が「要」になります。太陽光の境目は50kWで、風力のほうが低い出力から義務がかかります。
出典 経済産業省「風力発電設備の安全」の保安規制一覧表
よく見る説明発電設備の点検は、国が頻度や方法を定めていない。
公式にはこう風力は例外です。出力500kW以上の風力機関等は電気事業法施行規則第94条の定期安全管理検査(定期自主検査)の対象で、時期は第94条の2が「三年を超えない時期」、方法は第94条の3が「開放、分解、非破壊検査」等と列挙しています。
出典 規則第94条・第94条の2・第94条の3(経済産業省 産業保安監督部)

風車は「高くて、回っていて、風の強い場所にある」

最初に、点検対象としての風車の性質を押さえます。ここを押さえると、どの類型に当たるかが機械的に出てきます。

風車の性質そこから生まれる論点手続の種類
高い(国土交通省が航空障害灯の基準を「高さ150m以上」と「150m未満」で分けている) 地表又は水面から150m以上の高さの空域。ただし物件から30m以内の空域は除外 許可(空域)
寄らないと見えない(ブレードの前縁・後縁、雷撃による損傷、タワーの溶接部・ボルト) 地上又は水上の人又は物件から30m未満 承認(方法)
回っている(運転中はブレード先端が高速で動く) 航空法上の独立した類型ではない。安全確保措置と飛行マニュアルの側の問題になる 申請内容の中身
風の強い場所に立っている(尾根・海岸・洋上) 同じく類型ではないが、飛行の可否を実際に決めるのはここ 飛行判断
1か所に複数基が並ぶ(ウインドファーム) 基から基へ渡る移動で目視外飛行になりやすい 承認(方法)
洋上にもある 航空法は「地表又は水面から」と書いており、海上も同じ枠組み。船舶は「物件」 許可・承認の両方
先に、この記事で断定しないことを書いておきます。 国土交通省の無人航空機関係の主要資料に、「風車」「風力発電」「洋上」という語は出てきません。教則第5版(87ページ)・解釈通達・審査要領(カテゴリーⅡ飛行)・標準マニュアル①(インフラ点検等)の本文を機械検索しましたが、いずれも0件でした(教則の「風力」はビューフォート風力階級、「ブレード」はドローンのプロペラの説明です)。 したがってこの記事は、風車を名指しした公式の当てはめがない前提で、条文と一般的な定義から考えられる筋道を示すものです。「風車は◯◯に当たる」と断定する箇所はありません。

風車の「高さ」はどこまでか。150m以上の判定

まず条文です。航空法施行規則第236条の71第1項第5号が、飛行禁止空域の1つを次のように定めています。

「前四号に掲げる空域以外の空域であつて、地表又は水面から百五十メートル以上の高さの空域(地上又は水上の物件から三十メートル以内の空域を除く。)」

そして教則第5版が、この除外の趣旨を説明しています。3.1.2(2)3)b「高度150メートル以上の空域の例外」です。

「地表又は水面から150メートル以上の高さの空域に関しては、航空機の空域と分離する観点から原則として飛行が禁止されているが、煙突や鉄塔などの高層の構造物の周辺は、航空機の飛行が想定されないことから、高度150メートル以上の空域であっても、当該構造物から30メートル以内の空域については、無人航空機の飛行禁止空域から除外されている。ただし、当該構造物の関係者による飛行を除き、第三者又は第三者の物件から30メートル以内の飛行に該当することから、当該飛行の方法に関する手続き等は必要となる。」

例示は「煙突や鉄塔など」です。風車は挙げられていません。一方で解釈通達3.(7)は「物件」を「a)中に人が存在することが想定される機器(車両等)b)建築物その他の相当の大きさを有する工作物」と定義し、工作物の例として「ビル、住居、工場、倉庫、橋梁、高架、水門、変電所、鉄塔、電柱、電線、信号機、街灯 等」を挙げています。この「等」に風車が含まれるかは、公式には書かれていません。タワー・ナセル・ブレードからなる風車が「相当の大きさを有する工作物」の定義に形式的には当てはまりそうだとしても、例示にないものを「当たる」と断定することはできません。この記事は「当たり得る」までにとどめます。

「高さ150m」は、ナセルの高さではない

実務上はここが先に効きます。国土交通省は2022年(令和4年)11月22日公布・施行の施行規則改正で、風力発電設備の航空障害灯の設置基準を次のように整理しました。

「航空機の航行の安全を目的とし、航空法第51条の規定により、地表又は水面から60m以上の高さの物件には、国土交通大臣の許可を受けた場合を除き、航空障害灯の設置が義務付けられております。」
改正概要:「高さ150m以上の風力発電設備には、ナセル頂部に中光度白色(赤色)航空障害灯を、ナセル頂部から当該物件の底部までのほぼ等間隔の位置に低光度航空障害灯を設置。」「高さ150m未満の風力発電設備には、ナセル頂部にのみ中光度白色(赤色)航空障害灯を設置。」
その他:「風力発電設備の高さが150m以上で、ナセル頂部が105m以下の高さの風力発電設備が、群立して設置され…タワー中間段に設置する低光度航空障害灯を省略することができます。」

最後の一文が重要です。「高さが150m以上で、ナセル頂部が105m以下」という組み合わせが、国の資料に明記されているということです。つまり風力発電設備の「高さ」は、ナセルの位置ではなく、それより上に伸びるところまでを含んで数えられていると読めます。ナセルが地上100m前後でも、設備の高さは150mを超え得るわけです。

点検飛行の高度を「ナセルの高さ」で見積もると、判定を外します。 ブレードは回転面の最上点で最も高くなります。ナセルより上を飛ぶ作業——最上点に来たブレードの先端を上から見る、回転面の上側を横切る、ハブより高い位置から全体を俯瞰する——では、対地高度がナセルの高さを大きく超えます。対地150m以上に達するかどうかは、ナセルの高さではなく、その飛行で機体が到達する最高点で判定してください。 なお教則第5版は「『高度150メートル以上の飛行禁止空域』とは、海抜高度ではなく、無人航空機が飛行している直下の地表又は水面からの高度差が150メートル以上の空域を指す」としています(3.1.2(2)1)c)。風車は尾根や斜面に立つことが多いため、真下の地表がどこかで対地高度が変わります。

除外が効く範囲と、戻る範囲

その地点は、風車(タワー・ナセル・ブレード)から30m以内か。水平距離ではなく、機体と物件との直線距離で見る
30m以内 → その空域は150m以上の禁止空域から除かれ得る(規則第236条の71第1項第5号の括弧書き)。ただし30m未満の承認の要否は別に判断する
30mを超える → その地点の直下の地表又は水面からの高度差が150m以上になるか
150m以上になる → 150m以上の飛行の許可が必要。審査要領5-1(2)d)は「空域を管轄する関係機関から当該飛行について了解を得ること」と関係機関との連絡体制を求め、5-1(3)は航空情報の発行手続のため飛行日の前日までに管轄事務所長等へ通知する体制を求めている
見落としやすいのは離着陸地点から風車上部までの上昇経路/基から基へ渡る移動/風車から離れて全体を俯瞰する位置/突風で流されたときの復帰経路。すべて①から通す
経路の一部でも「30mを超えて、かつ対地150m以上」の区間があれば、その飛行は150m以上の許可を要する飛行として設計する

この除外規定そのものの読み方と、送電線のように線でつながった設備での当てはめは、送電線・電力設備の点検でドローンを使うのに必要な許可・承認で詳しく扱っています。本記事では風車固有の論点に絞ります。

ブレード・タワーに寄る飛行は30m未満の承認の話になる

根拠は航空法第132条の86第2項第3号と施行規則第236条の79。距離の相手方は、解釈通達3.(7)により第三者又は第三者の物件です。

「『人』とは、操縦者及びその関係者(無人航空機の飛行に直接的又は間接的に関与している者)以外の者(第三者)をいう。」
「『物件』とは、次に掲げるもののうち、操縦者及びその関係者…が所有又は管理する物件以外のもの(第三者の物件)をいう。a)中に人が存在することが想定される機器(車両等)b)建築物その他の相当の大きさを有する工作物」
該当しないもの:「a)土地(田畑用地及び舗装された土地(道路の路面等)、堤防、鉄道の線路等であって土地と一体となっているものを含む。)b)自然物(樹木、雑草 等)」
出典 解釈通達 3.(7)

風力の点検では、この定義から次の3段が出てきます。

対象30mを保つべき相手方に当たるか
点検対象の風車そのもの 発注者(設備の所有者・管理者)が解釈通達の「関係者」に当たるなら、その設備は第三者の物件ではなくなります。ただし間接関与者の要件(通達6.(1)②)の当てはめは一律には決まらず、通達の例示は「映画の空撮における俳優やスタッフ、学校等での人文字の空撮における生徒 等」で、設備の所有者・管理者を挙げた例示はありません。承認を取る前提で設計するのが安全側です
隣の基、変電設備、連系する電線、管理道路の車両 これらは別の物件です。変電所・鉄塔・電柱・電線は通達が名指しで物件に挙げています。ウインドファームでは、点検対象の1基だけを見ていると距離の相手方を取りこぼします
サイトの地面、法面、周囲の樹林 通達は土地と自然物(樹木、雑草 等)を「距離を保つべき物件に該当しない」としています。尾根の風車で斜面に沿って低く飛ぶこと自体は、30m未満の原因になりません。ただし接触すれば機体は落ちます
30m未満の承認には、機体側の要件が付きます。 審査要領5-5(1)a)は、30mの距離を保てない飛行について「機体について、第三者及び物件に接触した際の危害を軽減する機能を有すること」を求め、その例としてプロペラガード/衝突した際の衝撃を緩和する素材の使用又はカバーの装着/衝突防止センサー(正常に機能していること及び当該センサーの有効範囲や性能上の限界等の範囲内である場合に限る)を挙げています。 風車の近接撮影では衝突防止センサーを切って寄せる運用が議論になりますが、審査要領の括弧書きは「正常に機能していること…の範囲内である場合に限る」と書いています。どの機能で要件を満たすのかは、申請書と飛行マニュアルの上で説明できる状態にしておく必要があります。点検用機体の選び方は点検業務のドローンをどう選ぶか。重量区分・型式認証・限定変更の組み合わせで扱っています。

回転中のブレード。技術基準は「停止できること」を前提にしている

ここが風力に固有で、かつ航空法の資料には答えが書かれていない論点です。運転中の風車に寄る飛行は、航空法上の独立した類型ではありません。では何の問題かというと、審査要領と飛行マニュアルが求める「安全を確保するために必要な措置」の中身の問題になります。

手がかりは電気事業法側の技術基準にあります。発電用風力設備に関する技術基準を定める省令(平成9年通商産業省令第53号)第4条第四号と、その解釈・逐条解説です。

[省令]第四条 風車は、次の各号により施設しなければならない。…四 通常想定される最大風速においても取扱者の意図に反して風車が起動することのないように施設すること。
[解説]「省令第4条第四号及び解釈第6条は、風車が運転しうる最大風速を超えた場合の通常停止のみならず、意図的に回転部を固定できるよう施設した風車において、取扱者が点検や異常発生等を理由に回転部を固定した場合の停止についても、その停止後、取扱者の意図に反して風車が起動し、運転状態にならないよう風車を施設することを規定したものである。」

読み取れるのは、「取扱者が点検を理由に回転部を固定する」という運用が、技術基準の側で想定されているということです。そして固定した後に意図せず起動しないことまでが、設備側の要件として書かれています。

ただし、「ドローンで点検するときは風車を停止させなければならない」と書いた公式の規定は、今回確認できていません。 確認できたのは、技術基準が点検のために回転部を固定できる構造を前提にしていることと、固定後の意図しない起動を防ぐことを求めていることだけです。停止の要否は、設備の設置者が届け出ている保安規程と、現場の作業手順の側で決まる事柄です。受託して飛ばす立場であれば、停止・ロックの有無と、その指示を誰がどう出すかを、飛行計画の前提として書面で確定させるのが実務上の順序になります。航空法の承認が下りていることは、この点について何も保証しません。
風車の周りは、もともと風の強い場所です。 教則第5版は「風は地面の摩擦を受けるため、一般的に上空では強く地表に近づくにつれて弱くなる。変化の度合いは地表の粗度…や風速の大きさによって異なる」としています。また海陸風(日中は陸へ、夜間は海へ)と山谷風(昼は谷風、夜は山風)を局地風として挙げています。風車が立っているのは、まさにこれらが強く出る尾根と海岸です。飛行の可否を実際に決めるのは、許可・承認ではなく当日の風です。

風車のある場所で重なるその他の類型

目視外飛行(承認)

根拠は法第132条の86第2項第2号。1基をタワーの真下近くから見上げて撮る運用なら目視内で収まり得ますが、ブレードの裏側に回り込む/ナセルの反対側へ抜ける/基から基へ渡ると目視外になります。そして最も間違われるのがここです。

「ここで、『目視』とは、操縦者本人が自分の目で見ることをいうものとする。このため、補助者による目視は該当せず、また、飛行状況を専らモニターを用いて見ることまた双眼鏡やカメラ等を用いて見ることは、視野が限定されるため『目視』にはあたらない。」
出典 解釈通達 3.(6)

教則第5版も「双眼鏡やモニター(FPV(First Person View)を含む。)による監視や補助者による監視は含まない」としています(3.1.2(2)2)b)。補助者の配置は、目視外飛行の承認を受けるための体制側の要件であって、目視外を目視内に変えるものではありません。

DID上空(許可)

法第132条の85第1項第2号。陸上風力は人口集中地区の外にあることが多い類型ですが、臨海部の工業地帯に立つ風車では確認する価値があります。2026年7月1日から、用途地域が「工業専用地域」の区域はDIDの対象から除かれました(国土交通省告示第435号)。対象は工業専用地域だけで、工業地域・準工業地域は含まれません(工業専用地域は、DIDの中でもDIDの飛行許可が要らなくなった)。なお海上にDIDはありません。

夜間飛行(承認)

法第132条の86第2項第1号。発電を止められる時間帯に合わせる点検では現実的に出てきます。審査要領5-3(3)は「日中、飛行させようとする経路及びその周辺の障害物件等を事前に確認し、適切な飛行経路を特定すること」を求めています。風車の周囲には航空障害灯があり、夜間は点灯しています。機体の灯火と設備側の灯火を混同しない配置は、現場側の工夫の領域です。

空港等の周辺・緊急用務空域

法第132条の85第1項第1号。空港の制限表面にかかる位置に風車が立つことは通常ありませんが、申請先が空港事務所長になる類型であることは150m以上と共通です(空港等の周辺でドローンを飛ばす。制限表面と、申請先の分かれ目)。また緊急用務空域は、150m以上やDIDの許可を持っていても飛行できない空域で、飛行開始前に該当するか否かを確認する義務が規則第236条の71第4項にあります(緊急用務空域。包括許可を持っていても飛べなくなる空域)。

設備側の「さく・へい」と、航空法の「立入管理措置」は別の制度です。 発電用風力設備に関する技術基準を定める省令第3条は「取扱者以外の者に見やすい箇所に風車が危険である旨を表示するとともに、当該者が容易に接近するおそれがないように適切な措置を講じなければならない」と定め、その解釈第2条がさく・へいと出入口の立入禁止表示・施錠装置(又は支持物の出入口への同措置)を挙げています。 つまり風車のサイトは、電気事業法の側で立入りを防ぐ措置が最初から求められている場所です。ただし、それが航空法の「立入管理措置」(施行規則第236条の70)を満たすかどうかは別に判断します。必要な範囲は飛行経路の直下とその周辺であり、設備の柵の内側と一致するとは限りません(立入管理措置とは。現場で実際に何をするのか)。立入管理措置を講じないならカテゴリーⅢ飛行になります(カテゴリーⅢ飛行の要件。20開庁日前とリスク評価)。

洋上風力。航空法は陸と海を分けていない

洋上風力の点検は「海の上だから航空法の外」ではありません。条文は一貫して「地表又は水面から」と書かれており、教則第5版も150m以上の判定を「直下の地表又は水面からの高度差」で説明しています。海上でも、高度の判定も、距離の判定も、同じ枠組みで動きます。

洋上の論点公式に確認できること
高度150m以上 判定は「直下の水面からの高度差」。海上は起伏がないため、陸上よりむしろ判定が単純です。風車から30m以内の空域が除外される構造も同じです
DID 人口集中地区は国勢調査の結果に基づく地域です。海上にDIDはありません
船舶との距離 解釈通達3.(7)は「中に人が存在することが想定される機器(車両等)」の例として「自動車、鉄道車両、軌道車両、船舶、航空機、建設機械、港湾のクレーン 等」を挙げています。船舶は30mを保つべき物件です(第三者の船舶であれば)
船舶の上空 解釈通達6.(2)は「『第三者上空』とは…当該第三者が乗り込んでいる移動中の車両等…の上空を含む」としています。通航中の船の上を横切る飛行は、第三者上空の問題になります
補助者を置かない目視外 審査要領5-4(3)c)ア)の「第三者が存在する可能性が低い場所」の列挙は「山、海水域、河川・湖沼、森林、農用地、ゴルフ場又はこれらに類するもの」。海水域が明記されています
船舶航路の横断 同5-4(3)c)カ)(ⅲ)のレベル3.5飛行は、第三者賠償責任保険への加入と目視内飛行の限定解除を受けた技能証明の保有、機上カメラでの立入り確認、道路・鉄道及び船舶航路への墜落を避けるための緊急着陸地点の選定等を要件に、移動中の船舶の上空を通過する場合を含む船舶航路の一時的な横断を可能としています
★申請先 審査要領2-1(1)b)のただし書:「公海上における飛行の許可等に係る申請書は、国土交通大臣に提出させるものとする。」通常は空域の許可(第1号)が管轄の空港事務所長、DIDの許可と方法の承認が地方航空局長です。ある洋上サイトが「公海上」に当たるかどうかは審査要領に書かれていないため、該当し得る案件では事前に確認するほかありません
洋上で現実に効くのは、法令より先に「帰ってこられるか」です。 離着陸地点が船上または陸上に限られるため、往復の距離がそのまま電池と電波の制約になります。教則第5版は送信機の信号について、同じ周波数帯の電波の干渉や「無線LANやWi‐Fi、高圧送電線の影響を受ける場合もあるため、周辺環境の確認が必要である」としており、飛行前に測定器などで周辺の電波の状態を確認することが望ましいとされています。長距離の映像伝送に5.7GHz帯等を使う場合は無線局免許と第三級陸上特殊無線技士以上が必要です(5.7GHz帯のドローンを使うには。無線局免許と第三級陸上特殊無線技士)。 なお、洋上風力の点検飛行について国土交通省が示した専用の手順・標準マニュアルは、今回確認できていません。標準マニュアル①(インフラ点検等)は「インフラ点検及び設備メンテナンス(プラント保守)を目的とした(場所を特定した)申請」に適用されるもので、本文に洋上・海上の記述はありません。

風力発電設備の点検で当たる特定飛行の一覧

特定飛行は「空域」の類型(許可)と「方法」の類型(承認)に分かれます。風力の点検での当たり方を1枚にします。

類型根拠条文風力発電設備での当たり方頻度
人又は物件から
30m未満
(承認)
法第132条の86
第2項第3号
規則第236条の79
点検作業の本体。審査要領5-5(1)a)が危害軽減機能(プロペラガード等)を求めます ほぼ常時
目視外飛行
(承認)
法第132条の86
第2項第2号
ブレードの裏側、ナセルの反対側、基から基への移動。補助者による目視は目視に当たりません 高い
150m以上
(許可)
法第132条の85
第1項第1号
規則第236条の71
第1項第5号
風車から30m以内の空域は除かれますが、除外は空域の側だけ。判定は機体が到達する最高点と直下の地表・水面で行います 機種と作業次第
夜間飛行
(承認)
法第132条の86
第2項第1号
発電を止められる時間帯に合わせる点検。日中の事前確認が審査要領の基準 中
DID上空
(許可)
法第132条の85
第1項第2号
規則第236条の72
臨海部・工業地帯の風車。工業専用地域は2026年7月1日から対象外。海上にDIDはありません 低
空港等周辺
(許可)
法第132条の85
第1項第1号
規則第236条の71
第1〜3号
通常は該当しませんが、該当すれば場所を特定した個別申請になります 低
緊急用務空域
(飛行不可)
規則第236条の71
第1項第4号・第4項
飛行開始前の該当性確認が義務。台風後の点検はこの確認が必要になる場面です 災害時
物件投下
危険物輸送
(承認)
法第132条の86
第2項第5・6号
通常の点検では想定されにくい類型。該当すると使える飛行マニュアルが変わります 低

許可・承認を不要にできるか

カテゴリーⅡ飛行の一部は、条件を満たせば許可・承認を受けずに行えます。判定の順序は次のとおりです。

飛行がDID上空/夜間/目視外/人又は物件から30m未満に収まっているか(空港等周辺・150m以上・催し場所上空・危険物輸送・物件投下は対象外)
機体の総重量が25kg未満か(施行規則第236条の73)
立入管理措置を講じるか(施行規則第236条の70)
技能証明を受けた者(二等以上)が機体認証を受けた無人航空機(第二種以上)を飛行させるか
飛行マニュアルの作成等、安全確保に必要な措置を講じるか(施行規則第236条の75)
風力では①で分かれます。機体が到達する最高点が対地150m以上になる作業は、この時点で対象外です

夜間・目視外を含むなら技能証明の限定変更も別に必要です(技能証明の限定と限定変更。夜間・目視外・25kg以上で何が変わるか)。現実的には30m未満・目視外・夜間を包括申請で押さえ、150m以上を案件ごとに個別で足す二層構造になります(包括申請とは。個別申請との違いと、使い分けの判断基準/全国包括は取れるか。標準マニュアル02の使い方)。許可と承認の切り分け全体はドローンの飛行許可・承認申請 完全ガイド、標準マニュアルの使い分けはインフラ点検専用の標準マニュアルがある。一般版との違いと独自の飛行マニュアルを作るべきときと作り方をご覧ください。

電気事業法。風力は20kWと500kWで義務が変わる

ここから電気事業法の側です。太陽光と区分の境目が違うのが最初の注意点になります。経済産業省「風力発電設備の安全」が掲げている保安規制の一覧表を、原文の区分どおりに整理します。

出力等条件技術基準適合
維持義務
(法第39条)
保安規程届出
(法第42条)
主任技術者選任
(法第43条)
基礎情報届出
(法第46条)
工事計画届出
(法第48条)
使用前自主検査
(法第51条)
定期事業者検査
(法第55条)
使用前自己確認
(法第51条の2)
500kW以上 要要不要要不要
20kW以上〜
500kW未満
要要不要不要要
20kW未満
(小規模事業用
電気工作物)
要不要要不要要

出典: 経済産業省|風力発電設備の安全「風力発電設備に関する電気事業法の保安規制について」。報告徴収(法第106条)・立入検査(法第107条)はいずれの区分も「対象」とされています。

太陽光との境目の違いが、そのまま発注者側の体制の違いになります。 太陽光は10kW未満が一般用電気工作物、10kW以上50kW未満が小規模事業用電気工作物、50kW以上が事業用電気工作物という区分です(施行規則第48条)。風力は20kW未満が小規模事業用電気工作物とされており、20kWを超えれば保安規程の届出と主任技術者の選任が「要」になります。 つまり同じ出力でも、太陽光なら主任技術者がいない現場、風力ならいる現場になり得ます。点検を受託する側にとっては、保安規程に基づいて点検の中身を決める主体が現場にいるかどうかが変わるという意味を持ちます。

義務の所在は条文で見ると次のようになります。

条文内容
電気事業法第39条第1項 「事業用電気工作物を設置する者は、事業用電気工作物を主務省令で定める技術基準に適合するように維持しなければならない。」同条第2項第1号は「人体に危害を及ぼし、又は物件に損傷を与えないようにすること」
電気事業法第42条
第1項・第4項
設置者は工事・維持・運用に関する保安を確保するため保安規程を定めて主務大臣に届け出なければならず、設置者及びその従業者は保安規程を守らなければならない
電気事業法施行規則第50条 保安規程に定める事項として、第2項第9号と第3項第3号が「保安のための巡視、点検及び検査に関すること」を挙げています
電気事業法第51条の2 使用前自己確認。設置者が使用開始前に技術基準への適合を自ら確認し、結果を主務大臣に届け出ます。風力では20kW未満と20kW以上500kW未満が対象とされています

つまり国が技術基準への適合維持を義務づけ、巡視・点検の中身は設置者が保安規程に定めて届け出、その保安規程を守る義務を負うという構造です。ここまでは太陽光と同じです。違いは次の章です。

定期安全管理検査は、風力には条文がある

この記事の中核です。電気事業法施行規則第94条が定める定期安全管理検査(定期自主検査)の対象に、風力が入っています。経済産業省の産業保安監督部が、条番号つきで次のように説明しています。

「電気事業法施行規則第94条で定める電気工作物(風力機関(出力500kW以上の発電設備))については、経済産業省令で定める時期に定期自主検査を行い、その結果を記録し、その実施に係る体制について確認を行うため、登録安全管理審査機関にて定期安全管理審査を受審しなければならない。」
定期自主検査を行う時期(施行規則第94条の2):「風力機関及びその附属設備、発電機、変圧器並びに電力用コンデンサーについての定期自主検査にあっては、運転が開始された日又は定期自主検査が終了した日以降三年を超えない時期」
定期自主検査の方法(施行規則第94条の3):「開放、分解、非破壊検査その他の各部の損傷、変形、摩耗及び異常の発生状況を確認するために十分な方法」「試運転その他の機能及び作動の状況を確認するために十分な方法」
定期安全管理審査の受審期間(施行規則第94条の5): 十分な体制と「保守管理に関する十分かつ高度な取組」を実施していると評定された組織は6年3月を越えない時期、それ以外の組織は前回通知を受けた日から3年3月を越えない時期

制度の沿革も国の資料に書かれています。経済産業省は「電気事業法等の一部を改正する等の法律(平成27年法律第47号)において風力発電設備の定期安全管理検査制度が導入され、平成29年4月1日から施行されました」としています。

比較風力太陽光
定期安全管理検査
(施行規則第94条)
出力500kW以上が対象(風力機関及びその附属設備、発電機、変圧器、電力用コンデンサー) 第94条の列挙に太陽電池発電設備はありません
検査の時期 第94条の2により三年を超えない時期 法令上の定期自主検査の時期の定めはありません
検査の方法 第94条の3が開放・分解・非破壊検査と試運転を列挙 同じ列挙の対象ではありません
小規模事業用
電気工作物の境目
20kW未満 50kW未満(10kW未満は一般用電気工作物)
ここから、ドローン点検についての誤解が生まれやすい構造が見えます。 第94条の3が列挙している方法は「開放、分解、非破壊検査」と「試運転」です。外から撮るだけの点検が、この列挙にそのまま当てはまると書いた公式の記述は、今回確認できていません。 つまりドローンによる外観撮影を、3年ごとの定期自主検査そのものの代わりに置けるのかどうかは、公式には明示されていません。一方で、日常の巡視・点検(保安規程に定める点検)と、3年ごとの定期自主検査は別の制度です。どちらの話をしているのかを取り違えると、見積の前提から崩れます。 なお、検査項目の詳細を定めた「電気事業法施行規則第94条の3第1号及び第2号に定める定期自主検査の方法の解釈」は経済産業省が公開していますが、当該PDFは2026年10月1日に取得を試みたもののダウンロードできなかったため、本記事ではその中身を引用していません。

風力固有の省令。点検の方法を定めた条はない

風力には専用の技術基準があります。発電用風力設備に関する技術基準を定める省令(平成9年通商産業省令第53号)です。経済産業省の逐条解説から、全体の構成を押さえます。

条内容点検との関係
第1条 適用範囲。「風力を原動力として電気を発生するために施設する電気工作物」(一般用電気工作物及び事業用電気工作物)。風車及びその支持物等の風力設備に関する基準であり、電気設備は「電気設備に関する技術基準を定める省令」の側 —
第3条 「取扱者以外の者に見やすい箇所に風車が危険である旨を表示するとともに、当該者が容易に接近するおそれがないように適切な措置を講じなければならない」。解釈第2条がさく・へい+出入口の立入禁止表示・施錠装置等を定める サイトの立入りの実態に関わります
第4条 風車の施設基準。負荷遮断時の最大速度に対する構造上の安全、風圧に対する安全、運転中に損傷を与えるような振動がないこと、取扱者の意図に反して起動しないこと、運転中に他の工作物・植物等に接触しないこと 第四号が点検時の停止に関わります
第5条 風車の安全な状態の確保。回転速度が著しく上昇した場合・制御装置の機能が著しく低下した場合に安全かつ自動的に停止する措置。第3項は「最高部の地表からの高さが二十メートルを超える発電用風力設備には、雷撃から風車を保護するような措置を講じなければならない」 雷撃対策が条文にある
第6条・第7条・第8条 圧油装置・圧縮空気装置/風車を支持する工作物(自重、積載荷重、積雪、風圧、地震等に対する構造上の安全)/電気設備の技術基準との関係 —

この省令には、点検の実施・頻度・方法を定めた条はありません。太陽光の技術基準と同じ構造です。点検は、法第39条の「技術基準に適合するように維持する」義務と、法第42条の保安規程、そして500kW以上については施行規則第94条の定期自主検査という別の入口から現れます。

ただし、逐条解説はブレードの点検に言及しています。 省令第4条第一号・第二号の解説に、次の一文があります。「風車のブレード損傷、破損等により技術基準不適合を発生させないためにも、定期点検の他、通常の点検においても次に掲げるガイドラインを参照することが望ましい。(参照ガイドライン)一般社団法人日本風力発電協会発行『風力発電設備 ブレード点検および補修ガイドライン』(JWPA G0001)」。 これは民間団体のガイドラインであり、法令ではありません。本記事はその中身を引用しませんが、国の逐条解説が参照を「望ましい」としているという事実は、受託側として把握しておく価値があります。どの資料に沿って点検するのかは、発注者の保安規程と契約の側で決まります。 また同じ解説は「特に洋上に風車を設置する場合においては厳しい腐食環境下にあるため、環境条件や耐用年数等を考慮して対策を講じ…構造上安全であることが必要である」としています。
ドローンが風力発電設備の点検方法として認められているかどうかは、公式には明示されていません。 今回確認した範囲では、発電用風力設備に関する技術基準を定める省令及びその解釈に関する逐条解説(39ページ)に「ドローン」「無人航空機」はいずれも1件も出現しません(PDFをテキスト抽出して機械検索)。国土交通省の無人航空機関係の資料に風車の記述がないのと、ちょうど裏表の関係です。 したがってこの記事では、「ドローンを使えば点検義務を満たせる」「従来の点検をドローンで置き換えられる」といった評価は行いません。判断の主体は設備の設置者であり、根拠は届け出ている保安規程です。受託する側としては、その作業が保安規程上の何に当たるのか(日常の巡視・点検か、500kW以上の定期自主検査の一部か、それ以外の調査か)を契約の前提として確認するのが順序になります。航空法の許可・承認が下りていることは、電気事業法上の適否とは別の問題です。

航空法の外で確認しておくもの

論点内容
サイトの土地の権原 離着陸地点の使用について土地の管理者の了解が必要です。私有地上空の所有権が及ぶ高さについて一律の公式基準は存在しません(私有地の上空、所有権はどこまで及ぶのか)
国有林を通るサイト 風車は国有林内や林道沿いに立つことがあります。国有林で飛ばす場合は入林届と森林管理署への確認が必要です(国有林でドローンを飛ばすときの入林届と、森林管理署への確認)
無線局免許 5.7GHz帯等の無人移動体画像伝送システムは無線局免許と第三級陸上特殊無線技士以上が必要です(5.7GHz帯のドローンを使うには)
設備側に固有の制度がある 経済産業省は、風力発電設備が自衛隊等のレーダーや衛星通信に障害を及ぼすおそれがあることから、「風力発電設備の設置等の電波の伝搬障害を回避し電波を用いた自衛隊等の円滑かつ安全な活動を確保するための措置に関する法律」が令和6年5月24日に公布されたと案内しています。これは設備を設置する事業者の届出義務であり、ドローンを飛ばす者の義務として定められたものではありません。無人航空機の運航にどう関わるかは公式に示されていないため、この記事ではこれ以上踏み込みません
事故を起こした場合 機体を落として人や物に損害を与えた場合の責任は、航空法の手続とは別に生じます(ドローンを落として人にけがをさせたときの責任。民事・刑事・航空法)。保険についてはドローンの保険。国が加入を求めている場面と、求めていない場面をご覧ください
災害後の点検 台風・落雷のあとの点検は、緊急用務空域の指定と重なり得ます。災害対応の特例の枠組みは災害対応でドローンを飛ばす。捜索救助の特例と緊急用務空域で扱っています
係留の特例は組みにくい 施行規則第236条の76は、係留の範囲内に地上又は水上の物件が存しないことを要件にしています。点検対象の風車が範囲内にある近接点検でこの要件をどう満たすかは公式に説明されていません(30m以下の係留で許可・承認が不要になる範囲)

また、特定飛行を行えば飛行計画の通報(法第132条の88第1項)と飛行日誌の備付け(法第132条の89第1項)が毎回発生します。1サイトを何日かに分けて複数の機体・操縦者で回す運用では、ここが失念の起点になります(ドローンの飛行計画の通報はいつ必要か/ドローンの飛行日誌の書き方/機体が複数・操縦者が複数のときの飛行日誌の回し方)。カテゴリーとレベルの対応関係はレベル1〜4とレベル3.5。カテゴリーの区分と一致しない理由、「第三者」の線引きは「第三者」はどこまでか。関係者・間接関与者の線引きで整理しています。

よくある質問

風車は150mを超えるので、点検飛行には必ず150m以上の許可が必要ですか。
必ずとは言えません。施行規則第236条の71第1項第5号は、150m以上の飛行禁止空域から「地上又は水上の物件から三十メートル以内の空域」を除いています。教則第5版も「煙突や鉄塔などの高層の構造物…当該構造物から30メートル以内の空域については、無人航空機の飛行禁止空域から除外されている」としています。判定は、機体がその飛行で到達する最高点と、その直下の地表又は水面との高度差で行います。設備から30mを超えて、かつ対地150m以上になる区間があるかどうかが分かれ目です。なお教則の例示に「風車」はありません。
ナセルの高さが100mの風車なら、対地150mには届きませんか。
そう決めつけないほうがよい論点です。国土交通省の航空障害灯の資料には「風力発電設備の高さが150m以上で、ナセル頂部が105m以下の高さの風力発電設備」という組み合わせが明記されています。設備の「高さ」はナセルの位置ではなく、それより上に伸びるところまでを含んで数えられていると読めます。最上点に来たブレードの先端を上から見る飛行、回転面の上側を横切る飛行では、機体の対地高度がナセルの高さを大きく超えます。加えて風車は尾根や斜面に立つことが多く、教則第5版は150m以上の判定を「海抜高度ではなく、無人航空機が飛行している直下の地表又は水面からの高度差」としています。
風車は「30mを保つべき物件」に当たりますか。
公式には明示されていません。解釈通達3.(7)は「物件」を「建築物その他の相当の大きさを有する工作物」等と定義し、例として「ビル、住居、工場、倉庫、橋梁、高架、水門、変電所、鉄塔、電柱、電線、信号機、街灯 等」を挙げていますが、風車・風力発電設備を名指しした例示はありません。一方で、そこから除かれるのは「操縦者及びその関係者…が所有又は管理する物件」であり、発注者が「関係者」に当たるかは通達6.(1)②の要件次第で個別判断です。実務では、30m未満の承認を取る前提で設計するのが安全側です。また、点検対象の1基が仮に整理できても、隣の基・変電設備・連系する電線・管理道路の車両は別の物件です。
運転中の風車に寄って撮ってはいけないという規定はありますか。
そう書いた公式の規定は、今回確認できていません。航空法の側に「回転中の構造物」という類型はなく、国土交通省の資料に風車の記述もありません。確認できたのは、電気事業法の技術基準の側で「取扱者が点検や異常発生等を理由に回転部を固定した場合」が想定されていること(発電用風力設備に関する技術基準を定める省令第4条第四号と逐条解説)です。つまり点検のために回転部を固定できる構造が前提になっている設備だということです。停止の要否は、設備の設置者が届け出ている保安規程と現場の作業手順の側で決まります。停止・ロックの有無と誰がその指示を出すのかを、飛行計画の前提として書面で確定させてください。なお審査要領5-5(1)a)は、30m未満の飛行についてプロペラガードや衝突防止センサー等の危害軽減機能を機体の基準として求めています。
1基の周りを回って撮るだけなら、目視外飛行にはなりませんか。
タワーの真下近くに操縦者が立ち、肉眼で機体を追える範囲で撮るのであれば目視内に収まり得ます。ただしブレードの裏側に回り込む、ナセルの反対側へ抜ける、基から基へ渡ると目視外です。そして最も誤解されるのがここで、解釈通達3.(6)は「『目視』とは、操縦者本人が自分の目で見ることをいうものとする。このため、補助者による目視は該当せず」としています。教則第5版も「補助者による監視は含まない」と書いています。補助者を何人置いても、操縦者本人が見ていなければ目視外飛行です。補助者の配置は、承認を受けるための体制側の要件です。
洋上風力の点検は、海の上なので航空法の対象外ですか。
対象外ではありません。条文は「地表又は水面から」と書かれており、教則第5版も150m以上の判定を「直下の地表又は水面からの高度差」としています。海上でも高度の判定・距離の判定は同じ枠組みで動きます。人口集中地区は国勢調査に基づく地域なので、海上にDIDはありません。一方で船舶は30mを保つべき物件として解釈通達3.(7)に例示されており、通航中の船の上を横切る飛行は第三者上空の問題になります(通達6.(2))。補助者を置かない目視外については、審査要領5-4(3)c)ア)の「第三者が存在する可能性が低い場所」に「海水域」が明記されています。
洋上の申請先は、陸上と同じ空港事務所でよいのですか。
審査要領2-1(1)b)は、空域の許可(法第132条の85第1項第1号関係)は飛行を行おうとする場所を管轄区域とする空港事務所長、DIDの許可と方法の承認は管轄区域とする地方航空局長としたうえで、ただし書で「公海上における飛行の許可等に係る申請書は、国土交通大臣に提出させるものとする」と定めています。ある洋上サイトが「公海上」に当たるかどうかについては審査要領に説明がありません。該当し得る案件では、申請の前に提出先を確認するほかありません。
電気事業法上、風力の点検は太陽光と何が違いますか。
2つ違います。1つは区分の境目。経済産業省の整理では風力は20kW未満が小規模事業用電気工作物で、20kW以上になると保安規程の届出と主任技術者の選任が「要」になります(太陽光の境目は50kW)。もう1つは定期安全管理検査(定期自主検査)です。電気事業法施行規則第94条の対象に「風力機関(出力500kW以上の発電設備)」が入っており、第94条の2が時期を「三年を超えない時期」、第94条の3が方法を「開放、分解、非破壊検査」等と定めています。太陽電池発電設備は第94条の列挙に入っていません。国が検査の時期と方法を条文で指定しているかどうかが、根本的な違いです。
ドローンの撮影で、3年ごとの定期自主検査に代えられますか。
そう言える根拠を、今回は確認できていません。施行規則第94条の3が方法として列挙しているのは「開放、分解、非破壊検査その他の各部の損傷、変形、摩耗及び異常の発生状況を確認するために十分な方法」と「試運転その他の機能及び作動の状況を確認するために十分な方法」です。外から撮るだけの点検がこの列挙にそのまま当てはまると書いた公式の記述は見つかっていません。また検査項目の詳細を定めた経済産業省の解釈文書は、2026年10月1日時点でダウンロードできなかったため本記事では引用していません。日常の巡視・点検(保安規程に定めるもの)と、500kW以上の3年ごとの定期自主検査は別の制度です。どちらの話をしているのかを、発注者と最初に合わせてください。
落雷のあとにブレードを見たいという依頼が来ました。何から確認しますか。
航空法の側は通常の点検と同じで、30m未満・目視外・(到達高度によっては)150m以上の順に確認します。加えて緊急用務空域の該当性確認(規則第236条の71第4項)が飛行開始前の義務です。設備の側では、技術基準が「最高部の地表からの高さが二十メートルを超える発電用風力設備には、雷撃から風車を保護するような措置を講じなければならない」(発電用風力設備に関する技術基準を定める省令第5条第3項)と定めており、雷撃対策が条文上の要求事項になっています。経済産業省の逐条解説は、ブレード損傷に関して民間団体のガイドラインの参照が望ましいとしています。その点検が保安規程上の何に当たるのか(日常点検か、臨時の調査か、定期自主検査の一部か)を、受託の前に確定させるのが順序です。
国家資格と機体認証を揃えれば、申請は不要になりますか。
作業の内容次第です。技能証明(二等以上)と機体認証(第二種以上)を揃え、立入管理措置と安全確保措置を講じれば、DID上空・夜間・目視外・30m未満については個別の許可・承認が不要になり得ます。しかし150m以上と空港等周辺はこの枠の対象外です。機体が到達する最高点が対地150m以上になる作業が入る案件では、申請は残ります。また夜間・目視外を行うなら技能証明の限定変更も別に必要です。詳しくは認証機体を買うか、許可・承認で回すかと技能証明の限定と限定変更をご覧ください。
この記事の一次ソース
  1. e-Gov法令検索|航空法(昭和二十七年法律第二百三十一号)
  2. e-Gov法令検索|航空法施行規則(昭和二十七年運輸省令第五十六号)
  3. e-Gov法令検索|電気事業法(昭和三十九年法律第百七十号)
  4. e-Gov法令検索|電気事業法施行規則(平成七年通商産業省令第七十七号)
  5. e-Gov法令検索|発電用風力設備に関する技術基準を定める省令(平成九年通商産業省令第五十三号)
  6. 国土交通省|無人航空機に係る規制の運用における解釈について(令和8年4月1日最終改正・PDF)
  7. 国土交通省|無人航空機の飛行に関する許可・承認の審査要領(カテゴリーⅡ飛行)令和8年9月29日最終改正(PDF)
  8. 国土交通省|無人航空機の飛行の安全に関する教則 第5版(令和8年7月7日公布・7月14日適用・PDF)
  9. 国土交通省|航空局標準マニュアル①(インフラ点検等)令和7年12月26日版(PDF)
  10. 国土交通省|風力発電設備に係る航空障害灯の設置基準の緩和について
  11. 国土交通省|告示第435号(工業専用地域をDIDから除外・PDF)
  12. 国土交通省|無人航空機の飛行許可・承認手続
  13. 経済産業省|風力発電設備の安全
  14. 経済産業省|発電用風力設備に関する技術基準を定める省令及びその解釈に関する逐条解説(令和5年3月20日改正・PDF)
  15. 経済産業省 中国四国産業保安監督部|風力発電設備の定期安全管理審査と定期自主検査について
本記事は2026年10月1日時点の情報です。 無人航空機の制度は改正が続いており、解釈通達・審査要領・標準マニュアルは通達として短い手続で改正され得ます(審査要領は令和8年9月29日に最終改正されています)。また電気事業法施行規則の条番号は、2026年10月1日はe-Gov法令検索がシステムメンテナンス中で現行条文を直接参照できなかったため、経済産業省及び産業保安監督部が示している条番号に依拠して記載しています。とくに「物件から30m以内の空域」の当てはめは、風車の形状・設置地形・機体の実際の飛行位置に依存する個別判断です。電気事業法側の取扱いは、設備の設置者が届け出ている保安規程によります。実際の申請・飛行の前に、必ず上記の一次ソースで最新の内容をご確認ください。

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